料理研究家、料理大好きフッくんです。
スプーンを入れた瞬間の、ぷるんとしたなめらかさ。茶碗蒸しは、和食のコースでも家庭の食卓でも、出てくるとうれしい小さなごちそうですよね。でも「すが立ってボソボソに」「固まらなくてスープ状態」「蒸し器がないから無理」と、ハードルが高く感じる料理でもあります。
正直に言うと、茶碗蒸しは「比率と火加減」の料理です。卵1:液体3.5の私の配合と、90℃前後のやさしい蒸気。この2つさえ守れば、お店のなめらかさは、おうちのフライパンでも再現できるんです。
そこで今回は、現役料理人20年・栄養士のフッくんが、茶碗蒸しの作り方をまるごと解説します。すが立たない科学、卵液をこすひと手間、蒸し器なしの蒸し方まで。温泉卵の記事でお伝えした「卵と温度の科学」の続編、保存版ですよ🌸
まずは、みなさんが茶碗蒸しで困りがちなポイントを整理してみましょう。
- すが立ってボソボソになる
火が強すぎるサイン。90℃前後のやさしい蒸気が答えです。 - 固まらずスープのようになる
比率と、まいたけが原因かもしれません。1:3.5が私の答えです。 - 表面がボコボコ・なめらかにならない
卵液をこして、泡を取れば解決します。 - 蒸し器がなくて作れない
フライパンに湯2cmで大丈夫。やり方をお伝えします。
「す」が立つ理由(卵は高温で固く縮む)

まず、失敗の正体から知っておきましょう。茶碗蒸しの「す」——あのボソボソした小さな穴の正体は、加熱しすぎです。
卵液を強い火で蒸すと、中の水分が沸騰して気泡になります。その気泡が抜けた跡が、すの穴。同時に、卵は高温になるほど固く縮むので、口あたりもボソボソになってしまうんですね。温泉卵の記事でお伝えした、「卵は温度で表情を変える」の続きのお話です。
つまり、なめらかさの答えは、沸騰させない90℃前後のやさしい蒸気。強火で一気に、ではなく、じんわり火を入れる——これが、ぷるんの科学ですよ。
卵1個(約50g)で約71kcal・タンパク質約6.1gです(文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」)。やわらかくまとまりやすいので、食が進まない日にも食べやすい一品です。
★この料理には★特定原材料8品目「卵」★+具材により★「えび」「かに」(えび/かに使用時)★+★準ずる20品目「鶏肉」「大豆」「小麦」(醤油)「さば」(だし)「まつたけ」(きのこ類)★が含まれます。★えび・かにアレルギーは重篤なアナフィラキシーを起こすことがあります★。初めてのお子さんには少量から、詳しくは消費者庁「食物アレルギー表示制度」をご確認ください★
★具の鶏肉・えびは★中心温度75℃で1分以上★の加熱が食中毒予防の基準です。竹串を刺して澄んだ汁が出れば火が通ったサインです★。
私の配合と卵液作り(卵1:液体3.5、卵はmlではかる)

それでは、卵液作りです。まず、私のいちばんのこだわりから。卵は「1個、2個」の個数ではなく、ml(グラム)ではかってください。同じ1個でも、Mサイズは正味約50ml、Lサイズは約60mlと、1〜2割も違う。ここが、茶碗蒸しの仕上がりがぶれる隠れた原因なんです。
そのうえで、私の配合は、卵1:液体3.5。よく言われる黄金比は卵1:だし3ですが、これはややしっかりめ。逆に1:4まで薄めると、とろとろになる代わりに、具から出る水分や卵の大きさによっては固まらないことがあります。その間をとった1:3.5——M卵1個(50ml)なら液体180ml、L卵1個(60ml)なら210mlが、とろとろと安定を両立する、私の店の答えです。
味つけは、塩ひとつまみ、薄口しょうゆとみりんを少々。だしの香りが主役なので、調味料は控えめが正解ですよ。
私の店は「うどん出汁」で作ります
そして、だしの正体もお話しします。私の茶碗蒸しは、うどん出汁で作ります。昆布とかつおのうどんだしは、茶碗蒸しにそのまま使える、うまみの完成形なんです。だしの黄金比(水1000ml・昆布15g・かつお節20g)は、うどんの献立の記事でくわしく解説していますよ。
市販のストレートタイプのうどん出汁を使うなら、先に出汁と水を1:1で合わせて、ひと口味見をしてください。商品によって濃さが違うので、濃いと感じたら出汁80ml:水120ml、薄ければ出汁120ml:水80mlの方向に調整。「吸い物よりほんの少し濃いかな」くらいが、蒸し上がりにちょうどよくなります。味が決まったら、その合わせ液を、M卵1個につき合計180ml使えば完成です。
卵は、泡立てないように、菜箸で白身を切るようにほぐします。ぐるぐる混ぜて泡だらけにすると、その泡が蒸し上がりの表面のボコボコになってしまうんです。
そして、プロのなめらかさの鍵が、「こす」ひと手間。だしと合わせた卵液を、こし器やざるで一度こしてください。溶け残った白身のかたまりが取れて、口あたりが別物になります。器に注いだら、表面の泡をスプーンですくって、準備完了です。
お店のなめらかさの正体は、こし器のひと手間です。
白身のかたまりが取れて、卵液が均一なシルクのようになります。
注いだあとの泡取りまでやれば、表面つるんの仕上がりですよ。
だしは、かつおと昆布の合わせだしが王道です。稲荷寿司の記事でご紹介した干し貝柱を加えると、ぐっと上品なうまみになりますよ。具材選びの楽しみは、茶わん蒸しの具材30選の記事でたっぷりどうぞ。
茶碗蒸しのだしには、香り高い花かつおが主役です。昆布と合わせてひいただしは、茶碗蒸しの味そのもの。お吸い物や煮物にも毎日活躍しますよ。
蒸し方(強め2分→弱火7〜8分・ふたをずらす)

いよいよ、蒸しの本番です。蒸気の上がった蒸し器に器を入れたら、火加減は2段階でいきますよ。
まず、強めの火で約2分。表面をさっと固めます。そのあと、弱火に落として7〜8分。このとき、ふたを少しずらすか、ふたに布巾を挟んでください。蒸気の逃げ道を作ることで、庫内が沸騰せず、90℃前後のやさしい蒸気が保たれるんです。昔ながらのこの知恵が、すを防ぐ最大のコツですよ。
蒸し上がりの確認は、竹串をそっと刺して。澄んだ汁がすっと上がってくれば、できあがりです。濁った汁なら、あと1〜2分様子を見てくださいね。
蒸し器がないときは、フライパンで
蒸し器がなくても、大丈夫。フライパンに湯を2cmほど張って、器を並べ、ふたに布巾を巻いて同じ火加減で蒸せます。布巾は、ふたの水滴が茶碗蒸しに落ちるのを防ぐ役目です。
電子レンジで作りたいときは、低出力(150〜200W)で短時間ずつ、様子を見ながら。高出力は一気にすが立つので、あくまでやさしく、が合言葉ですよ。
密閉した蒸し器の中は、どんどん温度が上がって沸騰してしまいます。
ふたを少しずらして蒸気を逃がせば、90℃前後のやさしい蒸気をキープ。
お店の蒸し場でも、茶碗蒸しの時間はふたに菜箸を挟んでいましたよ。

失敗と対策(す・固まらない・ボコボコ)

茶碗蒸しのよくある失敗は、理屈がわかれば防げます。代表的な4つをまとめました。
- すが立ってボソボソになる
火が強すぎます。強め2分のあとは弱火で、ふたをずらして90℃前後を守りましょう。 - 固まらず、スープのようになる
だしの入れすぎか、生のまいたけが原因です。私の配合は卵1:液体3.5(M卵50mlに180ml)。★生のまいたけはタンパク質分解酵素で卵が固まらなくなるので、必ず加熱してから入れてください★ - 表面がボコボコになる
卵液の泡が原因です。切るように溶いて、こして、注いだあとの泡もスプーンで取りましょう。 - 味がぼやける
だしが弱いのかもしれません。かつおと昆布でしっかりひくか、干し貝柱のうまみを足してみてください。
ひとつ、面白い注意を。まいたけは、生のまま入れると卵が固まらなくなる性質を持つきのこです。茶碗蒸しに使うときは、必ずさっと加熱してから。この性質を知らないと、「レシピどおりなのに固まらない」の迷宮に入ってしまいますよ。
具を欲張ると火の通りにムラが出て、すの原因にもなります。
鶏かえびのたんぱく質1つ、きのこ、彩りの三つ葉、で十分ごちそうです。
★生のまいたけには★タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)★が含まれ、卵のタンパク質を分解して固まらなくします。必ず加熱してから加えてください★。
★具の鶏肉・えびは中心温度75℃で1分以上加熱し、生焼けにならないよう小さめに切ってください★。
かつおと合わせる昆布は、だしの土台です。水に浸けておくだけの水出しでも上品なだしがひけるので、茶碗蒸しの日の朝に仕込んでおくと段取り上手。煮物や鍋にも一年中活躍しますよ。
高齢者や子供にやさしい茶碗蒸し

温泉卵の記事で、「飲み込みに不安があれば、茶碗蒸しの形に」とお伝えしました。ここからは、その受け皿のお話です。
茶碗蒸しは、介護の食卓では嚥下食の王道と呼べる一品です。なめらかでまとまりやすく、しかも中までしっかり火が通っている。とろとろのやわらかさと加熱の安心を、両立できる卵料理なんですね。食が細い日のたんぱく質補給にも、頼れる存在です。
さらに安心にするなら、具なしの茶碗蒸しに。だしと卵だけでも、十分ごちそうです。具を入れる場合は、細かく切って。銀杏やかまぼこのような丸い具材は、のどに詰まりやすいので小さく切ってあげてください。とくに銀杏は、5歳ごろまでの小さなお子さんには与えないのがお約束です。まれに中毒(けいれんや嘔吐)を起こすことがあり、小さなお子さんは特に影響を受けやすいためです。大きくなってからも、食べるのは数個までにとどめてくださいね。
お子さんには、熱々を少し冷ましてから。離乳食の時期には、具なしの茶碗蒸しを完了期頃から少量ずつ、しっかり加熱で。だしの香りは、和食の味覚のいちばんやさしい入口になりますよ。
なめらかで、まとまりやすく、しっかり加熱——三拍子そろった、むせにくい卵料理です。
★ただし★具材は要注意★です。★えび・鶏肉は弾力があって噛み切りにくく、ぎんなん・かまぼこ・しいたけは窒息のリスク★があります。介護の食卓では★具なし★か、★5mm以下に細かく刻んだ具★にしてください★。
★三つ葉・海苔などの薄い葉物は上あごに張り付きやすいので、細かく刻むか外しましょう★。
★熱々は口内やけどしやすいので、少し冷ましてからお出しください★。
★とろみや形態のご相談は日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食学会分類2013」を基準に、必ず主治医・言語聴覚士(ST)・管理栄養士にご相談ください★
★アレルギー(★特定原材料8品目「卵」+具材により「えび」「かに」★+準ずる「鶏肉」「大豆」「小麦」「さば」)にご配慮ください★
卵1:液体3.5の配合には、計量スプーンと計量カップが頼りになります。卵をmlではかる私のやり方なら、器の大小が変わっても味はぴたり。合わせ調味料の計量にも毎日活躍しますよ。
茶碗蒸しの作り方でよくある質問
Q1. すが立たない、いちばんのコツは何ですか?
火加減です。強めの火で2分、表面を固めたら、弱火に落として7〜8分。ふたを少しずらして蒸気を逃がし、90℃前後のやさしい蒸気を保ってください。
すの正体は、加熱しすぎで卵液が沸騰した気泡の穴。「沸騰させない」を守れば、ぷるんのなめらかさになりますよ。
Q2. 茶碗蒸しが固まりません。なぜですか?
まず、比率の確認を。私の配合は卵1:液体3.5(M卵1個50mlに液体180ml)です。1:4より薄いと、具から出る水分や卵の大きさによっては固まりにくくなります。卵を個数ではなくmlではかるのも、安定の秘訣ですよ。そしてもうひとつ、生のまいたけを入れていませんか?
まいたけは、生のまま入れると卵が固まらなくなる性質があります。使うときは、必ずさっと加熱してから入れてくださいね。
Q3. 蒸し器がなくても作れますか?
作れます。フライパンに湯を2cmほど張って器を並べ、ふたに布巾を巻いて、強め2分→弱火7〜8分の同じ火加減で。布巾が、ふたの水滴の落下を防いでくれます。
電子レンジなら、低出力(150〜200W)で短時間ずつ様子を見ながら。高出力の一気加熱だけは、すのもとになるので避けてくださいね。
Q4. 茶碗蒸しの具は、何を入れればいいですか?
定番は、鶏肉、えび、かまぼこ、しいたけ、三つ葉、銀杏です。具だくさんにしすぎると火の通りにムラが出るので、3〜4種までが上品にまとまりますよ。
定番から変わり種まで、具材の楽しみは茶わん蒸しの具材30選の記事でたっぷり解説しています。そちらもぜひどうぞ。
まとめ。。。

茶碗蒸しの作り方のポイントを、最後にまとめておきますね。
- すの正体は、加熱しすぎ
卵液が沸騰した気泡の穴。90℃前後がなめらかの鍵です。 - 私の配合は、卵1:液体3.5
M卵50mlに液体180ml。卵は個数でなくmlではかります。 - 切るように溶いて、こして、泡を取る
お店のなめらかさは、この3つのひと手間です。 - 強め2分→弱火7〜8分
ふたをずらして、蒸気の逃げ道を作りましょう。 - 竹串の澄んだ汁が合図
濁った汁なら、あと1〜2分様子を見てください。 - まいたけは必ず加熱してから
生のままは、固まらない迷宮の入口です。 - 茶碗蒸しは、嚥下食の王道
具なしにすれば、家族みんなの安心のひと椀です。
茶碗蒸しは、「卵はmlではかって1:3.5、こして、90℃でやさしく蒸す」。この流れさえ覚えれば、すとは無縁の、ぷるんのひと椀がいつでも作れます。蒸し器がなくても、フライパンで今夜から。だしの香りの小さなごちそうを、食卓に添えてあげてくださいね。
卵と温度の科学は、温泉卵の記事とあわせてどうぞ。卵料理が、きっともっと楽しくなりますよ。困ったときは、またこの記事を見に来てください🌸
最後までお読みいただきありがとうございました。
フッくんでした!








