料理研究家、栄養士、現役介護士のフッくんです。
「お父様にお味噌汁を食べさせてあげたいけど、誤嚥が心配」
「お母様にお吸い物を食べて頂きたいけど、サラサラで飲み込みにくい」
そんな介護家族・施設職員の声を、私の現場でも数えきれないほど聞いてきました。
正直に言うと、汁物は介護食の中でも誤嚥に注意したいカテゴリです。
ただし、嚥下状態に合わせた形に整え、必要に応じて専門職に確認することで、ご高齢のお父様・お母様にも汁物を楽しんで頂きやすくなります。
この記事を読めば、こんなことが分かります。
- 嚥下しやすい汁物の3条件
とろみ・温度・具材サイズの正しい設計 - 栄養士&現役介護士厳選の汁物10選
味噌汁・けんちん汁・コーンスープなど現場で実証済みのラインナップ - UDF×学会分類2013の早見表(汁物特化版)
どの方にどの汁物が合うか一目で分かる対応表 - とろみ剤の正しい使い方
トロメイクなど代表製品の濃度別使い分け - 柔らかく仕上げる調理5原則
温度管理・具材サイズ・姿勢などの安全配慮 - 避けるべきNG汁物3選
誤嚥・窒息リスクの高い汁物パターンと代替案 - 介護食レシピ3品
豆腐味噌汁・かぼちゃポタージュ・卵中華スープの実践レシピ
ぜひ最後まで読んでみてください。
嚥下状態には個人差があります。むせ込みが多い、肺炎歴がある、食事中に声が変わる、飲み込みに不安がある場合は、自己判断で食形態を上げ下げせず、医師・歯科医師・管理栄養士・言語聴覚士などの専門職に相談してください。本記事は家庭で確認する目安であり、診断や個別の食事指示ではありません。
嚥下しやすい汁物の3条件|誤嚥リスクを減らす基本設計

汁物は液体と固体が混ざる料理なので、嚥下が難しい方には最も注意が必要なジャンルです。
私が介護現場で見てきた経験からも、汁物でむせ込みが起きやすい場面は少なくありません。
まずは嚥下しやすい汁物の3条件をしっかり押さえましょう。
条件①適度なとろみ
サラサラの液体は、口の中で広がって気管に流れ込みやすくなります。
適度なとろみがあると食塊(しょっかい)としてまとまり、ゆっくり喉を通るので誤嚥しにくくなります。
とろみ調整食品(後述)を使うと、好みの濃度に簡単に調整できますよ。
条件②適温(40〜60℃が目安)
熱すぎる汁物は火傷だけでなく、反射的な咳き込みや気管への流れ込みを招きます。
冷たすぎても飲み込みにくくなることがあるため、熱すぎない温度まで冷まし、介助者が一口前に確認することが大切です。40〜60℃はあくまで家庭で確認する時の目安として考えてください。
施設や家庭では、配膳から食べ始めるまでの温度変化もあるため、実際に口へ運ぶ直前の温度確認を優先してください。
条件③具材のサイズ(5mm以下が目安)
具材が大きいと、噛み切れずに丸呑みしてしまうリスクがあります。
嚥下が難しい方には、具材は5mm以下を目安に細かく刻むことが多いです。
さらに難しい方には、ハンドブレンダーでペースト状にしてから提供するケースもあります。
🌿 汁物は水分・塩分・ミネラル補給の大事な役割を担っています。
ご高齢の方は喉の渇きを感じにくく、脱水症状のリスクが高まりやすいことがあります。水分補給として汁物を活用する場合も、必要に応じてとろみや具材の形を調整してください🥄
栄養士&現役介護士厳選!嚥下しやすい汁物10選


ここからは、私が栄養士&現役介護士として実際に介護現場で提供してきた、嚥下しやすい汁物10選をご紹介します。
家族介護でも施設提供でも応用できるラインナップで揃えていますよ。
- ①味噌汁(豆腐・ほうれん草)
日本の食卓の定番。豆腐は柔らかく、ほうれん草は繊維を細かく刻めば、UDF2相当を目安にしやすい一杯になります。 - ②けんちん汁(根菜たっぷり柔らか)
大根・人参・里芋など根菜をしっかり煮込めば、噛みやすい食感に。具材を5mm以下の目安でカットすれば、UDF2相当を検討しやすくなります。 - ③すまし汁・吸い物
かつお出汁の上品な汁物。具材が少なくシンプルなので、咀嚼に余裕がある方の食形態を目安にしやすい汁物です。 - ④かぼちゃのポタージュ
ハンドブレンダーで滑らかにすれば、UDF3相当を目安にしやすいペースト状の汁物に。甘みで食欲もそそります。 - ⑤コーンクリームスープ
市販の濃縮スープでもOK。コーンの粒は事前に裏ごしで除去すれば、滑らかで嚥下しやすい一品になりますよ。 - ⑥ふんわり卵スープ
卵を細く流し入れ、ふんわり仕上げ。タンパク質補給にも◎で、卵は完全加熱(75℃以上)で食中毒対策も万全です。 - ⑦茶碗蒸し風スープ
出汁と卵をスプーンですくえる柔らかさに。ゼリー状の嚥下調整食を検討する時の応用形になります。嚥下訓練中の方は、必ず専門職の指示に合わせてください。 - ⑧豆乳スープ
豆乳の自然なとろみが嚥下に有利。野菜をペースト化して加えれば、UDF3相当を目安にしながら、栄養価も確保しやすくなります。 - ⑨ミネストローネ(柔らか野菜)
トマトベースの洋風スープ。野菜は細かく刻むかペースト化で対応。普段と違う味で食欲アップが期待できます。 - ⑩中華卵スープ(片栗粉とろみ)
片栗粉でとろみを付けた中華風。卵をふんわり溶き入れて、UDF2相当を目安にしやすい一杯になります。
🥄 介護現場で実際に汁物を提供する時は、「最初の一口を必ず職員が見守る」のが鉄則です。
ご本人の嚥下状態は日によって違うので、その日の最初の一口でむせ込みがないかを確認し、必要に応じて形態を下げたり提供を中止したりしています🥄
明治トロメイクSPは、介護現場でも使われることがあるとろみ調整食品の一つで、お湯にも冷水にもサッと溶けてダマになりにくいのが現場で評価されているポイント。施設でも家庭でも、嚥下食の質が一段階上がりますよ。
UDF×学会分類2013早見表(汁物特化版)

ご家族や施設職員が「うちのお父様・お母様にどの汁物が合うか」を考える目安として、UDF区分と学会分類2013を並べて確認できる表をまとめました。
※UDFと学会分類2013は同じ基準ではありません。ここでは家庭で確認するための目安として紹介しています。実際の食形態は医師・管理栄養士・言語聴覚士などの専門職に確認してください。
| UDF区分 | 学会分類2013 | 汁物の目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| UDF1(容易にかめる) | 学会4 | 普通の味噌汁・吸い物OK | 具材も普通でOK |
| UDF2(歯ぐきでつぶせる) | 学会3 | 具材5mm以下 | とろみ少なめ |
| UDF3(舌でつぶせる) | 学会2-2 | 具材ペースト+とろみ | 中等度のとろみ |
| UDF4(かまなくてよい) | 学会2-1 | 全粒ペースト+強とろみ | 強いとろみ・滑らか |
| UDF対応規格なし | 学会1j(ゼリー食) | 茶碗蒸し風・ゼリー化スープ | 0j/0tは嚥下訓練食品で別管理 |
🌿 ご家族の嚥下状態が分からない時は、自己判断で食形態を上げ下げせず、まず専門職に相談するのが安全です。家庭で試す場合も、少量から始め、むせ込み・声の変化・息苦しさがあればすぐに中止してください🌿
とろみ剤の使い方|誤嚥リスクを減らすための基本
汁物のまとまりを調整しやすくするとろみ調整食品(とろみ剤)。
正しい使い方を知っているかどうかで、家族介護の質が大きく変わります。
代表的なとろみ剤3種
- 明治トロメイクSP(株式会社 明治)
介護施設でも使われることがある定番品の一つ。お湯・冷水・牛乳・お茶に対応し、ダマになりにくい設計です。 - ネオハイトロミール(フードケア)
薬局でも入手しやすい家庭用に最適なタイプ。少量から使えて使い切りやすいのが特徴です。 - つるりんこQuickly(クリニコ)
水分量に対する添加比率がシンプルで、初めてのご家族でも失敗しにくい設計になっています。
濃度別の使い分け
- 薄いとろみ(フレンチドレッシング状)
薄いとろみが合う方の目安。サラサラの汁物より、喉へ流れる速度を調整しやすくなります。 - 中間のとろみ(とんかつソース状)
中間のとろみが合う方の目安。スプーンですくった時に少しまとまる程度の濃度です。 - 濃いとろみ(ケチャップ状)
濃いとろみが必要な方の目安。スプーンで持ち上げてもボトッと落ちにくい濃度です。
🥄 とろみ剤は「入れた直後の見た目」と「2〜3分後の見た目」が違うのが落とし穴。
入れた直後はサラサラでも、2〜3分置くと一気にとろみが出ることが多いんです。慌てて追加投入すると、過度なとろみで食塊形成が逆に難しくなることもあるので、必ず2〜3分待ってから判断してくださいね🥄
ブラウンのマルチクイック ハンドブレンダーは、介護食づくりに欠かせない万能アイテム。野菜のペースト化からスープのなめらか仕上げまで一台でこなしてくれて、私の家庭でも介護施設でも長年愛用しています。本気で介護食に取り組むご家族にはぜひ揃えていただきたい一台です。
柔らかく仕上げる調理5原則|嚥下汁物の安全基準

私が介護現場で築いてきた、嚥下汁物の調理5原則をご紹介します。
家族介護でも施設提供でも、この5つを意識すると、誤嚥リスクを減らす助けになります。
- 原則①とろみで流れ方を調整
液体だけの汁物はサラサラで気管に入りやすいので、適度なとろみで食塊を形成しやすくします。 - 原則②温度管理(40〜60℃)
熱すぎる汁物は反射的な咳き込みの原因に。配膳時は熱すぎないことを必ず確認します。 - 原則③具材は5mm以下
大きな具材は丸呑みリスクの原因に。包丁の角度を斜めに入れると繊維が断ち切れて柔らかくなります。 - 原則④一口量の調整
大きなスプーンより、小さじ1〜大さじ1の量がベスト。一口ずつ確実に飲み込んでから次へ進むのが基本です。 - 原則⑤姿勢90度+見守り
食事中はできるだけ安定した座位を保ちます。寝た状態での汁物提供は避け、必ず職員・ご家族が見守りしてください。
寿司職人&居酒屋経験者の秘伝コーナー

正直に言うと、私は寿司職人20年・居酒屋経験者として、出汁の取り方には人一倍こだわってきました。
ここでは、寿司職人として磨いてきた汁物の秘伝技を2つだけお伝えしますね。
秘伝①出汁は「かつお・昆布・干し椎茸」のトリプルブレンド
普通の出汁は、かつお節と昆布の2種類が基本です。
でも、嚥下しやすい汁物の出汁は、干し椎茸の旨味成分(グアニル酸)を加えるのがポイント。
かつおのイノシン酸+昆布のグルタミン酸+干し椎茸のグアニル酸で、3種の旨味が相乗効果を生み、塩分控えめでも深い味わいになります。
ご高齢の方は塩分制限のあるケースも多いので、出汁の旨味で満足度を高めるのは現場の知恵ですね。
秘伝②ミニ茶碗蒸し風スープの裏技
居酒屋時代によくお客様に出していた、ミニ茶碗蒸し風スープの作り方です。
出汁150ml+卵1個を混ぜて、お椀に入れて蒸し器で弱火10〜12分。
スプーンですくえる柔らかさに仕上がり、やわらかい汁物やゼリー状の食形態を検討する時の応用として使えます。
鶏スープを使う場合は、必ず鶏肉を75℃で1分以上加熱(または低温調理器で63℃30分以上)してください。食中毒対策の基本です。
🥢 出汁を取る時は、「沸騰直前で止める」のが寿司職人の鉄則。
グラグラ煮立てると雑味が出て、せっかくの繊細な味わいが台無しになります。鍋肌に小さな泡が立ち始めたら火を止めて、5分置いてから濾すのが本場の技ですよ🥢
キユーピー やさしい献立は、UDF区分が明記されている商品が多く、家族介護でも選びやすいシリーズです。忙しい日や旅行先でも、本格的な介護食を提供できる頼れる存在です。
避けるべきNG汁物3選|誤嚥・窒息リスクのパターン

最後に、嚥下が難しい方に絶対に避けていただきたい汁物を3つご紹介します。
ご家族・施設職員ともに知っておくべき安全配慮の知識です。
- ①熱すぎる汁物(70℃超え)
沸騰直後の汁物は火傷リスクだけでなく、反射的な咳き込みで気管に入る危険性が高まります。配膳時は必ず40〜60℃まで冷ましてから提供してください。 - ②サラサラすぎる汁物(水のような液体)
出汁・お茶・水のような液体は最も誤嚥しやすいパターン。とろみ剤で適度な濃度を付けてから提供するのが基本ルールです。 - ③大きな具材・お餅入り汁物(お雑煮など)
お餅は窒息事故の主要原因(消費者庁警告対象)で、嚥下が難しい方には避けるのが原則です。代替食材として、上新粉ゼリー・ういろう・うどんもちを使うと、お正月の雰囲気は楽しんで頂けますよ。
嚥下しやすい汁物レシピ3品(アコーディオン)

実際にご家庭でも作れる、嚥下しやすい汁物レシピ3品をアコーディオンでまとめました。
気になるレシピを開いてご活用ください。
~材料(2人分)~
絹ごし豆腐…1/2丁(約150g)
ほうれん草…30g
出汁(かつお・昆布)…400ml
味噌…大さじ1.5
とろみ剤…適量(必要に応じて)
~作り方~
①ほうれん草はゆでて水にさらしアクを抜き、5mm以下にみじん切り
②豆腐は5mmの角切りに
③鍋に出汁を入れて温め、豆腐とほうれん草を加える
④弱火で2〜3分煮て、味噌を溶き入れる
⑤温度を40〜60℃に調整して、必要に応じてとろみ剤で薄いとろみを付けて完成
UDF2相当の目安。豆腐とほうれん草の組み合わせは栄養バランスも良く、家族介護で頻繁にお出しできる定番ですよ。
~材料(2人分)~
かぼちゃ…200g(皮を取って正味)
玉ねぎ…1/4個
バター…10g
水…200ml
牛乳…200ml
コンソメ…小さじ1
塩…少々
~作り方~
①かぼちゃは2cm角に切って柔らかく茹でる
②玉ねぎはみじん切りにしてバターでしっかり炒める
③①と②を鍋に入れ、水とコンソメを加えて弱火で5分煮る
④ハンドブレンダーで滑らかにペースト化
⑤牛乳を加えて温め、塩で味を調えて完成
UDF3相当の目安。かぼちゃの自然な甘みで食欲をそそる一品で、ペースト食の方にも喜ばれますよ。
~材料(2人分)~
卵…1個
鶏ガラスープの素…小さじ1
水…400ml
片栗粉…大さじ1(水大さじ2で溶く)
醤油…小さじ1/2
塩…少々
白ごま…少々
~作り方~
①鍋に水と鶏ガラスープを入れて温める
②醤油・塩で味を調え、水溶き片栗粉でとろみを付ける
③溶き卵を細く流し入れ、ふんわり浮かせる(75℃以上で完全加熱)
④温度を40〜60℃に調整して、白ごまをふって完成
UDF2相当の目安。片栗粉のとろみと卵のふんわり感で食塊が作りやすく、ご高齢の方にも嚥下しやすい一杯になりますよ。
嚥下しやすい汁物に関するQ&A
最後に、ご家族からよくいただく質問にお答えしますね。
Q1:お味噌汁にとろみを付けても美味しい?
A:むしろ美味しく感じる方が多いです。
とろみを付けると、お味噌の風味が舌に長く留まるので、減塩していても満足感が高まります。
私の介護現場でも「とろみ付き味噌汁の方が好き」というご利用者様が多いんですよ。
Q2:具材は何mmまで小さくすべき?
A:UDF区分により違いますが、5mm以下が一般的な目安です。
UDF2相当で5mm以下、UDF3相当でペースト状、UDF4相当で完全な粒なしペーストが基本ライン。
迷ったら、まず5mm以下から始めて様子を見るのがオススメです。
Q3:温度は何度がベスト?
A:40〜60℃は家庭で確認する時の目安です。
熱すぎるとやけどや咳き込みにつながるため、実際に口へ運ぶ直前に温度を確認してください。
配膳時に少し冷ましてから提供する習慣をつけると、火傷やむせ込みのリスクを減らしやすくなります。
Q4:粉末味噌汁(インスタント)は使ってもOK?
A:具材を選べばOKですが、注意点ありです。
インスタント味噌汁は塩分が高めなので、ご高齢の方には粉末を半量にし、お湯は通常量で溶いて薄めるのが◎。
具材も大きめのワカメや大きなあげが入っていることが多いので、具材を別途5mm以下に刻んでから加えるとより安心です。
まとめ。。。
今回は嚥下しやすい汁物について、栄養士&現役介護士の視点で完全解説しました。
ポイントを振り返っておきますね。
- 嚥下しやすい汁物の3条件
適度なとろみ・適温(40〜60℃)・具材5mm以下が基本 - 栄養士&介護士厳選10選
味噌汁・けんちん汁・吸い物・かぼちゃポタージュ・コーンスープ・卵スープ・茶碗蒸し風・豆乳スープ・ミネストローネ・中華卵スープ - UDF×学会分類2013早見表
UDF1〜4と1jゼリー食まで対応した実践的な対応表 - とろみ剤の正しい使い方
薄い・中間・濃いの3段階で嚥下状態に合わせた使い分け - 調理5原則
とろみ・温度・具材サイズ・一口量・姿勢90度+見守り - 寿司職人の秘伝
3種出汁ブレンド・ミニ茶碗蒸し風スープの裏技 - NG汁物3選を避ける
熱すぎ・サラサラ・お餅入りは誤嚥&窒息リスク
汁物は介護食の中でもむせ込みや誤嚥に注意したいカテゴリですが、状態に合わせてとろみ・温度・具材サイズを調整すれば、ご高齢のお父様・お母様にも楽しんで頂きやすい一杯になります。
ご家族・施設職員のみなさんが「食べさせてあげたい・食べて頂きたい」想いを、より安全に届けるための目安として、ぜひこの記事を活用してくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。フッくんでした!














