料理研究家、料理大好きフッくんです。
暑い夏は、大人でも食が進まなくなりますよね。ご高齢の方なら、なおさら。「そうめんばかりになってしまう」「ちゃんと食べてくれない」と、心配になる季節です。でも、ちょっとした工夫と献立の組み立てで、夏でもおいしく、しっかり食べてもらえますよ。今日は、そのコツをまるごとお伝えしますね。
こんなお悩み、ありませんか?
- 「夏になると食が細くなって、ちゃんと食べてくれるか心配」
これはご家族の声。暑さで食が進まない夏は、食べやすい工夫が大切です。 - 「食事量だけでなく、水分や塩分、食中毒も気になる」
これは介護職員の声。夏は、栄養に加えて、脱水や衛生にも気を配ります。 - そうめんなど、さっぱりした主食ばかりになってしまう
たんぱく質や野菜を上手に足すと、栄養のバランスがとれます。 - 夏の献立の組み立て方が分からない
主食・主菜・副菜・汁物・水分を、夏向けにそろえるコツがありますよ。
この記事では、栄養士×現役介護士として、高齢者の夏の食事の工夫を、5つのポイントと献立例つきで解説します。水分・塩分・たんぱく質・食中毒対策の工夫、夏でも食べやすい献立の組み立て、レシピ3品まで、まるごとお伝えしますね。暑い夏も、安心して食卓を楽しんでもらえますよ。
高齢者の夏の食事で気をつけたいこと

夏の食事には、ほかの季節とは違う注意点があります。まず、暑さで食が進まなくなること。食事量が減ると、必要な栄養や水分が不足しがちになります。
次に、脱水や熱中症の心配。ご高齢の方は、のどの渇きを感じにくく、水分が不足しやすいので、食事からも水分を補う工夫が大切です。環境省「熱中症環境保健マニュアル」では、室温28℃以下・湿度70%以下、WBGT(暑さ指数)28未満を目安としています。高齢者は暑さや喉の渇きを感じにくいので、エアコンを我慢せず使ってくださいね。そして、食中毒のリスク。気温が高い夏は、食べ物が傷みやすく、加熱や保存に、いつも以上の注意が必要です。
つまり夏は、「食べやすさ」に加えて、「水分」「衛生」にも気を配るのがポイント。食事量が減ると、エネルギーやたんぱく質はもちろん、汗で失われる水分やミネラルも不足しやすくなります。体力が落ちると、ますます食が進まない…という悪循環にもなりがち。だからこそ、少量でも栄養と水分がとれる工夫が大切なんです。次の章で、具体的な工夫を見ていきましょう。なお、持病で水分や塩分の制限がある方は、かかりつけの医師や管理栄養士の指示に従ってくださいね。
夏の食事の工夫【5つのポイント】

高齢者の夏の食事で大切にしたい、5つの工夫をお伝えします。
①水分をこまめにとる
夏は、食事からも水分を補うのが大切。汁物やスープ、水分の多い果物、ゼリーなどを、献立に取り入れましょう。食事の合間にも、お茶や水をこまめに。むせやすい方は、とろみをつけると、安全に水分がとれます。
②塩分・ミネラルを適度にとる
汗をかくと、水分と一緒に塩分やミネラルも失われます。梅干しやみそ汁などで、適度に塩分を補うと安心です。※梅干し1個で約2g、みそ汁1杯で約1.5gの塩分。両方そろえる日は、ほかのおかずを薄味にして調整しましょう。ただし、とりすぎは禁物。持病のある方は、医師の指示に従い、ふだんは薄味を基本に、だしや酸味で物足りなさを補いましょう。
③さっぱり食べやすく仕上げる
食が進まないときは、酸味や香味で、さっぱりと。お酢やレモン、梅、しそ、しょうがなどを使うと、口当たりがよくなります。冷たすぎるとお腹に負担がかかるので、冷やしすぎず、ほどよい温度にするのがコツです。
④たんぱく質をしっかりとる
さっぱりした主食ばかりだと、体をつくるたんぱく質が不足しがち。卵、豆腐、肉、魚を、無理なく一品添えましょう。冷たい料理は口の中で温度刺激となり、嚥下反射を起こしやすくなるため、嚥下リハビリの現場でも推奨されています。冷やし茶碗蒸しや、さっぱり煮た鶏など、夏でも食べやすいたんぱく質のおかずがおすすめです。豆腐は、冷ややっこや、すり流しにすると、つるりとのどを通ります。肉や魚は、やわらかく煮て、とろみあんをかけると、暑い日でも食べやすくなりますよ。
⑤食中毒に気をつける
夏は食べ物が傷みやすいので、加熱・冷蔵・早めに食べるを徹底。O157・サルモネラ・カンピロバクター・ウェルシュ菌・黄色ブドウ球菌などによる食中毒が増えます。肉や魚、卵は中心までしっかり火を通し(中心75℃で1分以上が目安)、作った料理は常温に2時間以上置かない(2時間ルール)・お弁当や作り置きは10℃以下で冷蔵保存を徹底。早めにいただきましょう。作り置きは、粗熱をとってから冷蔵庫へ。食べる前に、においや味に異変がないか確かめると、より安心です。手洗いや調理器具の清潔も大切です。
栄養士の視点から一言。夏は、食事量が減ると、エネルギー・たんぱく質・水分が不足しやすくなります。高齢者は、たんぱく質は体重1kgあたり1.0〜1.2g(50kgの方で50〜60g)、水分は食事を含め1日1.5L以上を目安にとりたい栄養素です。少量でも栄養がとれるよう、卵・豆腐・肉・魚のたんぱく質を一品、そして水分の多い汁物や果物を組み合わせるのがコツです。水分は、食事以外にもこまめにとり、汗をかいたら塩分も適度に補いましょう。塩分は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で、1日に18歳以上男性7.5g未満・女性6.5g未満が目安。とりすぎないよう、薄味をだしや酸味でおいしく仕上げます。なお、料理には、消費者庁が定める特定原材料8品目(2025年4月にくるみが追加=えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生)のうち、卵(茶碗蒸し・温泉卵)・乳(ゼリー)・小麦(そうめん)などが使われます。ご家族やご利用者様に出すときは、必ず原材料表示を確認してくださいね🍅
夏でも食べやすい献立の組み立て方

夏の献立は、主食・主菜・副菜・汁物(水分)・果物を、夏向けにそろえるのがコツ。やわらかい主食に、さっぱりしたたんぱく質のおかず、彩りの副菜、水分のとれる汁物やゼリー、果物を組み合わせます。全部を一度にそろえるのが難しいときは、一皿に盛り合わせる「ワンプレート」にしても大丈夫。大切なのは、量より、たんぱく質と水分が無理なくとれることです。
具体的な組み合わせの例を、栄養価つきで2パターンご紹介しますね。
①主食:やわらかく煮たそうめん(短めに)
②主菜:冷やしやわらか茶碗蒸し
③副菜:すりおろし果物(もも・すいか等)
④水分:麦茶(必要に応じてとろみ)

①主食:やわらかごはん(軟飯)
②主菜:梅しそのさっぱり蒸し鶏
③副菜:冷やしトマトのおひたし
④汁物:とろみをつけた冷製コーンスープ
| 栄養価(1人前) | 夏の献立A(さっぱり麺中心) | 夏の献立B(やわらかごはん中心) |
|---|---|---|
| メニュー | やわらかそうめん・冷やし茶碗蒸し・すりおろし果物・麦茶 | やわらかごはん・梅しそ蒸し鶏・冷やしトマト・冷製コーンスープ |
| エネルギー | 約450kcal | 約550kcal |
| たんぱく質 | 18.0g | 25.0g |
| 脂質 | 10.0g | 16.0g |
| 炭水化物 | 72.0g | 75.0g |
| 食物繊維 | 4.0g | 5.0g |
| カルシウム | 120mg | 150mg |
| ビタミンC | 30mg | 25mg |
| 食塩相当量 | 2.0g | 2.2g |
※文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」を参考に算出した概算値です。分量や具材で変わります。
献立例Aは、のどごしのよいそうめんに、たんぱく質の茶碗蒸しと、水分のとれる果物を合わせた、さっぱり献立。献立例Bは、やわらかごはんに、さっぱり味のたんぱく質と、とろみスープを合わせた、しっかり献立です。どちらも、水分とたんぱく質が、無理なくとれる組み立てになっていますよ🍅

このほかにも、夏に食べやすいメニューはいろいろ。冷やし茶碗蒸し、冷製スープ、すりおろした果物、ゼリー、やわらかい冷やしうどん、さっぱり煮などは、食が進まないときの強い味方です。冷たいものと、温かいものを組み合わせると、お腹への負担もやわらぎますよ。見た目の涼しさも大切です。ガラスの器に盛ったり、彩りよく仕上げたりすると、目にも涼やかで、食卓が楽しくなります。楽しい雰囲気は、食が細くなった方の「食べたい」を、そっと後押ししてくれますよ。

現役の介護士として、現場でお伝えしていること。夏の食事で、いちばん気をつけたいのが、食中毒です。気温が高いと食べ物が傷みやすいので、肉・魚・卵は中心までしっかり火を通し、作った料理は常温に置かず、早めに召し上がってください。冷蔵庫で冷やしたものでも、出してから時間がたつと傷みます。次に、水分です。ご高齢の方は、のどの渇きを感じにくいので、食事と食事の間にも、こまめに水分をすすめてください。お茶や水でむせる方には、とろみをつけると、安全に飲んでもらえます。冷たいものばかりだと、お腹を冷やしたり、むせたりするので、冷やしすぎず、温かい汁物も組み合わせましょう。食べやすい大きさに切り、人肌くらいの温度で、そばで見守りながら、ゆっくり召し上がってもらってくださいね。かむ・飲み込む力が弱い方は、日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食学会分類2013」を目安に、医師・管理栄養士・言語聴覚士へご相談ください。こんにゃくゼリーは高齢者の窒息死亡事故が報告されているので、絶対に避けてください。
※夏の水分補給で、お茶や水でむせる方には、とろみ調整剤が便利です。加熱せずに、飲み物にさっと使えて、ダマになりにくいタイプなら、こまめな水分補給がぐっと楽に。とろみの強さを調整しながら、ご本人に合った飲み込みやすさにできますよ。
※汗を多くかいた日や、食欲不振で水分が不足しがちなときは、経口補水液(OS-1等)があると安心です。水分と塩分をバランスよく補えるよう作られているので、夏のこまめな水分補給に役立ちます。ただし、心不全・腎機能低下・高血圧で水分や塩分の制限がある方は、必ずかかりつけ医にご相談ください。健康な高齢者でも1日500ml程度を目安に、ふだんはお茶や水で十分です。市販品が手元にないときは、水1L+塩3g(小さじ1/2)+砂糖40g(大さじ4と1/2)+お好みでレモン汁少々で簡易的に作れます(作ったその日に飲み切って)。むせやすい方は、とろみ調整剤を少量ずつ加えて様子を見てください。経口補水液はとろみがつきにくい・離水しやすい性質があるので、調剤後30秒〜2分待って状態を確認してから提供しましょう。

高齢者の夏の食事で避けたいNG3選

夏の食事で、気をつけたいポイントをまとめました。安全のために、押さえておきましょう。
- 作った料理を常温で長く置く
夏は食べ物が傷みやすく、食中毒の危険があります。作ったら早めに食べ、残りはすぐ冷蔵庫へ。常温放置は避けましょう。 - 冷たいものばかりにする
冷たいものばかりだと、お腹を冷やし、かえって食が進まなくなります。温かい汁物も組み合わせ、冷やしすぎないようにしましょう。 - 水分を控えてしまう
トイレが心配で水分を控えると、脱水の危険があります。食事と間にこまめに、むせる方はとろみをつけて、水分をとりましょう。
夏におすすめのやわらかレシピ3品

夏でも食べやすい、さっぱりレシピを3品ご紹介します。やわらかさやとろみ、温度は、ご本人の状態に合わせて調整してくださいね。
【材料(2人分)】
卵…1個/だし…200ml/塩・薄口しょうゆ…少々/やわらかい具…少々
【作り方】
①卵を溶き、冷ましただし・調味料を混ぜ、こす。
②器に、小さく切ったやわらかい具と卵液を入れる。
③弱火で10〜12分、中まで火が通るまで蒸す。
④粗熱を取り、冷蔵庫で冷やす。とろみあんをかけても食べやすい。
【材料(2人分)】
鶏むね肉…1枚/酒…少々/梅干し(たたく)…1個/青じそ…2枚
【作り方】
①鶏むね肉は繊維を断つようにそぎ切りにし、酒をふる。
②弱火で、中心までしっかり火を通して蒸す(または茹でる)。
③そぎ切りにして、たたいた梅干しと刻んだ青じそをのせる。
④食べやすい大きさにして、お好みでとろみあんをかける。
【材料(2人分)】
好みの果物ジュース…300ml/粉ゼラチン…5g/やわらかい果物…少々
★高齢者には、口の中で溶けやすいゼラチンがおすすめ。寒天は固く崩れにくく口腔内で溶けないため、嚥下が心配な方は避けてください。嚥下調整食を必要とする方は、市販のゼリー化補助剤(スルーソフト等)もご検討を。
【作り方】
①ゼラチンを分量の湯(または規定どおり)でふやかし、溶かす。
②果物ジュースと合わせ、容器に入れる。
③小さく切ったやわらかい果物を加える。
④冷蔵庫で冷やし固める。水分とビタミンが、デザートで補えます。
※冷やし茶碗蒸しや、そうめんのつゆ、さっぱり煮には、白だしがあると味が決まりやすく便利です。だしの風味がきいていて、薄めるだけで上品な味に。塩分を控えながら、うまみで満足感を出せるので、夏の薄味づくりの心強い味方になりますよ。

高齢者の夏の食事についてよくある質問【Q&A】
Q1.夏に食が進まないとき、どうすればいい?
A.酸味や香味でさっぱりさせると、食べやすくなります。梅やレモン、しそ、しょうがが役立ちます。冷やし茶碗蒸しやそうめんなど、のどごしのよいものに、たんぱく質を一品添えましょう。少量でも栄養がとれる工夫が大切です。無理にたくさん食べてもらおうとせず、食べられた分をよろこぶ気持ちも、暑い時期を元気に過ごす支えになりますよ。
Q2.水分は、どのくらいとればいい?
A.食事からの水分に加えて、食事の合間にもこまめにとるのが基本です。汁物やスープ、水分の多い果物、ゼリーも水分補給になります。のどの渇きを感じにくいので、まわりから声をかけて、すすめてあげてください。一度にたくさんより、少しずつ何回も飲んでもらうのが、無理なく続けるコツです。むせる方はとろみをつけると安心です。
Q3.夏の食中毒を防ぐには?
A.肉・魚・卵は中心までしっかり火を通し(中心75℃で1分以上が目安)、作った料理は常温に置かず、早めに食べましょう。残りはすぐ冷蔵庫へ。手洗いや、調理器具を清潔に保つことも大切です。冷蔵したものも、出して時間がたつと傷むので注意してください。市販のお弁当や総菜も、買ったら早めに食べ、暑い車内などに置かないようにしましょう。
Q4.冷たいものばかりでも大丈夫?
A.冷たいものばかりだと、お腹を冷やして、かえって食が進まなくなることがあります。冷たいものと、温かい汁物を組み合わせると、お腹への負担がやわらぎます。冷やしすぎず、ほどよい温度にするのが、夏でも元気に食べてもらうコツです。
Q5.そうめんだけにならないようにするには?
A.そうめんに、たんぱく質と野菜を足すのがおすすめです。冷やし茶碗蒸しや、さっぱり煮た鶏、固ゆで卵や中まで火を通した炒り卵(温泉卵は半熟のため夏場は高齢者にサルモネラ感染リスクあり)、すりおろした野菜などを添えると、栄養のバランスがとれます。薬味やトッピングを少し変えるだけでも、同じそうめんが新鮮に感じられ、飽きずに続けられます。彩りもよくなって、食卓が華やぎますよ。
「おいしい」は、全部が重なること
最後に、栄養士として、そして現役の介護士として、大切にしていることを少しだけお話しさせてください。「おいしい」って、味つけだけで決まるものではないんですよね。涼やかな盛り付け、安心して食べられる安全さ、そして好きな人と一緒に「おいしいね」と言いながら食べる時間。その全部が重なったときに、食事はいちばんうれしいものになると思っています。暑くて食が進まない夏も、ひと工夫で「食べられた」となったときの笑顔は、何よりのごちそうです。
夏の食事も、和(冷やし茶碗蒸し)・洋(冷製スープ)・中(とろみをつけた冷やし麺)と、いろいろな顔があります。同じ食材でも、仕立てを変えれば、その日の体調や好みに合わせられます。難しく考えず、ご本人の「食べたい」に寄り添って、楽しみながら作ってくださいね。
そして、この記事の工夫が、夏の食事のすべてではありません。当ブログには、嚥下しやすい麺や汁物、卵料理など、夏に役立つ介護食の記事がたくさんあります。ほかの記事ものぞいてみると、夏の食事づくりの引き出しがぐんと増えますよ。下のリンクから、ぜひ参考にしてみてくださいね🌸
まとめ。。。
- 夏は「食べやすさ」に加えて「水分」「衛生」にも配慮
食が細る夏も、工夫でしっかり食べてもらえます。 - 工夫は、水分・塩分・さっぱり・たんぱく質・食中毒対策の5つ
無理なく、栄養と水分を補えます。 - 献立は、主食・主菜・副菜・汁物・果物を夏向けに
そうめんだけにせず、たんぱく質と水分を足します。 - 水分はこまめに・むせる方はとろみで
脱水を防いで、安全に水分がとれます。 - 肉・魚・卵は中心まで加熱・早めに食べる
夏の食中毒を、しっかり防ぎましょう。 - 冷たいものばかりにせず、温かい汁物も
お腹を冷やさず、夏でも元気に食べられます。 - さっぱりと、彩りよく、ひと口大で
暑い日も、楽しい食卓を支えられます。
高齢者の夏の食事は、ちょっとした工夫と献立の組み立てで、食が細る季節も、安心しておいしく食べてもらえます。水分とたんぱく質を上手に補って、暑い夏を元気に乗り切ってもらいましょう。ご家族やご利用者様の「食べたい」に、そっと寄り添ってあげてくださいね。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。フッくんでした!







