料理研究家、料理大好きフッくんです。
年齢を重ねると、お通じのリズムが乱れやすくなりますよね。
毎日の食事でできることはないかと、気にかけているご家族や介護の現場の方も多いと思います。
こんな声を、よく聞きます。
- 「野菜を出しても、かたくて残してしまう」
これはご家族の声。食物繊維をとってほしいのに、噛みにくい野菜は、つい残りがちです。 - 「お茶をすすめても、あまり飲んでくれない」
これは介護職員の声。水分が足りているのか、いつも気になります。 - 何から変えればいいか分からない
食物繊維・水分・朝ごはんと、どこから手をつければいいか知りたい。
この記事では、栄養士で、現役介護士でもある私が、高齢の方の便秘に食事でできることをお伝えします。
食物繊維と水分のとり方から、朝ごはんのリズム、私のお店の献立から組んだ1日の献立例、先生に相談したいサインまで、順番に見ていきましょう。

高齢者の便秘——食事でできること
高齢の方の便秘には、食べる量や水分、体を動かす量など、いくつもの理由が重なっています。
食事だけですべてが変わるわけではありませんが、毎日の食卓でできることは、たくさんあります。
この記事でお伝えするのは、薬や病気の話ではなく、家庭や介護の現場で続けられる食事の工夫です。
便秘が続くときや、いつもと様子が違うときは、まず、かかりつけの先生に相談してください。
お薬を飲んでいる方は、食事を変える前にも、先生や薬剤師さんにひと声かけておくと安心です。
そのうえで、食事でできることを、ひとつずつ見ていきましょう。
便秘になりやすい理由——量と水分

年齢を重ねると、便秘になりやすくなる理由が、いくつか重なってきます。
食事の工夫を考える前に、どこに理由がありそうかを見ておくと、手のつけどころが分かります。
食べる量が減る
食が細くなると、お腹に入る量そのものが減ります。
量が少ないと、お通じのもとになるかさも少なくなります。
水分が足りない
高齢になると、のどの渇きを感じにくくなります。
トイレが近くなるのを気にして、水分を控える方もいます。
噛む力が弱まって野菜が減る
かたい野菜や根菜は、噛む力が弱くなると食べにくくなります。
やわらかいものばかりになると、食物繊維が少なくなりがちです。
体を動かす量が減る
歩く量が減ると、お腹の動きもゆっくりになると言われています。
食事とあわせて、無理のない範囲で体を動かすことも大切です。
食事でできる5つのこと

高齢の方の便秘に、食事でできることを5つにまとめました。
どれも特別な食材はいりません。
いつもの食事に、ひとつずつ足していくだけです。
- ①食物繊維をやわらかく
やわらかく煮たり刻んだりして、無理なく食べられる形にします。 - ②食事からも水分を
汁物やおかゆ、果物で、飲みものだけに頼らず水分をとります。 - ③朝ごはんを食べる
朝ごはんが、1日のお腹のリズムのきっかけになります。 - ④油と発酵食品を少し
ごま油やヨーグルト、納豆、味噌汁を、いつもの献立に。 - ⑤急に変えず少しずつ
食物繊維を急に増やすと、お腹が張ることがあります。
食物繊維——やわらかく食べる

食物繊維は、お通じのかさを増やしたり、水分を含んでやわらかく保ったりする働きがあると言われています。
ただ、食物繊維の多い食材には、ごぼうやきのこのように、噛みにくいものも少なくありません。
高齢の方には、「やわらかく食べられる食物繊維」を選ぶのがコツです。
| 食材 | やわらかくする工夫 | ひと言のコツ |
|---|---|---|
| 押し麦 | ごはんに少し混ぜて炊く | いつものごはんに1割ほどから |
| 里いも | やわらかく煮る | ぬめりで口の中でまとまりやすい |
| かぼちゃ | 煮てつぶす | 甘みで食べやすい |
| 大根 | 薄く切って煮る | だしを含ませて |
| わかめ | 細かく刻む | 上あごに張り付きやすいので小さく |
| オクラ | ゆでて刻む | とろみが出て飲み込みやすい |
| きのこ | 細かく刻んで煮る | 長いままは口に残りやすい |
| バナナ | つぶす | やわらかい果物の定番 |
| りんご | すりおろすか煮る | かたいままは避ける |
| 納豆 | ひきわりを選ぶ | 粒が小さく食べやすい |
嚥下しやすい野菜の記事でも紹介しているとおり、野菜は柔らかく仕上げて、繊維を断ち切るように切ると食べやすくなります。
わかめなどの薄い海藻は上あごに張り付きやすいので、細かく刻んでから汁物に入れてください。
こんにゃくは食物繊維の多い食材ですが、噛み切りにくく、のどに詰まることがあるので、噛む力や飲み込む力が弱い方には出さないでください。
ごぼうやにんじんは、すりおろしてから汁物に入れると、噛まずに食物繊維がとれます。
すりおろした根菜は、煮るととろりとやわらかくなり、汁物にやさしいとろみもつきます。
いつもの味噌汁に、大さじ1ほどから足してみてください。
水分——食事からもとる

食物繊維を増やすときは、水分もいっしょにとることが大切です。
水分が少ないままでは、お通じがかたくなりやすいと言われています。
でも、高齢の方は、のどが渇いていなくても水分が足りていないことがあります。
脱水の記事でもお伝えしているとおり、食事以外で、1日およそ1,000〜1,500mlが目安とされています。
ただし体格や持病で変わるので、心配なときは医師に相談しましょう。
心臓や腎臓の病気で水分の制限を受けている方は、必ず先生の指示を優先してください。
飲みものは少しずつ回数を分けて
一度にたくさん飲むのは負担になります。
食事のとき、おやつのとき、起きたときと、湯のみ半分ずつでも回数を分けると、無理なく続けられます。
汁物やおかゆで水分を
味噌汁やすまし汁、おかゆ、煮物の汁も、大切な水分です。
飲みものをあまり飲まない方でも、汁物なら食事の一部として口にしてもらいやすくなります。
飲み込みに不安があるときは
さらさらの水やお茶は、飲み込む力が弱い方には、むせやすいことがあります。
飲み込む力に不安がある方には、市販のとろみ剤(とろみ調整食品)でとろみをつけてからお出しします。
片栗粉のとろみは唾液でゆるみやすいので、とろみ剤と分けて考えてください。
ゼリーで水分をとるときは、寒天のゼリーは口の中でばらけやすいので、飲み込む力に不安がある方には、ゼラチンのゼリーやとろみ剤を使ったゼリーを選んでください。
形ややわらかさは、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食学会分類2013を目安に調整してくださいね。
朝ごはんとリズム——毎日同じ時間に

朝ごはんを食べると、お腹が動くきっかけになると言われています。
食が細い方も、朝は少しでも口にしてもらえるように、食べやすいものを用意しましょう。
毎日同じ時間に食べることも、お腹のリズムを支えてくれます。
温かい汁物から始める
朝ごはんは、温かい味噌汁やおかゆから始めると、口にしてもらいやすくなります。
起きてすぐの白湯や温かいお茶も、朝のひと口として取り入れやすいものです。
食後にトイレの時間を
朝ごはんのあとに、あわてずトイレに座れる時間をとっておくと安心です。
介護の現場でも、食後のゆったりした時間を大切にしています。
油と発酵食品——少しずつ

油を少し使うと、食べものが口の中でなめらかになり、お通じの通りも助けると言われています。
おひたしにごま油を数滴たらしたり、炒め物を一品入れたりするだけで十分です。
油が多すぎると胃にもたれるので、少しずつにしてください。
ヨーグルトや納豆、味噌などの発酵食品も、毎日の献立に取り入れやすい食品です。
特別なものを買い足すより、いつもの味噌汁や朝のヨーグルトを、続けることを大切にしてください。
この記事の食事に使う特定原材料は、乳(ヨーグルト)・卵(玉子とじ)・小麦(しょうゆ)です。
準ずる品目では、大豆(納豆・豆腐・味噌)・さば・ごま・バナナ・りんごが入ります。
食物アレルギーのあるご家族がいるときは、表示を確かめてください。
食物繊維は、1回の食事でたくさんとるより、朝・昼・夕の3回に分けてとるほうが、お腹への負担が少なくなります。
毎食、やわらかい野菜の小鉢か、麦ごはん、汁物の具で少しずつ足していきましょう。
持病のある方や食事の指示を受けている方は、かかりつけの先生の指示を優先してください。
1日の献立例——朝・昼・夕

私のお店の献立から、食物繊維と水分がとりやすい料理を選んで、1日の献立例を組みました。
どの料理も、介護の食事として何度も出してきた、なじみのある料理です。
食べる方に合わせて、やわらかさや大きさを調整してください。
朝——おかゆと玉子とじ
おかゆ・ほうれん草と豆腐の玉子とじ・つぶしたバナナ。
おかゆで水分を、玉子とじで青菜を、バナナでやわらかい果物をとる朝ごはんです。
昼——ひじきの炊き込みご飯
ひじきときのこの炊き込みご飯・豆腐とあげのすまし汁・めかぶと胡瓜の酢の物。
ひじきやめかぶの海藻と、すまし汁の水分がそろう昼ごはんです。
夕——麦ごはんと鯖の味噌煮
五目炊き込み麦入りご飯・鯖の味噌煮(ほうれん草・大根添え)・春菊としめじの白和え・味噌汁。
麦ごはんと根菜、白和えの野菜で、1日の締めくくりにも食物繊維を足します。
鯖は、取り分ける前と出す前に、骨を2回確かめてください。
いつものお米に押し麦を混ぜるときは、まず1割ほどから始めます。
麦は水をよく吸うので、押し麦の量に合わせて水を少し足すと、ふっくらやわらかく炊き上がります。
食べ慣れてきたら、少しずつ麦を増やしてください。
五目炊き込みご飯のこんにゃくは、噛む力や飲み込む力が弱い方の分は外してください。
ひじき・きのこ・めかぶは、細かく刻んでから出します。
めかぶと胡瓜の酢の物は、酢の酸味でむせやすいことがあるので、飲み込む力に不安がある方の分は、甘めに仕上げて、とろみ剤でとろみをつけます。
避けたいこと3つ——急に変えない

便秘を何とかしたいと思うほど、つい一度にたくさん変えたくなります。
でも、急な変化は、かえってお腹の負担になることがあります。
やってしまいがちなことを、3つだけ挙げておきます。
- 食物繊維を急に増やす
お腹が張ったり、かえって苦しくなったりすることがあります。少しずつ、3回に分けて増やします。 - 水分を控える
トイレを気にして水分を減らすと、お通じがかたくなりやすくなります。回数を分けて少しずつ飲みます。 - 自己判断で大きく変える
食事や薬を急に大きく変えるのは避けます。かかりつけの先生に相談してからにします。
3つに共通するのは、「少しずつ、続けられる形で」ということです。
食事の工夫は、何日か続けてはじめて、お腹のリズムを支えてくれます。
先生に相談したいサイン

食事の工夫は、あくまで毎日の暮らしの中でできることです。
次のようなサインがあるときは、食事で様子を見ずに、早めにかかりつけの先生に相談してください。
- 便秘が何日も続く
いつものお通じの間隔より、長く続いているとき。 - お腹が張って強く痛む
お腹がふくれて、触ると痛がるとき。 - 吐き気がある・食べられない
吐き気やおう吐があったり、食事がとれない日が続いたりするとき。 - 便の色がいつもと違う
便に血がまじる、黒っぽいなど、いつもと様子が違うとき。
介護の現場では、お通じの記録をつけて、いつもと違う変化に早く気づけるようにしています。
ご家庭でも、カレンダーに小さく印をつけておくだけで、先生に相談するときの大切な手がかりになります。
私は現役介護士でもあります。
便秘が気になると、つい毎日「出た?」と聞きたくなりますが、聞かれるほうは気が重くなることもあります。
そんな日は、カレンダーに小さな印をつけるだけにして、食事の工夫は黙って続けるようにしています。
記録があると、先生に相談するときにも、いつから・どのくらいかをすぐ伝えられます。
声かけを、カレンダーの小さな印に置き換える日があっていい。
高齢者の便秘と食事でよくある質問
最後に、高齢の方の便秘と食事について、よくいただく質問にお答えします。
Q1. ヨーグルトは毎日いい?
毎日の献立に取り入れやすい食品です。
甘いヨーグルトは砂糖が多いこともあるので、無糖のものにバナナやりんごのすりおろしを合わせるのもオススメです。
Q2. 野菜ジュースでもいい?
水分と一緒に野菜をとれる飲みものです。
ただ、ジュースは食物繊維が少ないものも多いので、食事の野菜の代わりではなく、足りない日の補いと考えてください。
Q3. 食物繊維のサプリは?
サプリメントや市販の食物繊維は、持病やお薬との組み合わせで合わないことがあります。
使う前に、かかりつけの先生や薬剤師さんに相談してください。
Q4. お餅は食物繊維になる?
お餅は食物繊維が多い食品ではありません。
のどに詰まりやすいので、高齢の方にはお餅は出さないでください。
満足感が欲しいときは、やわらかく煮たかぼちゃや里いも、水ようかんやこしあんのゼリーを。
“おいしい”は、全部が重なること
便秘のときの食事を考えるとき、私は四つの軸で見ています。
やわらかく食べられる食物繊維、食事からとる水分、毎日の朝ごはん、そして食べる人が楽しめる味です。
便秘のための食事は、ひとつの食材だけで決まるものではありません。
食物繊維だけでは苦しく、水分だけでは物足りない。
それぞれが、毎日の食卓の中で別の役割を持っているから、続けられるんです。
食物繊維と、水分と、朝ごはんと、おいしさ。
その全部が重なったとき、いつもの食卓が、お腹にもやさしい食卓になります。
まとめ。。。

高齢の方の便秘に食事でできることを、最後にもう一度まとめますね。
- 食物繊維はやわらかく
煮る・刻む・すりおろすで、噛まずに食べられる形に。 - 水分は食事からも
食事以外で1日およそ1,000〜1,500mlが目安(体格や持病で変わります)。 - 朝ごはんを毎日同じ時間に
温かい汁物から始めて、食後にトイレの時間を。 - 油と発酵食品を少し
ごま油・ヨーグルト・納豆・味噌汁をいつもの献立に。 - 急に変えず少しずつ
食物繊維は3回に分けて増やします。 - 飲み込みに合わせて形を変える
とろみ剤やゼラチンのゼリーで、むせにくく。 - サインがあれば早めに先生へ
続く・痛む・吐き気・便の色の変化に気をつけて。
便秘のための食事は、特別な料理ではなく、いつもの食卓の小さな工夫の積み重ねです。
やわらかい野菜をひとつ、汁物を一杯、朝ごはんをひと口。
その少しずつが、毎日のリズムを支えてくれます。
今日の食卓から、できることをひとつ試してみてくださいね。
ご本人もご家族も、気持ちが少し軽くなるはずだよ。
フッくんでした!
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