料理研究家、料理大好きフッくんです。
寒い夜、家族で囲む鍋は、冬のごちそうですよね。
やわらかく煮えた具は、ご高齢の方にも食べやすい料理です。
それでも、具の形や熱さによっては、のどに詰まりやすいものもあります。
こんなお悩み、ありませんか?
- 「どの具なら、のどに詰まらせないか心配」
これはご家族の声。鍋の具は種類が多く、どれを避ければいいのか迷います。 - 「取り分けた具が熱すぎて、むせてしまう」
これは介護職員の声。ぐつぐつの鍋は、見た目以上に熱くなっています。 - 〆の雑炊や餅はどうしたらいい?
家族みんなで楽しむ〆を、安心して出す方法を知りたい。
この記事では、料理人20年で、現役介護士でもある私が、高齢の方に安全な鍋料理の具の選び方と切り方をお伝えします。
避けたい具から、食べやすい具、切り方、取り分け方、〆の工夫まで、順番に見ていきましょう。

高齢者の鍋——気をつけたいこと
鍋は、具がやわらかく煮えて、汁もあたたかく、ご高齢の方にも向いている料理です。
ただ、鍋には「熱さ」「形」「さらさらの汁」という、のどに負担がかかりやすい条件がそろっています。
この3つに少し気を配るだけで、同じ鍋を家族みんなで安心して囲めます。
年齢を重ねると、噛む力や飲み込む力は、少しずつ変わっていきます。
「いつもどおり」の鍋でも、具の大きさや煮え方で、食べやすさは大きく変わります。
まずは、押さえておきたい5つのポイントから見ていきましょう。
安全な鍋の5つのポイント

高齢の方と鍋を囲むときに、私が大事にしているのは次の5つです。
どれも特別な道具はいりません。
いつもの鍋の作り方に、少しずつ足していくだけです。
- ①避けたい具を知る
お餅やこんにゃくなど、のどに詰まりやすい具は別のものに替えます。 - ②小さく、やわらかく切る
繊維を断って、ひと口より小さく切ります。 - ③やわらかく煮る順番
かたい具から先に、じっくり煮ます。 - ④取り分けてから、ひと呼吸
熱い具は取り鉢で少し冷ましてから。 - ⑤汁にはとろみ剤
さらさらの汁でむせる方には、とろみをつけます。
避けたい具6つ——代わりは何?

鍋の具には、ご高齢の方ののどに詰まりやすいものがあります。
避けるだけでは鍋がさびしくなるので、代わりの具とセットで覚えておきましょう。
どれも、いつもの鍋で使いやすいものばかりです。
お餅——はんぺんやじゃがいもに
お餅は、のどに詰まりやすい代表的な食べものです。
高齢の方には、お餅は出さないでください。
代わりに、やわらかく煮たはんぺんや、じゃがいもを入れると、満足感のある具になります。
こんにゃく——豆腐や大根に
こんにゃくやしらたきは噛み切りにくく、のどに詰まることがあります。
噛む力や飲み込む力が弱い方には出さず、豆腐ややわらかく煮た大根にしてください。
長いきのこ——2〜3cmに
えのきは長いまま煮ると、口の中でからまりやすくなります。
2〜3cmに切るか、薄切りのしいたけにすると食べやすくなります。
かたい薄切り肉——団子に
薄切り肉は、煮るほど身が締まって、噛み切りにくくなります。
鶏団子や豚ひき肉の団子にすると、やわらかく食べられます。
骨のある魚——骨を2回確かめて
たらや鮭の切り身にも、小骨が残っていることがあります。
鍋に入れる前と取り分けるときに、骨を2回確かめてください。
うずら卵——必ず4等分に
丸くてつるんとしたうずら卵は、そのままではのどに詰まりやすい形です。
小さなお子さんや高齢の方には、必ず4等分に切ってから出してください。
プチトマトを入れる鍋も、同じように4等分に切ってください。
食べやすい具10選——表で一覧

次は、ご高齢の方にも食べやすい鍋の具です。
やわらかく煮えて、口の中でまとまりやすいものを10選びました。
切り方とひと言のコツを、表にまとめています。
| 具 | 切り方 | ひと言のコツ |
|---|---|---|
| 鶏団子 | ひと口より小さく丸める | 豆腐やはんぺんを混ぜてやわらかく |
| 豚ひき肉の団子 | ひと口より小さく丸める | しょうがを少し入れて |
| たらの切り身 | ひと口大 | 骨を2回確かめる |
| 絹ごし豆腐 | 小さめの角切り | 煮すぎると穴があくので後半に |
| はんぺん | 小さめの角切り | お餅の代わりにも |
| 白菜の葉 | 繊維を断って細めに | 芯はそぎ切りにして先に煮る |
| 大根 | 薄いいちょう切り | 下ゆでしてやわらかく |
| にんじん | 薄い輪切り | 竹串がすっと通るまで |
| しいたけ | 薄切り | 軸は外す |
| 春菊の葉先 | 細かく刻む | かたい茎は使わない |
嚥下しやすい肉の記事でもお伝えしているとおり、ひき肉はつなぎでまとめるのが大事です。
ぽろぽろのひき肉はむせやすいので、団子にしてから鍋に入れてください。
切り方——繊維を断って小さく

同じ具でも、切り方ひとつで、食べやすさは大きく変わります。
ポイントは「繊維を断つ」ことと「ひと口より小さく」することの2つです。
繊維にそって切ると、煮てもすじが残って、噛み切りにくくなります。
葉物は繊維を断って
白菜は、葉と芯を分けて、葉は繊維を断つように細めに切ります。
芯はそぎ切りにして、先に鍋に入れてやわらかく煮ます。
根菜は薄く
大根やにんじんは、薄いいちょう切りや輪切りにします。
厚いと中まで煮えにくいので、下ゆでしておくと安心です。
鶏ひき肉に、はんぺんを手でつぶして混ぜると、ふんわりやわらかい鶏団子になります。
はんぺんがつなぎの役目もしてくれるので、口の中でほろっとほどけます。
鶏ひき肉300gに、はんぺん1枚くらいが目安です。
煮込み方——かたい具から先に

やわらかく仕上げるには、煮る順番も大切です。
かたい具から先に入れて、じっくり煮ておくと、最後にそろってやわらかくなります。
ふだんの鍋より、少し長めに煮るくらいがちょうどいいです。
- ①大根・にんじん・白菜の芯を、だしが冷たいうちから
- ②煮立ったら鶏団子・たら
- ③豆腐・しいたけ・はんぺん
- ④白菜の葉・春菊の葉先は最後に
鶏団子や豚ひき肉の団子は、中心75℃1分以上を目安に、中までしっかり火を通してください。
新鮮な鶏肉でも、生焼けはカンピロバクターによる食中毒の原因になり、まれに手足のまひが起こるギラン・バレー症候群につながることもあると言われています。
一つ割って、中まで色が変わっているか確かめると安心です。
牡蠣やあさりなどの貝を入れるときは、中心部85〜90℃で90秒以上を目安に加熱してください。
あさりは口が開くまでしっかり煮て、口が開かないものは取り除いてください。
殻つきの貝は、殻を外して身だけを取り分けてください。
取り分けと温度——ひと呼吸おく

ぐつぐつの鍋から取ったばかりの具は、見た目以上に熱くなっています。
熱いまま口に入れると、あわてて飲み込もうとして、むせる原因になります。
寄せ鍋の献立の記事でもお伝えしている「取り分けてから、ひと呼吸」が、家族の合図です。
取り鉢に移したら、少し冷ましてから食べてもらいましょう。
具が大きければ、取り鉢の中でさらに小さく切ります。
取り箸と自分の箸を分けると、鍋の中の具を清潔に保てます。
1歳未満のお子さんには、つゆの味つけが大人と同じなので、鍋の具や汁をそのまま取り分けないでください。
私は現役介護士でもあります。
具がばらばらの鍋は、噛む力が弱い方には、口の中でまとまりにくいことがあります。
そんな日は、鶏団子に刻んだ白菜やにんじんを混ぜて、やわらかい団子にしてお出ししています。
鍋の味はそのままで、ひと口で野菜もとれます。
いろいろな具を、ひと口の団子に置き換える日があっていい。
汁ととろみ——むせにくく

鍋の汁は、さらさらしているぶん、のどを通るのが速く、むせやすいことがあります。
飲み込む力に不安がある方には、汁にとろみをつけてからお出しします。
ここで大事なのが、とろみのつけ方です。
片栗粉よりとろみ剤
片栗粉のとろみは、時間がたつと唾液で戻ってゆるくなります。
飲み込む力に不安がある方には、市販のとろみ剤(とろみ調整食品)を使ってください。
温度が変わってもとろみが保ちやすく、量で濃さを調整できます。
食べやすさの目安
市販の介護食品には、UDF区分という食べやすさの表示があります。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食学会分類2013との対応は、次のとおりです。
| UDF区分 | 学会分類2013 |
|---|---|
| 区分1 容易にかめる | コード4の一部 |
| 区分2 歯ぐきでつぶせる | コード4 |
| 区分3 舌でつぶせる | コード3 |
| 区分4 かまなくてよい | コード2-1・2-2・1j |
| UDFの区分なし | コード0j・0t |
どの段階の食事が合うかは、ひとりひとり違います。
かかりつけの先生や、言語聴覚士などの専門職に相談してから決めてくださいね。
〆の雑炊——卵は中まで

具のうま味が溶けた鍋の〆は、ご高齢の方にもうれしい楽しみです。
ただ、〆にも、のどに詰まりやすいものが入りがちです。
安心して楽しめる形に整えましょう。
雑炊はやわらかく、卵は中まで
雑炊は、ご飯をいつもより長めに煮て、やわらかくします。
卵は半熟にせず、ふたをして中までしっかり火を通してください。
うどんは短く、お餅は入れない
うどんは2〜3cmに切って、やわらかく煮ます。
〆のお餅は入れず、満足感が欲しい日は、はんぺんやじゃがいもを足してください。
やわらか鍋の作り方——4人分

ここまでのコツをまとめた、やわらか鍋の作り方です。
鶏団子と白菜を中心に、家族みんなで同じ鍋を囲める味つけにしました。
材料は4人分です。
| 材料 | 4人分 |
|---|---|
| 鶏ひき肉 | 300g |
| はんぺん | 1枚 |
| 片栗粉 | 大さじ1 |
| おろししょうが | 少々 |
| 白菜 | 1/8個 |
| 大根 | 5cm |
| にんじん | 1/3本 |
| 絹ごし豆腐 | 1/2丁 |
| しいたけ | 4枚 |
| だし | 800ml |
| しょうゆ・みりん | 各大さじ2 |
工程1 つゆを作る
みりんを鍋で先にひと煮立ちさせてアルコールを飛ばしてから、だしとしょうゆを加えます。
工程2 根菜を煮る
薄く切った大根とにんじん、白菜の芯を入れ、竹串がすっと通るまで煮ます。
工程3 鶏団子を入れる
鶏ひき肉にはんぺん・片栗粉・おろししょうがを混ぜ、小さく丸めて入れ、中までしっかり火を通します。
工程4 豆腐と葉を入れる
豆腐・しいたけ・白菜の葉を入れてやわらかく煮たら、取り分けてから、ひと呼吸おいてどうぞ。
だしをしっかり濃くとっておくと、しょうゆや塩を控えても、味がぼやけません。
昆布とかつお節を少し多めに使うだけで、うま味で満足できる鍋になります。
味が足りないときは、取り鉢でゆずやすだちの香りを足してください。
鍋の栄養——たんぱく質と野菜

鍋は、肉や魚、豆腐のたんぱく質と、たっぷりの野菜を一度にとれる料理です。
噛む力が弱くなってきた方でも、やわらかい具なら少しずつ食べやすくなります。
栄養士として、鍋の日に気にかけたいのは、汁の塩分です。
1日の塩分の目標量は、男性7.5g未満・女性6.5g未満(食事摂取基準2025年版)です。
鍋の汁は、具のうま味とともに塩分も溶け出しているので、全部飲まずに少し残すと安心です。
この記事の具に使う特定原材料は、しょうゆの小麦、はんぺんの卵や小麦(商品によって)です。
準ずる品目では、鶏肉・豚肉・さけ・大豆(豆腐・しょうゆ)、はんぺんのやまいも(商品によって)が入ります。
食物アレルギーのあるご家族がいるときは、表示を確かめてください。
鍋のうま味は、汁だけでなく、具にもしっかりしみこんでいます。
汁を少し残しても、具を食べれば満足感は十分です。
塩分の指示を受けている方は、かかりつけの先生の指示を優先してください。
高齢者の鍋でよくある質問
最後に、高齢の方と鍋を囲むときに、よくいただく質問にお答えします。
Q1. しゃぶしゃぶの肉は?
薄切り肉は噛み切りにくいことがあるので、細かく刻むか、ひき肉の団子に替えてください。
しゃぶしゃぶの肉も、中までしっかり火を通してから取り分けます。
Q2. キムチ鍋など辛い鍋は?
辛みは、むせの原因になることがあります。
ご高齢の方の分は、辛みを入れる前に取り分けるか、まろやかな味の鍋にしてください。
Q3. 春雨やうどんは?
つるっとした長い麺は、のどにからみやすいので、2〜3cmに切ってやわらかく煮てください。
Q4. 〆の餅の代わりは?
やわらかく煮たはんぺんや、じゃがいもを代わりにすると、満足感のある〆になります。
食後のお楽しみなら、水ようかんやこしあんのゼリーもオススメです。
“おいしい”は、全部が重なること
鍋のおいしさは、具だけでは決まりません。
やわらかく煮えた具、うま味の溶けただし、ほっとする湯気。
その3つが同じ鍋で重なって、冬のごちそうになります。
そして、もうひとつ重なるのが、同じ鍋を囲む家族の時間です。
「今日は寒いね」と言いながら取り分ける一杯も、鍋の大切な一部です。
具と、だしと、湯気と、囲む家族の時間。
その全部が重なったとき、鍋は本当においしくなります。
今夜の鍋には、どの具を選びますか?
まとめ。。。

高齢者に安全な鍋料理を、避けたい具から、食べやすい具、切り方、取り分け方、〆の工夫まで、まとめました。
- お餅とこんにゃくは出さない
はんぺんやじゃがいも、大根や豆腐に替えます。 - 具は小さく、やわらかく
繊維を断って、ひと口より小さく切ります。 - ひき肉は団子にまとめる
豆腐やはんぺんでやわらかく。 - 肉と魚介は中まで加熱
鶏肉は中心75℃1分以上、魚は骨を2回確かめて。 - 取り分けてから、ひと呼吸
熱い具は少し冷ましてから。 - 汁にはとろみ剤
片栗粉のとろみは唾液で戻ります。 - 〆の雑炊は卵を中まで
うどんは短く、お餅は入れません。
鍋は、冬の夜に家族が自然と集まる、あたたかい料理です。
だからこそ、具の形と熱さに少し気を配るだけで、ご高齢の方も同じ鍋を安心して囲めます。
今年の冬も、湯気の向こうに笑顔があふれる鍋を楽しんでくださいね。
同じ鍋を囲む時間も、大切なごちそうになるはずだよ。
フッくんでした!
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