料理研究家、料理大好きフッくんです。
前回の「道具箱①」では、包丁やまな板、鍋といった基本の手道具を紹介しました。今回はその続編、家電編です。
正直に言うと、私は長いこと「料理は手でやるもの」と思っていた職人です。それでも、使ってみて「これは買ってよかった」と心から言える調理家電が、うちの台所には5台あります。
こんなふうに思ったこと、ありませんか?
- 調理家電、種類が多すぎて選べない
流行の家電を追いかけるより、役割で選ぶと失敗しません。 - 買っても使わなくなりそうで怖い
使い続けられる家電には共通点があります。選びの3原則でお伝えします。 - 仕事や介護で、調理の時間が取れない
「ほったらかせる」家電は、忙しい日の台所のもう一人の相棒になりますよ。 - 高齢の家族や子供と、安全に使いたい
現役介護士の目線で、見守りのポイントもまとめました。
プロの道具箱の中身、家電編。後半には、正直ほとんどの方は買わなくていい「私の本気こだわり枠」もこっそり並べました。ぜひ最後までどうぞ🥢
調理家電選びの基本(道具箱②の約束)


道具箱①で「まずは基本から、長く使えるいいものを、大切に手入れして」という3つの約束をお話ししました。家電にも、同じ考え方の家電版があります。
①手間を家電に預ける
買ってよかった家電は、ぜんぶ「自分の代わりに働いてくれる」ものでした。温度を見張る、じっくり火を入れる、一晩発酵させる。人がつきっきりになる仕事ほど、家電に預ける価値があります。
②出しっぱなしにできる大きさを選ぶ
しまい込んだ家電は、二度と出てきません。これは20年台所に立ってきた実感です。カウンターや棚に「定位置」を作れる大きさかどうかを、買う前に必ず確かめてください。
③手入れがラクなものを選ぶ
洗う部品が少ない、プレートが外せる、内鍋だけ洗えばいい。手入れがラクな家電ほど、出番が増えます。道具は使われてこそ道具ですよね。
買ってよかった調理家電5選・早見表

私の5台は「焼く・揚げる・煮る・ほったらかす・育てる」の5役です。まずは一覧でどうぞ。
| 家電 | 得意なこと | こんな人にオススメ |
|---|---|---|
| ①卓上グリラー | 焼く(煙少なめの食卓焼き) | 家族で焼き物を囲みたい |
| ②電気串揚げ鍋 | 揚げる(食卓で揚げたて) | 串カツやフライが好き |
| ③卓上電気鍋 | 煮る・保温(火を使わない) | 鍋物やおでんをゆっくり楽しみたい |
| ④低温調理器 | ほったらかす(温度管理) | 仕込みをまとめてしたい |
| ⑤ヨーグルトメーカー | 育てる(発酵) | ヨーグルトや甘酒を手作りしたい |
買ってよかった調理家電5選を完全紹介
ここからは1台ずつ。プロの台所でどう働いてくれているか、正直にお話しします。
①卓上グリラー(焼く・煙少なめの食卓焼き)

焼肉やホルモン、焼き野菜を食卓で。私が使っているのはグラファイトヒーターの卓上グリラーで、立ち上がりが早く、煙が少ないのが気に入っています。
換気はもちろん必要ですが、部屋の匂い残りがホットプレートよりずっと穏やかです。休みの日の「おうち焼肉」の主役ですよ。
食材をのせるのは、しっかり予熱してから。冷たい面に置くとくっついて、身が崩れます。
これはお店の焼き台でも家の卓上グリラーでも、まったく同じ理屈です。
※アラジンのグラファイトグリラー。立ち上がりの早さと煙の少なさで、焼肉記事でも紹介したうちの食卓の定番です。
②電気串揚げ鍋(揚げる・食卓で揚げたて)

大阪の食卓に、串カツは欠かせません。電気串揚げ鍋のいいところは、温度を一定に保ってくれることです。
揚げ物の失敗のほとんどは油の温度のブレが原因なので、温度管理を家電に預けるだけで、衣はサクッと軽く揚がります。食卓で揚げながら食べる串カツは、もうそれだけでごちそうですよね。
※串カツ記事でも紹介した電気串揚げ鍋。温度が安定するので、揚げ物が苦手な方こそ試してほしい1台です。
③卓上電気鍋(煮る・保温・火を使わない)

おでんや湯豆腐のような「長く温めておきたい料理」は、電気の鍋が一番です。火を使わないので、食卓に置いたまま、みんなでゆっくりつつけます。
仕切りのあるタイプなら、味の染みたおでん種を種類ごとに整理できて、お店のおでん台の気分も味わえますよ。だしを張って湯豆腐、締めにうどん。冬だけでなく、一年中働いてくれます。
ぐらぐら沸かし続けると、だしが濁って種も崩れます。煮えたら保温は弱めに落とすのが、おでん台の基本です。
だしの引き方は道具箱①のだしの道具と合わせて読むと、味がもう一段深くなりますよ。
※深なべタイプの卓上電気鍋なら、おでんも湯豆腐もすき焼きもこれ一台。食卓で保温しながら囲める、家族の鍋の定番です。
④低温調理器(ほったらかす・温度管理の職人)

5台の中で、いちばん「プロの仕事を変えた」のがこれです。設定した温度のお湯を、ずっと正確に保ってくれる道具です。
鶏むね肉のサラダチキンなら、下味をつけて袋に入れ、お湯に沈めたらあとはほったらかし。しっとりやわらかく仕上がります。仕込みの間に別の家事ができるのが、本当にありがたいんです。
ただし鶏肉の低温調理は、温度と時間の管理が安全の生命線です。私は、肉の中心が63℃になってから30分以上を必ず守ります。詳しくは後半の「気をつけたいこと」でお話ししますね。
鶏むね肉は高たんぱくで脂質が控えめな食材です。低温調理ならパサつかず、サラダや麺の具に幅広く使えます。
まとめて仕込んで冷蔵し、2〜3日で食べ切るのが目安ですよ。
※低温調理器はお湯の温度を見張ってくれる道具。仕込みを預けて、食卓の時間を家族に使えます。
⑤ヨーグルトメーカー(育てる・発酵の相棒)

最後は発酵の家電です。牛乳と種ヨーグルトを入れて温度を設定すれば、翌朝には手作りヨーグルトができています。
うちでは米麹の甘酒づくりにも活躍しています。米麹の甘酒はアルコールを含まない飲み物なので、家族みんなで楽しめるのもいいところです。発酵は「時間と温度」の仕事なので、まさに家電に預けるのにぴったりなんですね。
選ぶときは、家庭用と業務用を分けて考えてください。家族で食べる分なら、1リットル前後の家庭用サイズで十分です。まとめて仕込みたい方や、たくさん作りたい方は、大容量タイプという選択肢もありますよ。
手作りすると食べる量が自然と増えるご家庭が多いです。牛乳由来なので、乳アレルギーのある方への提供は避けてください。
保存のコツと食べ切りの目安は、ヨーグルトの保存記事で詳しく解説しています。
※温度設定できるタイプなら、ヨーグルトも甘酒も塩麹もこれ1台。発酵好きの入り口にどうぞ。
番外編・正直、ここからは私の本気こだわり枠です

ここまでの5台は、どのご家庭にもオススメできる相棒たちでした。ここからは正直に言うと、ほとんどの方は買わなくて大丈夫な、私の道具箱の奥の話です。
それでも書くのは、道具箱シリーズは「プロの台所の本当の中身」を見てもらう場所だからです。値は張りますが、どれも私が自分のお金で買って、心から良かったと思っている6点。読み物としてどうぞ🥢
| こだわり | 道具 | 何が変わるか |
|---|---|---|
| お米 | 象印 炎舞炊き(型落ち) | ごはんの味そのもの |
| オーブン | パナソニック ビストロ上位 | 高温とスチームの焼き |
| トースト | バルミューダ ザ・トースター | 蒸気で外カリ中ふわ |
| ソース | ブラウン マルチクイック7 | フライパンの中で乳化 |
| たこ焼き | イワタニ 炎たこII | ガス直火でプロの味 |
| 炙り | ガストーチバーナー | 香ばしさをひと塗り |
こだわり①炊飯器は象印の炎舞炊き(ごはんの味がいちばん変わった買い物)
私が使っているのは、象印の炎舞炊きNX-AA10-BZ。ひとつ前の型ですが、正直、家電の買い物でごはんの味がいちばん変わった1台です。
決め手は「わが家炊き」。前回のごはんの感想を答えるだけで炊き方を微調整してくれて、その組み合わせは121通り。固さと粘りを炊き分ける機能もあるので、うちの好みにどんどん寄っていくんです。
寿司職人はシャリに人生を懸ける仕事です。だからこそ言わせてください。普段のお米でも、炊き方でここまで味が変わるのかと驚きました。型落ちなら値段も落ち着いてくるので、狙い目ですよ。
高火力の炊飯器は、今までの癖で水を増やすとやわらかくなりすぎます。最初は目盛りどおりに炊いて、そこから「わが家炊き」で微調整するのが近道です。
シャリも家のごはんも、基本に忠実が一番の近道なんですよ。
※炎舞炊きシリーズの旗艦NX-AA型。わが家炊き121通りで、家のごはんが自分好みに育っていきます。
こだわり②パナソニックのビストロ(300℃とスチームでプロの焼き)
オーブンレンジはパナソニックのビストロ、上位モデルを使っています。理由はシンプルで、オーブンを300℃まで上げられて、スチームも使えるからです。
高温は、肉や魚の表面を一気に焼き固めて、中の水分を守ってくれます。スチームを合わせれば、パンはふっくら、茶碗蒸しはなめらか。お店の窯の仕事に近いことが、家の台所でできるんですね。
グラタンの焦げ目、鶏の丸焼き、ハード系のパン。「高温で一気に」が決め手の料理ほど、この1台の実力が出ますよ。
※ビストロの上位モデルはオーブン300℃+スチーム対応。高温の焼きとふっくら蒸しの二刀流です。
こだわり③バルミューダのトースター(水5ccの蒸気でカリッとふわっ)
トースターはバルミューダ ザ・トースター。給水口に5ccの水を入れてから焼くと、庫内に蒸気が回って、パンの表面を薄い水分の膜が包みます。
だから外はカリッと香ばしく、中の水分と香りは閉じ込めたまま。買ってきた食パンが、焼きたてに近い顔になるんです。蒸しながら焼く、という発想がもう料理人の仕事ですよね。
トーストだけでなく、クロワッサンの温め直しやお餅にも使えます。朝の1枚が変わると、一日の始まりがちょっと嬉しくなりますよ。
※5ccの水で蒸気焼きするスチームトースター。パン好きの朝が変わる1台です。
こだわり④ブラウンのマルチクイック7(フライパンの中で乳化まで)

ハンドブレンダーはブラウンのマルチクイック7。飛び散りを抑える設計で、鍋やフライパンの中に直接入れて使えるのが強みです。使うときは、必ず火からおろしてからにしてくださいね。
私の一番の使いどころは、アーリオオーリオ(にんにくとオリーブオイルのパスタ)の乳化です。弱火でにんにくの香りをじっくりオイルに移したら、火からおろしてパスタのゆで汁を加え、ブレンダーでさっと回す。ゆで汁のでんぷんとオイルがとろりと一体になって、麺に絡むソースになります。
この乳化ができると、ペペロンチーノ系のパスタは別物になります。ポタージュや離乳食、大根おろしまでこなす働き者ですよ。
オイルとゆで汁が分離したままだと、麺の上を油が滑るだけです。ソースがうっすら白く濁って、とろみが出たら乳化の合図。
ブレンダーなら数秒で決まります。詳しい黄金比はペペロンチーノの記事でどうぞ。
※握る力で速度が変わる直感操作。鍋の中で直接使えるので、洗い物が増えないのも嬉しい1本です。
こだわり⑤イワタニの炎たこII(ガス直火のたこ焼きは別物)
大阪人として、ここは譲れません。たこ焼きはイワタニのカセットガスたこ焼器、炎たこII(CB-ETK-2)で焼いています。
U字バーナーの直火がプレート全体にムラなく回るので、電気式より早く、外はカリッ、中はとろっと焼き上がります。プレートに切り溝が付いていて、まん丸の大玉が返しやすいのも職人心をくすぐるところです。
生地の配合や焼きの手順は、うちのたこ焼き記事で詳しく解説しています。ガスの火力で焼くたこ焼き、一度食べたら戻れませんよ。
※カセットガス直火の炎たこII。屋台と同じ「火で焼く」たこ焼きが、家の食卓でできます。
こだわり⑥ガストーチバーナー(炙りひとつで料理が一段上がる)

最後は道具箱の隠し玉、ガストーチバーナーです。炙りは香ばしさを後づけできる魔法のひと手間で、サーモン、〆さば、チーズ、プリンの表面まで、料理の顔が一段変わります。
鶏料理なら、粉や下味をつける前の、素材だけの状態で表面をさっと炙るのが私のやり方です。粉ごと炙ると焦げるだけなので、順番が大事なんですね。
使うときの約束は4つ。まわりに燃えやすい物を置かない、換気をする、耐熱バットの上で炙る、そして炙っただけでは中は生なので必ず加熱調理と組み合わせる。この4つを守れば、これほど頼れる相棒はいませんよ。
※カセットガスに付けるだけのトーチバーナー。炙りの香ばしさは、家庭料理のいちばん手軽なプロの技です。
高齢者や子供にやさしい調理家電の使い方

家電は便利な分、食卓との距離が近くなります。だからこそ、高齢の家族や子供と使うときの目配りを、現役介護士としてお伝えさせてください。
卓上の揚げ鍋やおでん鍋は、コードを人が通る側に垂らさないでください。引っかけての油や熱湯の事故がいちばん怖いです。
おでんのこんにゃく・白滝・ちくわは弾力が強く、消費者庁も注意喚起する窒息の要注意食材です。高齢の方や小さなお子さんには、あらかじめ小さく切って、食べている間はそばで見守ってください(消費者庁「子どもの窒息事故防止」参照)。
低温調理のサラダチキンも、やわらかいからと油断せず、繊維を断つように薄く切ってから。かむ力・飲み込む力に不安がある場合は、日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食学会分類2013」を基準に、必ず主治医・言語聴覚士(ST)・管理栄養士にご相談ください。
使うときに気をつけたいこと

買ってよかったと言い切るために、安全の話も正直に。3つだけ守ってください。
- 低温調理の鶏は中心が63℃になってから30分以上
温度が低いとカンピロバクター食中毒の危険があります
新鮮な鶏肉にも菌はついています。まれにギラン・バレー症候群という神経の病気につながることもあるので、必ず時間を守ってください。
大事なのは、これが「お湯の温度」ではなく「肉の中心の温度」だということ。お湯を63℃にしても、中心が63℃になるまでには時間がかかります。厚さ3cmほどの鶏むね肉なら、中心が63℃に届くまでおよそ1時間。そこから30分保つので、合計100分ほどが目安です。厚みや量、冷蔵庫から出したてかどうかでも変わるので、中心温度計を使うといちばん確実。迷ったら75℃1分でしっかり火を通してください。 - 揚げ鍋の油とコードの位置に注意
コードを引っかける事故がいちばん多い場面です
卓上で揚げるときは、鍋を食卓の中央に、コードは壁側に。小さな子の席から遠い位置に置いてください。 - 蒸気と熱い面のやけどに注意
ふたを開ける瞬間の蒸気は想像以上に熱いです
おでん鍋やヨーグルトメーカーのふたは、顔を近づけず、手前から奥へ開けるのが基本です。
調理家電のよくある質問
Q1. 最初の1台なら、どれを買えばいい?
ご家庭によりますが、家族で食卓を囲むなら卓上グリラー、仕込みの時短なら低温調理器がオススメです。「どの手間を預けたいか」で選ぶと失敗しませんよ。
Q2. 一人暮らしでも置き場所に困らない?
今回の5台なら、低温調理器は棒状で引き出しに収まります。グリラーやおでん鍋はサイズ展開があるので、「出しっぱなしにできる大きさ」を基準に小さめを選んでください。
Q3. 電気串揚げ鍋の油は使い回せる?
使えます。冷めてからこして、光を避けて保存してください。色が濃くなった、嫌な匂いがする、泡が消えにくい。この3つのどれかが出たら替えどきです。
Q4. ヨーグルトメーカーの甘酒は子供も飲める?
米麹から作る甘酒はアルコールを含まないので、子供も飲めます。酒粕から作るタイプはアルコールを含むため別ものです。作るときに原料を確かめてくださいね。
道具は、台所の相棒です

道具箱①の手道具は、腕を磨くための道具でした。家電はちょっと違って、時間を返してくれる道具だと思っています。
温度を見張る30分、発酵を待つ一晩。そこを家電に預けたぶん、私は家族と食卓に座る時間をもらいました。プロの台所も、家の台所も、道具に助けられて回っています。
手道具と家電、両方そろってフッくんの道具箱です。道具箱①とあわせて、あなたの台所の相棒を見つけてもらえたら嬉しいです🌸
まとめ。。。

- 家電選びの3原則
手間を預ける・出しっぱなしにできる・手入れがラク。この3つで選べば失敗しません。 - 本編5台の役割は「焼く・揚げる・煮る・ほったらかす・育てる」
役割がかぶらないから、どれも出番があります。 - 低温調理の鶏は中心63℃から30分以上
お湯でなく肉の中心の温度。3cm厚なら合計100分ほどが目安です。 - おでんの種は小さく切って見守る
こんにゃく・ちくわは高齢の方には噛み切りにくい種です。 - お米のこだわりは炎舞炊きの「わが家炊き」
感想に答えるだけで121通り。固さと粘りが自分の家の味に育ちます。 - ビストロ上位は300℃+スチーム
高温で一気に焼く料理ほど、実力が出ます。 - 乳化とガス直火はプロの近道
マルチクイック7でパスタソースを乳化、炎たこIIで屋台の焼き上がりに。 - 炙りの約束は4つ
燃えやすい物を置かない・換気・耐熱バット・炙りだけでは中は生。守れば頼れる相棒になります。
今夜の仕込み、どれか1つ、家電に預けてみませんか。空いた30分は、家族との食卓にどうぞ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
フッくんでした!








