料理研究家、料理大好きフッくんです。
寒い季節になると、台所に酒粕の甘い香りが立ちのぼる 🥢
でも、いざ作ってみると「酒粕がダマになって溶けない」「粕くさくて家族が食べてくれない」ということ、ありませんか?
正直に言うと、粕汁は工程が少ないぶん、ひとつのつまずきがそのまま椀に出る料理です。
こんなお悩み、ありませんか?
- 酒粕がダマになって溶けきらない
板粕をそのまま鍋に入れているのが原因です。順番を変えるだけで解決します。 - 粕くさくて、家族が箸をつけない
粕くささは「火加減」と「入れる順番」で消せます。酒粕の量の問題ではありません。 - 酒粕と味噌をどれくらい入れればいいか分からない
汁の量に対する割合で覚えると、鍋の大きさが変わっても迷いません。 - 子どもや運転する家族に出していいのか不安
ここは大事なところなので、独立した見出しで正直にお伝えします。
現役料理人20年、店でも家でも数えきれないほど粕汁を炊いてきました。その手順のまま、順番に書いていきますね。

粕汁の「ダマ・粕くさい」は、3つの理由でなくせる

結論から言いますね。粕汁のつまずきは、ほぼこの3つに集約されます。
①酒粕を、そのまま鍋に入れている
板粕は乾いた固形です。汁の中でいきなり溶かそうとすると、表面だけがふやけて芯が残り、ダマになります。
先にふやかす。これだけで9割は解決します。
②強火で、ぐらぐら煮立てている
酒粕も味噌も、煮立てると香りが飛びます。しかも沸騰させると汁がざらついて、口当たりが粗くなるんですね。
粕汁は、鍋肌がふつふつする手前で止める料理です。
③味噌を先に入れている
味噌が先だと、あとから入れた酒粕の粗い香りが残ります。酒粕を先に入れて弱火で5分ほど、そのあとに味噌。この順番が、粕くささを消す一番の近道です。
粕汁ってどこの料理?酒どころが生んだ冬の汁物

粕汁は、酒蔵のある土地で生まれた家庭料理です。
日本酒は冬に仕込みます。新酒を搾ると酒粕が出るので、酒粕が手に入るのは、ちょうど冬から春先にかけて。粕汁が冬の料理として親しまれてきたのは、そういう理由なんですよね。
関西では、冬の食卓にごく当たり前に並びます。大阪では塩鮭を入れる家が多く、京都や北陸ではぶりのあらを使うことも。同じ粕汁でも、土地によって椀の中身が違います。
具は、大根・にんじん・こんにゃく・油揚げ・ごぼう・里芋。豚汁とよく似た顔ぶれですが、主役が味噌ではなく酒粕であるところが違いです。
ちなみに豚汁にも酒粕を落とす作り方がありますが、あちらはあくまで寄り道のアレンジ。粕汁は、酒粕が主役の一椀です。
酒粕の種類と選び方(板粕・バラ粕・練り粕)

スーパーの棚に並ぶ酒粕は、だいたいこの3種類です。
| 種類 | 形 | 溶けやすさ | 向いている使い方 |
|---|---|---|---|
| 板粕 | 板状に切られている | ふやかせば問題なし | いちばん手に入りやすい。粕汁の基本 |
| バラ粕 | 崩れた粒状 | 溶けやすい | 時間がないとき。量の調整もしやすい |
| 練り粕 | ペースト状 | そのまま溶ける | 甘みとコクが強い。少量で満足感が出る |
| 吟醸粕 | 板・バラどちらも | 種類による | 香りが華やか。汁物より甘酒や漬け床向き |
迷ったら板粕で大丈夫です。ふやかす手間さえかければ、味は変わりません。
選ぶときは、白っぽくてしっとりしているものを。黄色く変色して硬くなったものは、香りが重くなっています。
酒粕は100gあたり約215kcal・たんぱく質約14.9g・食物繊維約5.2gを含みます。
数字だけ見ると重そうですが、粕汁1杯に使う酒粕は25gほど。エネルギーにすると約54kcalです。
汁全体では、具材と味噌を合わせて1杯150〜200kcalが目安になります。根菜と油揚げ、鮭が入るので、汁物としては食べ応えのある一杯ですね。
※文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」を参考にした概算値です。
粕汁の基本の作り方(材料と5工程)

4人分の材料です。特別なものはひとつもありません。
- だし 800ml
かつお昆布だしが基本。顆粒でも十分です。 - 酒粕 100g
板粕なら小さくちぎっておきます。 - 味噌 大さじ2(約36g)
白味噌でも合わせ味噌でも。関西では白味噌が多いです。 - 塩鮭 2切れ
甘塩を一口大に。ぶりのあらや豚バラでも作れます。 - 大根 1/4本・にんじん 1/2本・ごぼう 1/2本・こんにゃく 1/2枚・油揚げ 1枚・長ねぎ 1/2本
大根とにんじんはいちょう切り、ごぼうは薄いささがき、こんにゃくは薄い短冊に、長ねぎは小口切りに。
①酒粕を、だしでふやかす
いちばん最初にやります。ちぎった酒粕を器に入れ、温かいだしを200mlほど注いで30分。放っておくだけです。
時間がないときは、器ごと電子レンジで600W20〜30秒ほど温めると、ふっくらしてほぐしやすくなります。
②根菜を切って、だしで炊く
鍋に残りのだしと、大根・にんじん・ごぼう・こんにゃくを入れて中火に。煮立ったらアクをすくって、弱めの中火で10分ほど。
大根に竹串がすっと通れば大丈夫です。
③塩鮭と油揚げを加える
塩鮭は一口大に切って、ここで投入。5分ほど煮て、身が白くなり、骨から外れる状態まで火を通します。
油揚げは油抜きして短冊に。汁を吸ってくれるので、粕汁とはとても相性がいいです。
④ふやかした酒粕を溶き入れて、弱火で5分
ここが一番の勘所です。ふやかした酒粕を泡立て器でなめらかにしてから、鍋に溶き入れます。
そして弱火のまま5分ほど、静かに煮ます。この5分で粗い香りが抜けて、酒粕の甘みだけが残ります。
⑤味噌を溶いて、沸かさずに火を止める
最後に味噌を溶き入れます。ここからは絶対に煮立てません。
鍋肌がふつふつしてきたら、長ねぎを散らして火を止めます。ふたをして2〜3分おくと、味がなじみます。
酒粕と味噌の黄金比

分量を覚えるコツは、グラム数ではなく「汁の量に対する割合」で持っておくことです。
- 酒粕は、汁の量の10〜15%
だし800mlなら酒粕80〜120g。標準は100gです。 - 酒粕と味噌は、およそ3対1
酒粕100gなら味噌大さじ2(約36g)。味噌が多いと酒粕の甘みが隠れます。 - こっくりさせたいなら酒粕を120gへ
寒い日や、体を使ったあとの食卓に。とろみも強く出ます。 - あっさりさせたいなら酒粕を80gへ
初めて食べるご家族がいるときは、こちらから始めるのがオススメですよね。
塩鮭を使うときは、鮭の塩気が汁に出ます。味噌は先に大さじ1だけ入れて、味を見てから足すと、しょっぱくなりません。
酒粕を入れてからは、沸騰させないこと。これが店でも家でも同じ、たったひとつの決まりです。
目で見る合図は、鍋肌に小さな泡が並んで、真ん中がゆらりと動くくらい。だいたい85℃前後で、ぐらぐらとは煮えていません。
若い頃、まかないの粕汁を沸かしてしまって、親方に言われたことがあります。「粕は煮るもんやない、温めるもんや」。
沸かすと香りが上に逃げて、汁だけが残ります。せっかくの酒粕が、ただの白い汁になってしまうんですよね。
だから私は、酒粕を入れたら火を弱める。この一手だけ、体で覚えてしまっています。
酒粕の溶き方3通り

ダマをなくす方法は3つあります。ご家庭の道具に合わせて選んでくださいね。
①だしでふやかす(いちばん確実)
小さくちぎった酒粕に、温かいだしを注いで30分。泡立て器でなめらかにしてから鍋へ。
道具がいらず、失敗もほぼありません。迷ったらこれで大丈夫です。
②すり鉢で当たる(いちばんなめらか)
ふやかした酒粕をすり鉢に入れ、すりこぎで当たります。口当たりが絹のようになるので、店ではこの方法でした。
お客様に出す一椀や、飲み込みに不安のあるご家族に出すときは、ひと手間かける価値があります。
③ミキサーにかける(いちばん早い)
酒粕とだしをミキサーに入れて回すだけ。30秒で完全に均一になります。
ただし空回りしやすいので、だしは酒粕がしっかり浸る量を入れてください。
こんにゃくは「手でちぎる」
粕汁のこんにゃくは、包丁で切るより手でちぎったほうが味がよく入ります。
断面がでこぼこになるぶん、表面積が増えて、汁を抱えてくれるからですね。スプーンの先でえぐるように、ひと口大にちぎってください。
下ゆでもひと手間かけます。塩をふって軽くもみ、熱湯で2分。こんにゃく独特のにおいが抜けて、酒粕の香りを邪魔しません。
油揚げも同じで、熱湯を回しかけて油を落としてから。粕汁は主役の香りが繊細なので、脇の材料のクセを先に外しておくと、椀の中がすっきりまとまります。
よくある失敗と対策
ここまでの内容を、失敗のかたちから逆引きできるようにまとめます。
- ダマが残る
ふやかさずに鍋へ入れたのが原因です。すでにダマになったら、お玉ですくって少量の汁と練ってから戻してください。 - 粕くさい・アルコールの香りが立つ
酒粕を入れたあとの加熱が足りていません。弱火で5〜10分、静かに煮てください。味噌はそのあとです。 - 汁がざらつく・分離する
煮立てすぎです。沸騰させると酒粕のたんぱく質が固まって、口当たりが粗くなります。温め直しも同じです。 - 味がぼやける
だしが弱いか、酒粕が少なすぎます。味噌を足す前に、まずだしと酒粕の量を見直してください。 - えぐみ・苦みがある
根菜のアクが残っています。煮立ちはじめの泡を、ていねいにすくってください。ごぼうは水にさらしてから使います。
お子さん・運転される方へ。アルコールのこと

ここは、はっきり書いておきます。
酒粕にはアルコール分が残っています。一般に8%前後とされていて、加熱すればある程度は飛びますが、家庭の鍋で完全にゼロになるわけではありません。
そして厄介なことに、どれくらい飛んだかは、見た目でも香りでも分かりません。
ですので、次の方には粕汁をおすすめしません。
- これから運転する方
量や体質によっては影響が出ます。食後に車を使う日は避けてください。 - 妊娠中・授乳中の方
不安がある場合は、酒粕を入れる前に取り分けてください。 - お酒に弱い方・アルコールを控えている方
お薬を飲んでいる方も同じです。かかりつけの先生に確認してくださいね。 - 小さなお子さん
1歳未満には出しません。それ以上のお子さんも、心配なら別鍋にしてください。
いちばん確実なのは、酒粕を入れる前に、鍋から人数分を取り分けておくことです。具は同じ、味噌汁として仕上げれば、同じ食卓を囲めます。
これは家でも店でも、私がずっとやってきたやり方です。粕汁は家族みんなで囲む料理だからこそ、先に分けておくと、誰も我慢しなくてすみますよね。
保存と温め直し(2日目がおいしい理由)
粕汁は、翌日のほうが味がなじみます。根菜に汁が入って、酒粕の角が取れるからですね。
ただ、多めに作るなら線を引いておいてください。
粕汁は「冷ます時間」がいちばん危ない
粗熱は30分以内に取ります。鍋のまま台に置かず、浅い容器に移して広げてください。ゆっくり冷めていくあいだが、いちばん傷みやすい時間です。
冷蔵は2〜3日。食べる前に、中心まで湯気が立つまで温めます。75℃で1分以上が目安ですが、ぐらぐら沸かす必要はありません。むしろ沸かすと香りが飛びます。
冷凍は、具を選びます。大根・じゃがいも・こんにゃくは冷凍に向きません。大根はスカスカに、こんにゃくはゴムのようになります。
冷凍するなら、汁とにんじん・鮭・油揚げだけを取り分けて3週間まで。食べるときに大根を新しく炊いて合わせると、作りたてに近い一椀になります。
一度解凍したものを、また凍らせるのは避けてください。
それと、冷めると表面に脂が浮きます。すくって取り除いてから温め直すと、2日目の粕汁はぐっと軽く食べられます。冷ますのは待ち時間ではなく、仕事なんですよね。
高齢者や子供にやさしい粕汁

粕汁は、汁物のなかでは飲み込みやすい部類に入ります。酒粕に自然なとろみがあるからですね。
ただし、具のほうに気をつけたいところがあります。
高齢のご家族に出すとき
いちばん大事なのは骨です。塩鮭やぶりのあらは、必ず取り除いてから椀によそいます。やわらかく煮えても、骨は骨のままです。
こんにゃくは弾力があって噛み切りにくいので、薄く小さく。ごぼうは繊維が残るので、うんと薄いささがきにします。
お子さんに出すとき
アルコールのことは、前の見出しでお伝えしたとおりです。酒粕を入れる前に取り分けるのが、いちばん安心ですよね。
里芋のような、丸くてつるんとしたものは小さく切ってから。豆やナッツ、丸い形のものを5歳ごろまで丸ごと出さないのは、消費者庁が示している線です。
味噌大さじ2(約36g)の食塩相当量は、およそ4.4g。4人で分ければ1杯あたり約1.1gです。
ここに塩鮭が加わるので、1杯で2g前後になることもあります。食塩相当量の目標量は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で成人男性7.5g未満・成人女性6.5g未満/日です。
粕汁が並ぶ日は、ほかのおかずを薄味に。それだけで1日の帳尻は合います。
甘塩の鮭を選ぶ、味噌を大さじ1半に減らして酒粕を少し増やす、という調整もできますよ。
なお、塩分や糖分の指示を受けている方は、かかりつけの先生の指示を優先してくださいね。
私は現役介護士でもあります。
汁物は、水分と具がばらばらになって、むせるきっかけになりやすい料理です。その点、粕汁は酒粕のおかげで最初からとろみがあり、ひと口がまとまります。
それでも、具の大きさは別問題です。根菜は5mmほどの薄いいちょう切りにして、指でつぶせるまで煮てください。こんにゃくと油揚げは、ごく小さく刻みます。
骨は、よそう前に必ず確認します。汁の中は見えにくいので、一度ざるにあけて具だけを見るくらいで、ちょうどいいです。
アルコールが気になる方には、酒粕を入れる前に取り分けたぶんを。お薬を飲んでいる方は、かかりつけの先生に一度うかがってください。
それでも難しい日には、酒粕をやめて、すりおろした里芋でとろみをつける手もあります。粕汁を、里芋のとろみ汁に置き換える日があっていいと思っています。
粕汁の作り方でよくある質問
Q1.酒粕は4人分でどのくらい入れますか?
だし800mlに対して100gが標準です。汁の量の10〜15%と覚えておくと、鍋の大きさが変わっても迷いません。
こっくりさせたいなら120g、あっさりなら80gに振ってくださいね。
Q2.板粕とバラ粕、どちらがいいですか?
味はほとんど変わりません。ふやかす手間を省きたいならバラ粕、手に入りやすさなら板粕です。
練り粕は溶かす手間がなく、甘みも強いので、忙しい日には便利ですよ。
Q3.酒粕がダマになるのはなぜですか?
ふやかさずに鍋へ入れたからです。板粕は表面だけが先に溶けて、芯が残ります。
温かいだしで30分ふやかすか、すり鉢かミキサーでなめらかにしてから入れてください。
Q4.子どもや、これから運転する家族も食べられますか?
酒粕にはアルコール分が残るので、おすすめしません。1歳未満のお子さんには出さないでください。
同じ食卓を囲むなら、酒粕を入れる前に人数分を取り分けて、味噌汁として仕上げるのが確実です。
Q5.作り置きや冷凍はできますか?
できます。粗熱を30分以内に取って、冷蔵2〜3日。温め直しは中心まで湯気が立つまで(75℃で1分以上が目安)、ただし沸かさないでください。
冷凍は具を選びます。大根・じゃがいも・こんにゃくは向かないので、汁と鮭・にんじん・油揚げだけを3週間まで。再冷凍は避けてくださいね。
まとめ。。。

粕汁の作り方を、最後にもう一度まとめますね。
- 酒粕は、必ずふやかしてから溶く
温かいだしで30分。これだけでダマは消えます。 - 酒粕が先、味噌はあと
酒粕を入れて弱火で5分。粕くささはこの5分で抜けます。 - 入れたら煮立てない
鍋肌がふつふつする手前、85℃前後で止めます。 - 黄金比は、汁の10〜15%が酒粕
だし800ml・酒粕100g・味噌大さじ2。酒粕と味噌は3対1です。 - 塩鮭の塩気を計算に入れる
味噌は半量から。味を見てから足してください。 - 取り分けは、酒粕を入れる前に
お子さんや運転する家族がいる日は、ここで分けておけば全員で囲めます。 - 粗熱30分・冷蔵2〜3日・温め直しは沸かさず
2日目のほうが味はなじみます。冷凍は具を選んでください。 - 骨は必ず取ってからよそう
高齢のご家族とお子さんには、ここを最優先で。
粕汁って、材料は地味なのに、ふたを開けた瞬間の香りだけで台所の空気が変わる料理なんですよね。
私が修業していた頃、まかないで粕汁が出る日は、みんな少しだけ手が早くなりました。冷えた指先で仕込みをして、あの一椀にたどり着く。そういう記憶と結びついている料理です。
今年の冬は、ぜひご家庭でも炊いてみてください。ふやかして、弱火で5分、沸かさない。それだけです。
フッくんでした!
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