料理研究家、料理大好きフッくんです。
おせちの三つ肴のひとつ、田作り。
小さないわしを炒って、甘辛い飴を絡めるだけ。材料も工程も少ないのに、「苦い」「くっついて団子になる」「翌日にはしけていた」と、失敗の相談が多い一品です。
実は、田作りの出来は「炒り」と「飴の止めどき」の二つでほぼ決まります。お店では、この二つを耳と手で覚えました。

- 苦くて生臭い
炒りが足りないか、焦がしたか。「ポキッと折れる音」が合図です。 - 飴がくっついて団子になる
煮詰めすぎと、絡めるタイミングが原因。泡の大きさで見極めます。 - 飴の比率が毎年決まらない
砂糖3:しょうゆ1:みりん1:酒1。ごまめの量別の早見表を出します。 - 翌日にはしける・いつ作ればいい?
冷ましてから密閉。29日に作って31日に詰める。しけたら炒り直せます。 - 子どもや高齢の家族にも出したい
硬さとのどの線を、栄養士×現役介護士の視点で添えました。
田作りはどこ生まれ?いわしが田んぼを育てた話

作り方の前に、ルーツを少しだけ。
田作りの名前は、昔、いわしを田んぼの肥料にしていたことに由来します。いわしをまいた田は米がよく実ったので、田作りは「今年も豊作でありますように」という願いを込めた縁起物になりました。
別名の「ごまめ」は「五万米」と書き、これも豊作の意味。関東では黒豆・数の子・田作りを「三つ肴」と呼び、この三品がそろえば正月の膳が整うとされてきました。
お店では、田作りは仕込みの最初に炒っておく品でした。冷めて乾く時間が必要だからです。おせちの中で、いちばん早く作って、いちばん最後まで残る一品なんですよね🐟
ごまめの選び方:3〜4cm、銀色に光るもの

田作りに使うのは、カタクチイワシの幼魚を乾燥させた「ごまめ」。袋に「田作り用」「ごまめ」と書いてあるものを選びます。
大きさは3〜4cm
小さすぎると炒ったときに焦げやすく、大きすぎると苦味と生臭さが出ます。3〜4cmが、炒りやすく、飴がきれいに絡む大きさです。
銀色に光り、腹が割れていないもの
表面が銀色に光っているのは、乾燥が良く、酸化が進んでいない証拠。黄ばんでいるものや、腹が割れて折れているものが多い袋は避けてください。折れたものは飴で団子になりやすいんです。
煮干しでは代用しない
だし用の煮干しは大きく、頭と腹わたの苦味が強いので、田作りには向きません。どうしてもなら小さいものを選び、頭と腹わたを取ってから炒ってください。
炒り方:カリッとの正体は「水分を抜く」こと

田作りがカリッとするか、しけるかは、ここで決まります。
ごまめは乾物ですが、袋の中で少し湿気を吸っています。それを炒って飛ばすと、カリッとした食感と香ばしさが出て、苦味と生臭さも消えます。炒りは味付けではなく、水分を抜く工程だと思ってください。
①フライパン:油をひかず、弱火で8〜10分
フライパンにごまめを入れ、油をひかずに弱火にかけます。木べらで絶えず動かしながら8〜10分。焦げ色をつけるのではなく、香ばしい匂いが立って、手に取ると熱く乾いた感じになれば近いです。
②電子レンジ:600Wで2分、その後1分ずつ
耐熱皿に重ならないように広げ、ラップをせず600Wで2分。混ぜて、様子を見ながら1分ずつ追加します。合計3〜4分が目安。焦げやすいので、最後は30秒刻みで。
合図は「ポキッ」と折れる音
1尾取って、指で折ってみてください。ポキッと乾いた音で折れれば炒り上がり。曲がる、しなるなら、まだ水分が残っています。炒ったら、バットに広げて完全に冷まします。熱いうちに飴に入れると、蒸気で飴がゆるみます。
若い頃、ごまめの炒り具合を色で判断して、焦がしたり生っぽかったりを繰り返していました🍳
親方に言われたのは「ごまめは目やない、耳で炒れ」。炒り始めはフライパンの上でしんとしていますが、水分が抜けてくると、ごまめ同士がぶつかる音が「カサカサ」から「カラカラ」と乾いた音に変わります。
その音が聞こえたら、1尾折って確かめる。音が変わる、折って鳴る、この二段で判断するのがお店の炒り方です。
色はあとからついてきます。色を待つと、必ず焦げます。
飴の黄金比:砂糖3:しょうゆ1:みりん1:酒1

お店の飴は、砂糖3:しょうゆ1:みりん1:酒1(容量)。甘さが立って、しょうゆの香りが後から追う配合です。
| ごまめ | 砂糖 | しょうゆ | みりん | 酒 | 仕上げ |
|---|---|---|---|---|---|
| 50g(4〜5人分) | 大さじ3 | 大さじ1 | 大さじ1 | 大さじ1 | 白ごま小さじ1 |
| 100g(8〜10人分) | 大さじ6 | 大さじ2 | 大さじ2 | 大さじ2 | 白ごま小さじ2 |
※砂糖はキビ糖でも同量です。私はお店でもキビ糖派で、飴の色が一段深くなります。はちみつを加えるレシピもありますが、1歳未満のお子さんがいる家では使わないでください。
煮詰めの止めどきは「泡が小さくなったとき」
飴の煮詰めには三つの段階があります。大きな泡がぶくぶく立つ段階、泡が小さく細かくそろう段階、そしてヘラで底をなぞると跡が残る段階。田作りの止めどきは、真ん中の「小さな泡」です。最後の段階まで行くと、冷めたときにカチカチに固まります。
飴の材料を小さめのフライパンに入れ、中火にかけます。最初は大きな泡がぶくぶくと立ち、1〜2分で泡が小さく細かくなってきます。泡が小さくなった瞬間が止めどき。ここで火を止めて、冷めたごまめを一気に入れて絡めます。
泡が小さくなってからさらに煮ると、ヘラの跡が残るほど濃くなり、絡めた瞬間に固まって団子になります。逆に泡が大きいうちは水分が多く、絡めてもベタつきます。

お店の田作りのレシピ

~材料(4〜5人分)~
・ごまめ(田作り用)…50g
【飴】
・キビ糖(または砂糖)…大さじ3
・しょうゆ…大さじ1
・みりん…大さじ1
・酒…大さじ1
【仕上げ】
・白いりごま…小さじ1
~作り方~
①ごまめをフライパンに入れ、油をひかず弱火で8〜10分、木べらで動かしながら炒る(レンジなら600Wで2分+1分ずつ)
②1尾折ってポキッと乾いた音がしたら、バットに広げて完全に冷ます
③小さめのフライパンに飴の材料を入れ、中火にかける。大きな泡が小さく細かくなったら火を止める
④火を止めたまま、冷ましたごまめを一気に入れ、手早く全体に絡める
⑤クッキングシートを敷いたバットに、重ならないように広げる。白ごまをふる
⑥完全に冷めたら、手でほぐして完成。密閉容器に乾燥剤と一緒に入れて保存する
ポイントは④の「火を止めてから絡める」です。火をつけたまま絡めると、飴がどんどん煮詰まって、ごまめが固まりになります。火を止め、余熱で絡める。それでも間に合わないくらい飴が固まるなら、煮詰めすぎのサインです。
飴はとても熱いので、絡めるときに手で触らないでください。木べらで。ほぐすのは、完全に冷めてからです。

失敗と対策:田作りでよくある3つ

お店で新人に教えるときも、失敗はこの3つに集まります。
- 苦い・生臭い
原因は炒り不足か、焦がしたか、ごまめが大きすぎたか
生臭いのは水分が残っている。苦いのは焦げている。どちらも「ポキッ」の合図を待たずに次へ進んだときに起きます。できてしまった分は、飴を絡める前なら炒り直しで直ります。絡めた後の苦味は戻らないので、次回は3〜4cmのごまめを弱火で。 - くっついて団子になる
原因は飴の煮詰めすぎか、火をつけたまま絡めたか、広げずに冷ましたか
泡が小さくなったら止める、火を止めてから絡める、シートに広げて冷ます。この三つのどれかが抜けています。固まってしまった分は、耐熱皿に広げて600Wで20〜30秒温めると飴がゆるむので、そこでほぐし直してください。 - 翌日にはしけてしまう
原因は冷めきる前に容器に入れたか、密閉が甘いか
田作りは湿気を吸いやすい食べ物です。完全に冷めてから、乾燥剤と一緒に密閉容器へ。しけたら、フライパンで弱火にかけて1〜2分、飴がゆるんだところで広げて冷ませば、カリッと戻りますよ。
日持ちと保存:冷蔵で1〜2週間、29日に作って31日に詰める

田作りは、おせちの中でも日持ちがする部類です。乾物を炒って、砂糖の多い飴で固めているからです。
完全に冷めたら、清潔な密閉容器に乾燥剤と一緒に入れて、冷蔵庫で1〜2週間が目安。取り出すときは清潔な箸で、湿気を持ち込まないように。
乾燥剤は、海苔やお菓子の袋に入っている食品用のものでかまいません。お店では、乾燥剤がない日は、容器の底にキッチンペーパーを一枚敷いて代わりにしていました。湿気を先に吸ってくれるので、田作りの乾きが保てますよ。
お店の型は「29日に炒って絡め、30日に乾かし、31日に詰める」。おせちの中で最初に作って、三が日の最後まで残せる一品です。
常温に置きっぱなしにしない
暖房の効いた部屋に出しっぱなしにすると、飴が湿気を吸ってベタつき、日持ちも短くなります。重箱に詰めたら、食事のあいだだけ出して、残りは重箱ごと冷蔵庫へ。三が日は「出す・戻す」が、田作りにも当てはまります。
冷凍は向きません
冷凍すると、解凍したときに水分で飴がゆるんで、カリッと感が戻りません。田作りは冷凍ではなく、冷蔵で使い切る量を作るのがオススメです。
お店の田作りは、絡めた翌日に詰めます🍳
絡めてすぐは、飴の中にまだ水分が残っていて、表面がしっとりしています。クッキングシートの上で一晩、風に当てて乾かすと、飴が締まって、噛んだときにパリッと割れる食感になります。
乾かす場所は、冷蔵庫の中でも構いません。ラップをせず、バットのまま入れてください。翌日、指でつまんでくっつかず、一尾ずつ離れるのが仕上がりの合図です。
おせちの作業日程に、田作りの「乾かす日」を一日入れておくと、31日に慌てませんよ。
栄養士から見た田作り:小さな魚を骨ごと、カルシウムの一品

八訂の成分表では、田作り(かたくちいわし)は100gで336kcal・たんぱく質66.6g・脂質5.7g・カルシウム2500mg🥢
1人前はごまめ10gほどなので、飴を含めて約60kcal、カルシウムは250mg前後。小さな一皿ですが、骨ごと食べる魚ならではの数字です。
飴の砂糖は1人前で5g前後、食塩相当量はしょうゆとごまめの分で0.5g前後が目安。甘さを控えたい日は砂糖を2割減らし、そのぶんみりんを少し増やすと照りは保てます。
厚生労働省の食塩目標量(2025年版・成人男性7.5g・女性6.5g未満/日)の中では小さな一品ですが、おせちは全体で塩分が積み上がるので、田作りは「少量をゆっくり」が合っています。塩分や糖分の指示を受けている方は、かかりつけの先生の指示を優先してくださいね。
田作りは、ごまめ(魚)・しょうゆ(小麦・大豆)・白ごま(ごま)を使います🥢
ご家族やお客様に出すときは、この料理に使う特定原材料を確かめておくと安心です。ごまは仕上げに振るだけなので、外しても味は成り立ちます。
高齢者や子供にやさしい田作り

私は栄養士で、現役の介護士でもあります。
田作りは、硬く、小骨があり、飴で歯にくっつく食べ物です。小さなお子さんには、5歳ごろまでは丸ごと出さないでください。カリッとしていても、小魚の形のまま口に入ると、のどに引っかかりやすいからです。すり鉢やフードプロセッサーで細かく砕いて、ごはんにかける「田作りふりかけ」にすると、同じ味を安全に楽しめます。
2歳以下のお子さんには、飴を絡める前の炒ったごまめを細かく砕いて、ごく少量から。飴の甘さと硬さは、まだ早いです。
高齢の方には、噛む力と入れ歯の具合に合わせて。飴が歯につきやすいので、砕いてふりかけにするか、飴を薄めに絡めて少量を。飲み込みが弱い方には、砕いた田作りをおかゆやとろみのあるあんに混ぜる形が安心です。
硬さがどうしても合わない方には、田作りの飴で煮た「いわしの甘露煮風」に置き換える日があっていいんです。
田作りの作り方でよくある質問
Q1.ごまめの頭や腹わたは取ったほうがいい?
田作り用の3〜4cmのごまめなら、取らずにそのまま使います。苦味は炒りで飛びます。5cmを超える大きなものや煮干しを使うときだけ、頭と腹わたを取ってください。
Q2.電子レンジだけで作れる?
炒りはレンジで問題ありません。600Wで2分、その後1分ずつ、ポキッと折れるまで。飴だけはフライパンで煮詰めてください。レンジの飴は泡の変化が見えず、止めどきが分かりません。
Q3.くるみやアーモンドを入れてもいい?
入れると香ばしさが増して、おつまみにも向きます。ナッツは別に炒っておき、飴を絡めるときにごまめと一緒に入れてください。ただしナッツも硬い丸い食べ物なので、5歳ごろまでのお子さんには丸ごと出さないでください。
Q4.飴がベタベタして固まらない
煮詰めが足りていません。泡がまだ大きいうちに火を止めると、水分が多くてベタつきます。その場合は、ごまめを入れる前の飴をもう30秒ほど煮て、泡が細かくなるのを待ってください。
Q5.いつ作るのがいい?
おせちの中では最初に。29日に炒って絡め、30日に乾かし、31日に詰めれば、三が日の最後までカリッとしています。冷蔵で1〜2週間持つので、12月の半ばに作っておいても大丈夫です。
Q6.しけてしまった田作りは戻せる?
戻せます。フライパンに広げて弱火で1〜2分、飴がゆるんで香りが立ったら、クッキングシートに広げて冷ましてください。カリッと戻ります。レンジなら600Wで20〜30秒でも同じです。
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まとめ。。。

- ごまめは3〜4cm、銀色に光るもの
煮干しでは代用しない。 - 炒りは「水分を抜く」工程
油なし弱火8〜10分、またはレンジ600W。音が変わったら1尾折る。 - 合図はポキッと折れる音
曲がるならまだ。炒ったら完全に冷ます。 - 飴は砂糖3:しょうゆ1:みりん1:酒1
ごまめ50gに大さじ3・1・1・1。 - 止めどきは泡が小さくなった瞬間
火を止めてから、冷ましたごまめを一気に絡める。 - 広げて冷まし、一日乾かす
くっつかず一尾ずつ離れたら仕上がり。 - 冷蔵1〜2週間・乾燥剤と密閉
しけたら炒り直せる。冷凍は向かない。 - 5歳ごろまでは丸ごと出さない
砕いてふりかけに。高齢の方も硬さと飴に注意。
皆さん、田作り、今年は「音」で作ってみたくなりましたか?
炒りの音、飴の泡。田作りは、目で見るより、耳と手で判断する料理です。お店で親方に「耳で炒れ」と言われた日から、私の田作りは失敗しなくなりました。
おせちの最初の一品を、カリッと、ぴかぴかに🌸
最後までお読みいただきありがとうございました。フッくんでした!





