料理研究家、料理大好きフッくんです。
お正月は、家族みんなで新しい年を祝う、一年で一番おめでたい行事ですよね。お雑煮におせち、晴れやかなごちそうが並びます。ただ——正直に言うと、お正月は一年で最もお餅の窒息事故が起きる季節でもあります。毎年、ご高齢の方の痛ましいニュースが繰り返されています。
「おじいちゃんおばあちゃんにも、お正月のごちそうを食べさせてあげたい」——ご家族はそう願い、「ご利用者様にも、お正月の特別な一膳を食べて頂きたい」——私たち介護の現場も同じ気持ちです。だからこそ、お正月のお祝いは「安全」を一番に考えたいのです。
今回は、お正月のごちそうを嚥下(えんげ)に配慮してやわらかく仕立てた献立を7選、栄養士・現役介護士の視点でご紹介します。主役は、もちろんお餅を使わない安全なお雑煮です。
- お餅を使わない安全なお雑煮
上新粉のやわらか団子・大根もち・豆腐で、お雑煮の気持ちはそのままに危険だけを取り除きます - おせちをやわらか・薄味に作り直す
伊達巻・栗きんとん・鰤の煮物など縁起物を嚥下に配慮した形で - UDF×嚥下調整食分類2013の早見表
ご家族の状態に合わせて選べます - お正月に避けたいNG食材も分かる
お餅・数の子・球状の食材の落とし穴を解説します
ぜひ最後までご覧くださいね🌸
お正月の介護食の基本

お正月のごちそうは華やかですが、ご高齢の方と囲むなら「安全」と「お祝いの気持ち」の両立が何より大切です。特にお餅には、毎年細心の注意が必要です。
- お餅は提供せず、必ず代替を
もち米のお餅は喉に貼りつきやすく、ご高齢の方には窒息のリスクが非常に高い食材です。上新粉の団子・大根もち・豆腐・葛などで安全に置き換えます - おせちは「濃い味・硬い」を作り直す
おせちはもともと日持ちのため味が濃く硬いものが多いので、薄味でやわらかく仕立て直すのが介護食のコツです - 紅白・松竹梅でお祝い感を
紅白かまぼこ風や金団の彩りを添えるだけで、いつもの介護食がぐっとお正月らしくなります
お正月は、新年を祝う気持ちを大切にしながら、ご本人の体調にやさしい一膳にしたいですね🍵
お正月の介護食献立7選

お正月らしい縁起のよい料理を、嚥下に配慮してやわらか仕立てにした7品です。
- ①餅なしお雑煮
お正月の主役。上新粉のやわらか団子や大根もち、豆腐で、もち米を使わず安全に。だしを効かせてやさしい味わいに - ②やわらか伊達巻
「知識が増える」縁起物。卵をふんわり焼き、しっとりやわらかく仕立てます - ③なめらか栗きんとん
「金運」を願うおせちの定番。さつまいもを裏ごししてなめらかに、嚥下にやさしく - ④しっとりやわらか黒豆
「まめに健康に過ごせるように」の願い。時間をかけてふっくらやわらかく煮ます - ⑤紅白なます風
「紅白でめでたい」彩り。大根とにんじんをやわらかく甘酢で煮て、口当たりやさしく - ⑥鰤(ぶり)のやわらか煮あんかけ
「出世魚」の縁起物。骨をていねいに抜き、中心までしっかり煮て、銀あんでしっとりと - ⑦花びら餅風の和菓子
お餅は使わず、上新粉のやわらか生地やういろう・羊羹で。新年のお祝いの甘味を安全に
UDF×嚥下調整食分類2013 早見表

ご家族やご利用者様の状態に合わせて、かたさ・とろみを選びましょう。市販の介護食でおなじみのUDF区分と、医療・介護現場で使われる嚥下調整食分類2013の対応の目安です。
| UDF区分 | 嚥下調整食分類2013 | かたさの目安・この献立での例 |
|---|---|---|
| UDF区分1(容易にかめる) | コード4 | かたい・大きいものはやや苦手な方に。鰤のやわらか煮・紅白なます風 |
| UDF区分2(歯ぐきでつぶせる) | コード3 | 歯ぐきでつぶせるかたさ。やわらか伊達巻・黒豆・お雑煮の団子 |
| UDF区分3(舌でつぶせる) | コード2-2 | 舌でつぶせるなめらかさ。なめらか栗きんとん・花びら餅風 |
| UDF区分4(かまなくてよい) | コード2-1 | かまずに食べられる均質なもの。お雑煮の汁物・裏ごしきんとん |
UDF区分に該当しないコード1j・0j・0t(ゼリー状・とろみ水など)は、より配慮が必要な段階です。状態に迷う場合は、かかりつけ医や言語聴覚士など専門職にご相談ください。
お正月の介護食 献立例
栄養バランスを考えたお正月膳の献立例を2パターンご用意しました。お祝いらしさを大切にしつつ、たんぱく質やビタミンも意識しています。
①軟飯
②餅なしお雑煮
③やわらか伊達巻
④紅白なます風
⑤鰤のやわらか煮あんかけ

①全粥
②餅なしお雑煮(団子をつぶして)
③なめらか栗きんとん
④しっとり黒豆
⑤花びら餅風の和菓子

| 栄養価 | 献立例A(やわらかお正月膳) | 献立例B(つぶしお正月膳) |
|---|---|---|
| メニュー | 軟飯 餅なしお雑煮 やわらか伊達巻 紅白なます風 鰤のやわらか煮 | 全粥 餅なしお雑煮 なめらか栗きんとん しっとり黒豆 花びら餅風 |
| エネルギー | 約530kcal | 約430kcal |
| たんぱく質 | 約23g | 約15g |
| 脂質 | 約15g | 約9g |
| 炭水化物 | 約76g | 約72g |
| 食物繊維 | 約5g | 約4g |
| カルシウム | 約170mg | 約140mg |
| ビタミンC | 約30mg | 約25mg |
| 食塩相当量 | 約2.2g | 約1.8g |
献立例Aは噛む力が比較的ある方向け、Bは舌でつぶせる程度の方向けです。どちらも鰤・卵・豆でたんぱく質を補い、お正月らしい紅白の彩りを大切にした構成にしています🌸
お正月の介護食 嚥下対応の調理5原則

お正月のごちそうをやわらかく安全に仕上げるための、現場で実践している5つの原則です。
- ①お餅は使わず必ず代替する
もち米のお餅は提供せず、上新粉のやわらか団子・大根もち・豆腐・葛団子に置き換えます。これがお正月の介護食で一番大切な原則です - ②おせちは薄味・やわらかに作り直す
市販のおせちは味が濃く硬いものが多いので、だしで薄味にし、やわらかく煮直してから提供します - ③魚は骨を抜いて中心までしっかり加熱
鰤など縁起物の魚は骨をていねいに取り除き、中心までしっかり火を通します。加熱は食中毒やアニサキス対策にもなり、生のままの提供は避けます - ④根菜・乾物はだしでくたくたに煮含める
大根・にんじん・黒豆などは、箸でほろりと崩れるまで時間をかけて煮ます。圧力鍋も便利です - ⑤あん・とろみでまとめて飲み込みやすく
仕上げに銀あんやとろみをつけると、口の中でまとまって飲み込みやすくなります
とろみ調整剤は、お雑煮の汁や銀あんのとろみづけに欠かせない介護食の必需品。さっと溶けてダマになりにくいタイプを選べば、むせ込みを防ぎ、安全に召し上がっていただけます。
お正月の嚥下対応レシピ3品

お正月膳の代表的な3品の作り方を詳しくご紹介します。主役の餅なしお雑煮から、ていねいに。
【1】餅なしお雑煮(2人前)※主役・もち米不使用
上新粉60g/ぬるま湯50ml/だし400ml/薄口しょうゆ・みりん各小さじ2/鶏もも肉50g/大根・にんじん・小松菜 各適量
①上新粉にぬるま湯を少しずつ加えてこね、小さめのやわらか団子に丸めて、たっぷりの湯でゆでます(もち米を使わないので喉に貼りつきにくい団子になります)。
②だしに薄口しょうゆ・みりんを加え、やわらかく煮た大根・にんじん・小松菜と、ひと口大の鶏もも肉を入れて煮ます。鶏肉は中心までしっかり火を通します(中心温度75℃で1分以上が目安)。
③器に団子と具を盛り、汁を注いで完成。とろみが必要な方は、汁にとろみ調整剤を加えてください。お餅の代わりに、安心してお雑煮を楽しめます。
【2】鰤(ぶり)のやわらか煮あんかけ(2人前)
鰤2切れ/大根150g/だし300ml/しょうゆ・みりん各大さじ1/生姜少々/とろみ調整剤適量
①鰤は骨をていねいに取り除き、ひと口大に切ります。
②大根をやわらかく下ゆでし、だし・調味料・生姜とともに鰤を入れ、中心までしっかり火が通るまで弱火で煮ます(生のままの提供は避け、加熱でアニサキス対策にもなります)。
③煮汁にとろみ調整剤でとろみをつけ、銀あんにして鰤にかけて完成。骨がなく、しっとりやわらかで安心です。
【3】なめらか栗きんとん(2人前)
さつまいも150g/栗の甘露煮2〜3粒/砂糖大さじ1/栗の甘露煮シロップ少々
①さつまいもをやわらかく茹でて、熱いうちに裏ごししてなめらかにします。
②砂糖とシロップを加えて練り、しっとりやわらかく仕上げます。
③栗の甘露煮はやわらかく刻んで混ぜます(粒が気になる方はつぶしてください)。なめらかで甘く、嚥下にやさしいお正月の一品です。
お正月の介護食で避けたいNG食材3選

おめでたいお正月だからこそ、安全に楽しんでいただくために気をつけたい食材を3つまとめました。
- お餅・鏡餅・おかきお正月のお餅は、ご高齢の方の窒息事故が最も多い食材です。もち米は粘り気が強く喉に貼りつきやすいため、提供は避けてください。上新粉のやわらか団子・大根もち・豆腐・葛などで代替すれば、お雑煮もお祝いの気持ちも安全に楽しめます。鏡餅やおかきも同様に注意が必要です。
- 数の子・かまぼこの厚切り・かたい黒豆おせちの数の子はプチプチと噛みにくく、かまぼこの厚切りも弾力が強くて誤嚥しやすい食材です。かまぼこは薄くやわらかく、黒豆はしっかりやわらかく煮るなどの工夫を。皮が気になる場合は取り除き、ひと口大にして提供しましょう。
- 球状の食材・祝い箸やピンチョスの竹串ミニトマト・ぶどう・白玉など球状のものは、丸飲みすると気道をふさいで窒息する危険があるため、必ず4等分にしてから提供してください。また、お正月の祝い箸やおせちのピンチョスの竹串は先が鋭く、口や喉を傷つける危険があります。串は必ず抜き、ひと口大に切り分けましょう。
ひと手間かけるだけで、ご家族みんなが安心してお正月の食卓を囲めます🌸
現役介護士のお正月の食卓のコツ

🍵 お正月の食卓で大切にしているのは、「お重の華やぎ」と「ゆっくり見守ること」です。
やわらか仕立てでも、小さなお重や仕切りのあるお皿に紅白を意識して盛り付けると、一気にお正月らしくなります。そして何より、お正月は会話もごちそう。お屠蘇代わりの甘酒(やわらかいもの)で乾杯したり、「今年もよろしくね」と声をかけたりしながら、ご本人のペースに合わせてゆっくり召し上がっていただくことが、安全にもつながります。急がず、見守りながら、新年を一緒にお祝いしてくださいね🥄
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お正月の介護食に関するよくある質問
お正月の介護食について、よくいただく質問4つにお答えします。
Q1. お餅を食べさせてあげたいけど大丈夫?
A. もち米のお餅は避け、代替がおすすめです。
お餅はご高齢の方の窒息事故が最も多い食材です。上新粉のやわらか団子・大根もち・豆腐・葛などで代替すれば、お雑煮もお祝いの気持ちも安全に楽しめます。お餅そっくりに見せたい時は、上新粉団子を小さくやわらかく作るのがコツです🥄
Q2. お雑煮はどうやって安全にする?
A. もち米を使わず、上新粉の団子で。
上新粉(うるち米の粉)の団子は、もち特有の強い粘りが出ないので喉に貼りつきにくく、安全です。小さくやわらかく丸めて、だしでやさしく仕立てましょう。汁にとろみをつけると、さらに飲み込みやすくなります🍵
Q3. 鰤などの魚は食べさせて大丈夫?
A. 骨を抜いて、中心までしっかり加熱すれば安心です。
鰤は骨をていねいに取り除き、中心まで火が通るまで煮ましょう。しっかり加熱することで食中毒やアニサキスの対策にもなります。生のままの提供は避け、銀あんでとじるとさらに飲み込みやすくなります🌸
Q4. おせちで気をつけることは?
A. 薄味・やわらか・ひと口大に作り直しましょう。
市販のおせちは味が濃く硬いものが多いので、だしで薄味にし、やわらかく煮直すのがおすすめです。数の子やかたいかまぼこは避け、球状のものは4等分に。彩りはそのままに、安全な形でお正月を楽しんでいただけます🍵
まとめ。。。
今回は、お正月のごちそうをやわらかく仕立てた介護食献立を7選ご紹介しました。
- 主役はお餅を使わない安全なお雑煮
上新粉のやわらか団子・大根もち・豆腐で、もち米を使わず安全に - おせちはやわらか・薄味に作り直す
伊達巻・栗きんとん・黒豆・鰤の煮物など縁起物を嚥下に配慮して - 魚は骨を抜いて中心までしっかり加熱
鰤は加熱で食中毒・アニサキス対策にもなり安心 - お餅・数の子・球状の食材は避けて工夫を
球状のものは4等分、串は抜いて、ゆっくり見守って
お正月は、新しい年を家族みんなで祝う、大切であたたかい行事です。ご高齢のご家族と食卓を囲むなら、お餅の事故にだけは細心の注意を払って、安全への配慮を忘れずに。やわらかく仕立てたお祝い膳で、みんなが笑顔で迎えられるお正月になりますように。ご本人のペースに合わせて、ゆっくり楽しんでくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。フッくんでした!






