料理研究家、料理大好きフッくんです。
初詣の帰りに一杯、ひな祭りの食卓に一杯。甘酒は季節の節目に顔を出す飲み物ですよね。ところが「家で作ったら甘くならなかった」「なんだか酸っぱい」「子供に飲ませていいの?」——一度でも作った人ほど、つまずきが多い飲み物でもあります。
先に結論からお伝えします。甘酒は、温度が全部。米麹の甘酒は、おかゆ300gに米麹200g、炊飯器の保温で55〜60℃を8〜10時間、ふたを開けて濡れ布巾——これだけで、砂糖なしの甘さが鍋いっぱいに出来上がります。そしてもう一つ、米麹と酒粕は「別の飲み物」です。この違いを先に知っておくと、家族の誰に出せるかが迷いません。
こんなお悩み、ありませんか?
- 米麹と酒粕、どっちの甘酒を作ればいい?
甘さの出どころとアルコールの有無が違います。比較表で決められます。 - 炊飯器で作ったのに甘くならない
温度の事故です。60℃前後を守る道具の使い方をお伝えします。 - 酸っぱくなった・粒が気になる
失敗の原因と直し方を、4つの症状ごとに図解します。 - 子供や妊娠中でも飲める?
米麹はアルコールゼロ、酒粕は残ります。年齢の線と一緒にお伝えします。
栄養士の目線と、現役料理人20年の仕込み場で正月の甘酒を毎年大鍋で仕込んできた経験から「甘酒の作り方」を解説します。最後まで読めば、家の炊飯器が甘酒の道具に変わりますよ🍳

甘酒は二種類ある(米麹と酒粕は別の飲み物)

「甘酒」と一口に言っても、店で並ぶのは二種類です。米麹の甘酒は、米麹の酵素がご飯のでんぷんをブドウ糖に変えた、発酵の甘さ。酒粕の甘酒は、日本酒を搾った後の酒粕を溶いて、砂糖で甘くした飲み物——甘さの出どころが、まったく違います。
| 項目 | 米麹の甘酒 | 酒粕の甘酒 |
|---|---|---|
| 材料 | 米麹・ご飯(おかゆ)・水 | 酒粕・水・砂糖(キビ糖) |
| 甘さ | 発酵で出る自然な甘さ(砂糖なし) | 砂糖で調整 |
| アルコール | ゼロ | 残る(酒粕由来) |
| 作る時間 | 8〜10時間(発酵) | 10分(溶いて温める) |
| 味の印象 | やさしい甘み・とろり | 日本酒の香り・きりっと |
| 向く人 | お子さん・妊娠中・高齢の方・運転前 | 大人の楽しみ |
初詣の甘酒は酒粕のことが多く、ひな祭りの白い一杯は米麹のことが多い——季節によって顔が変わるのも、甘酒のややこしさです。ちなみに江戸時代の甘酒は、夏に冷やして飲む飲み物で、俳句では夏の季語。冬の飲み物になったのは、意外と最近のことなんです。
米麹の甘酒の黄金比(おかゆ300g+米麹200g・炊飯器の保温で)

炊いたご飯300g+水400mlでおかゆを作り、60℃まで冷ましてから、ほぐした米麹200gを混ぜる——これが私の基本形です。出来上がりはおよそ900ml、湯のみで6杯分。もち米で炊いたご飯なら、甘さがもう一段深くなります。冷凍ご飯でも作れるので、ストックのご飯を解凍しておかゆにするのがいちばん楽です。
- ①おかゆを作る
鍋にご飯300gと水400mlを入れ、弱火で5分ほど煮て、とろりとしたおかゆに。炊飯器のおかゆモードで米から炊く場合は、米1合に水900mlが目安です。 - ②60℃まで冷ます
ここが分かれ道です。熱いおかゆに米麹を入れると、酵素の働きが止まって甘くなりません。温度計で60℃、指を入れて「熱いけれど数秒は我慢できる」程度が目安です。 - ③米麹をほぐして混ぜる
板状の米麹は手でほぐし、おかゆに混ぜます。水分が足りなければ、60℃のお湯を少し足して、スプーンがすっと通るゆるさに。 - ④炊飯器の保温・ふたを開けて濡れ布巾
炊飯器の保温はふたを閉めると70℃を超える機種が多いので、ふたを開けたまま、濡れ布巾をかぶせて55〜60℃を保つのが炊飯器の使い方です。 - ⑤2〜3時間ごとに混ぜ、8〜10時間で完成
途中で混ぜると、温度と発酵がむらなく進みます。米の粒が透き通り、口に含んで甘ければ完成。粒が気になる方はミキサーでなめらかにしてください。
仕込み場で正月の甘酒を大鍋で仕込んでいた頃、親方の道具はたった一つ、温度計でした。「甘酒は、味見やのうて温度を見る料理や」——55℃を切ると混ぜ、62℃を超えたらふたをずらす。それだけを一晩、交代で見ていました。
家庭では、料理用の温度計を一本、炊飯器の内釜に差しておいてください。指の感覚より確かで、失敗の理由が「温度」だと一目で分かります。ヨーグルトメーカーや低温調理器に60℃設定があれば、そちらのほうが手放しで作れます——炊飯器は、道具がない日の代役です。
この記事の看板「温度が全部」(55〜60℃の科学)

甘酒が甘くなるのは、米麹の酵素(アミラーゼ)が、ご飯のでんぷんをブドウ糖に切り分けるからです。この酵素がいちばん元気に働くのが55〜60℃。70℃を超えると酵素は働きを止め、50℃を切ると乳酸菌のほうが元気になって酸っぱくなる——甘酒作りの失敗は、ほぼ全部この温度の幅から出たり入ったりした結果です。
- 50℃以下…酸っぱい甘酒の温度
甘さは出ますが、乳酸菌が増えて酸味が立ちます。保温の弱い炊飯器や、魔法瓶で長時間置いた時に起きます。 - 55〜60℃…甘酒の温度
酵素が最も働く幅です。ここを8〜10時間キープするのが、この記事の全部です。 - 70℃以上…酵素が働きを止める温度
熱いおかゆに米麹を入れる、ふたを閉めて保温する——甘くならない甘酒は、ここで生まれます。一度止まった酵素は、冷ましても戻りません。
酒粕の甘酒の作り方(10分・アルコールは残る)
酒粕の甘酒は、発酵させないぶん10分で出来ます。酒粕50gを水400mlに溶かし、キビ糖大さじ2と塩ひとつまみを加えて、弱火で温める——好みでしょうがのすりおろしをひとさじ。酒粕は水に浸けて10分ほど置くと溶けやすく、泡立て器でつぶすとなめらかになります。板粕なら小さくちぎって、練り粕ならそのまま溶けます。
ここで大事なことを一つ。酒粕にはアルコールが残っていて、温めても完全には飛びません。お子さん、妊娠中と授乳中の方、運転前の方、お酒に弱い方には、米麹の甘酒を出してください。同じ「甘酒」という名前でも、この一杯は大人の飲み物です。ひな祭りの白酒も、甘酒とは別のお酒(アルコール入り)なので、お子さんには米麹の甘酒を——その見守りは、ひな祭りの献立の記事でも書いています。
居酒屋時代、冬の締めに出していた酒粕の甘酒には、必ず塩をひとつまみ入れていました。甘さの輪郭がはっきりして、日本酒の香りが前に出ます。砂糖を減らしても物足りなくならない、料理人の小技ですよ。
もう一つ、酒粕は火を強くすると鍋底で焦げつきます。弱火で、木べらで底をなでながら温める——沸騰させないのが、香りを残す約束です。しょうがは仕上げに。最初から入れると香りが飛びます。
失敗と対策(甘くならない・酸っぱい・粒・茶色)

- 甘くならない
熱いおかゆに米麹を入れたか、ふたを閉めて70℃を超えたのが原因。次回は60℃まで冷まし、ふたを開けて布巾。止まった酵素は戻らないので、砂糖を少し足しておかゆとして食べ切ります。 - 酸っぱい
温度が50℃を切って乳酸菌が増えた状態。軽い酸味なら飲めますが、強い酸味や泡が出ていれば処分。保温力の弱い道具は、途中で60℃のお湯を足して温度を戻します。 - 粒が残る・ざらつく
米麹の粒は残るのが自然です。気になればミキサーかブレンダーでなめらかに。おかゆをやわらかめに炊くと、粒も溶けやすくなります。 - 茶色くなった
発酵時間が長すぎたか、温度が高めで糖が色づいた状態。味に問題はありませんが、甘みが強く出ているので、次回は8時間で味見して止めてください。
保存と温め直し(冷蔵1週間・冷凍1か月)

出来上がった米麹の甘酒は、まだ酵素が生きているので、常温に置くと発酵が進んで酸っぱくなります。粗熱を取って、当日中に清潔な瓶や保存容器で冷蔵へ。冷蔵で約1週間——日ごとに少しずつ甘さと酸味が変わるので、早めに飲み切るのが約束です。長く置きたい時は、鍋で沸騰直前まで温める「火入れ」をすると、酵素の働きが止まって冷蔵で10日ほど持ちます(風味は少し落ちます)。
冷凍は、製氷皿に流して凍らせ、袋に移して約1か月。凍った甘酒を数個、牛乳や豆乳に落として溶かせば、朝の一杯になりますよ。酒粕の甘酒は、作ったその日に飲み切るのが基本で、残った分は冷蔵で2〜3日です。温め直しは、どちらも60℃くらいの飲み頃まで——沸騰させると、米麹の甘酒は風味が飛び、酒粕の甘酒は香りが逃げます。瓶を開けて、ぷくぷくと泡が立つ・ツンとしたアルコール臭がする・酸味が強い、のどれかがあれば、迷わず処分してください。
甘酒の栄養と、家族への出し方

米麹の甘酒100mlは、およそ80kcal・糖質18g——ブドウ糖とオリゴ糖、米麹由来のビタミンB群を含む飲み物です。砂糖を入れていなくても、甘さの正体はブドウ糖。糖分としては甘い飲み物と同じ扱いで、湯のみ1杯(150ml)で約120kcalになります。
だから量の目安は、1日にコップ1杯まで。糖質を控えている方は、主治医に量を相談してください。牛乳や豆乳で2倍に割ると、甘さと糖分が半分になって、朝の一杯にちょうどいい濃さになります。
米麹の甘酒の材料は、米と米麹だけ——表示義務・推奨の品目は含みません。酒粕の甘酒は、酒粕に日本酒の酵母が含まれます。市販の甘酒には、大麦の麹を使ったものや、酸味料・香料を加えたものもあるので、原材料表示の確認を。
牛乳や豆乳で割る日は、乳と大豆の家族に別の割り方を。家族に配る瓶には「米麹・砂糖なし」「酒粕・アルコールあり」のラベルを一枚——同じ白い飲み物でも、中身は別物だと分かる形にしておくのが先回りです。
高齢者や子供にやさしい甘酒

高齢の方に甘酒を出す日は、米麹の甘酒を選んでください。酒粕の甘酒はアルコールが残るので、お薬を飲んでいる方には向きません。どうしても酒粕の香りを楽しみたい方は、かかりつけの先生に相談してからにしましょう。
米麹の甘酒は、粒が残ったままだと、飲み込む時に口の中でばらけて、むせの引き金になります。ミキサーでなめらかにして、必要ならとろみをつけて、湯のみ一杯を60℃くらいの温かさで。甘くてとろりとしているので、食が細い日の一杯として、施設でも喜ばれる飲み物です。ただし糖分が濃いので、1日一杯を目安に、主治医から量の指示がある方はそれに従ってください。
お子さんには、米麹の甘酒を1歳ごろから、お湯で2倍に薄めて少量から。糖分が濃い飲み物なので、1歳未満には与えず、飲めるようになっても習慣的に毎日ではなく、行事の日の楽しみとして。酒粕の甘酒とひな祭りの白酒は、アルコールが入るので、お子さんの手の届く場所に置かないでください。
行事の甘酒を安全にやわらか仕立てで出す工夫は、ひな祭りの介護食献立の記事でまとめて解説しています。
甘酒のアレンジ(しょうが・豆乳・料理の甘み)

米麹の甘酒は、飲むだけではもったいない食材です。しょうがのすりおろしをひとさじ落とせば冬の定番、豆乳や牛乳で割れば朝の一杯、凍らせればシャーベット——夏の甘酒は、氷を入れてレモンを搾ると、江戸の夏の飲み方に近づきます。
料理では、砂糖の代わりに。照り焼きのたれや、きんぴらの甘み、ドレッシングの甘みに甘酒を使うと、角のないやさしい甘さになります。正月の煮しめや酢の物の甘みに使えば、おせちの甘さがやわらぎます。おせちの甘さの調整は、お正月の献立の記事の受け持ちです。冷凍ご飯のストックがあれば、甘酒はいつでも仕込めます——ご飯の冷凍のコツは、ご飯の冷凍の本家記事にまとめてあります。
甘酒の作り方のよくある質問
Q1. ヨーグルトメーカーや魔法瓶でも作れますか?
作れます。ヨーグルトメーカーや低温調理器に60℃設定があれば、いちばん手放しで安定します。魔法瓶は、60℃のおかゆと米麹を入れて8時間——ただし温度が下がりやすいので、途中で一度、60℃のお湯を足して温度を戻すのが約束です。炊飯器は道具がない日の代役で、ふたを開けて布巾が使い方です。
Q2. 米麹の甘酒は何歳から飲めますか?
1歳ごろから、お湯で2倍に薄めて少量からが目安です。アルコールはゼロですが、糖分が濃い飲み物なので、1歳未満には与えず、飲めるようになっても行事の日の楽しみとして。酒粕の甘酒は、アルコールが残るのでお子さんには出しません。
Q3. 酒粕の甘酒を飲んだ後、運転できますか?
できません。酒粕にはアルコールが残っていて、温めても完全には飛びません。運転前・仕事前は米麹の甘酒を選んでください。同じ理由で、妊娠中と授乳中の方、お薬を飲んでいる方も米麹の甘酒が安心です。
Q4. 甘酒が酸っぱくなりました。飲めますか?
軽い酸味なら飲めます。温度が50℃を切って乳酸菌が増えた状態で、ヨーグルトのような酸味です。ただし泡が立つ、ツンとしたアルコール臭がする、酸味が強い——このどれかがあれば処分してください。作った後の常温放置が原因のことが多いので、当日中に冷蔵へ。
Q5. 甘酒の粒をなくすには?
出来上がりをミキサーかブレンダーでなめらかにするのがいちばんです。おかゆをやわらかめに炊いておくと、粒も溶けやすくなります。高齢の方や小さなお子さんに出す日は、なめらかにしてからが安全です。
Q6. 米麹の保存は? 開封後はどうする?
乾燥タイプの米麹は、開封後は密閉して冷蔵庫で約1か月、冷凍なら約3か月です。生麹は冷蔵で1週間ほどなので、使い切れない分は早めに冷凍を。冷凍した米麹は、解凍せずにそのまま60℃のおかゆに混ぜて使えます。乾物の扱いは、切り干し大根や高野豆腐と同じで「湿気を吸わせない」が約束です。
まとめ。。。

- 甘酒は二種類、米麹と酒粕は別の飲み物
米麹は発酵の甘さでアルコールゼロ、酒粕は砂糖で甘くしてアルコールが残ります。 - 黄金比は、おかゆ300g+米麹200g
60℃に冷ましてから混ぜるのが分かれ道です。 - 炊飯器は保温で、ふたを開けて濡れ布巾
55〜60℃を8〜10時間。2〜3時間ごとに混ぜます。 - 温度が全部、50℃以下は酸っぱく70℃超は甘くならない
温度計は甘酒の包丁。一本差しておくだけで失敗が消えます。 - 酒粕の甘酒は10分、塩ひとつまみで香りが立つ
お子さん・妊娠中・運転前には出しません。 - 当日中に冷蔵で1週間、製氷皿で冷凍1か月
泡・アルコール臭・強い酸味は処分です。 - お子さんは1歳ごろから薄めて少量、高齢の方はなめらかにして一杯
糖分は濃い飲み物。量は湯のみ一杯を目安に。 - 正月・ひな祭りの献立の記事とあわせて
行事の甘酒が、家の炊飯器から出せます。
今夜はまず、温度計を一本用意するところから。おかゆが60℃に下がるのを待って、米麹を混ぜて、布巾をかけて眠る——朝、炊飯器のふたを開けた時の、あの甘い湯気が、この記事のゴールです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
フッくんでした!









