料理研究家、料理大好きフッくんです。
お正月が近づくと、お雑煮やおしるこ、鏡開きと、お餅の出番が増えてきますよね。
高齢のご家族や、介護の現場の利用者さんに、お餅をどう出せばいいのか、迷う方も多いと思います。
こんな声を、よく聞きます。
- 「母がお雑煮を楽しみにしているけれど、お餅が心配」
これはご家族の声。毎年のお雑煮を、今年も一緒に食べたい。 - 「小さく切れば、出してもいいの?」
これは介護職員の声。利用者さんから「お餅はないの?」と聞かれて、答えに迷う。 - 代わりに何を出せばいい?
お餅なしでも、お正月の気分を味わってもらいたい。
この記事では、栄養士で、現役介護士でもある私が、高齢の方とお餅のことをお伝えします。
お餅がのどに詰まりやすい理由から、小さく切っても危ないわけ、代わりの一品、餅なしのお雑煮、家族の約束、もしもの時まで、順番に見ていきましょう。

高齢者の餅——基本は出さない
高齢の方には、お餅は出さないのが基本です。
お餅はのどに詰まりやすい食べもので、お雑煮の作り方の記事でもお伝えしているとおり、噛む力と飲み込む力が弱い方には「餅は小さく切っても危険が残ります」。
お雑煮やおしるこは、お餅の代わりの一品を使えば、お正月の気分をそのまま残せます。
この記事でお伝えするのは、家庭や介護の現場で続けられる、お正月の食卓の工夫です。
飲み込みに不安がある方や、食事の指示を受けている方は、かかりつけの先生の指示を優先してください。
そのうえで、お餅の季節にできることを、ひとつずつ見ていきましょう。
お餅がのどに詰まりやすい理由

お餅がのどに詰まりやすいのには、はっきりした理由があります。
お餅そのものの性質と、年齢とともに変わる口やのどの働きが重なるからです。
理由を知っておくと、なぜ「小さく切ればいい」と言えないのかも分かります。
冷めると固くなり、貼りつく
お餅の保存方法の記事でもお伝えしているとおり、お餅は「温度が下がるにつれて硬さが増し」、くっつきやすくもなります。
椀の中ではやわらかく見えても、口の中やのどを通るころには、固く貼りつきやすくなっているんです。
よくのびて、噛み切りにくい
お餅はよくのびて、歯で噛み切りにくい食べものです。
噛み切れないまま大きなかたまりで飲み込むと、のどの途中で止まりやすくなります。
噛む力と飲み込む力が弱くなる
年齢とともに、噛む力や飲み込む力は少しずつ弱くなり、口の中をうるおす唾液も少なくなりがちです。
ご本人が「若いころと同じように食べられる」と思っていても、のどの働きは変わっていることがあります。
小さく切っても危ない理由

「小さく切れば大丈夫」と思われがちですが、高齢の方の場合、切り方だけでは安心とは言えません。
お雑煮の作り方の記事でもお伝えしているとおり、噛む力と飲み込む力が弱い方には「餅は小さく切っても危険が残ります」。
その理由を、2つに分けてお伝えします。
口の中でまたまとまる
小さく切ったお餅も、口の中で噛んでいるうちに、またひとつのかたまりにまとまっていきます。
冷めて固くなると、のどに貼りつきやすいことも変わりません。
大きさより、食べる人の力
のどに詰まるかどうかには、お餅の大きさよりも、食べる人の噛む力と飲み込む力が大きく関わります。
ご家族からは、その力の変化が見えにくいことも多いので、高齢の方にはお餅なしを基本にしてください。
それでも「どうしてもお餅が食べたい」と、ご本人が強く望まれることもあります。
そんなときは、ご家族だけで決めずに、かかりつけの先生や歯科の先生、言語聴覚士などに、食べられるかどうかを相談してください。
お餅の代わりの一品4つ

お餅の代わりには、やわらかくて、のどに貼りつきにくいものを選びます。
お雑煮の具になるものと、甘いお餅の代わりになるものを、2つずつ選びました。
どれも、ふだんの台所でそろうものばかりです。
はんぺん——丸く抜いて雑煮に
はんぺんは、ふわっとやわらかく、お雑煮の汁にもよくなじみます。
丸い型で抜いてお雑煮に浮かべると、見た目もお餅に近くなって、お正月らしい一椀になります。
じゃがいも——やわらかく煮て
じゃがいもは、だしで指でつぶせるくらいまでやわらかく煮ると、お雑煮の主食の役目を果たしてくれます。
角を落として丸く切ると、煮崩れもしにくくなります。
水ようかん——甘いお餅の代わり
水ようかんは、なめらかでやわらかい甘いものです。
おしるこや大福のかわりに、小さく切って小皿でお出しします。
こしあんのゼリー——鏡開きに
こしあんをゼリーで固めると、鏡開きのおしるこの気分を、つるんと楽しめます。
粒のないこしあんを使うと、口の中に皮が残りません。
はんぺんは、煮すぎるとふくらんだあとにしぼみ、食感が変わります。
汁が温まったら火を止める直前に入れて、温まったらすぐに椀によそってください。
代わりの一品には、弾力のあるかまぼこやちくわ、こんにゃくは入れないでください。
どれも噛み切りにくく、高齢の方ののどに残りやすい食べものです。
白玉やういろう、葛餅、上新粉の団子も、お餅と同じように粘りや弾力があるので、代わりにはしません。
餅なしのお雑煮——具でお正月を

お餅を入れないお雑煮でも、具とだしの工夫で、お正月の一椀になります。
大切なのは、どの具もやわらかく、小さくしておくことです。
ご家族のお雑煮と同じ鍋から、高齢の方の分を取り分けて作ることもできます。
具は指でつぶせるまで煮る
大根や人参は、薄く切って、指でつぶせるくらいまでやわらかく煮てください。
梅の形に抜いた人参を浮かべると、餅なしの椀もぐっと華やかになります。
具を多めに、汁は少なめに
お雑煮の汁は、何杯も重なると塩分も重なります。
椀には具を多めに、汁は少なめによそって、汁は残してもいいとお伝えしてください。
汁にはとろみを
お雑煮の汁はさらさらでむせやすいので、飲み込む力に不安がある方には、市販のとろみ剤(とろみ調整食品)でとろみをつけてください。
形ややわらかさは、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食学会分類2013を目安に調整してくださいね。
大根や人参は、お雑煮の汁とは別に、だしで先にやわらかく煮ておきます。
最後に汁と合わせると、具はやわらかく、汁は濁らずに仕上がります。
餅なしのお雑煮は、ご家族のお雑煮と見た目がそろうので、同じ食卓で「いただきます」ができます。
お雑煮の作り方の記事も、あわせて読んでみてください。
甘いお餅の代わり——おしるこ

お正月が明けると、鏡開きのおしるこやぜんざいも楽しみのひとつです。
甘いお餅も、高齢の方の分はお餅を入れずにお出しします。
お餅の代わりを使えば、行事の楽しみはそのまま残せます。
おしるこはお餅を入れずに
おしるこは、お餅を入れずに、なめらかなこしあんの汁だけを小さな椀でお出しします。
小さく切った水ようかんや、こしあんのゼリーを添えると、おしるこの気分がぐっと高まります。
鏡開きは飾りを楽しむ
鏡開きの日は、飾っていた鏡餅を一緒に眺めて、ご家族が開く様子を楽しんでもらうのもひとつの方法です。
食べる分はご家族で、高齢の方には代わりの一品を、と分けて考えてみてください。
甘い汁物も、さらさらでむせやすいことは同じです。
飲み込む力に不安がある方の分は、とろみ剤でとろみをつけてからお出ししてくださいね。
お雑煮の作り方の記事でお伝えしているとおり、お餅1個は「ご飯茶碗半分強」のエネルギーがあります。
お餅をなくした日は、やわらかいご飯やお粥を小さな茶碗で添えて、主食の分を補ってください。
食事の指示を受けている方は、かかりつけの先生の指示を優先してください。
代わりの一品に使う食品には、アレルギーの原因になるものが入ることがあります。
はんぺんには、商品によって、特定原材料の卵と、準ずる品目のやまいもが入ります。
お雑煮のしょうゆの小麦は特定原材料で、しょうゆや白味噌の大豆は準ずる品目です。
こしあんのゼリーをゼラチンで固めるときは、準ずる品目のゼラチンが入ります。
食物アレルギーのあるご家族がいるときは、表示を確かめてください。
家族の食卓の約束——3つの線

お正月の食卓には、いろいろな年齢の家族が集まります。
お餅については、食べる人ごとに線を決めておくと、迷わずにすみます。
3つに分けて見ていきましょう。
高齢の方はお餅なしで
高齢の方には、お餅は出さないでください。
お雑煮もおしるこも、代わりの一品で、ご家族と同じ行事を楽しんでもらいましょう。
かまぼこやこんにゃくのように弾力のあるものも、噛み切りにくいので、高齢の方の分には入れません。
5歳ごろまではお餅なし
5歳ごろまでのお子さんにも、お餅は出さないのが安心です。
お子さんの椀にも、はんぺんや人参の飾り切りで、お正月らしさを添えてあげてください。
元気な大人も4つの約束
元気な大人も、お餅を食べるときは、お雑煮の作り方の記事の「小さく切る・汁や水分と交互に・急がない・ひとりで食べない」の4つを約束にしてください。
家族が集まってにぎやかな日ほど、話しながら食べて、つい急いでしまいがちです。
避けたいこと3つ——油断しない

お餅の季節に、家族が集まる食卓で、ついやってしまいがちなことを3つだけ挙げておきます。
どれも、少し気をつけるだけで変えられることばかりです。
- 「少しだけなら」と出す
ひと切れでも詰まることがあります。代わりの一品をはじめから用意しておきます。 - ひとりで食べてもらう
食事の間は、食べ終わるまでそばにいてください。 - 笑わせながら食べる
口に食べものが入っているときは、話しかけたり笑わせたりしないでください。
3つに共通するのは、「お正月だから、少しくらい」で済ませないことです。
お雑煮の作り方の記事でもお伝えしているとおり、「消費者庁が毎年、年末年始に注意を呼びかけています」。
楽しいお正月だからこそ、ご家族みんなで見守ってあげてください。
もしのどに詰まったら——119番

どんなに気をつけていても、もしもの時に備えておくことは大切です。
のどに食べものが詰まると、声が出なくなったり、苦しそうにのどをつかむしぐさをしたりします。
そんな様子に気づいたら、迷わずに動いてください。
すぐに119番
声が出ない、息ができない様子があれば、すぐに119番に通報してください。
周りの人に大きな声で知らせて、通報と手当てを手分けします。
通報の指示に従う
119番では、救急車が着くまでにその場でできる手当てを、電話で教えてもらえます。
慌てずに、指示に従って動いてください。
のどに詰まったときの手当ては、消防署などの救命講習で教わることができます。
お正月を前に、ご家族で一度受けておくと、いざという時に落ち着いて動けます。
先生に相談したいサイン

お正月の前は、ご家族の食べる様子を見直すいい機会でもあります。
次のようなサインがあるときは、お餅に限らず、早めにかかりつけの先生に相談してください。
- むせることが増えた
食事中や、お茶を飲むときにむせることが増えたとき。 - 食べるのに時間がかかる
いつもより食事に時間がかかるようになったとき。 - 飲み込んだあと声がかすれる
食べたあとに、声がかすれたり、がらがらしたりするとき。 - 口に食べものが残る
飲み込んだあとも、口の中に食べものが残っているとき。
飲み込む力のことは、かかりつけの先生のほか、歯科の先生や言語聴覚士にも相談できます。
飲み込みやすい主食の選び方は、嚥下しやすい主食の記事にまとめていますので、あわせて読んでみてくださいね。
私は現役介護士でもあります。
お正月になると、利用者さんから「お餅はないの?」と聞かれることがあります。
そんな日は、丸く抜いたはんぺんを白味噌のお雑煮に浮かべてお出ししています。
椀のふたを開けると、「あら、お餅みたいやね」と笑顔になってくださいます。
お餅を、丸く抜いたはんぺんに置き換える日があっていい。
高齢者の餅でよくある質問
最後に、高齢の方とお餅について、よくいただく質問にお答えします。
Q1. 小さく切れば大丈夫?
小さく切っても、口の中でまたまとまり、冷めると貼りつきやすくなります。
高齢の方には、お餅は出さずに、代わりの一品をお出ししてください。
Q2. やわらかいお餅なら?
やわらかく作られた商品もありますが、食べられるかどうかは、食べる人の噛む力と飲み込む力によって違います。
ご家族だけで決めずに、かかりつけの先生や言語聴覚士に相談してください。
Q3. 白玉やういろうは代わりになる?
白玉やういろう、葛餅、上新粉の団子は、お餅と同じように粘りや弾力があります。
代わりにはせず、はんぺんやじゃがいも、水ようかん、こしあんのゼリーを使ってください。
Q4. お子さんはいつから?
5歳ごろまでのお子さんには、お餅は出さないのが安心です。
それ以降も、小さく切る・汁や水分と交互に・急がない・ひとりで食べない、を約束にしてください。
Q5. 本人がどうしても食べたいと言う
ご本人の気持ちは、とても大切にしたいところです。
ご家族だけで決めずに、かかりつけの先生や言語聴覚士に相談して、食べられる形を一緒に考えてもらってください。
“おいしい”は、全部が重なること
お正月の食卓を考えるとき、私は四つの軸で見ています。
安全な食べもの、季節の行事、家族と同じ食卓、そしてそばで見守る人です。
お正月の楽しみは、お餅ひとつだけで決まるものではありません。
お餅がなくても、お雑煮の湯気や、おしるこの甘い香り、家族の「おめでとう」の声が、お正月を作ってくれます。
それぞれが、食卓の中で別の役割を持っているから、お餅なしでも行事が続けられるんです。
安全と、季節と、家族と、見守り。
その全部が重なったとき、お正月の食卓が、心まで温かい時間になります。
まとめ。。。

高齢の方とお餅のことを、最後にもう一度まとめますね。
- 高齢の方はお餅なしで
餅は小さく切っても危険が残ります。 - 代わりの一品は4つ
はんぺん・じゃがいも・水ようかん・こしあんのゼリー。 - 弾力のあるものは入れない
かまぼこ・ちくわ・こんにゃく・白玉・ういろうは代わりにしない。 - お雑煮の具は指でつぶせるまで
汁にはとろみ剤、具を多めに汁は少なめに。 - 5歳ごろまでのお子さんもお餅なし
元気な大人も4つの約束を。 - もしもの時はすぐに119番
通報の指示に従って、慌てずに。
お餅のないお正月は、さみしく感じるかもしれません。
でも、丸く抜いたはんぺんのお雑煮や、こしあんのゼリーで、行事の楽しみはちゃんと残せます。
今年のお正月は、ご家族みんなが同じ食卓で、安心して「おめでとう」を言える一椀を用意してみてくださいね。
笑顔のお正月が、きっと待っているはずだよ。
フッくんでした!
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