料理研究家、料理大好きフッくんです。
寒くなると、外に出る日が減って、家で過ごす時間が長くなりますよね。
冬の食事をどう整えればいいのか、気にかけているご家族や介護の現場の方も多いと思います。
こんな声を、よく聞きます。
- 「寒くなってから、食べる量が減った気がする」
これはご家族の声。こたつから出なくなって、ごはんの量も少なくなってきました。 - 「冬はお茶をあまり飲んでくれない」
これは介護職員の声。暖房で乾燥するのに、水分が足りているのか気になります。 - お正月の食卓が心配
お餅や鍋、ごちそうが続く季節に、何に気をつければいいか知りたい。
この記事では、栄養士で、現役介護士でもある私が、高齢の方の冬の食事の工夫をお伝えします。
温かい汁物と鍋の出し方から、乾燥する季節の水分、たんぱく質と低栄養の見守り、1日の献立例、お正月のお餅の線まで、順番に見ていきましょう。

高齢者の冬の食事——温かく、こまめに
高齢の方の冬の食事は、「温かい一品」と「こまめな水分」と「毎食のたんぱく質」の3つを意識するのがコツです。
冬は、寒さで体を動かす量が減り、食べる量も水分も知らないうちに少なくなりがちです。
温かい汁物をひとつ添えるだけでも、食卓に手をつけてもらいやすくなります。
この記事でお伝えするのは、薬や病気の話ではなく、家庭や介護の現場で続けられる冬の食事の工夫です。
持病のある方や、水分や塩分の制限を受けている方は、かかりつけの先生の指示を優先してください。
そのうえで、冬の食卓でできることを、ひとつずつ見ていきましょう。
冬に気をつけたいこと4つ

冬の食事には、ほかの季節とは違う気をつけどころがあります。
食事の工夫を考える前に、どこに気をつければいいかを見ておくと、手のつけどころが分かります。
水分が足りなくなる
冬は汗をかかないので、水分を意識しにくい季節です。
体調不良の日の食事の記事でもお伝えしているとおり、高齢の方は、のどの渇きを感じにくく、暖房で乾燥した部屋では、知らないうちに水分が足りなくなります。
食べる量が減る
寒い日は外に出ず、体を動かす量が減ります。
お腹がすきにくくなって、1回の食事の量が少しずつ減っていくことがあります。
塩分が多くなりやすい
鍋や汁物、漬物など、冬は塩分の多い料理が並びやすい季節です。
温かい汁物は大切ですが、何杯も重なると塩分も重なります。
お正月のお餅
年末年始は、お餅やごちそうが続きます。
高齢の方にとって、お餅はのどに詰まりやすい食べものです。
冬の食事の工夫5つ

高齢の方の冬の食事でできることを、5つにまとめました。
どれも特別な食材はいりません。
いつもの食卓に、ひとつずつ足していくだけです。
- ①温かい汁物を一品
味噌汁やすまし汁、鍋を一品添えて、食卓に湯気を。 - ②水分は少しずつ何回も
温かいお茶や汁物で、回数を分けて水分をとります。 - ③たんぱく質を毎食
卵・豆腐・魚・肉を、朝・昼・夕に少しずつ。 - ④汁は残してもいい
汁物は具を多めに、汁は少なめにして塩分を調整します。 - ⑤お正月はお餅なしで
お餅の代わりの一品で、行事の楽しみを残します。
温かい汁物と鍋——取り分けて

冬の食卓で、温かい汁物や鍋は、高齢の方にも出しやすい料理です。
具がやわらかく煮えて、汁と一緒に水分もとれるからです。
ただ、熱さと具の選び方には、少し気をつけたいところがあります。
器に取り分けて、少し冷ます
鍋や汁物は、器に取り分けて少し冷ましてからお出しします。
熱いまま口に運ぶと、やけどをしたり、あわてて飲み込んでむせたりすることがあります。
具はやわらかく、小さく
鍋の具は、やわらかく煮えるまで火を通し、ひと口で食べられる大きさに切ります。
しらたきやこんにゃくは、噛み切りにくく、のどに詰まることがあるので外してください。
きのこや春菊は細かく刻み、豆腐や白菜、大根など、やわらかく煮える具を多めにします。
鍋の具の選び方と切り方は、高齢者に安全な鍋料理の記事にまとめています。
鶏や豚は中までしっかり
鶏肉は、新鮮な鶏肉でも、生焼けはカンピロバクターによる食中毒の原因になり、まれに手足のまひが起こるギラン・バレー症候群につながることもあると言われています。
鶏肉は中心75℃1分以上、豚肉も中心75℃で1分以上を目安に、中までしっかり火を通してください。
鍋の日は、具を食べ終わったあとの汁を、捨てずに取っておきます。
翌朝、その汁でやわらかいおじやを炊けば、うま味がしみた温かい一品になります。
残った汁は浅い容器に移して粗熱を30分以内に取り、冷蔵庫に入れて、翌日のうちに使いきってください。
乾燥と水分——少しずつ何回も

冬は暖房で部屋が乾燥し、知らないうちに水分が足りなくなる季節です。
夏ほど汗をかかないので、ご本人もまわりも、水分のことを忘れがちになります。
だからこそ、冬こそ水分を意識して、少しずつ何回もとってもらいましょう。
脱水の記事でもお伝えしているとおり、食事以外で、1日およそ1,000〜1,500mlが目安とされています。
ただし体格や持病で変わるので、心配なときは医師に相談しましょう。
心臓や腎臓の病気で水分の制限を受けている方は、必ず先生の指示を優先してください。
温かい飲みものを回数を分けて
冬は、冷たい水やお茶より、温かいほうじ茶や白湯のほうが、口にしてもらいやすくなります。
起きたとき、食事のとき、おやつのときと、湯のみ半分ずつでも回数を分けると、無理なく続けられます。
汁物やおかゆで水分を
味噌汁やすまし汁、鍋の汁、おかゆも、大切な水分です。
飲みものをあまり飲まない方でも、汁物なら食事の一部として口にしてもらいやすくなります。
飲み込みに不安があるときは
さらさらのお茶や汁物は、飲み込む力が弱い方には、むせやすいことがあります。
飲み込む力に不安がある方には、市販のとろみ剤(とろみ調整食品)でとろみをつけてからお出しします。
形ややわらかさは、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食学会分類2013を目安に調整してくださいね。
たんぱく質と低栄養の見守り

冬に食べる量が減ると、まず足りなくなりやすいのが、たんぱく質です。
ごはんやおかゆは食べても、おかずを残してしまう日が続くと、体をつくる材料が少なくなります。
低栄養は、気づかないうちに少しずつ進むので、毎日の食卓での見守りが大切です。
たんぱく質は3回に分けて
卵・豆腐・魚・肉を、朝・昼・夕に少しずつ分けてとると、1回の量が少なくても続けやすくなります。
やわらかい玉子とじや、あんかけの魚、鍋の豆腐など、冬の献立は、たんぱく質を食べやすい形にしやすい料理がそろっています。
体重と食べる量を見守る
介護の現場では、体重と食事の量を記録して、少しずつの変化に早く気づけるようにしています。
ご家庭でも、月に一度体重を量ったり、食べ残しが増えていないかをカレンダーに小さく書いたりするだけで、先生に相談するときの手がかりになります。
食べる量が減ってきた方には、ごはんより先に、たんぱく質のおかずをひと口すすめてみてください。
主食でお腹がいっぱいになる前に、卵や豆腐、魚をとってもらえます。
持病のある方や食事の指示を受けている方は、かかりつけの先生の指示を優先してください。
1日の献立例——朝・昼・夕

私のお店の献立から、温かくて、たんぱく質と水分がとりやすい料理を選んで、冬の1日の献立例を組みました。
どの料理も、介護の食事として何度も出してきた、なじみのある料理です。
食べる方に合わせて、やわらかさや大きさを調整してください。
朝——玉子とじと南瓜の味噌汁
やわらかめのごはん・高野豆腐の玉子とじ・南瓜の味噌汁。
玉子とじでたんぱく質を、甘い南瓜の味噌汁で温かい水分をとる朝ごはんです。
卵は、中までしっかり火を通してください。
昼——赤魚のあんかけと豚汁
ごはん・赤魚の和風野菜あんかけ・豚汁。
とろりとしたあんで魚が食べやすく、豚汁で根菜と水分もとれる昼ごはんです。
赤魚は、取り分ける前と出す前に、骨を2回確かめて、小さな骨のかけらが残っていないか確かめてください。
夕——水炊きとお浸し
ごはん・水炊き・ほうれん草のお浸し。
鶏と豆腐、白菜をやわらかく煮た水炊きを、器に取り分けて少し冷ましてからお出しします。
水炊きは骨のない鶏肉で作り、しらたきは外してください。
豚汁のごぼうは、繊維が口に残るので、噛む力が弱い方の分は外すか、すりおろしてから汁に入れます。
すりおろしたごぼうは、煮るととろりとやわらかくなり、香りだけが汁に残ります。
赤魚のあんかけのあんは片栗粉のとろみなので、唾液でゆるみやすくなります。
飲み込む力に不安がある方の分は、とろみ剤でとろみをととのえてください。
水炊きの春菊やきのこは細かく刻み、豚汁の大根やにんじんは、指でつぶせるくらいまで煮てからお出しします。
この記事の献立に使う特定原材料は、玉子とじの卵と、しょうゆの小麦です。
準ずる品目では、大豆(豆腐・高野豆腐・味噌・しょうゆ)・鶏肉(水炊き)・豚肉(豚汁)が入ります。
お雑煮の代わりの具のはんぺんには、商品によって卵や、準ずる品目のやまいもが入ります。
こしあんのゼリーをゼラチンで固めるときは、準ずる品目のゼラチンが入ります。
鍋の汁で炊くおじやにも、鍋の具と同じ材料が入ります。
食物アレルギーのあるご家族がいるときは、表示を確かめてください。
お正月の行事食——お餅は出さない

冬の食卓で特に気をつけたいのが、お正月のお餅です。
お餅はのどに詰まりやすい食べもので、高齢の方にはお餅は出さないでください。
お雑煮を楽しみにしている方には、お餅の代わりの一品で、行事の気分を残してあげましょう。
お餅の代わりの一品
お雑煮には、はんぺんや、やわらかく煮たじゃがいもを入れると、お餅の代わりの具になります。
かまぼこは弾力があって噛み切りにくいので、高齢の方の分には入れないでください。
甘いものなら、水ようかんやこしあんのゼリーが、お正月らしい一品になります。
家族の食卓でも約束を
家族で囲むお正月の食卓では、元気な大人も、お餅は小さく切る・飲みものと交互に・急がない・ひとりで食べない、の4つを約束にしてください。
5歳ごろまでのお子さんにも、お餅は出さないのが安心です。
避けたいこと3つ——控えない

冬の食事で、ついやってしまいがちなことを3つだけ挙げておきます。
どれも、少し見方を変えるだけで、冬の食卓がぐっと安心になります。
- 水分を控える
寒い日はトイレを気にして水分を減らしがちです。温かい飲みものを回数を分けて飲みます。 - 汁物を何杯も重ねる
鍋の汁、味噌汁、汁粉と重なると塩分や糖分も重なります。汁は残してもいい、とお伝えします。 - 減った量を見過ごす
食べる量が少しずつ減っても、寒いからと見過ごしがちです。体重と食べる量を記録します。
3つに共通するのは、「冬だから仕方ない、で済ませない」ということです。
少しの見守りと工夫で、冬の食卓は、ご本人にもご家族にも安心な場所になります。
先生に相談したいサイン

食事の工夫は、あくまで毎日の暮らしの中でできることです。
次のようなサインがあるときは、食事で様子を見ずに、早めにかかりつけの先生に相談してください。
- 食べる量が減った日が続く
いつもの半分ほどしか食べられない日が続くとき。 - 体重が減ってきた
服がゆるくなった、体重が少しずつ減っているとき。 - 水分がとれない
飲みものを受けつけない、ぐったりしているとき。 - 熱やせきが続く
熱があって、食事がとれない日があるとき。
体調不良の日の食事の記事でもお伝えしているとおり、水分がとれない、ぐったりしているときは、無理をせず、早めに医療機関を受診してくださいね。
体調を崩した日の食事の工夫は、そちらの記事にまとめています。
私は現役介護士でもあります。
冬は、湯のみのお茶をすすめても、「さっき飲んだから」と断られることがよくあります。
そんな日は、お茶の代わりに、具の少ない温かいすまし汁や味噌汁を、小さなお椀でお出ししています。
「お汁ならいただこうかな」と、手に取っていただけることが多いんです。
「お茶にしましょう」を、温かい汁物の一椀に置き換える日があっていい。
高齢者の冬の食事でよくある質問
最後に、高齢の方の冬の食事について、よくいただく質問にお答えします。
Q1. 鍋は毎日でもいい?
具を変えれば、続けて出してもかまいません。
ただ、鍋の汁は塩分も重なるので、汁は少なめにして、具をしっかり食べてもらってください。
Q2. お雑煮は出していい?
高齢の方には、お餅を入れずにお出しします。
はんぺんや、やわらかく煮たじゃがいもで、お雑煮の気分を楽しんでもらいましょう。
Q3. 温かい飲みものは何がいい?
ほうじ茶や麦茶、白湯など、ふだん飲み慣れているものを温かくしてお出しします。
熱すぎると飲みにくいので、湯のみに注いで少し冷ましてからにしてください。
Q4. うどんは食べやすい?
温かいうどんは、冬に食べやすい主食です。
高齢の方には、うどんをむせないように短く切って、やわらかく煮てからお出ししてください。
“おいしい”は、全部が重なること
冬の食事を考えるとき、私は四つの軸で見ています。
温かい汁物、こまめな水分、毎食のたんぱく質、そして季節の行事の楽しみです。
冬の食事は、ひとつの料理だけで整うものではありません。
汁物だけではたんぱく質が足りず、水分だけでは食卓が寂しい。
それぞれが、毎日の食卓の中で別の役割を持っているから、寒い季節も続けられるんです。
温かさと、水分と、たんぱく質と、行事の楽しみ。
その全部が重なったとき、冬の食卓が、心まで温かい時間になります。
まとめ。。。

高齢の方の冬の食事の工夫を、最後にもう一度まとめますね。
- 温かい汁物を一品
器に取り分けて、少し冷ましてから。 - 水分は少しずつ何回も
食事以外で1日およそ1,000〜1,500mlが目安(体格や持病で変わります)。 - たんぱく質を毎食
卵・豆腐・魚・肉を、朝・昼・夕に少しずつ。 - 汁は残してもいい
具を多めに、汁は少なめにして塩分を調整。 - お正月はお餅なしで
はんぺんや水ようかんで行事の楽しみを。 - 体重と食べる量を見守る
カレンダーの小さな印が、相談の手がかりに。 - サインがあれば早めに先生へ
食べられない・体重が減る・水分がとれないときは早めに。
冬の食事は、特別な料理ではなく、いつもの食卓の小さな工夫の積み重ねです。
温かい汁物をひとつ、お茶を少しずつ、おかずをひと口。
その少しずつが、寒い季節の毎日を支えてくれます。
今日の食卓から、できることをひとつ試してみてくださいね。
湯気の立つ食卓で、ご本人もご家族も、ほっとできるはずだよ。
フッくんでした!
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