料理研究家、料理大好きフッくんです。
ふたを開けた瞬間に立ちのぼる湯気と、つやつやに立った米粒 🍳
土鍋で炊いたご飯は、同じお米とは思えないほど味が変わります。
でも、いざやってみると「芯が残った」「べちゃっとした」「おこげが焦げすぎた」ということ、ありませんか?
こんなお悩み、ありませんか?
- 火を止めるタイミングが分からない
タイマーだけに頼ると外します。土鍋は音と匂いで分かるようになります。 - 水加減が毎回ちがう
土鍋は炊飯器より水が蒸発します。合数ごとの早見表を用意しました。 - おこげが焦げすぎる、またはできない
勝負は最後の30秒です。その見きわめ方をお伝えします。 - 土鍋の手入れが不安
目止めと乾かし方さえ守れば、土鍋は何年も使えます。
現役料理人20年・寿司職人20年。米は毎日さわってきた素材です。土鍋の前でやってきたことを、そのまま書いていきますね。

土鍋ご飯は「時間」ではなく「音」で炊く

結論から言いますね。土鍋ご飯でいちばん大事なのは、鍋の中の音を聞くことです。
時間はあくまで目安。同じ2合でも、お米の乾き具合、火力、鍋の厚みで数分は変わります。
耳で追えるのは、この3つです。
- ふつふつ・こぽこぽ
沸騰した合図。ここから弱火に落とします。ふたのふちから湯気が勢いよく出ます。 - ことこと
水があるうちの音。弱火のあいだ、ずっとこの音が続きます。 - チリチリ・パチパチ
水がなくなって、鍋底で米が焼け始めた音。これが火を止める合図です。
そして最後は鼻です。香ばしい匂いがしてきたら、おこげができ始めています。
この音と匂いを一度覚えてしまえば、タイマーが鳴らなくても炊けるようになりますよ。
炊飯器と土鍋、どこが違う?

そもそも何が違うのか。ここを知っておくと、水加減も火加減も納得できます。
| 項目 | 土鍋 | 炊飯器 |
|---|---|---|
| 加熱 | 直火+厚い土の蓄熱 | 電気で温度を制御 |
| 炊く時間 | 25〜30分(蒸らし込み) | 50分前後 |
| 水の蒸発 | 多い(蒸気が抜ける) | 少ない(密閉に近い) |
| おこげ | 作れる | 基本できない |
| 火を止めたあと | 蓄熱でまだ炊けている | 保温に切り替わる |
| 手間 | そばにいる必要がある | 入れて押すだけ |
いちばん大きいのは、土鍋は火を止めてからも炊けているということ。分厚い土がためた熱で、蒸らしのあいだも中で仕事が続いています。
だから蒸らしを飛ばすと、土鍋ご飯は完成しません。ここは炊飯器より、むしろ厳しいところですね。
なお、研ぎ方や浸水などご飯全般の基本は別の記事にまとめてあります。この記事は土鍋に絞ってお話ししますね。
米と水の黄金比(1〜3合の早見表)

覚え方はひとつだけ。水は、米の重さのおよそ1.3倍です。
炊飯器より少し多めなのは、土鍋は炊いているあいだに蒸気が抜けて、水が減るからですね。
| 合数 | 米の重さ | 水の量 | 弱火 | 蒸らし |
|---|---|---|---|---|
| 1合 | 約150g | 200ml | 10分 | 10〜15分 |
| 2合 | 約300g | 400ml | 12分 | 10〜15分 |
| 3合 | 約450g | 600ml | 14分 | 10〜15分 |
かために炊きたいときは1合あたり180ml、やわらかめにしたいときは220mlへ。1合ずつ20mlの幅で動かすと、好みの一点が見つかります。
お米の分量そのものが不安な方は、米1合が何グラムかをまとめた記事もあわせてどうぞ。
※土鍋ご飯は水加減が味を決めるので、計量カップは角型で目盛りの見やすいものを。すり切りが安定すると、毎回同じ味に炊けます。
お米の主成分はでんぷんです。でんぷんは水と熱がそろってはじめて、やわらかい状態に変わります。
浸水を飛ばすと、米の表面には水があっても、中心までは届いていません。だから外側だけがやわらかくなって、真ん中に芯が残るんですね。
炊く時間を延ばしても、この芯は消えません。水は熱よりゆっくり進むので、浸ける時間でしか埋められないからです。
夏30分・冬60分という目安には、こういう理由があります。急ぐ日はぬるま湯を使うと、水が入る速さが上がります。
土鍋ご飯の炊き方(6工程)

①米を研ぐ
最初の水はいちばん多く吸うので、さっと注いですぐ捨てます。あとは指を立てて、やさしく2〜3回。
今のお米は精米の技術が上がっているので、力を入れて研ぐ必要はありません。
②30〜60分、水に浸ける
夏は30分、冬は60分。米の芯まで水が入ると、炊き上がりのムラがなくなります。
浸水を飛ばすと、外はやわらかいのに芯が残るという失敗になりますね。
③浸水の水は切って、分量の水を計り直す
ここが土鍋のコツです。浸水に使った水をそのまま炊くと、米が吸った分だけ水加減がずれます。
ざるに上げて水を切り、早見表の量を新しく注いでください。
④ふたをして、中火で沸騰させる
2合でおよそ10分。ふきこぼれそうになったら、火をほんの少し弱めます。
ふちから湯気が勢いよく出て、こぽこぽと音がしたら沸騰の合図です。
⑤弱火にして12分
沸騰したらすぐ弱火へ。ここからはふたを開けません。
終盤にチリチリという乾いた音がしてきたら、水がなくなったサインです。
⑥火を止めて、10〜15分蒸らす
火を止めて、そのまま置きます。蒸らしのあいだも、土鍋の中では炊けています。
蒸らしが終わったら、しゃもじで底から返すように、切るようにほぐしてください。余分な蒸気が抜けて、粒が立ちます。
炊き上がりの「返し」は、切るように
寿司の世界では、炊き上がったご飯の扱いで味が決まります。
やってはいけないのが、しゃもじで押したり、練ったりすること。米の表面がつぶれて、粘りが出て、口の中でべたつくご飯になります。
正しくは、鍋の底からしゃもじを入れて、大きく持ち上げて返す。それを4回ほど、十字を切るように。
このとき、余分な蒸気が一緒に逃げます。蒸らしの湯気を抜くところまでが炊飯だと、私は教わりました。
返したあとにもう一度ふたをして、2〜3分おくと、鍋の中で水分が均一になります。ここまでやると、土鍋ご飯は化けます。
おこげを作る、最後の30秒

土鍋ご飯の楽しみといえば、おこげですよね。
作り方はかんたんで、弱火が終わったあと、蒸らしに入る前に強火で20〜30秒。それだけです。
ただ、ここで焦がしてしまう方が本当に多いです。線を引いておきますね。
- 20秒で一度、鼻で確かめる
香ばしい匂いが立ったら、そこが合図です。時間ではなく匂いで止めてください。 - 煙が見えたら、すぐ火を止める
煙が出た時点で行きすぎです。10秒でも苦みが出ます。 - 薄いきつね色までが成功
茶色を通り越して黒くなると、苦みが全体に移ります。おこげは薄い色で十分です。 - 1合のときは15秒から
量が少ないほど早く焼けます。合数が少ない日は短めにしてください。
おこげができたら、蒸らしのあとに底からしっかり返して、白いご飯と混ぜます。全体に香ばしさが移って、これがまたおいしいんですよね。
よくある失敗と対策

- 芯が残る
浸水が足りていません。冬は60分とってください。弱火の時間を延ばしても、芯は戻りません。 - べちゃっとする
水が多いか、蒸らしのあとに返していません。浸水の水を切って計り直すと安定します。 - ふきこぼれる
鍋に対して量が多すぎます。土鍋の容量の半分までを目安にしてください。 - 底だけ焦げて上が生っぽい
火が強すぎます。沸騰したらすぐ弱火へ。鍋底からはみ出す火は、土鍋には強すぎます。 - 米粒がつぶれてべたつく
しゃもじで練っています。底から持ち上げて、切るように返してください。
土鍋の扱い方(目止め・洗い方・保管)

土鍋は、扱いさえ守れば何年も使えます。逆に、たった一度の油断で割れます。
新品は「目止め」から
土鍋には目に見えない細かい穴があります。ここをでんぷんで埋めるのが目止めです。
鍋の八分目まで水を入れ、ご飯茶碗1杯分の冷やごはんか、米のとぎ汁を入れて弱火で20〜30分。火を止めて、冷めるまでそのまま。
これをやっておくと、水漏れやひび割れが起きにくくなります。ひと手間ですが、最初の一度だけです。
やってはいけない4つ
- 空焚き
中身が入っていない土鍋を火にかけると、割れます。火にかける前に必ず中を確認してください。 - 濡れた底のまま火にかける
底の水分が急に膨張して、ひびが入ります。底は必ず布でふいてから。 - 熱いうちに水をかける
急に冷えると割れます。洗うのは、鍋が完全に冷めてからにしてください。 - 濡れたまましまう
土鍋は水を吸うので、乾ききらないとカビます。底を上にして、まる一日おいてから片づけてください。
土鍋は水を吸う器です。ということは、洗剤も一緒に吸います。
だから私は、土鍋にはほとんど洗剤を使いません。ぬるま湯とやわらかいスポンジで十分落ちますし、こびりつきは湯を張って少しふやかせば取れます。
つけ置きも避けてください。長く水に浸けると、鍋が水を含みすぎて、次に火にかけたときの負担になります。
若い頃、店の土鍋を洗剤でごしごし洗った私に、親方が言いました。「その鍋は、洗うたびに味を覚えていくんや。ぜんぶ落としてどないする」。
長く使った土鍋でご飯を炊くと、たしかに味が丸くなります。道具を育てるというのは、こういうことなんですよね。
※直火にかけられる土鍋です。まずは一人分から試したい方に。ご飯用は容量の半分までが目安なので、何合炊きたいかで大きさを選んでくださいね。
炊いたあとの保存と温め直し

ここは、はっきり書いておきます。
炊いたご飯を、土鍋に入れっぱなしにしないでください。
土鍋は「保存容器ではない」
理由は2つあります。
ひとつは鍋のため。土鍋はご飯の水分と匂いを吸い続けます。翌日には鍋が湿ったままになり、乾かないうちに次を炊くことになります。
もうひとつはご飯のため。厚い土がためた熱で、鍋の中はゆっくりとしか冷めません。ゆっくり冷めていくあいだが、いちばん傷みやすい時間です。
線はこうです。食べきらないぶんは、蒸らしが終わった時点ですぐ鍋から出して、粗熱を30分以内に。
1膳分ずつ、平らにしてラップで包み、冷凍で3週間から1か月。冷蔵はおすすめしません。ご飯は冷蔵の温度帯でいちばんパサつくからです。
温め直しは電子レンジで。一度解凍したものを、また凍らせるのは避けてくださいね。
※ご飯を平らにして凍らせておくと、必要なぶんだけ取り出せます。厚みのある袋のほうが霜がつきにくく、解凍したときのパサつきも少なくなります。
ごはん(精白米)は100gあたり約156kcal。お茶碗1膳を150gとすると、約234kcalになります。
土鍋で炊くと粒が立っておいしいので、つい多めによそってしまうんですよね。器の大きさで見ると、量の感覚はぶれます。
一度だけ、いつものお茶碗にご飯をよそって、はかりにのせてみてください。自分の1膳が何グラムかが分かると、それが一生の物差しになります。
※文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」を参考にした概算値です。
高齢者や子供にやさしい土鍋ご飯

土鍋ご飯は、家族で囲むのが楽しい料理です。ただ、熱いものが食卓に出てくるので、そこだけ気をつけたいところがあります。
高齢のご家族に出すとき
やわらかく炊きたいときは、水を1割ほど増やして、蒸らしを20分に延ばします。火加減はそのままで大丈夫です。
おこげは香ばしくておいしいのですが、硬くて噛み切りにくいことがあります。細かく砕いて白いご飯に混ぜるか、控えめにしてください。
お子さんに出すとき
いちばん気をつけたいのは、土鍋そのものと蒸気のやけどです。土鍋は火から下ろしても長く熱く、ふたを開けた瞬間の蒸気は勢いがあります。
食卓に置くときは、お子さんの手が届かない位置に。よそうのは大人がして、器で少し冷ましてからお出しください。
私は現役介護士でもあります。
食が細くなった方でも、ふたを開けた瞬間の湯気と匂いには、はっきり反応されることがあります。目の前で開けるだけで、食卓の空気が変わるんですね。
そのうえで、口に入れるものは調整してください。水を1割増して蒸らしを長くすると、粒がやわらかくまとまります。おこげは外すか、細かく砕いて。
飲み込みに不安がある方には、炊いたご飯にだしを含ませて、やわらかいご飯にする方法もあります。全粥にするなら米1に対して水5が目安です。
土鍋は重いので、よそうのは必ず別の方が。熱い器を手渡さないことも大事ですね。
そして、無理にたくさん食べていただかなくてかまいません。土鍋ご飯を、湯気を見ていただく時間に置き換える日があっていいと思っています。
土鍋ご飯の炊き方でよくある質問
Q1.浸水はどのくらい必要ですか?
夏は30分、冬は60分が目安です。浸水を飛ばすと、外はやわらかいのに芯が残ります。
時間がないときは、40℃くらいのぬるま湯に15分浸けると短縮できますよ。
Q2.途中でふたを開けてもいいですか?
弱火に入ってからは開けないでください。蒸気が逃げて、炊き上がりにムラが出ます。
とくに蒸らしのあいだは、絶対に開けないこと。土鍋は火を止めてからも蓄熱で炊けているからです。
Q3.おこげが焦げすぎてしまいます
時間ではなく匂いで止めてください。香ばしい匂いが立ったら、そこが合図です。
煙が見えたら行きすぎなので、すぐ火を止めてくださいね。1合のときは15秒から試すと安全です。
Q4.土鍋の目止めは毎回必要ですか?
いいえ、基本は買ったときの一度だけです。
ただし長く使って水が染みるようになったら、もう一度おかゆやとぎ汁で目止めをすると復活しますよ。
Q5.炊いたご飯は土鍋のまま置いていいですか?
置かないでください。土鍋がご飯の水分と匂いを吸いますし、鍋の中はゆっくりとしか冷めません。
食べきらないぶんは、蒸らしが終わったらすぐ鍋から出して、粗熱を30分以内に取り、1膳分ずつ冷凍してください。
まとめ。。。

土鍋ご飯の炊き方を、最後にもう一度まとめますね。
- 時間より、音と匂いで見きわめる
チリチリという音が火を止める合図。香ばしい匂いがおこげの合図です。 - 水は米の重さのおよそ1.3倍
1合200ml・2合400ml・3合600ml。20ml刻みで好みに寄せます。 - 浸水の水は切って、計り直す
ここを守るだけで、毎回同じ味に炊けます。 - 沸騰したら弱火、そこからふたは開けない
2合で弱火12分。蒸らしは10〜15分です。 - おこげは強火20〜30秒、匂いで止める
煙が見えたら行きすぎ。薄いきつね色で十分です。 - 炊き上がりは、切るように返す
押したり練ったりしない。蒸気を抜くところまでが炊飯です。 - 空焚き・濡れた底・急な冷やしは割れるもと
目止めは最初に一度。乾かしてからしまいます。 - ご飯を土鍋に入れっぱなしにしない
すぐ出して粗熱30分以内、1膳ずつ冷凍で3週間から1か月。
土鍋ご飯って、面倒に見えて、実はそばにいる25分だけの料理なんですよね。
私は寿司職人として20年、毎日米を炊いてきました。それでも土鍋のふたを開ける瞬間は、いまだに少し緊張します。うまく炊けた日は、それだけで一日が良い日になる。そういう料理です。
週末の一度でかまいません。ぜひ、音を聞きながら炊いてみてくださいね。
フッくんでした!
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