料理研究家、料理大好きフッくんです。
お重の真ん中で、静かに存在感を出している煮しめ 🥢
でも、いざ作ってみると「全体が茶色くぼやけた」「味が中まで入っていない」ということ、ありませんか?
正直に言うと、煮しめは具の種類が多いぶん、まとめて鍋に入れた瞬間に勝負が決まってしまいます。
こんなお悩み、ありませんか?
- 全部が同じ茶色になってしまう
色を残したい具と、色を出す具を分けていないのが原因です。 - 味が表面だけで、中まで入らない
煮汁が多すぎるか、煮詰めが足りていません。落とし蓋で解決します。 - 筑前煮との違いが分からない
似て見えますが、作り方の根っこが違います。表で整理しますね。 - お正月に作って、何日もつのか不安
「おせちは日持ちする」は昔の話です。今の味つけでの線をお伝えします。
現役料理人20年、年の瀬になると毎年、大きな鍋で煮しめを炊いてきました。その手順のまま書いていきますね。

煮しめと筑前煮、どこが違う?

お重に入っていると見分けがつきませんが、この3つは作り方が違います。
| 項目 | 煮しめ | 筑前煮 | 含め煮 |
|---|---|---|---|
| 炒める | 炒めない | ごま油で炒める | 炒めない |
| 煮汁 | 1/3になるまで煮しめる | ほぼ飛ばす | たっぷり残して浸す |
| 味 | 濃いめ・日持ち重視 | 甘辛くこっくり | 薄味で上品 |
| 仕上がり | 汁気がなく味が濃い | 照りがある | 素材の色が残る |
| 土地 | 全国のおせち | 福岡(がめ煮) | 京料理など |
名前のとおり、煮しめは「煮しめる」料理です。煮汁を煮詰めて、素材にまとわせていく。だから味が濃く、日持ちもします。
筑前煮は先に油で炒めるので、香ばしさとコクが出ます。含め煮は逆に、たっぷりの煮汁に浸して静かに味を含ませる料理ですね。
煮しめがおせちに入る理由

煮しめがおせちに欠かせないのには、意味があります。
いろいろな具材を一つの鍋で一緒に煮ることが、家族が仲良く結ばれることに重なる——そう言い伝えられてきました。
もうひとつ、実用の理由もあります。お正月は台所に立たない、という習わしがあったので、日持ちのする料理をあらかじめ作っておく必要があったんですね。味を濃いめに煮しめるのは、そのための知恵でもありました。
ですので煮しめは、縁起と保存が一つになった料理なんですよね。具材ひとつひとつにも意味があるので、次の表で一緒に見ていきましょう。
具材と下ごしらえ

6人分の材料です。だしは800mlで考えます。
| 具材 | 縁起の意味 | 切り方 | 下ごしらえ |
|---|---|---|---|
| れんこん | 穴から先の見通しがきく | 花れんこん・7mm | 酢水に5分 |
| 里芋 | 小芋がつく・子孫繁栄 | 六方むき | 塩でもんで洗う |
| ごぼう | 地中に根を張る・家の安泰 | 乱切り | 水に5分さらす |
| にんじん | 梅は縁起もの | 梅型・7mm | 面取りする |
| こんにゃく | 手綱を締める・縁を結ぶ | 手綱こんにゃく | 塩もみ+2分ゆでる |
| 干し椎茸 | 亀甲・長寿 | そのまま・飾り切り | 戻し汁もだしに |
| たけのこ | まっすぐ育つ | くし形 | 下ゆで済みを使う |
| 絹さや | 彩り | 筋を取る | 別ゆでして最後に |
手綱こんにゃくは、短冊の真ん中に切れ目を入れて、片端をくぐらせるだけ。ひと手間で、お重の中がぐっと正月らしくなります。
里芋やにんじんの角を薄く削る面取り。飾りだと思われがちですが、角がぶつかって崩れるのを防ぐための仕事です。
煮しめは煮汁が少ない状態で長く煮るので、鍋の中で具が触れ合います。角が立っていると、そこから欠けて、欠片が煮汁を濁らせる。
若い頃、面取りを省いた私の鍋を見て、親方が言いました。「濁りは、角から出るんや」。
里芋は六方むきといって、上下を切り落として側面を6面に。手間はかかりますが、これをやった年の重箱は、三が日を過ぎても形が残っています。
削った皮や端は捨てずに、きんぴらや味噌汁に回してくださいね。
煮しめの基本の作り方(6工程)

①下ごしらえをすませる
れんこんは酢水に、ごぼうは水にさらす。里芋は塩でもんで洗い、こんにゃくは塩もみして2分ゆでる。干し椎茸は水で戻します。
ここが8割です。下ごしらえの差が、そのままお重の顔になります。
②だしと調味料を合わせる
鍋にだし800ml、しょうゆ大さじ3、みりん大さじ3、酒大さじ2、砂糖大さじ2を入れて火にかけます。
干し椎茸の戻し汁も、ここで一緒に。うま味が段違いになります。
③色を出す具から入れる
こんにゃく、ごぼう、干し椎茸、たけのこ、里芋、れんこんの順に。にんじんと絹さやは、まだ入れません。
煮立ったらアクをすくって、火を弱めます。
④落とし蓋をして、煮汁が1/3になるまで
落とし蓋をして、弱めの中火で20〜25分。ときどき鍋を揺すって、煮汁を全体に回します。
かき混ぜないでください。箸で動かすと、そこから崩れます。
⑤火を止めて、そのまま冷ます
煮汁が1/3ほどになったら火を止めます。味が入るのは、冷めていくときです。
最低30分、できれば1時間。ここを待てるかどうかで、味の深さが変わります。
⑥にんじんと絹さやを合わせる
別鍋で薄味に煮た梅型にんじんと、塩ゆでした絹さやを、最後に加えます。
これで、赤と緑が茶色に沈まずに残ります。盛りつけるときは、色ものを上に。
煮汁の黄金比と「煮しめる」火加減

分量は、グラム数ではなく「だし10:しょうゆ1:みりん1」という比率で覚えると、鍋の大きさが変わっても迷いません。
- おせち用は、少し濃いめに
だし800mlにしょうゆ大さじ3。日持ちさせるための昔ながらの配合です。 - 普段のおかずなら大さじ2半
その日のうちに食べるなら、少し軽くして素材の味を立てます。 - 砂糖は先、しょうゆは後が基本
ただし煮しめは最初に全部合わせて構いません。長く煮るあいだに入っていきます。 - 酒は臭みを抜き、みりんは照りを出す
どちらも省かないでください。仕上がりの艶が変わります。
火加減は、煮立てたあとは弱めの中火をずっと保つ。ぐらぐら沸かすと煮くずれますし、弱すぎると煮汁が減らずに味が入りません。
落とし蓋は「紙一枚」でいい
煮しめは煮汁が少ないので、落とし蓋がないと上の具に味が届きません。
専用の木蓋がなくても大丈夫です。クッキングシートを鍋の直径に切って、真ん中に穴をあけるだけ。これで煮汁が対流して、全体に回ります。
アルミホイルでも代用できますが、酸に弱いので、酢を使う料理では紙のほうが安心ですね。
それともうひとつ。鍋は具が重ならない広さのものを選んでください。二段に積み上がると、下の具が潰れます。
家庭では、一度に作らず二回に分けるほうが、結局きれいに仕上がります。
色よく仕上げる、3つの分け方

煮しめが茶色一色になるのは、腕の問題ではありません。色を残したい具まで、同じ鍋で煮てしまっているからです。
①れんこんは酢水にさらす
れんこんは切った端から色が変わります。切ったらすぐ酢水に5分。白さが残り、歯ざわりもシャキッとします。
花れんこんにするなら、穴と穴のあいだを削って花びらの形に。難しければ、厚めの輪切りでも十分です。
②にんじんは別鍋で薄味に
にんじんはしょうゆの色を吸いやすく、一緒に煮ると赤が沈みます。だしと少しの塩、みりんだけで別に煮ると、鮮やかなまま。
梅型に抜いて、面取りをして。これがお重の中で効いてきます。
③絹さやは塩ゆでして最後に
絹さやを煮汁に入れると、数分で色が抜けて茶色になります。塩を入れた湯で1分ゆで、冷水に取って色を止める。
盛りつけの直前にのせるだけで、重箱がぱっと明るくなりますよね。
煮しめの主役は根菜です。八訂の数値で見ると、ごぼうは100gあたり約58kcal・食物繊維約5.7gと、野菜のなかでも食物繊維が多い部類に入ります。
れんこんは100gあたり約66kcal、里芋は約53kcal。どれも軽く、種類を並べるほど栄養の幅が出ます。
干し椎茸や昆布のうま味が効いているので、しょうゆを控えめにしても物足りなくなりません。
※文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」を参考にした概算値です。
よくある失敗と対策

- 全体が茶色くぼやける
色を残す具まで同じ鍋で煮ています。にんじんは別鍋、絹さやは別ゆでにしてください。 - 味が表面だけで中に入らない
煮汁が多いか、煮詰めが足りません。落とし蓋をして1/3まで煮て、火を止めてから冷ましてください。 - 里芋がドロドロになる
ぬめりを取らずに煮たか、煮すぎです。塩でもんで洗ってから、あとのほうに入れてください。 - 具が煮くずれる
面取りをしていないか、箸でかき混ぜています。鍋を揺すって煮汁を回してください。 - れんこんが黒っぽくなる
酢水にさらしていません。切ったらすぐ、5分だけさらしてください。
日持ちと保存(おせちだからこそ)

ここは、はっきり書いておきます。
「おせちは1週間もつ」は、昔の話です。冷蔵庫がなく、今よりずっと濃い味つけだった時代の知恵で、現代の家庭の味つけには当てはまりません。
重箱に、直接お箸を入れない
まず線から。粗熱は30分以内に取ります。大きな鍋のまま置かず、浅い容器に移して広げてください。ゆっくり冷めていくあいだが、いちばん傷みやすい時間です。
冷蔵は3〜4日。味が濃いぶん、普段の煮物より1日ほど長くもちますが、それ以上は見込まないでください。
そして、お正月ならではの注意がひとつ。重箱に取り分け用の箸を用意して、直箸にしないことです。何日も食卓に出す料理なので、ここが日持ちを大きく左右します。
冷凍は具を選びます。こんにゃく・里芋・じゃがいもは冷凍に向きません。こんにゃくはゴムのようになり、里芋は崩れます。れんこん・にんじん・ごぼう・椎茸・たけのこなら3週間まで。
温め直すときは、中心まで湯気が立つまで(75℃で1分以上が目安)。煮しめは冷たいままでもおいしい料理なので、食べる分だけ取り分けて温めるのが、いちばん傷めません。
一度解凍したものを、また凍らせるのは避けてくださいね。
高齢者や子供にやさしい煮しめ

煮しめはやわらかく煮える料理ですが、具のなかに難所がいくつかあります。
高齢のご家族に出すとき
こんにゃく・ごぼう・たけのこの3つが難所です。こんにゃくは弾力があって噛み切りにくく、ごぼうとたけのこは繊維が口に残ります。
薄く小さくするか、思い切って外してください。れんこんも硬いので、5mmほどの薄切りにして、長めに煮ます。
お子さんに出すとき
里芋のような丸くてつるんとしたものは、小さく切ってから。丸い形のものを5歳ごろまで丸ごと出さないのは、消費者庁が示している線です。
味が濃いので、取り分けてから煮汁を少し足して薄めるか、別鍋で薄味に煮たものを用意してあげてくださいね。
しょうゆ大さじ3(約54g)の食塩相当量は、およそ7.8g。6人で分ければ1人あたり約1.3gですが、煮汁を残すので実際はもう少し少なくなります。
気をつけたいのは、おせちは何日も同じものを食べ続けることです。かまぼこ、田作り、黒豆、そして煮しめ。一つひとつは少なくても、三が日で積み上がります。
食塩相当量の目標量は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で成人男性7.5g未満・成人女性6.5g未満/日です。
お雑煮を薄味にする、野菜の小鉢を一つ足す。それだけで、三が日の帳尻は合いますよ。
なお、塩分や糖分の指示を受けている方は、かかりつけの先生の指示を優先してくださいね。
私は現役介護士でもあります。
お正月は、いつもの食事とは意味が違います。食べられる量が少なくなっていても、お重を目の前に置くこと自体に、季節を感じる力があります。
そのうえで、口に入れるものは調整してください。こんにゃくとごぼうは外す。れんこんは薄く切って、指でつぶせるまで煮る。里芋は小さく切って、煮汁で少しのばす。
汁気が少ない料理なので、飲み込みに不安がある方には、煮汁を取っておいてとろみをつけ、少しかけて出すとまとまりやすくなります。
梅型のにんじんや絹さやは、やわらかく煮れば形も色も残ります。形が残っているものが一つあると、食卓の空気が変わります。
全部を食べきれなくてもかまいません。煮しめを、里芋のやわらか煮ひと皿に置き換える日があっていいと思っています。
煮しめの作り方でよくある質問
Q1.煮しめと筑前煮の違いは何ですか?
いちばん大きな違いは、炒めるかどうかです。筑前煮はごま油で炒めてから煮ますが、煮しめは炒めません。
煮しめは煮汁を1/3まで煮詰めて味を含ませる料理で、味も濃いめ。日持ちを重視した作り方ですね。
Q2.具材は全部そろえないとだめですか?
そんなことはありません。れんこん・里芋・にんじん・こんにゃく・干し椎茸の5つがあれば、煮しめの形になります。
縁起の意味を大事にしたいなら、見通しのれんこんと、子孫繁栄の里芋は入れておきたいところですよね。
Q3.前もって作るなら、いつがいいですか?
大晦日の朝から昼にかけて作るのがオススメです。冷蔵で3〜4日なので、三が日にちょうど合います。
作ったら粗熱を30分以内に取って、浅い容器で冷蔵庫へ入れてください。
Q4.煮汁が余ったらどうしますか?
捨てないでください。高野豆腐を炊いたり、うどんのつゆに割ったりできます。
翌日の煮しめを温め直すときに、少し足すのもいいですよ。乾かずにしっとり仕上がります。
Q5.冷凍はできますか?
具を選べばできます。れんこん・にんじん・ごぼう・椎茸・たけのこは3週間まで。
こんにゃく・里芋・じゃがいもは向きません。食感が変わってしまうので、この3つは取り除いてから冷凍してくださいね。
まとめ。。。

煮しめの作り方を、最後にもう一度まとめますね。
- 煮しめは「煮しめる」料理。炒めない
ここが筑前煮との分かれ道です。 - 面取りは煮くずれを防ぐ仕事
濁りは角から出ます。飾りではありません。 - 黄金比はだし10:しょうゆ1:みりん1
おせち用は少し濃いめに。だし800mlにしょうゆ大さじ3。 - 落とし蓋をして、煮汁が1/3になるまで
かき混ぜず、鍋を揺すって煮汁を回します。 - 味が入るのは、冷めていくとき
火を止めて最低30分。ここを待つのが仕上げです。 - 色を残す具は分けて煮る
れんこんは酢水、にんじんは別鍋、絹さやは別ゆでで最後に。 - 冷蔵3〜4日。直箸にしない
「1週間もつ」は昔の話です。粗熱は30分以内に。 - 難しい具は外していい
こんにゃくとごぼうを抜いても、煮しめの味は立ちます。
煮しめって、地味な見た目のわりに、下ごしらえの一手一手がぜんぶ味に出る料理なんですよね。
年の瀬に大きな鍋を出して、里芋の皮をむいて、れんこんを酢水に放って。あの時間そのものが、お正月の始まりだと私は思っています。
今年のお重にも、色の残った煮しめをひと段。ぜひ作ってみてくださいね。
フッくんでした!
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