料理研究家、料理大好きフッくんです。
元旦の朝の、湯気の立つ一椀。白味噌の甘い香りに、金時人参の紅。お雑煮は、一年でいちばん静かで、いちばん特別な椀ものですよね。
先に結論からお伝えします。丸餅は煮る、角餅は焼く。関西の白味噌は「味噌汁の倍量」が正解。そして餅は雑煮の鍋で煮ず、別茹でして椀で合流させる。この3つの型で、元旦の朝の一椀が板場の顔になります。
こんなお悩み、ありませんか?
- 白味噌の雑煮が、なんだか薄くてぼやける
白味噌は普段の味噌汁の倍量が正解。甘いとろりが本場の顔です。 - 餅が汁に溶けて、どろどろになる
餅の別茹で。汁が濁らない板場の型をお教えします。 - 関東と関西、どっちの作り方が正解?
どちらも正解です。東西の型と黄金比を両方お届けします。 - 元旦の朝にバタバタしたくない
大晦日仕込みの段取り表で、元旦は10分で完成します。
現役料理人20年、白味噌の丸餅で育った大阪の台所から「お雑煮の作り方」を完全解説します。最後まで読めば、元旦の朝がいちばん穏やかな時間になりますよ🍳

東西の雑煮(丸餅は煮る、角餅は焼く)

お雑煮ほど、地域で顔が変わる料理はありません。
関西は、白味噌の甘い汁に、煮た丸餅。関東は、すまし汁に、焼いた角餅。丸餅の丸は円満の縁起、角餅は江戸の人口を支えた「のし餅を切る」効率から広がったと言われています。香川のあん餅入り白味噌雑煮、出雲のぜんざい風など、旅をすればするほど雑煮の地図は面白い。
そして「丸餅は煮る、角餅は焼く」が基本の型。煮た丸餅のとろりとした一体感、焼いた角餅の香ばしさと歯切れ。どちらもその土地の汁に合わせて育った、理にかなった組み合わせなんです。実家の雑煮こそが、あなたの正解。この記事は東西両方の黄金比を置いておきます。
ちなみに「雑煮」の言葉は、いろいろな具を煮合わせる「烹雑(ほうぞう)」から来たと言われています。年神様へのお供えを、年の初めにひとつの椀でいただく。特別な料理というより、「今年も一緒に食べていく」という家族の合図の椀なんです。
具にも縁起の言葉が乗っています。里芋は小芋がつく姿から子孫繁栄、大根は輪切りの円から円満、関東の小松菜は「菜」に名を上げるの願かけ。椀の中は、小さな縁起物の集まりなんですよ。
黄金比(関西白味噌と関東すまし)

関西・白味噌雑煮(2人前)

だし(昆布)600ml・白味噌大さじ4〜5・丸餅2個・金時人参・大根・里芋。白味噌の量に驚かれますが、これが本場の顔。白味噌は塩分がおだやかなので、普段の味噌汁の倍量でようやく、あの甘いとろりに届きます。少なめに作った白味噌雑煮が「ぼやける」のは、量の遠慮が原因なんです。
関東・すまし雑煮(2人前)
だし(かつお昆布)600ml・醤油大さじ1・塩小さじ2分の1・みりん大さじ1・角餅2個・鶏もも・小松菜・かまぼこ。澄んだ汁に焼き餅の香ばしさ、鶏のだしが重なる、キレのいちばんいい椀です。鶏ももは中心までしっかり、中心温度75℃で1分(竹串から透明な汁)が目安です。仕上げにゆずの皮をひとかけ。「吸い口」と呼ばれるこの香りが、すまし雑煮の背筋を伸ばしてくれます。
白味噌を溶いたら、そこからは沸騰させないでください。ぐらぐら沸かすと、白味噌の甘い香りが飛んで、風味がざらつきます。具に火が通ってから火を弱め、味噌を溶いて、ふつふつの手前で止める。
これは普段の味噌汁と同じ理屈ですが、白味噌は香りが命のぶん、より効いてきます。元旦の朝こそ、火を弱める勇気ですよ。
この記事の看板「餅の別茹で」(汁が濁らない)

- ①餅は、雑煮の鍋で煮ない
雑煮の鍋で餅を煮ると、溶け出したでんぷんで汁が濁り、とろけた餅が具に絡みつきます。板場の雑煮が澄んでいるのは、この分業のおかげです。 - ②別鍋の湯で、丸餅は3〜4分やわらかく茹でる
ゆらゆらの湯で、餅が指で押せるやわらかさまで。関東の角餅は、トースターや網でこんがり焼いてください。 - ③椀に餅を置いて、上から汁を注ぐ
注ぐ汁も茹で湯も熱いので、椀は安定した場所に置いて、子供は台所から少し離してくださいね。餅が椀で汁と合流する。この順番だけで、汁は最後まで澄んだまま、餅はやわらかいまま。おかわりの二杯目も、同じ手順で気持ちよく出せます。

大晦日の段取り(元旦は10分で完成)

元旦の朝の穏やかさは、大晦日の15分が作ります。
| いつ | やること |
|---|---|
| 大晦日 | だしを引く・野菜(人参・大根・里芋)を下茹でして、だしごと鍋で冷蔵 |
| 元旦の朝 | 鍋を温める→白味噌を溶く(またはすましを調える)→餅を別茹で→椀で合流。10分で完成 |
野菜はだしの中で一晩休むあいだに、味を静かに含んでいきます。煮物と同じ「冷めるときに味がしみる」理屈が、ここでも働いてくれるんです。元旦の台所仕事は、餅の別茹でと味噌溶きだけ。湯気の向こうで、おめでとうの声に間に合いますよ。
関西の雑煮の紅白、金時人参と大根。薄い輪切りを梅型で抜くだけで、椀の中が一気にお正月の顔になります。型がなければ、五角に切り込みを入れて花びらにそぐ「ねじり梅」が板場の手仕事。
抜いた残りの端は、雑煮の下茹でと一緒に炊いて、翌日の味噌汁の具へ。正月の台所に、捨てるものはありませんよ。

餅の安全(いちばん大事な話)

お雑煮の記事として、ここから逃げるわけにはいきません。
- 餅による窒息事故は、毎年お正月に起きています
消費者庁が毎年、年末年始に注意を呼びかけています
楽しい椀の中の、いちばん現実的なリスクです。家族の顔ぶれに合わせた備えをしてください。 - 元気な大人にも、4つの約束
小さく切る・汁や水分と交互に・急がない・ひとりで食べない
よく噛んで、飲み込んでから次のひと口へ。テレビの笑い声の中の「ながら食べ」が、いちばんの油断です。 - 高齢の方の椀は「餅なし」が基本、子供は5歳ごろまで見送り
噛む力と飲み込む力が弱い方に、餅は小さく切っても危険が残ります
具だくさんの汁だけでも、雑煮は十分お正月の顔です。餅の風味の代替と、やわらかい正月の膳の組み方は、お正月の介護食献立の記事が本場です。
お雑煮の栄養と、家族への出し方

切り餅1個(50g)は、エネルギーでご飯茶碗半分強にあたります(白味噌雑煮1杯・餅1個でおよそ260kcal)。2個入れれば、椀ひとつでご飯一杯分を超える主食です。
おせちと一緒の元旦は、雑煮の餅は1個から。野菜の具だくさんにすると、椀の満足感はそのままに、お正月の食べ過ぎをやさしく先回りできますよ。
白味噌は大豆、すましの醤油は大豆と小麦、かまぼこには卵やえびを含む商品があります。餅も、大福などと同じ工場の商品には表示の確認を。
お正月は親戚の集まる食卓です。「この椀、何が入ってる?」に即答できるよう、使った食材のメモを台所に貼っておくのが、集まりの日の小さな親切です。
高齢者や子供にやさしいお雑煮

介護の食卓では、餅は基本お出ししません。高齢の方の椀は、やわらかく炊いた大根・人参・里芋と鶏だんごの具だくさん雑煮に。白味噌のとろりとした汁は、実は飲み込みにやさしい濃度で、餅がなくてもお正月の香りは椀に満ちています。
餅の風味をどうしても、という方には、ういろうや上新粉のゼリー寄せなど、歯切れのいいやわらか代替の道があります。上新粉を使ったやわらか仕立ては、お正月の介護食献立の記事に、嚥下対応の調理5原則とあわせてまとめてあります。
小さなお子さんの椀も、5歳ごろまでは餅なしで。かまぼこや人参の飾り切りが、子供の椀のお正月係を立派に務めてくれます。
食べている間は、高齢の方もお子さんも、そばで見守ることを元旦の約束にしてください。
基本のお雑煮のレシピ(関西白味噌・2人前)

【関西・白味噌雑煮(2人前)】
昆布だし…600ml
白味噌…大さじ4〜5
丸餅…2個
金時人参・大根…各5cm(輪切り・梅型)
里芋…2個(下茹で)
かつお節…仕上げに
1. 大晦日: だしで人参・大根・里芋をやわらかく煮て、だしごと冷蔵します。
2. 元旦: 鍋を温め、火を弱めて白味噌を溶きます(沸かさない)。
3. 丸餅を別鍋の湯で3〜4分、やわらかく茹でます。
4. 椀に餅を置き、具と汁を注ぎ、かつお節をのせて完成です。
【関東・すまし雑煮(2人前)】
かつお昆布だし…600ml・醤油…大さじ1・塩…小さじ2分の1・みりん…大さじ1
角餅…2個・鶏もも…100g・小松菜…2株・かまぼこ…4切れ
1. だしを温め、そぎ切りの鶏ももを入れて中心までしっかり煮ます(75℃で1分・竹串から透明な汁が目安)。
2. 調味料と下茹でした小松菜、かまぼこを加えます。
3. 角餅はトースターでこんがり焼き、椀に置いて汁を注いで完成です。
お雑煮のよくある質問
Q1. 白味噌はどこで買えますか? 普通の味噌で代用できますか?
スーパーの味噌売り場で「白味噌」「西京味噌」の表示のものを。普通の淡色味噌では、あの甘いとろりにはなりません。年に一度でも、雑煮のためだけに一箱の価値があります。残りは味噌汁に混ぜたり、鰆の味噌漬けにしたり、春まで働いてくれますよ。
Q2. 餅を毎回別茹でするのが面倒です
まとめて茹でて、水にくぐらせてラップで包んでおけば、椀に置いて熱い汁を注ぐだけで戻ります。元旦の朝の二杯目、三杯目はこの方式が楽。焼き餅派は、トースターでまとめ焼きでどうぞ。餅の保存と解凍の本場は、餅の冷凍保存の記事です。
Q3. 雑煮のだしは、いりこやあごでもいいですか?
その土地のだしこそ正解です。九州のあごだし、瀬戸内のいりこだし、それぞれの雑煮の顔を作ってきただしです。この記事の黄金比のだし600mlを、わが家のだしに置き換えて使ってください。
Q4. 三が日、雑煮に飽きない工夫は?
二日目は餅を焼きに替えて香ばしさを、三日目は汁を替えるのが板場の答えです。白味噌の家はすましへ、すましの家は味噌へ。同じ仕込みの具で、椀の顔ががらりと変わります。東西の黄金比を両方置いたのは、実はこの三が日ローテのためでもあるんですよ。
Q5. お雑煮っていつまで食べるものですか?
決まりはありませんが、松の内(関東は1月7日・関西は15日ごろまで)が目安とされます。鏡開き(11日)の鏡餅を雑煮やぜんざいでいただくのも、昔ながらの流れ。餅の在庫と相談しながら、わが家の松の内をどうぞ。
まとめ。。。

- 丸餅は煮る、角餅は焼く
関西=白味噌+丸餅、関東=すまし+角餅。実家の椀があなたの正解です。 - 白味噌は味噌汁の倍量(大さじ4〜5)
遠慮が「ぼやけ」の犯人。甘いとろりが本場の顔です。 - 白味噌は沸かさない
香りが命。ふつふつの手前で止める、火を弱める勇気を。 - 餅は別茹でして椀で合流
汁は澄んだまま、餅はやわらかいまま。板場の分業です。 - 大晦日に仕込めば元旦は10分
だしと具は一晩で味を含みます。朝の台所は餅と味噌だけ。 - 餅の安全は4つの約束で
小さく・水分と交互・急がない・ひとりで食べない。見守りを元旦の約束に。 - 高齢の方の椀は餅なしが基本・子供は5歳まで見送り
餅なしの具だくさんも、もうひとつの正解。代替はお正月介護食の記事へ。 - お正月の献立・餅の保存・介護食の記事とあわせて
正月の面がそろいました。元旦の朝の一椀から、良い一年を。
大晦日の15分の仕込みと、餅の別茹で。それだけで元旦の朝は、湯気の向こうの「おめでとう」に、ゆっくり間に合います。今年の一椀が、いい一年の始まりになりますように。
最後までお読みいただきありがとうございました。
フッくんでした!






