料理研究家、料理大好きフッくんです。
クリスマスの主役、ローストチキン。
お店で焼いてきた私が、いちばん多く受ける相談は「皮はパリッとしたのに、中がまだ赤かった」です。
逆に、火を通そうと長く焼いて、パサパサになった話も同じくらい聞きます。
実は、この二つの失敗は原因が同じで、直し方も同じなんです。

- 皮はパリッと、中はしっとりにしたい
塩水と「乾かす」下準備で、両方いっぺんに解決します。 - 丸鶏と骨付きもも、どっちを買えばいい?
人数・時間・道具で選ぶ基準を、比較で出します。 - 何度で何分焼けばいいのか分からない
丸鶏・骨付きもも別の早見表と、中心75℃の確かめ方をまとめました。 - 切ったら肉汁が流れて、皿がびしょびしょ
「休ませる」の10分で、肉汁は肉の中に戻ります。 - 子どもや高齢の家族にも安心して出したい
骨と皮の外し方、辛くない味、生焼けの線を栄養士×現役介護士の視点で。
ローストチキンはどこ生まれ?暖炉の料理がクリスマスの主役になるまで

作り方の前に、ルーツを少しだけ。
鶏を丸ごと火であぶる料理は、ヨーロッパの暖炉で串を回して焼いた家庭料理が原型です。オーブンが家庭に入る前は、暖炉の火の前で串を回し、落ちる脂を受けて、それをまた肉にかける。今の「脂をかけながら焼く」は、この名残なんですよね。
イギリスでは日曜に家族で食べる「サンデーロースト」の定番になり、日本でクリスマスにチキンを食べる習慣は、1970年代ごろから広まったと言われています。もともと「家族が集まる日に、ひとつの鶏をみんなで分ける」料理なんですよね🍗
ローストチキンの基本:丸鶏と骨付きもも、どっちを選ぶ?

最初に決めるのは「何を焼くか」です。ここを間違えると、あとの温度も時間も合わなくなります。
骨付きもも:はじめてなら、まずこちら
1本300g前後で、1人1本。オーブン200℃で35〜40分と、時間が短くて火の通りも読みやすい。はじめてのローストチキンは骨付きももをオススメします。
丸鶏:4人以上で、時間に余裕がある日に
1.2kg前後の丸鶏で4〜5人分。焼き時間は1時間半ほど見て、前日から塩水に漬けるので、二日がかりの料理です。
そのかわり、食卓に出したときの景色は別格です🌸
骨付きももには、足首側に太い筋が1本と、身の中に細かい筋が何本も走っています🍳
太い筋は包丁の先で引っかけて抜き、細かい筋は骨に沿って切り込みを入れながらぶちぶちと外す。ここをさぼると、焼き縮みで皮が破れ、噛んだときに筋が残ります。
私の店では、筋取りをしていないももは焼かせてもらえませんでした。地味ですが、仕上がりの半分はここで決まります。
下味の黄金比:塩水(ブライン)で、中までしっとり

皮パリ中しっとりの「中しっとり」を作るのが、塩水漬けです。
比率は覚えやすく、水500ml:塩15g:砂糖15g=3%の塩水。これに鶏を沈めて、骨付きももなら3〜6時間、丸鶏なら一晩(8〜12時間)冷蔵庫で漬けます。
なぜ塩水なのか
塩をふるだけだと、表面だけ塩辛くて中は味がない、ということが起きます。塩水なら、塩と水分が肉の中まで入って、焼いても水分が抜けにくい。お店の言い方をすると「塩は肉に水を持たせる仕事」です。砂糖は塩の角を取って、皮の焼き色も助けてくれます。
ハーブと香味は塩水に入れる
ローズマリー、タイム、ローリエ、つぶしたにんにく、黒こしょうの粒は、塩水に一緒に入れておくと香りが肉に移り、表面にすり込むよりムラがありません。ちなみにキビ糖を砂糖の代わりに使うと、皮の色が一段こっくりします。私はお店でもキビ糖派でした。
皮パリの科学:濡れた皮は焼けない

皮がパリッとしない原因は、九割が「皮が濡れている」ことです。
皮の表面に水があると、オーブンの熱はまず水を蒸発させることに使われ、そのあいだ皮は焼けずに蒸されている状態。だから中に火が通っても、皮は白いまま、ということが起きます。
①塩水から上げて、ペーパーで徹底的に拭く
皮のひだの中、もものつけ根、丸鶏ならおなかの中まで。「もう乾いた」と思ってから、もう一枚ペーパーを当ててください。
②ラップをせず、冷蔵庫でひと晩
拭いた鶏を網にのせ、ラップをかけずに冷蔵庫で一晩置きます。冷蔵庫の乾いた空気が、皮の水分を抜いてくれます。翌朝、皮が少し張って半透明になっていたら成功。時間がない日は、扇風機の風を30分当てるだけでも違います。
③焼く直前に、油を薄く
乾いた皮に、オリーブオイルか溶かしバターをハケで薄く。油が熱を運んで焼き色を均一にします。厚く塗ると逆に蒸れるので、薄く、が肝心です。
お店の裏技をひとつ🍳 塩水から上げて乾かした鶏を、オーブンに入れる前に、皮目だけ炭火(なければバーナー)でさっとあぶります。
皮の脂が先に溶け出して、オーブンの中で自分の脂で揚がるように焼け、皮の乾き方が一段上がります。
ただし、粉や衣をつける前の鶏だけの状態で(粉ごとあぶると焦げます)。あぶった時点で中は生なので、そのままオーブンへ。
安全は必ず守ってください。まわりに燃えるものを置かない、換気をする、耐熱バットの上で行う、子どもを近づけない。バーナーがなければ飛ばして大丈夫です。
温度と時間の早見表:丸鶏と骨付きもも別

オーブンは機種で差が出るので、数字は目安。最後は必ず中心の温度で判断してください。
| 種類・重さ | 温度と時間 | 休ませ | 確かめ方 |
|---|---|---|---|
| 骨付きもも(1本300g前後) | 200℃で35〜40分 | 10分 | 骨のきわの中心が75℃で1分以上 |
| 骨付きもも(1本400g超) | 200℃で45〜50分 | 10分 | 同上・途中でアルミをかぶせて皮を守る |
| 丸鶏(1.0〜1.2kg) | 220℃で15分→180℃で55〜65分 | 15分 | ももと胴のつけ根の中心が75℃で1分以上 |
| 丸鶏(1.5kg前後) | 220℃で15分→180℃で75〜85分 | 15分 | 同上・1kgあたり180℃で45分+15分が目安 |
※温度計は、骨に当たらないように、いちばん厚い部分の中心に刺してください。
なぜ「高温→中温」の2段階なのか
最初の220℃は、皮を一気に乾かして焼き色をつけるため。そのまま220℃で焼き続けると、皮が焦げるころに中がまだ生、という早見表の裏側が起きます。
だから15分で180℃に落として、中までじっくり。皮は高温で、中は中温で、と役割を分けるのが2段階の意味です。
休ませる10分で、肉汁は肉に戻る
焼き上がった直後の肉汁は、熱で外へ向かって動いています。ここで切ると、皿の上に流れ出す。アルミホイルをふんわりかぶせて10〜15分置くと、肉汁が肉の中に戻ります。この間も余熱で中心温度は2〜3℃上がるので、「休ませ」は加熱の続きでもあるんです。
鶏の生焼けは、色ではなく温度で判断する

ローストチキンで、いちばん守ってほしい線です。
鶏肉の生焼けで起きる食中毒の代表がカンピロバクター。下痢や発熱が数日続き、まれにギラン・バレー症候群という手足のしびれや麻痺につながることがあります。
大事なのは、新鮮な鶏でも起こるということ。「今日買ったばかりだから大丈夫」は通用しません。中心温度75℃で1分以上、これだけが線です。
骨付きは骨のまわりに火が通りにくいので、判断は色ではなく温度で。温度計を1本持っておくと、毎年のクリスマスで迷わなくなりますよ。
ちなみに「63℃で30分」という線は、低温調理器で温度を保てるときだけの話。オーブンや鍋では家庭は75℃1分の線で考えてください。
お店のローストチキンのレシピ(骨付きもも・丸鶏)

~材料(4本分)~
・骨付き鶏もも肉…4本(1本300g前後)
【塩水】
・水…1L
・塩…30g
・キビ糖(または砂糖)…30g
・にんにく…2かけ(つぶす)
・ローズマリー…2枝
・ローリエ…1枚
・黒こしょう(粒)…10粒
【仕上げ】
・オリーブオイル…大さじ1
~作り方~
①もも肉の太い筋と細かい筋を取り、骨に沿って切り込みを1本入れる
②塩水の材料を混ぜて塩と糖を溶かし、もも肉を沈めて冷蔵庫で3〜6時間
③取り出してペーパーで徹底的に拭き、網にのせてラップをせず冷蔵庫で一晩乾かす
④焼く30分前に冷蔵庫から出して常温に戻し、皮にオリーブオイルを薄く塗る
⑤200℃に予熱したオーブンで35〜40分。途中20分で天板の脂を皮にかける
⑥骨のきわの中心が75℃で1分以上になっているのを温度計で確かめる。竹串を刺して透明な汁が出るのも目安
⑦アルミをふんわりかけて10分休ませて完成
~材料(4〜5人分)~
・丸鶏…1羽(1.2kg前後)
【塩水】
・水…2L
・塩…60g
・キビ糖(または砂糖)…60g
・にんにく…3かけ(つぶす)
・ローズマリー…3枝
・タイム…3枝
・ローリエ…2枚
【詰め物】
・玉ねぎ…1/2個(くし切り)
・レモン…1/2個
・にんにく…2かけ
【仕上げ】
・溶かしバター…大さじ2
・たこ糸
~作り方~
①丸鶏はおなかの中を流水で洗い、水気を外も中も徹底的に拭く
②塩水の材料を混ぜて溶かし、丸鶏を沈めて冷蔵庫で一晩(8〜12時間)
③取り出して外も中も拭き、網にのせてラップをせず冷蔵庫で半日〜一晩乾かす
④焼く1時間前に常温に戻し、おなかに詰め物を入れ、足をたこ糸で縛る(縛ると火の通りが揃う)
⑤皮に溶かしバターを薄く塗り、220℃に予熱したオーブンで15分
⑥180℃に下げて55〜65分。20分ごとに天板の脂を皮にかけ、翼と足先が焦げそうならアルミで覆う
⑦ももと胴のつけ根の中心が75℃で1分以上を温度計で確かめる
⑧アルミをふんわりかけて15分休ませ、たこ糸を外して切り分ける
鶏を扱ったシンクとまな板は、すぐに洗剤で洗って熱湯をかけておいてください。生の鶏の水はねが、サラダなど生で食べるものにかかるのがいちばん危ないんです。

失敗と対策:ローストチキンでよくある3つ

お店で新人に教えるときも、失敗はこの3つに集まります。
- 切ったら中が赤い(生焼け)
原因は常温に戻していないか、骨付きの厚みを読み違えたか
冷蔵庫から出してすぐ焼くと、中心が冷たいまま。焼く30分前(丸鶏は1時間前)に出しておく。中が赤かったら、切った面を上にしてアルミをかけ、180℃で10分追加して温度を測り直してください。 - 皮が焦げているのに、中がまだ生
原因は温度が高すぎる・天板が上段すぎる
220℃のまま焼き続けた典型です。皮に色がついたら180℃に落とし、天板は中段へ。焦げそうな翼と足先はアルミで覆い、足りなければ全体にふんわりかけて焼き切ります。 - 火は通ったのにパサパサ
原因は塩水なし・休ませなし・焼きすぎのどれか
塩水に漬けていない鶏は、焼くと水分がそのまま抜けます。休ませずに切っても同じ。次回は塩水3%と休ませ10分を必ず。今回のぶんは、薄く切ってグレイビーをたっぷりかけると、別のおいしさになりますよ。
グレイビーソースの黄金比:天板の脂を捨てない

焼き上がった天板に残った脂と焼き汁が、そのままソースの素です。
比率は天板の脂大さじ2:小麦粉大さじ1:水またはスープ200ml。天板を弱火にかけ、脂に小麦粉をふって1分炒め、スープを少しずつ加えてのばし、とろみがついたら塩こしょうで味を決めます。
お店では赤ワインを大さじ2、アルコールを飛ばしてから加えていました。家庭なら、しょうゆを小さじ1落とすと、ごはんにも合う味に。脂が多すぎたら上澄みを取って大さじ2だけ残してください。
保存と温め直し:焼いた日に食べ切れないとき

粗熱は、切り分けて浅い容器に広げ、30分以内に取ります。丸鶏のまま置くと、中心がゆっくり冷めるあいだに傷みやすいので、骨から外してから冷ましてください。
冷蔵は2〜3日、冷凍は骨を外してほぐし、煮汁かグレイビーと一緒に袋へ入れて2〜3週間が目安です。
温め直しは、中心まで湯気が立つまで(75℃で1分以上が目安)。電子レンジだけだと皮がしんなりするので、レンジで中を温めてからトースターで皮を2〜3分乾かす二段構えが、お店でも使う復活の方法です。
一度解凍した分の再冷凍は避けて、その日のうちに食べ切ってくださいね。
栄養士から見たローストチキン:皮と部位で数字が変わる

八訂の成分表では、若どりのもも肉(皮つき・生)は100gで約190kcal・たんぱく質約17g・脂質約14g🥢
同じもも肉でも皮なしなら約113kcal・たんぱく質約19g・脂質約5g。皮は香ばしさの主役ですが、脂質の主役でもあります。
骨付き1本(300g・可食部約220g)で、皮つきなら約420kcal。塩水3%で漬けたぶんの食塩相当量は1本で2g前後が目安なので、副菜は薄味にして、厚生労働省の食塩目標量(2025年版・成人男性7.5g・女性6.5g未満/日)を意識するとよいです。
たんぱく質は体をつくる材料。パーティーの主菜として、野菜のサラダやスープを添えると、献立の形が整いますよ。
ローストチキンは鶏肉のほか、グレイビーに小麦粉、仕上げにバター(乳)、詰め物や塩水にレモンや香辛料を使います🥢
ご家族やお客様に出すときは、この料理に使う特定原材料を確かめておくと安心です。グレイビーは米粉でも同じ比率で作れます。
高齢者や子供にやさしいローストチキン

私は栄養士で、現役の介護士でもあります。
高齢の方には、骨付きのまま出さず、骨を外してから繊維に沿ってほぐし、グレイビーや煮汁で湿らせて出すと食べやすくなります。皮は噛み切りにくいので、外すか細かく刻んでください。
噛む力や飲み込みが弱い方には、ほぐした肉を煮汁で煮含めて、とろみをつけたソースをかけると安心です。むせやすい方には胸肉よりもも肉のほぐし身を。
2歳以下のお子さんには、骨を完全に外し、皮を取り、小さくほぐして薄味に。塩水に漬けた鶏は塩分が中まで入っているので、お子さんの分は塩水の時間を短くするか、ソースをかけずに出してください。
はちみつをグレイズに使うレシピもありますが、1歳未満には加熱しても与えられません。家族に赤ちゃんがいる年は、はちみつなしのレシピで焼いてください。
そして鶏は、誰に出すときも中心75℃で1分以上。ここは年齢に関係なく同じ線です。
ローストチキンの作り方でよくある質問
Q1.オーブンがないとき、ローストチキンは作れる?
骨付きももなら、フライパンとふたで作れます。皮目から中火で8分焼いて返し、ふたをして弱火で15〜20分、最後にふたを取って皮目を2分。中心75℃で1分以上を温度計で確かめてください。丸鶏はフライパンでは火が通り切らないので、オーブンのある日に。
Q2.塩水に漬ける時間がないときは?
3%の塩水に骨付きももを沈めて常温で30分でも、何もしないよりずっと違います。そのあとは必ず拭いて、扇風機の風で30分乾かしてください。丸鶏は塩水なしだと胸がパサつくので、前日に漬けるところから予定を組むのがオススメです。
Q3.中心温度はどこで測ればいい?
骨付きももは、骨のきわのいちばん厚い部分。丸鶏は、ももと胴のつけ根です。温度計の先が骨に当たると高く出るので、骨をよけて刺します。75℃で1分以上を確かめたら、休ませに入ってください。
Q4.皮がどうしてもパリッとしない
拭き方と乾かす時間が足りていないことがほとんどです。ラップなしで冷蔵庫に一晩、これを飛ばさないでください。焼き上がり5分前だけ220℃に上げる方法もあります。
Q5.前日に焼いておいて、当日温め直しても大丈夫?
大丈夫です。焼いたら切り分けて粗熱を30分以内に取り、冷蔵庫へ。当日はレンジで中を温めてからトースターで皮を乾かし、中心まで湯気が立つまで(75℃で1分以上が目安)温めてください。
Q6.冷凍の鶏でも作れる?
作れますが、冷蔵庫で丸一日かけて完全に解凍してから。半解凍のまま焼くと、外は焼けて中は生、の典型になります。解凍後は水気が多く出るので、拭く工程は念入りに。
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まとめ。。。

- はじめてなら骨付きもも
1人1本・200℃35〜40分で読みやすい。丸鶏は4人以上で時間のある日に。 - 塩水は水500ml:塩15g:砂糖15g
3%の塩水で、骨付き3〜6時間・丸鶏は一晩。中しっとりの正体。 - 濡れた皮は焼けない
拭いて、ラップなしで冷蔵庫に一晩。皮パリはここで決まる。 - 丸鶏は220℃15分→180℃
皮は高温で、中は中温で。骨付きは200℃の一段でよい。 - 鶏は中心75℃で1分以上
色でなく温度で判断。新鮮でも生焼けは危ない。63℃30分は低温調理器だけ。 - 休ませ10〜15分
肉汁が肉に戻り、余熱で中心温度も上がる。切るのはそのあと。 - グレイビーは脂2:粉1:スープ200ml
天板の脂を捨てない。 - 高齢の方と子どもは骨と皮を外す
ほぐして湿らせて。はちみつは1歳未満に与えない。
皆さん、ローストチキン、焼ける気がしてきましたか?
皮パリ中しっとりは、才能でも高い道具でもなく、「塩水」と「乾かす」と「温度計」の三つで作れます。お店で新人が最初に覚える順番も、この三つでした。
今年のクリスマスは、食卓の真ん中に、あなたの焼いた鶏を🌸
最後までお読みいただきありがとうございました。フッくんでした!






