料理研究家、料理大好きフッくんです。
寒くなってくると、風邪をひく方が増えてきますよね。
高齢のご家族や利用者さんが風邪をひいたとき、何を食べてもらえばいいのか、迷う方も多いと思います。
こんな声を、よく聞きます。
- 「熱があって、何も食べたくないと言う」
これはご家族の声。食べないと体力が落ちそうで、心配になる。 - 「お茶を出しても、ひと口しか飲んでくれない」
これは介護職員の声。水分が足りているのか、気になってしかたがない。 - 何なら食べやすい?
おかゆ以外に、どんなものを出せばいいか知りたい。
この記事では、栄養士で、現役介護士でもある私が、高齢の方が風邪をひいたときの食事をお伝えします。
水分の目安から、食べやすいもの、避けるもの、回復に合わせた食事の階段、早めに受診したいサインまで、順番に見ていきましょう。

高齢者の風邪の食事——水分が先
高齢の方が風邪をひいたときは、食事より先に、水分をこまめに少しずつとってもらうことが大切です。
食事は、おかゆや煮込みうどんのような、やわらかく温かいものを、食べられる分だけで十分です。
水分がとれない、ぐったりしている、熱が続くといったときは、食事で様子を見ずに、早めに受診してください。
薬や病気のことはかかりつけの先生にお任せして、この記事では、家庭や介護の現場でできる食事の工夫をお伝えします。
持病のある方や、水分や塩分の制限を受けている方は、かかりつけの先生の指示を優先してください。
そのうえで、風邪の日の食卓でできることを、ひとつずつ見ていきましょう。
風邪のとき、気をつけたいこと3つ

高齢の方の風邪には、若い人とは少し違う気をつけどころがあります。
食事の工夫を考える前に、どこに気をつければいいかを見ておくと、手のつけどころが分かります。
のどの渇きに気づきにくい
体調不良の日の食事の記事でもお伝えしているとおり、「高齢の方は、のどの渇きを感じにくく、水分が不足していても気づきにくいことがあります」。
熱で汗をかいても、ご本人は「のどは渇いていない」とおっしゃることが多いんです。
食べる量が落ちる
熱やだるさで、いつもの半分も食べられない日が続くことがあります。
無理に食べてもらうより、食べられるものを少しずつ、回数を分けてお出しします。
むせやすくなることがある
体がだるい日は、飲み込む力もいつもより弱くなっていることがあります。
ふだんは平気なお茶や汁物で、むせることもあるので、様子をよく見てあげてください。
水分の目安——こまめに少しずつ

水分の目安は、脱水の記事でお伝えしているとおり、「食事以外で、1日およそ1,000〜1,500mlが目安とされています」。
「ただし体格や持病で変わるので、心配なときは医師に相談しましょう」。
水分の制限を受けている方は、必ずかかりつけの先生の指示に従ってください。
ひと口ずつ、回数を分けて
一度にたくさん飲むのはつらいので、湯のみ半分ほどを、ひと口ずつ回数を分けてお出しします。
起きたとき、食事のとき、薬を飲むとき、と飲むタイミングを決めておくと、続けやすくなります。
汁物やおかゆで水分を
おかゆや汁物も、水分をとる大切な手段です。
飲みものが進まない日は、具の少ない温かいすまし汁や、ゆるめのおかゆで、食事と一緒に水分をとってもらいましょう。
むせるときはとろみを
お茶でむせる方には、市販のとろみ剤(とろみ調整食品)でとろみをつけてください。
ゼリー飲料も、飲み込みやすい水分のとり方のひとつです。
形ややわらかさは、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食学会分類2013を目安に調整してくださいね。
食べやすいもの6つ

風邪の日に食べやすいものを、6つにまとめました。
どれも、やわらかく、水分が多く、少しの量でも口に入れやすいものです。
食べられそうなものを、その日の様子で選んでください。
①全粥——まずはここから
おかゆの記事でお伝えしているとおり、「風邪の日の初めは全粥から」が基本です。
米1に水5で炊いた全粥に、種を外してほぐした梅干しを少し添えると、口に運びやすくなります。
②煮込みうどん——短く切って
やわらかく煮込んだうどんは、のどごしがよく、だしで水分もとれます。
高齢の方には、うどんをむせないように短く切って、やわらかく煮てからお出ししてください。
③卵とじ雑炊——たんぱく質を
ご飯をだしで煮て、溶き卵でとじた雑炊は、少しの量でたんぱく質もとれます。
卵は、煮立ったところに流し入れて、中までしっかり火を通してください。
④茶碗蒸し——具なしで
茶碗蒸しは、つるんとやわらかく、食べる量が少ない日にも向いています。
具は入れずに、卵とだしだけで蒸すと、口の中に残るものがなく食べやすくなります。
⑤野菜のポタージュ
じゃがいもや南瓜を牛乳でのばしたポタージュは、なめらかで、野菜と水分が一緒にとれます。
裏ごしするか、ミキサーにかけて、粒が残らないようにしてください。
⑥すりおろしりんご
すりおろしたりんごは、甘くてさっぱりしていて、熱のある日にも口に運びやすい一品です。
すりおろすと色が変わりやすいので、食べる直前に用意してください。
うどんは、だしで5分ほど煮てやわらかくしてから、キッチンばさみで短く切ります。
やわらかくなってから切るほうが、はさみで切りやすく、長さもそろえやすくなります。
どの料理も、熱いままだと口の中をやけどしやすいので、少し冷ましてからお出しします。
食べられる量は日によって違うので、小さめの器に少しずつ盛ると、「これなら食べられそう」と思ってもらいやすくなります。
避けるもの——4つの目安

風邪の日は、ふだんなら喜んで食べているものでも、口やのどの負担になることがあります。
次の4つは、体調が戻るまで控えるのが安心です。
- 揚げ物や脂の多い料理
体がだるい日には、口に重く感じやすい料理です。煮物や蒸し物にします。 - 辛いものや香辛料の強い料理
のどにしみたり、むせたりすることがあります。だしのやさしい味にします。 - パサつくもの・貼りつくもの
パンや焼き魚、海苔などは、のどに残りやすくなります。とろみのある汁やおかゆにします。 - 刺身などの生もの
生の魚は、ふだんから高齢の方には出さないのが安心です(2歳以下のお子さんや妊娠中の方も同じです)。中まで火を通したものを選びます。
年末年始に風邪をひいたときは、お餅にも気をつけてください。
高齢の方には、ふだんからお餅は出さないのが基本です。体調が落ちている日はなおさら、代わりの一品にしてくださいね。
回復に合わせた食事の階段

風邪から回復していくときは、食事も少しずつ元に戻していきます。
おかゆの記事では、「戻る時は階段を一段ずつ」とお伝えしています。
4つの段で、様子を見ながら上っていきましょう。
1段目 水分だけでも
熱が高く、何も食べたくない日は、水分だけでもかまいません。
お茶やとろみのお茶、ゼリー飲料を、ひと口ずつこまめにとってもらいます。
2段目 おかゆとスープ
少し食べられそうになったら、全粥やポタージュ、すりおろしりんごから始めます。
量は、茶碗に半分ほどからで十分です。
3段目 うどんと雑炊
おかゆが食べられるようになったら、煮込みうどんや卵とじ雑炊、茶碗蒸しに進みます。
卵が入ると、少しの量でたんぱく質もとれます。
4段目 たんぱく質を足す
いつもの元気が戻ってきたら、やわらかい豆腐や煮魚、卵料理で、たんぱく質を少しずつ足していきます。
煮魚は、骨を2回確かめて、小さな骨のかけらまで取り除いてからお出ししてください。
作り方のコツ——やわらかく温かく

風邪の日の食事は、特別な料理を作る必要はありません。
いつもの料理を、少しやわらかく、少し温かくするだけで、ぐっと食べやすくなります。
3つのコツを見ていきましょう。
指でつぶせるまで煮る
野菜は、指でつぶせるくらいまで、やわらかく煮てからお出しします。
大根や人参、じゃがいもは、小さめに切っておくと、早くやわらかくなります。
温かいものは少し冷まして
温かい料理は食べやすい一方で、熱いままだと口の中をやけどしやすくなります。
器によそってから少し冷まして、人肌より少し温かいくらいでお出ししてください。
作り置きは冷蔵1日
おかゆをまとめて炊いたときは、おかゆの記事のとおり、「持ち越すなら浅い容器で早く冷まして冷蔵1日」です。
浅い容器に移して粗熱を30分以内に取り、冷蔵庫に入れてください。
温め直すときは、中まで熱くしてから、少し冷ましてお出しします。
さらさらのおかゆは、水分と粒が口の中で分かれて、むせやすくなることがあります。
飲み込みに不安がある方には、炊いたおかゆにとろみ剤を少し加えて、全体をまとめてからお出しします。
おかゆの記事でも、さらさらの粥の「水分と粒の二層」に気をつけるようにお伝えしています。
とろみの強さは、ご本人の飲み込む力に合わせて、少しずつ調整してくださいね。
早めに受診したいサイン

食事の工夫は、あくまで毎日の暮らしの中でできることです。
次のようなサインがあるときは、食事で様子を見ずに、早めに医療機関を受診してください。
- 水分がとれない
飲みものを受けつけない、おしっこの回数が減ったとき。 - ぐったりしている
呼びかけへの返事が弱い、いつもと様子が違うとき。 - 熱が続く
高い熱が続いて、食事がとれない日があるとき。 - 息が苦しそう
息が荒い、せきこんでむせることが増えたとき。
体調不良の日の食事の記事でもお伝えしているとおり、「水分がとれない、ぐったりしている、高熱が続くといったときは、無理をせず、早めに医療機関を受診してくださいね」。
迷ったら早めに先生へ、と覚えておいてください。
風邪の日の栄養——少しずつでいい

栄養士として見ると、風邪の日の食事で大切なのは、まず水分、次にエネルギー、そして少しのたんぱく質です。
全部をきちんと食べてもらう必要はありません。
食べられたものを、ご家族が少し書き留めておくと、先生に相談するときの手がかりになります。
1回の食事で食べられる量が少なくても、1日の中で回数を分ければ、少しずつ足していけます。
おかゆを半分食べられたら、2時間後にすりおろしりんごやポタージュを、というように、間に小さな一品をはさんでください。
食事の指示を受けている方は、かかりつけの先生の指示を優先してください。
この記事の料理に使う特定原材料は、卵とじ雑炊と茶碗蒸しの卵、うどんとしょうゆの小麦、ポタージュの牛乳の乳です。
準ずる品目では、りんご(すりおろしりんご)と、大豆(豆腐・しょうゆ・味噌)が入ります。
ゼリー飲料は、商品によって、準ずる品目のゼラチンが入ります。
食物アレルギーのあるご家族がいるときは、表示を確かめてください。
看病する家族の工夫

風邪の看病は、昼も夜も続くので、ご家族にとっても負担の大きいものです。
台所と枕元で、少しだけ工夫しておくと、看病が続けやすくなります。
手を洗って、食器を分ける
食事を作る前と、枕元に運ぶ前には、手を洗ってください。
ご本人が使う食器や箸は、家族と共用しないようにすると安心です。
枕元に水分を置いておく
枕元に湯のみやゼリー飲料を置いておくと、目が覚めたときに、ひと口ずつ飲んでもらえます。
ご本人が手を伸ばしやすい位置に置いてあげてください。
薬の飲み方は指示どおりに
薬を飲む時間と、食事との順番は、かかりつけの先生や薬剤師の指示に従ってください。
食事が少ない日に、薬の飲み方をどうすればいいか迷ったときも、自己判断せずに相談してくださいね。
私は現役介護士でもあります。
風邪の日は、湯のみのお茶をすすめても、「いらない」と首を振られることがよくあります。
そんな日は、すりおろしたりんごをスプーンにひと口だけのせて、お出ししています。
「甘いね、もうひと口」と、水分も少しずつとっていただけることが多いんです。
「お茶にしましょう」を、ひと口のりんごに置き換える日があっていい。
高齢者の風邪の食事でよくある質問
最後に、高齢の方が風邪をひいたときの食事について、よくいただく質問にお答えします。
Q1. 食べないときは無理にでも?
無理に食べてもらう必要はありません。
水分をこまめにとってもらい、食べられそうなものを少しずつお出ししてください。食べられない日が続くときは、先生に相談します。
Q2. スポーツドリンクでもいい?
飲みやすいものなら、お茶でもスポーツドリンクでもかまいません。
糖分や塩分の制限を受けている方は、何を飲めばいいか、かかりつけの先生に確かめてください。
Q3. 冷たいものは食べていい?
のどが痛くて冷たいもののほうが食べやすいときは、少しずつならかまいません。
体が冷えすぎないように、温かいものと組み合わせてお出しします。
Q4. いつからふだんの食事に戻す?
熱が下がり、おかゆやうどんがいつもどおり食べられるようになったら、少しずつ戻していきます。
一度にふだんの量に戻さず、階段を一段ずつ上るつもりで進めてください。
Q5. 卵がゆと雑炊、どちらがいい?
どちらも食べやすい料理です。
さらさらでむせやすい方には、とろみ剤で全体をまとめてからお出ししてください。
“おいしい”は、全部が重なること
風邪の日の食事を考えるとき、私は四つの軸で見ています。
こまめな水分、やわらかさ、温かさ、そしてそばで見守る人です。
風邪の日の食卓は、ひとつの料理だけで整うものではありません。
水分だけでは力が出ず、料理だけでは飲み込みにくい。
それぞれが、枕元のお盆の上で別の役割を持っているから、少しずつでも食べ続けられるんです。
水分と、やわらかさと、温かさと、見守り。
その全部が重なったとき、風邪の日の食卓が、ご本人の安心になります。
まとめ。。。

高齢の方が風邪をひいたときの食事を、最後にもう一度まとめますね。
- 水分はこまめに少しずつ
食事以外で1日およそ1,000〜1,500mlが目安(体格や持病で変わります)。 - やわらかく温かく
全粥・煮込みうどん・卵とじ雑炊を、少し冷ましてから。 - 揚げ物・辛いもの・パサつくもの・生ものは控える
体調が戻るまでは、煮物や蒸し物を。 - 回復は階段を一段ずつ
水分→おかゆ→うどん→たんぱく質の順に。 - むせるときはとろみを
お茶にもおかゆにも、とろみ剤でまとめて。 - 迷ったら早めに先生へ
水分がとれない・ぐったり・熱が続くときは受診を。
風邪の日の食事は、いつもの食卓を少しやさしくする工夫の積み重ねです。
ひと口の水分、半分のおかゆ、スプーン一杯のりんご。
その少しずつが、体調が戻るまでの毎日を支えてくれます。
今日の枕元に、できることをひとつ用意してみてくださいね。
そばにいてくれるだけで、ご本人はきっと安心するはずだよ。
フッくんでした!
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