料理研究家、料理大好きフッくんです。
重箱を開けた時、いちばん先に目に入る金色。栗きんとんは、おせちの中でも「色で選ばれる」一品ですよね。ところが家で作ると、くすんだ茶色になったり、ぼそぼそして舌に残ったり——「あのなめらかな金色」に届かない年が多い料理でもあります。
先に結論からお伝えします。金色は、くちなしと皮むき。なめらかさは、熱いうちの裏ごしと、すくって落ちる固さで練りを止めること。黄金比は、裏ごししたさつまいも400gに砂糖80g・みりん大さじ2・甘露煮のシロップ大さじ3——この三つを守れば、お店の重箱と同じ金色が、年末の台所で出来上がります。
こんなお悩み、ありませんか?
- 色が茶色っぽくなる
皮の下のアクと、くちなしの有無で決まります。3つの条件で図解します。 - ぼそぼそして、なめらかにならない
裏ごしのタイミングです。冷めてからでは遅い理由をお伝えします。 - 砂糖の量と甘さの加減がわからない
黄金比と、甘露煮のシロップの使い方をお渡しします。 - いつ作れば三が日もつ?
冷蔵3〜4日、冷凍1か月。仕込む日と保存の約束をお伝えします。
現役料理人20年、年末の仕込み場で毎年何十本分ものさつまいもを裏ごししてきた経験で「栗きんとんのレシピ」を完全解説します。最後まで読めば、重箱の金色が自分の手で出せますよ🍳

栗きんとんってどんな料理?(金団の名前と縁起)

栗きんとんは、さつまいもを裏ごしして甘く練った「きんとん」に、栗の甘露煮を合わせたおせちの一品です。漢字で書くと「金団」——金の布団、金の塊という意味で、黄金色の見た目から、豊かな一年を願う縁起物として重箱に入ります。江戸時代の菓子が原型と言われ、明治以降に家庭のおせちに広まりました。
ちなみに、岐阜や長野の「栗きんとん」は、栗だけを茶巾で絞った秋の和菓子で、おせちのきんとんとは別の食べ物です。この記事でお話しするのは、さつまいもの黄色いきんとんに栗の甘露煮を合わせた、おせちの栗きんとん。栗の甘露煮は瓶詰で通年手に入るので、思い立った日に作れます。
黄金比(裏ごしさつまいも400gに砂糖80g)

さつまいも2本(皮をむいて裏ごしした後で約400g)に対して、砂糖80g・みりん大さじ2・栗の甘露煮のシロップ大さじ3・塩ひとつまみ。栗の甘露煮は10〜12粒——これが私のお店の基本形です。重箱の一段分、家庭なら6〜8人前になります。甘露煮のシロップは、砂糖だけでは出ない栗の香りと照りを渡してくれる裏方なので、瓶のシロップは捨てないでください。
| 材料(重箱一段・6〜8人前) | 分量 | 役割 |
|---|---|---|
| さつまいも | 2本(約500g・裏ごし後400g) | きんとんの本体 |
| くちなしの実 | 1個 | 金色の決め手 |
| 砂糖 | 80g | 甘さと日持ち(色重視は上白糖、コク重視はキビ糖) |
| みりん | 大さじ2 | 照りとまろやかさ |
| 栗の甘露煮のシロップ | 大さじ3 | 栗の香りと照り |
| 塩 | ひとつまみ | 甘さの輪郭 |
| 栗の甘露煮 | 10〜12粒 | 主役の飾り |
砂糖は、私は普段キビ糖ですが、栗きんとんだけは色を優先する日が多いので、上白糖かグラニュー糖を使います。キビ糖にすると金色がやや落ち着いた色になりますが、コクは深くなる——「色の金」か「味の金」か、家の好みで選んでください。甘さ控えめにしたい家庭は、砂糖を60gまで減らせますが、そのぶん日持ちは短くなるので、三が日で食べ切る量にしてください。
この記事の看板「金色は、くちなしと皮むき」(色よく仕上げる3条件)

栗きんとんの色は、火にかける前に八割決まっています。三つの条件を順番に。
- ①皮は厚く、5mmむく
さつまいもの皮のすぐ下には、アクの元になる筋が集まっています。ピーラーではなく包丁で、皮の内側の白っぽい層ごと5mmの厚さでむくのが、色を濁らせない一番目の条件です。もったいなく感じますが、むいた皮は素揚げにして塩を振れば、立派なおやつになります。 - ②1cmの輪切りにして、水に10分さらす
切ったそばから水に放ち、途中で一度水を替えます。水が白く濁るのがアクです。ここを飛ばすと、ゆで上がりが茶色く沈みます。 - ③くちなしの実を割って、一緒にゆでる
くちなしの実は、包丁の背で軽く叩いて割り、お茶パックか小さなガーゼに包んで、さつまいもと一緒に水からゆでます。ゆで汁が濃い黄色になり、その色がさつまいもに移って金色になる——これが、お店の色の正体です。くちなしは香りも味もつけないので、入れすぎの心配はありません。
くちなしの実は年末になるとスーパーの製菓コーナーや乾物売り場に並びますが、手に入らない日もありますよね。その日は、無理に別の色をつけず、さつまいも本来の淡い黄色で仕上げてください。皮を厚くむいて、水にしっかりさらすだけで、くすみのない黄色になります。
仕込み場の親方は「色が薄いのは恥やない、ぼそぼそが恥や」と言っていました。色はくちなし一つで決まりますが、なめらかさは腕で決まる——だから家庭で優先すべきは、次の項の裏ごしです。安納芋や紅はるかのような黄色の濃い品種を選べば、くちなしなしでも十分な金色が出ますよ。
作り方の順番(熱いうちに裏ごし・練り止めの固さ)

- ①さつまいもをくちなしと10〜15分ゆでる
水からゆで、竹串がすっと通り、指で押すと崩れるやわらかさまで。ここでやわらかさが足りないと、裏ごしで粒が残ります。 - ②ゆで汁を切り、熱いうちに裏ごしする
冷めるとでんぷんが固まって、裏ごし器を通らなくなります。湯を切ったら、すぐ裏ごし——ここがなめらかさの分かれ道です。裏ごし器がなければ、ざるの目を木べらでこすっても、粗めのなめらかさは出ます。 - ③鍋に戻し、砂糖・みりん・シロップ・塩を加える
裏ごししたさつまいもを鍋に戻し、調味料を全部入れて木べらで混ぜます。ゆで汁を大さじ2ほど残しておき、固ければ足して調整します。 - ④弱火で練る(5〜8分)
焦げやすいので弱火で、鍋底をなでるように練ります。つやが出て、全体がひとつにまとまってきます。 - ⑤木べらですくって「落ちる」固さで火を止める
冷めると固くなるので、すくってぽたっと落ちる、少しゆるいところで止める——これが練り止めの合図です。落ちない固さまで練ると、翌日は硬い塊になります。 - ⑥栗の甘露煮を加えて、さっと混ぜる
火を止めてから栗を加え、崩さないように大きく混ぜます。半分は混ぜ込み、半分は盛り付けの上に飾ると、重箱の顔になります。
お店の栗きんとんが舌に残らないのは、裏ごしを二回しているからです。一回目は粗く、二回目は目の細かい裏ごし器で——手間はかかりますが、二回目で残る繊維の量に驚きます。家庭では、一回目をざる、二回目を裏ごし器かミキサー(ゆで汁大さじ2を足して)にすると、同じなめらかさが出ます。
もう一つ、甘露煮のシロップは調味料と一緒に入れず、練り上がりの最後に回し入れてください。シロップの香りは長く煮ると飛ぶので、最後に加えて照りと栗の香りを表面に残す——これが仕込み場の順番でした。

失敗と対策(色が悪い・ぼそぼそ・固い・水っぽい)

- 色が茶色っぽい
皮のむきが薄いか、水にさらしていないか、くちなしを入れていないかのどれかです。皮は5mm、さらしは10分、くちなしは割って一緒にゆでてください。出来上がった後は色を戻せません。 - ぼそぼそして舌に残る
冷めてから裏ごししたか、裏ごしが一回だったのが原因。熱いうちに二回。出来上がった後なら、ゆで汁か牛乳を大さじ1足してミキサーにかけると、なめらかさが戻ります。 - 冷めたら固い塊になった
練りすぎです。すくって落ちる固さで止めるのが約束。固くなった分は、みりん大さじ1を足して弱火で温め直すと、ゆるみます。 - 水っぽくて形にならない
練り不足か、ゆで汁の切り方が甘いか。弱火で数分練り足して、すくって落ちる固さまで。次回はゆで汁をしっかり切ってから裏ごしを。
年末の仕込み場の思い出をひとつ。若い頃、裏ごしを後回しにして、ゆで上がったさつまいもを冷ましたまま別の仕込みに手を出して——戻ったら、裏ごし器を通らない硬い芋の山。親方に「きんとんは、熱いうちが命や。冷めたら芋に戻る」と言われました。それから、ゆで上がりの湯気の中で裏ごしするのが、私の年末の習慣です。家庭なら2本分、裏ごし器一つ。湯を切ったらすぐ——それだけで、この失敗は起きませんよ。
保存と日持ち(冷蔵3〜4日・冷凍1か月)

おせちの栗きんとんは、砂糖が多いぶん日持ちしますが、「砂糖が多いから常温で大丈夫」ではありません。粗熱は浅い容器に広げて手早く取り、清潔な保存容器に入れて表面にラップを密着させ、当日中に冷蔵へ。冷蔵で3〜4日が目安です。12月30日に仕込めば、元日から三が日までがちょうど食べごろ。取り分けは毎回清潔な箸で、重箱に詰めた分は当日中に食べ切ってください。
冷凍は、一食分ずつラップで包んで保存袋に入れ、約1か月。栗は一緒に冷凍しても構いませんが、食感が少し変わるので、気になる方は栗を別にして、解凍後に添えてください。解凍は前夜に冷蔵庫へ移す自然解凍で、水分が出たら軽く練り直すと、なめらかさが戻ります。栗そのものの保存と甘露煮の作り方は、栗の保存の記事に、さつまいもの選び方と保存は、さつまいもの保存の本家記事にまとめてあります。
栗きんとんの栄養と、家族への出し方

栗きんとん1人前(小さな器に一盛り・約50g・栗1粒つき)は、およそ115kcal・炭水化物27g・たんぱく質0.8g・脂質0.2gが目安です。さつまいものでんぷんと砂糖、甘露煮のシロップが重なるので、おせちの中でも糖分の多い一品——甘い物の枠として数えるのが、栄養士としての見方です。
三が日は、栗きんとん・伊達巻・黒豆と甘い品が重なりやすいので、一日の甘い品は合わせて小鉢一杯までを目安に。糖質を控えている方は、主治医に量を相談してください。さつまいもの食物繊維は1人前で1g前後含まれ、皮を厚くむくぶん少なめになります。
栗きんとんの材料(さつまいも・栗・砂糖・みりん)は、表示義務・推奨の品目に入りません。ただ、栗の甘露煮の瓶には着色料や酸味料が入るものがあり、くちなしは天然の着色料です——気になる方は原材料表示の確認を。
なめらかさを出すために牛乳や生クリームを足すレシピもありますが、その日は乳の家族に別の器を。おせちは家族と来客が同じ重箱をつつく料理なので、「今年のきんとんは乳なし」の一言を、詰める人が言えるようにしておくのが先回りです。
高齢者や子供にやさしい栗きんとん

栗きんとんは、施設のおせちでも人気の一品ですが、注意が二つあります。一つ目は栗の甘露煮。丸くて硬い食べ物なので、噛む力が弱くなった方には丸ごと出さず、細かく刻んできんとんに混ぜるか、外してお出ししてください。二つ目は、きんとんそのもの。なめらかなぶん口の中に貼りつきやすく、飲み込みが気になる方には、一度にたくさんではなく、小さじ一杯ずつ、お茶や汁物と一緒に。とろみのあるゆで汁で少しゆるめると、口の中でまとまりやすくなります。
それでも難しい日は、無理をせず、裏ごしのさつまいもだけをやわらかく仕立てて、栗の香りはシロップで添える形にしていいんです。
お子さんには、1歳ごろから、栗を外したきんとんを少量から。甘さが強いので、行事の日の楽しみとして小さじ一杯が目安です。丸ごとの栗は、5歳ごろまでは出さず、食べられる年齢になっても小さく切って、座って食べるのをそばで見守ってください。
おせち全体を安全にやわらか仕立てで出す工夫は、お正月の介護食献立の記事でまとめて解説しています。
おせちへの詰め方と、アレンジ(茶巾・スイートポテト)

重箱に詰める時は、きんとんを丸くこんもり盛って、栗を上に飾り、葉らんや南天の葉を一枚添えると、金色が引き立ちます。冷たいままより、詰める直前に室温に15分ほど戻すと、つやと香りが立つ——これは仕込み場で、重箱を出す前に必ずやっていたことです。
余ったきんとんは、ラップで茶巾に絞れば一口菓子に、卵黄を塗ってトースターで焼けばスイートポテト風に。牛乳でのばして温めれば、子どもの好きな甘いポタージュにもなります。栗きんとんが重箱の主役なら、おせち全体の組み立てと縁起の意味は、お正月の献立の記事の受け持ちです。栗を生から甘露煮にするところから始めたい方は、栗の保存の記事にその手順もまとめてあります。
栗きんとんのレシピのよくある質問
Q1. くちなしの実はどこで買えますか? 代用は?
年末になるとスーパーの製菓コーナーや乾物売り場、漢方の乾物を扱う店に並びます。代用は、無理に別の着色をするより、皮を厚くむいて水にしっかりさらし、黄色の濃い品種(安納芋・紅はるか)を選ぶこと。それだけで、くすみのない黄色になります。
Q2. 裏ごし器がありません。ミキサーでも作れますか?
作れます。ゆで汁を大さじ2ほど足して、熱いうちにミキサーかブレンダーにかけてください。裏ごしより少し空気が入るので、練る時間を1〜2分長めにすると、つやが出ます。ざるの目を木べらでこす方法でも、粗めのなめらかさは出せます。
Q3. 砂糖を減らしても作れますか?
60gまでなら、同じ手順で作れます。ただし砂糖は日持ちを支える役目もあるので、減らした分は冷蔵で2〜3日を目安に、三が日で食べ切ってください。甘露煮のシロップの甘さも数に入るので、シロップを減らす日は砂糖を減らしすぎないのが約束です。
Q4. いつ作れば、三が日もちますか?
12月30日か31日に作って、当日中に冷蔵へ。冷蔵で3〜4日なので、元日から3日までがちょうど食べごろです。早めに仕込みたい日は、冷凍で1か月——12月半ばに作って冷凍し、大晦日に冷蔵庫へ移して解凍する形なら、年末の台所が楽になります。
Q5. 栗きんとんは何歳から食べられますか?
栗を外したきんとんなら1歳ごろから、行事の日の楽しみとして小さじ一杯の少量から。丸ごとの栗は、丸くて硬い食べ物なので5歳ごろまでは出さず、食べられる年齢になっても小さく切って、そばで見守ってください。甘さが強いので、毎日のおやつにはせず、お正月の一品として。
Q6. 栗の甘露煮を自分で作りたいです
生の栗を鬼皮と渋皮までむき、水にさらしてアクを抜き、くちなしと一緒にやわらかくゆでてから、砂糖とみりんのシロップで煮含めます。手間は大きいですが、香りは瓶詰と別物です。栗のむき方と保存、甘露煮の手順は、栗の保存の記事にまとめてあります。
まとめ。。。

- 黄金比は、裏ごしさつまいも400gに砂糖80g
みりん大さじ2、甘露煮のシロップ大さじ3、塩ひとつまみ。栗は10〜12粒です。 - 金色は、くちなしと皮むき
皮は5mm、水に10分、くちなしは割って一緒にゆでる。 - きんとんは、熱いうちが命
湯を切ったらすぐ裏ごし。冷めたら芋に戻ります。 - 裏ごしは二回、シロップは最後
舌に残らないなめらかさと、栗の香りの残し方です。 - 練り止めは、すくって落ちる固さ
冷めると固くなる。落ちない固さまで練らないこと。 - 冷蔵3〜4日・冷凍1か月・30日に仕込む
粗熱は手早く、表面にラップ密着、取り分けは清潔な箸で。 - 高齢の方は栗を刻むか外して少量ずつ、お子さんは5歳ごろまで丸ごとの栗を出さない
貼りつきと丸い食べ物の先回りを。 - 栗の保存・さつまいもの保存・お正月の献立の記事とあわせて
おせちの棚が、ひとつの面になります。
今年の年末はまず、さつまいもの皮を厚くむくところから。くちなしの黄色いゆで汁の中で、竹串がすっと通ったら、湯気の中で裏ごしを——重箱を開けた時の、あの金色が、この記事のゴールです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
フッくんでした!










