料理研究家、料理大好きフッくんです。
土鍋のふたを開けた瞬間、ふわっと立ちのぼる鯛の香り。
鯛めしは、お祝いの日にも、ちょっと特別な週末にも食卓を華やかにしてくれますよね。
でも、家で作ると「なんだか生臭い」「ご飯がべちゃっとする」と感じることはありませんか?
こんなお悩み、よく聞きます。
- 鯛の生臭さが残ってしまう
せっかくの鯛なのに、炊き上がりに魚くささが気になる。 - ご飯がべちゃっとする
水加減が分からず、やわらかすぎたり芯が残ったりする。 - 骨が気になって家族に出しにくい
小さな子どもや高齢の親に、安心して食べさせたい。
この記事では、寿司職人20年の私が、お店で作っている鯛めしの作り方をまるごとお伝えします。
臭みを抜く下処理、炊き方の黄金比、骨の取り方から、保存や家族への出し方まで、順番に見ていきましょう。

鯛めしとは——松山の炊き込みと宇和島
鯛めしは、鯛の名産地として知られる愛媛県の郷土料理です。
実は、愛媛には大きく分けて2種類の鯛めしがあります。
どちらも同じ「鯛めし」と呼ばれますが、作り方も食べ方もまったく違います。
松山の鯛めしは「鯛と一緒に炊き込む」
松山など愛媛の中予・東予地方の鯛めしは、鯛をお米と一緒に炊き込むのが特徴です。
炊き上がったら鯛の身をほぐして、ご飯と混ぜていただきます。
全国で「鯛めし」といえば、ふつうはこの炊き込みの鯛めしのことです。
宇和島は「生の鯛をご飯にのせる」
一方、南予の宇和島の鯛めしは、鯛の刺身を、卵を溶いたたれにくぐらせて、温かいご飯にのせて食べる料理です。
鯛も卵も生で食べるので、2歳以下のお子さんや高齢の方、妊娠中の方には、火の通った炊き込みの鯛めしを選んでください。
この記事では、松山の炊き込みの鯛めしを作ります。
鯛めしの黄金比——うすくち1:酒2

鯛めしの味つけは、鯛のうま味を邪魔しない、ひかえめな塩加減が決め手です。
私の店では、米2合に、うすくちしょうゆ大さじ1・酒大さじ2・塩小さじ1/4を合わせています。
色が濃くならないうすくちしょうゆを使うと、鯛の白い身と桜色の皮がきれいに映えます。
| 材料 | 米2合(4人分) | 米3合(6人分) |
|---|---|---|
| 米 | 2合 | 3合 |
| うすくちしょうゆ | 大さじ1 | 大さじ1と1/2 |
| 酒 | 大さじ2 | 大さじ3 |
| 塩 | 小さじ1/4 | 小さじ1/3強 |
| 昆布だし | 調味料と合わせて2合の目盛りまで | 調味料と合わせて3合の目盛りまで |
ポイントは、調味料を先に入れてから、だしで目盛りまで合わせることです。
先にだしを目盛りまで入れてから調味料を足すと、水分が多くなって、ご飯がべちゃっとします。
鯛の下処理——塩10分と霜降りで臭み抜き

鯛めしの生臭さは、ほとんどが下処理で決まります。
鯛の表面に残ったうろこや血、ぬめりが、炊いているあいだにご飯へ移ってしまうんです。
お店では、どんなに新鮮な鯛でも、必ず次の3つをしています。
①薄く塩をふって10分おく
鯛の切り身の両面に、薄く塩をふって10分ほどおきます。
表面から水気がにじみ出てくるので、キッチンペーパーでしっかり拭き取ってください。
この水気に、臭みのもとが一緒に出てきます。
②熱湯をかけて霜降りにする
ざるに鯛をのせて、皮目から熱湯をまわしかけます。
表面がうっすら白くなったら、それが霜降りの合図です。
③冷水で残ったうろこと血を洗う
霜降りした鯛をすぐに冷水にとり、指の腹でやさしくなでて、残ったうろこや血を洗い流します。
最後に水気をしっかり拭けば、下処理は完了です。
切り身でも、皮の端にはうろこが残っていることがよくあります。
寿司屋では、尾から頭に向かって指の腹で皮を逆なでし、ざらりと引っかかる所がないかを必ず確かめます。
うろこが1枚残っているだけで、炊き上がりの口あたりがまるで変わります。
鯛は焼いてからのせる——皮目が香る

下処理した鯛は、そのまま炊き込んでもおいしく作れます。
でも私のお店では、炊く前に鯛の皮目を焼いてから、お米の上にのせています。
この一手間で、香ばしさがご飯全体に移り、鯛めしの香りがぐっと深くなります。
魚焼きグリルやフライパンで、皮目にこんがり焼き色がつくまで焼きます。
中まで火を通す必要はありません。
身の中まではこのあとの炊飯でしっかり火が通るので、表面に焼き色がつけば十分です。
鯛めしの作り方——土鍋と炊飯器の6工程

ここからは、米2合(4人分)の作り方を順番に見ていきます。
土鍋でも炊飯器でも作れるので、工程5で炊き方を分けてお伝えします。
材料は4人分で、次のとおりです。
- 米 2合
- 鯛の切り身 2切れ(約160g)
- 昆布 5cm角1枚
- うすくちしょうゆ 大さじ1
- 酒 大さじ2
- 塩 小さじ1/4
- 水(昆布だしにする分) 適量
- 三つ葉 少々
工程1 米を研いで30分浸水
米を研いでざるにあげ、30分ほど水に浸しておきます。
そのあいだに、昆布を水に浸けて昆布だしをとっておきます。
工程2 鯛の下処理をする
鯛に薄く塩をふって10分おき、水気を拭いて霜降りにし、冷水でうろこと血を洗います。
工程3 皮目を焼く
水気を拭いた鯛の皮目を、グリルやフライパンでこんがり焼きます。
工程4 調味料とだしを合わせる
浸水した米の水をきって土鍋か炊飯器の内釜に入れ、うすくちしょうゆ・酒・塩を加えます。
そこに昆布だしを、2合の目盛りまで注いで軽く混ぜます。
工程5 鯛と昆布をのせて炊く
米の上に昆布と鯛をのせて炊きます。
炊飯器なら、ふつうの炊飯コースでそのまま炊いてください。
土鍋なら、中火で沸騰させてから弱火で12〜13分、火を止めて10分蒸らします。
工程6 骨を除いてほぐし、混ぜる
炊き上がったら鯛と昆布を取り出し、骨と皮を除いて身をほぐします。
ほぐした身をご飯に戻してさっくり混ぜ、刻んだ三つ葉を散らしたら完成です。
鯛めしの火の通り——骨からほろりと外れる

鯛めしの鯛は、炊飯のあいだにご飯と一緒に火が通ります。
それでも、切り身が厚いときや、炊飯器のコースによっては、中心まで火が通りきらないことがあります。
ほぐすときに、次の3つを確かめてください。
- 身:中心まで白く不透明
いちばん厚いところを割って、透きとおった部分が残っていないかを見ます。 - 骨:骨の際までほろりと外れる
骨のまわりの身が、赤っぽくなく、するっと外れれば中心まで火が通っています。 - 香り:ふたを開けると香ばしい湯気
生っぽいにおいではなく、焼き鯛と昆布の香りがします。
もし中心がまだ透きとおっていたら、鯛だけを取り出してグリルで焼き足してから、ほぐして混ぜてください。
ご飯を炊き直すより、鯛だけに火を足すほうがおいしく仕上がります。
鯛めしの骨の取り方——骨は2回確かめる

鯛の骨はかたく、先がとがっています。
やわらかく炊けても、骨は骨です。
だから私のお店では、鯛めしの骨は必ず2回確かめてから、ご飯に混ぜています。
1回目:大きな骨と皮を外してほぐす
炊き上がった鯛を皿に取り、まず太い背骨や腹骨を外します。
皮も外し、身を指先で小さくほぐしながら、細い骨を取り除きます。
2回目:混ぜる前に指先でなでる
ほぐし終わった身を皿に広げ、指先で全体をやさしくなでて、残った小骨がないかをもう一度確かめます。
1回目で見落とした細い骨は、2回目でほとんど見つかります。
骨を2回確かめる手間は、家族みんなで安心して食べるための、いちばん大事な工程です。
高齢の家族や小さなお子さんの分は、とくにていねいに確かめてくださいね。
鯛の身は、温かいうちのほうが骨から離れやすく、ほぐしやすくなります。
やけどしないように箸で大きく割ってから、少し冷めたところを指先で細かくほぐすのがお店のやり方です。
冷めきると身が骨にくっついて、小骨を見落としやすくなります。
鯛めしの失敗——生臭い・べちゃつく

鯛めしの失敗は、だいたい4つのパターンに分かれます。
どれも原因がはっきりしているので、ひとつずつ直していけば、次からはお店の仕上がりに近づきます。
- 生臭い
うろこや血、ぬめりが残っているのが原因です。塩をふって10分、霜降りにして冷水で洗います。 - ご飯がべちゃっとする
調味料の分だけ水分が多くなっています。調味料を先に入れてから、だしで目盛りまで合わせます。 - 骨が残る
ほぐすのが1回だけだと見落とします。熱いうちにほぐし、混ぜる前にもう一度確かめます。 - ご飯の色が濃くなる
こいくちしょうゆを使うと色が濃くなります。うすくちしょうゆで、鯛の色を生かします。
4つに共通するのは、「鯛のうま味を、じゃませずに生かす」という考え方です。
下処理と骨のひと手間が、そのまま鯛めしのおいしさと安心になります。
鯛めしの保存——その日のうちか冷凍

鯛めしは、炊きたてがいちばんおいしい料理です。
魚が入っているぶん白いご飯より傷みやすいので、残った分は早めに冷凍に回しましょう。
ご飯の冷凍の考え方は、ごはんの冷凍保存の記事とそろえています。
残りは骨を除いて冷凍する
残った鯛めしは、骨がないことをもう一度確かめてから、1食分ずつ温かいうちに湯気ごとラップで平らに包みます。
粗熱が取れたら保存袋に入れて冷凍庫へ入れ、2〜3週間を目安に食べきってください。
冷蔵は翌日まで
冷蔵庫に入れると、ご飯がかたくなりやすいのでオススメしません。
入れる場合は、冷蔵で翌日までに食べきってください。
温め直しは中心まで熱く
冷凍した鯛めしは、ラップのまま電子レンジで中心まで熱くなるように温めます。
一度解凍したものの再冷凍は避けてください。
鯛めしの栄養——1人分約330kcal

栄養士として、この作り方の鯛めしの1人分を計算してみました。
米2合を4人で分けた量で、炊き上がりのご飯は約165g、鯛は40gほどです。
エネルギーは約330kcal、たんぱく質は約13gで、内訳は次のとおりです。
- 米(炊く前75g) 257kcal
- 鯛40g 64kcal
- 酒 8kcal
- 昆布だし 3kcal
- うすくちしょうゆ 3kcal
塩分は1人分で約1.3gです。
うすくちしょうゆは色が薄いぶん、こいくちしょうゆより塩分がやや多めなので、分量はきちんと量ってください。
鯛そのもののうま味があるので、味つけを増やさなくても十分においしく仕上がります。
この作り方に使う特定原材料は、しょうゆの小麦です。
準ずる品目では、しょうゆの大豆が入ります。
宇和島の鯛めしのたれには卵やごまを使うことが多いので、食物アレルギーのあるご家族がいるときは材料を確かめてください。
鯛めしはご飯そのものに味がついているので、合わせる汁物や副菜は薄味にすると、1食の塩分がまとまります。
すまし汁や野菜のおひたしを添えると、鯛の香りも引き立ちます。
塩分や糖分の指示を受けている方は、かかりつけの先生の指示を優先してください。
高齢者や子供にやさしい鯛めし

鯛めしは、白身の鯛がやわらかく、家族みんなで食べやすい料理です。
ただ、鯛の骨だけは、どんなに気をつけても気をつけすぎることはありません。
高齢の家族に出すとき
骨を2回確かめたうえで、鯛の身はさらに細かくほぐしてからご飯に混ぜます。
ご飯がかたいと感じる方には、温かいだしをかけて、だし茶漬けのようにやわらかくして出すと食べやすくなります。
あらでだしをとった場合も、あらそのものは高齢の方と子どもに出さないようにしてください。
飲み込む力に不安がある方には、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食学会分類2013を目安に、やわらかさやとろみを調整してくださいね。
小さなお子さんに出すとき
2歳以下のお子さんの分は、骨を2回確かめたうえで、身をさらに細かくほぐしてください。
1歳未満のお子さんには、しょうゆや酒で味つけした鯛めしは出さず、離乳食は別に用意しましょう。
始める時期や量は月齢で変わるので、かかりつけの先生や自治体の相談窓口で確かめてくださいね。
酒は炊飯で加熱されますが、お子さんや妊娠中・授乳中の方、お酒に弱い方やアルコールを控えている方と食べる日は、酒を水に替えて炊くと安心です。
私は現役介護士でもあります。
炊き込みご飯は、ご飯粒がまとまりにくく、飲み込む力が弱い方には食べにくいことがあります。
その日は、骨をていねいに除いた鯛めしに温かいだしをかけて、やわらかくしてからお出ししています。
鯛めしを、鯛だし茶漬けに置き換える日があっていい。
鯛めしでよくある質問
最後に、鯛めしを作るときによくいただく質問にお答えします。
Q1. 切り身と一尾、どちらがいい?
家庭では、骨が少なく扱いやすい切り身がオススメです。
一尾で炊くと見た目は華やかですが、骨が多くなるので、ほぐすときにより時間をかけて確かめてください。
Q2. 冷凍の鯛でも作れますか?
作れます。
冷蔵庫でゆっくり解凍してから、同じように塩をふって霜降りにすると、臭みが気になりにくくなります。
Q3. 早炊きコースでも大丈夫?
早炊きは浸水の時間が短いので、30分しっかり浸水させてから使ってください。
炊き上がったら、鯛の中心まで火が通っているかを必ず確かめましょう。
Q4. お祝いの日の盛りつけは?
炊き上がった土鍋のまま食卓に出し、ふたを開けてから鯛をほぐすと、香りと一緒に華やかさが伝わります。
ほぐすときは台所に下げて、骨を2回確かめてから取り分けてくださいね。
まとめ。。。

鯛めしの作り方を、下処理から黄金比、骨の取り方、保存、家族への出し方までまとめました。
- 松山は炊き込み、宇和島は生の鯛
この記事は、火の通った炊き込みの鯛めしです。 - 米2合にうすくちしょうゆ大さじ1・酒大さじ2
調味料を先に入れて、だしで目盛りまで合わせます。 - 塩をふって10分、霜降りで臭みを抜く
冷水でうろこと血を洗い流します。 - 皮目を焼いてからのせる
香ばしさがご飯全体に移ります。 - 鯛の火の通りは3つの合図で
身の白さ・骨の外れ方・香りで確かめます。 - 骨は必ず2回確かめる
熱いうちにほぐし、混ぜる前にもう一度。 - 残りは骨を除いて冷凍
2〜3週間を目安に、中心まで熱く温め直します。
鯛めしは、ひと手間ごとに香りとおいしさが重なっていく料理です。
そして、骨を確かめるひと手間は、食べる人への思いやりそのものです。
お祝いの日や特別な週末に、ぜひ土鍋で炊いてみてくださいね。
ふたを開けた瞬間の香りに、家族みんなが集まってくるはずだよ。
フッくんでした!
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