料理研究家、料理大好きフッくんです。
寿司桶のふたを開けた瞬間、ぱっと広がる色とりどりのちらし寿司。
ひな祭りやお祝いの日に、家族の顔がいちばん明るくなる料理ですよね。
でも、いざ作ろうとすると、具が多くて何から手をつければいいか迷いませんか?
こんなお悩み、よく聞きます。
- 具の下ごしらえが大変そう
しいたけやかんぴょうの甘煮、錦糸卵まで、全部当日に作るのは大変。 - 盛りつけがなんだか地味になる
具はそろっているのに、お店のような華やかさが出ない。 - 段取りが分からない
前日に何をして、当日に何をすればいいのか知りたい。
この記事では、寿司職人20年の私が、お店で作ってきたちらし寿司の作り方をお伝えします。
具の下ごしらえ、彩りの配置、前日仕込みの段取りまで、順番に見ていきましょう。

ちらし寿司とは——具を混ぜて彩る
ちらし寿司は、酢飯に甘辛く煮た具を混ぜ込み、上に錦糸卵や絹さやを散らして彩る寿司です。
原型は、江戸時代の岡山で生まれた「バラ寿司」と言われています。
くわしい歴史や縁起は、ちらし寿司の具材の記事で紹介しています。
家庭で作るちらし寿司は、大きく分けて2つの工程があります。
酢飯に混ぜ込む「五目」の具と、上に散らして彩る具です。
この記事では、そのどちらも、前の日から段取りよく準備する作り方をお伝えします。
酢飯は甘めに——砂糖を少し多く

ちらし寿司の酢飯は、握り寿司のシャリより少し甘めに作ります。
甘辛く煮た具と混ぜるので、酢飯が甘めのほうが、具の味とよくなじむからです。
米2合なら、米酢大さじ3・砂糖大さじ2・塩小さじ1が、ちらし寿司の目安です。
握り寿司のシャリは、寿司シャリの作り方の記事で紹介しているとおり、米2合に米酢大さじ3・砂糖大さじ1.5・塩小さじ1です。
ちらし寿司では、そこから砂糖を大さじ半分ほど増やして、具に合わせた甘めの酢飯にします。
米の炊き方や、しゃもじを立てて切るように混ぜるシャリ切りの技は、寿司シャリの作り方の記事でくわしく紹介しています。
具の下ごしらえ——甘煮は前日に

ちらし寿司の味を決めるのは、酢飯に混ぜ込む五目の具です。
甘煮は、前の日に作って一晩おくと、味がしみてぐっとおいしくなります。
米2合(4人分)で作るときの、私のお店の分量を紹介しますね。
干ししいたけの甘煮
干ししいたけ4枚を、前の日の朝から冷蔵庫でゆっくり水で戻します。
細切りにして、戻し汁100mlに砂糖大さじ1・しょうゆ大さじ1・みりん大さじ1を合わせ、汁気がほとんどなくなるまで煮ます。
戻し汁のうま味が、ちらし寿司全体の味の土台になります。
かんぴょうとにんじん
かんぴょうは塩もみして洗い、やわらかくゆでてから、しいたけと同じ煮汁で一緒に煮ます。
にんじん40gは細切りにして、しいたけの煮汁で軽く煮ると、色よく甘く仕上がります。
酢れんこん
れんこん40gは薄いいちょう切りにして、酢水にさらしてからさっとゆでます。
米酢大さじ1と砂糖小さじ1の甘酢に漬けて、3〜4時間以上おくとおいしくなります。
シャキシャキした歯ごたえと白い色が、ちらし寿司のよいアクセントになります。
甘煮の汁気が残ったまま酢飯に混ぜると、酢飯がべちゃっとして、味もぼやけます。
寿司屋では、煮た具をざるにあげて、汁気をしっかりきってから混ぜ込みます。
きった煮汁は、少しだけ酢飯に回しかけると、しいたけの香りが全体に広がります。
錦糸卵のコツ——薄く焼いて細く

ちらし寿司の上を黄色く彩る錦糸卵は、薄く焼いて、細く切るのがコツです。
黄金色の錦糸卵は、金運の縁起物とも言われる、ちらし寿司の主役のひとつですよね。
破れにくく、きれいに焼く方法を紹介します。
水溶き片栗粉を少し入れる
卵2個に砂糖小さじ1/2と塩少々を混ぜ、水溶き片栗粉を少しだけ加えます。
片栗粉が入ると卵がしなやかになり、薄く焼いても破れにくくなります。
卵液は一度こすと、焼き上がりがなめらかになります。
弱火で薄く焼いて、冷めてから切る
卵焼き器に油を薄くなじませ、弱火で卵液を薄く流します。
表面が乾いてきたら返して、裏をさっと焼いたら取り出します。
冷めてから何枚か重ねて巻き、端から細く切ってほぐせば、ふんわりした錦糸卵になります。
彩りの配置——面→線→点の順

同じ具でも、盛りつけ方でちらし寿司の華やかさはまったく変わります。
寿司屋が必ず意識しているのが、「5色の法則」と「面→線→点の法則」です。
具材の記事でも紹介しているこの2つを、実際の手順でお伝えしますね。
5色をそろえる
黄(錦糸卵)・赤(えび・桜でんぶ・いくら)・緑(絹さや・大葉)・白(酢飯・れんこん)・黒(のり・しいたけ)の5色を意識します。
赤と黄を多めに、緑と黒は差し色として少しだけ使うと、華やかで引き締まった仕上がりになります。
面→線→点の順に重ねる
まず、酢飯の上に錦糸卵を全面に広げて「面」を作ります。
次に、絹さやや加熱したえびを放射状や斜めに並べて「線」を引きます。
最後に、いくらや桜でんぶを「点」で散らせば、立体感のある美しいちらし寿司になります。
いくらや桜でんぶは、全体にぱらぱら散らすより、3か所か5か所に小さな山を作ってまとめて置きます。
奇数で置くと、目が自然に動いて、にぎやかで楽しい印象になります。
取り分けるときにも、ひとりずつに彩りが行き渡りやすくなります。
ちらし寿司の作り方——6工程

ここからは、米2合(4人分)の作り方を順番に見ていきます。
具は前の日に下ごしらえしてある前提なので、当日は30分ほどで仕上がります。
材料は4人分で、次のとおりです。
- 米 2合
- すし酢(米酢大さじ3・砂糖大さじ2・塩小さじ1)
- 干ししいたけの甘煮(干ししいたけ4枚分)
- かんぴょうとにんじんの甘煮(にんじん40g)
- 酢れんこん(れんこん40g)
- 錦糸卵(卵2個分)
- 絹さや 20g
- 加熱したえび・いくら・桜でんぶ・刻みのり お好みで
工程1 米をかために炊く
米は、いつもより水を少し減らして、かために炊きます。
すし酢の水分が加わるので、かために炊くとべちゃっとしません。
工程2 すし酢を切るように混ぜる
炊きたてのご飯を寿司桶に移し、すし酢を回しかけます。
しゃもじを立てて切るように混ぜ、うちわであおいで粗熱を取ります。
工程3 五目の具を混ぜる
汁気をしっかりきったしいたけ・かんぴょう・にんじん・れんこんを、酢飯にさっくり混ぜ込みます。
混ぜすぎると酢飯がつぶれるので、全体に行き渡ったら止めてください。
工程4 器にふんわり広げる
酢飯を器に移し、押しつけずにふんわりと平らに広げます。
ぎゅっと押すと、かたくなって食感が損なわれます。
工程5 錦糸卵で面を作る
錦糸卵を、酢飯が見えなくなるくらい全面に広げます。
工程6 線と点で彩る
塩ゆでした絹さやと加熱したえびで線を作り、いくらや桜でんぶを点で散らしたら完成です。
刻みのりは、食べる直前にのせると香りが立ちます。
前日仕込みの段取り——当日は30分

ちらし寿司は具が多いので、前日と当日で作業を分けると、ぐっと楽になります。
具材の記事の下ごしらえスケジュールと同じく、煮物系は前日、鮮度が大事なものは当日が基本です。
私のお店の段取りを、時間割にするとこうなります。
前日にできること
干ししいたけの甘煮、かんぴょうとにんじんの甘煮、酢れんこん、錦糸卵を前日に作ります。
甘煮は冷蔵庫で一晩おくと味がしみ、錦糸卵はラップに包んで冷蔵しておけます。
前日の作業は、40〜60分ほどが目安です。
当日に準備すること
酢飯は、ご飯を炊くところから当日に作ります。
絹さやの塩ゆで、えびの加熱、海鮮や大葉の準備も、鮮度を保つために当日にしてください。
当日の作業は、30〜40分ほどで仕上がります。
火の通りの確かめ方——えびと錦糸卵

五目ちらしの具は煮て火を通してあるので、確かめたいのは、上にのせるえびと錦糸卵です。
とくに、家族で食べるちらし寿司には、加熱したえびを使うのがオススメです。
次の2つを確かめてからのせてください。
- えび:中まで色が変わる
殻つきのままゆでて、身が中まで色が変わり、白くしまっていれば火が通っています。 - 錦糸卵:生の部分がない
表面まで乾いて、とろりとした生の部分が残っていないかを見ます。
刺身やいくらなどの生の海鮮をのせるときは、その日に買った新鮮なものを、食べる直前にのせてください。
よくある失敗——酢飯がべちゃつく

ちらし寿司の失敗は、だいたい4つのパターンに分かれます。
どれも原因がはっきりしているので、ひとつずつ直していけば、次からはお店の仕上がりに近づきます。
- 酢飯がべちゃつく
ご飯がやわらかいか、具の汁気が残っています。かために炊いて、具の汁気をしっかりきります。 - 絹さやの色がくすむ
前日にゆでると色が悪くなります。当日に塩ゆでして、冷水にとります。 - 錦糸卵が破れる
火が強いか、卵液が厚すぎます。水溶き片栗粉を少し入れ、弱火で薄く焼きます。 - 盛りつけがまとまらない
具を一度に散らしています。面→線→点の順に重ねます。
4つに共通するのは、「水分と順番をていねいに扱う」ことです。
この2つを押さえれば、ちらし寿司はぐっと失敗しにくくなります。
保存——海鮮入りは当日中

ちらし寿司は、その日のうちに食べきるのが基本です。
具材の記事と同じく、刺身などの海鮮をのせたちらし寿司は当日中に食べきってください。
海鮮をのせていない五目ちらしなら、冷蔵で翌日までが目安です。
冷蔵した酢飯はかたくなりやすいので、作りすぎないのがいちばんの保存のコツです。
海鮮は食べる直前にのせるようにして、残った具は、ちらし寿司の余った具材アレンジの記事を参考に使い切ってください。
ちらし寿司の栄養——1人分約370kcal

栄養士として、この作り方のちらし寿司1人分を計算してみました。
米2合を4人で分けた量に、五目の具と錦糸卵、絹さやをのせた1人分です。
エネルギーは約370kcal、たんぱく質は約9gです。
塩分は約2.3gで、そのほとんどはすし酢の塩と、甘煮のしょうゆです。
1日の目標量(男性7.5g未満・女性6.5g未満、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」)の3〜4割ほどにあたります。
合わせる汁物は、だしをきかせて塩を控えめにするのがオススメです。
合わせる汁物や副菜は、ちらし寿司の献立の記事で紹介しています。
この作り方に使う特定原材料は、錦糸卵の卵と、しょうゆの小麦です。
上にのせるえびは特定原材料で、いくらは準ずる品目です。
しょうゆの大豆も準ずる品目なので、食物アレルギーのあるご家族がいるときは、のせる具と調味料の表示を確かめてください。
ちらし寿司は、酢飯が主役のぶん、主食の量が多くなりがちです。
五目の具や錦糸卵、絹さやを多めにして酢飯を少し控えると、彩りも栄養のバランスもよくなります。
塩分や糖分の指示を受けている方は、かかりつけの先生の指示を優先してください。
高齢者や子供にやさしいちらし寿司

ちらし寿司は、家族の節目のお祝いに囲む料理です。
三世代が同じ食卓に集まる日だからこそ、具の切り方と、のせる具を少し工夫してください。
高齢の家族に出すとき
しいたけやかんぴょう、にんじんは、小さく刻んでやわらかく煮ておきます。
酢れんこんはかたさが残るので、噛む力が弱い方の分は除くか、細かく刻んでください。
刻みのりは上あごに貼りつきやすいので、少なめにするか、のせずに出しましょう。
酢飯は粒がばらけやすく、飲み込む力に不安がある方にはむせやすいことがあります。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食学会分類2013を目安に、やわらかさを調整し、汁物のとろみは市販のとろみ剤(とろみ調整食品)でつけてくださいね。
やわらかいちらし寿司は、ひな祭りの介護食献立の記事でも紹介しています。
小さなお子さんに出すとき
刺身やいくらなどの生の海鮮は、2歳以下のお子さんや高齢の方、妊娠中の方には出さず、加熱したえびや錦糸卵をのせてください。
酢の刺激が強いと感じる子には、すし酢を少し控えめにした酢飯を取り分けると食べやすくなります。
1歳未満のお子さんには、生もの・のり・酢の刺激のため、ちらし寿司は出さないようにしましょう。
お米を離乳食に使うときの始める時期や量は、月齢で変わるので、かかりつけの先生や自治体の相談窓口で確かめてくださいね。
私は現役介護士でもあります。
酢飯の酸味やばらける粒が苦手な方もいらっしゃいます。
その日は、同じ五目の具を細かく刻んで、やわらかめのご飯に混ぜ込んでお出ししています。
酢飯のちらし寿司を、やわらかい五目ご飯に置き換える日があっていい。
ちらし寿司の作り方でよくある質問
最後に、ちらし寿司を作るときによくいただく質問にお答えします。
Q1. 市販のすし酢でもいい?
もちろん大丈夫です。
甘めが好きなら、市販のすし酢に砂糖を少し足すと、ちらし寿司らしい甘めの酢飯になります。
Q2. 干ししいたけがないときは?
生のしいたけでも作れます。
その場合は、戻し汁の代わりにだしで煮ると、香りとうま味が補えます。
Q3. 錦糸卵は前日に作れる?
作れます。
冷ましてからラップに包んで冷蔵し、当日に細く切ってほぐしてください。
Q4. 酢飯は何時間前に作る?
食べる1〜2時間前までに作るのがオススメです。
冷蔵庫に入れるとかたくなるので、ぬれぶきんをかけて涼しい場所に置き、その日のうちに食べきってください。
まとめ。。。

ちらし寿司の作り方を、酢飯から具の下ごしらえ、錦糸卵、彩りの配置、前日仕込みまでまとめました。
- 酢飯は握りより少し甘めに
米2合に米酢大さじ3・砂糖大さじ2・塩小さじ1。 - 甘煮は前日に作って一晩
干ししいたけの戻し汁が味の土台です。 - 具の汁気はしっかりきる
酢飯がべちゃっとしません。 - 錦糸卵は水溶き片栗粉と弱火で
薄く焼いても破れにくくなります。 - 彩りは5色と面→線→点
点の具は奇数でまとめて置きます。 - 前日と当日で作業を分ける
当日は30〜40分で仕上がります。 - 海鮮入りは当日中に
海鮮抜きなら冷蔵で翌日まで。
ちらし寿司は、前の日からの小さな準備が、当日の大きな笑顔になる料理です。
だからこそ、ひとつひとつの具をていねいに仕込む時間も、お祝いの一部だと思っています。
次のお祝いの日には、ぜひ前の日から寿司屋の段取りで作ってみてくださいね。
寿司桶のふたを開けた瞬間、家族の歓声が聞こえるはずだよ。
フッくんでした!
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