料理研究家、料理大好きフッくんです。
薄く切って並べると、それだけで一皿になる鶏ハム 🍳
作り置きにもお弁当にも便利で、家で作る方が本当に増えました。
でも、いざ調べてみると「お湯に入れて放置」「炊飯器の保温で1時間」といったやり方が並んでいて、どれが安全なのか分からないということ、ありませんか?
正直に言うと、鶏ハムはレシピを選ぶところから安全が始まる料理です。ここだけは、はっきり書かせてください。
こんなお悩み、ありませんか?
- 中まで火が通ったか分からない
色では判断できません。中心の温度と、確かめ方をお伝えします。 - パサついて、しっとりしない
塩と砂糖の比率と、寝かせる時間で決まります。 - 炊飯器の保温でいいのか不安
ここがこの記事のいちばん大事なところです。独立した見出しで扱います。 - 切るとボロボロに崩れる
切るタイミングを変えるだけで解決します。
現役料理人20年・栄養士。店でも家でも作ってきた手順を、そのまま書いていきますね。

鶏ハムは「温度を保てるか」で作り方を選ぶ

結論から言いますね。鶏ハムでいちばん大事なのは、味つけでも巻き方でもありません。その方法で、中心の温度を保てるかどうかです。
鶏肉には、加熱が足りないと食中毒を起こす菌がいます。カンピロバクターという名前で、新鮮な鶏肉でも起こります。「新しいから大丈夫」は通用しません。
まれにギラン・バレー症候群という神経の病気につながることがあるので、家庭でもここだけは線を引いてください。
そして厄介なことに、鶏ハムは断面が白くなっても、中心まで火が通っているとは限らない。塩をすり込んで寝かせた肉は、火が通る前から白っぽく見えるからです。
だから、判断は色ではなく温度で。この記事は、そこを軸に書いていきます。
鶏ハムとサラダチキン、何が違う?

似た料理なので、先に整理しておきますね。
| 項目 | 鶏ハム | サラダチキン |
|---|---|---|
| 下ごしらえ | 塩と砂糖をすり込んで一晩寝かせる | 下味をつけてすぐ加熱 |
| 形 | 巻いて棒状に成形する | むね肉の形のまま |
| 食感 | 身が締まってハムに近い | ほぐれやすい |
| 切り方 | 薄切りにして断面を見せる | 裂く・そぎ切り |
| 手間 | 一晩かかる | 当日できる |
いちばんの違いは、塩と砂糖で寝かせる時間があるかどうか。この一晩が、ハムらしい弾力としっとりさを作ります。
なお、鶏むね肉そのものをやわらかくする方法はこちらの記事にまとめてあります。そぎ切りや片栗粉の使い方は、あちらが詳しいです。
材料と、塩と砂糖の黄金比

覚え方はひとつだけ。塩は肉の重さの1.5%、砂糖は1%です。
- 鶏むね肉 1枚(約300g)
皮はお好みで。外すとあっさり、つけると香りが出ます。 - 塩 4.5g(肉の1.5%)
小さじ3/4ほど。これ以上増やすと塩抜きが必要になります。 - 砂糖 3g(肉の1%)
甘くするためではなく、水分を抱えさせるために入れます。 - お好みで こしょう・ハーブ・にんにく
寝かせる前にすり込みます。ローリエを1枚添えるだけでも香ります。
パーセントで覚えておくと、肉の大きさが変わっても迷いません。250gなら塩3.75g、400gなら塩6gですね。
砂糖を入れると聞いて、甘くなるのではと心配される方がいます。肉の重さの1%では、甘みはほとんど感じません。
砂糖には水を抱え込む性質があるので、加熱したときに肉から水分が抜けにくくなります。鶏むね肉がパサつきやすいのは水分が逃げるからなので、そこを先に止めておく、という考え方ですね。
鶏むね肉(皮なし)は100gあたり約105kcal・たんぱく質約23.3g・脂質約1.9g。たんぱく質が多く、脂質が少ない部位です。
1枚300gで作ると、5等分して1切れ約60g。たんぱく質はおよそ14gとれます。
※文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」を参考にした概算値です。
鶏ハムの作り方(6工程)

①開いて、厚みを均す
むね肉を観音開きにして、厚いところに包丁を寝かせて開きます。厚みが均一でないと、火の通りがそろいません。
これは見た目のためではなく、安全のための一手です。
②塩と砂糖をすり込む
はかりで量った塩と砂糖を、両面にまんべんなく。手のひらで押さえるように、肉の表面全体へ。
③冷蔵で6〜12時間、寝かせる
ラップで包んで冷蔵庫へ。一晩が目安です。室温で寝かせないでください。
この時間に、塩が肉のたんぱく質に働いて、水分を抱え込む状態になります。
④巻いて、ラップで棒状にする
皮を外側にして、手前からきつく巻きます。ラップで包んで、両端をあめ玉のようにねじって締めます。
すきまがあると、そこに火が通りにくくなります。しっかり締めてください。
⑤火を入れる
ここが本題です。方法によって線が変わるので、次の見出しで詳しくお伝えします。
⑥冷やしてから切る
火が通ったら、ラップのまま粗熱を取り、冷蔵庫で冷やします。温かいうちに切ると崩れます。
しっかり冷えてから、薄く切ってください。断面がきれいに出ますよ。
火入れ3つの方法と、それぞれの線

ここは、はっきり書いておきます。
鶏肉の加熱の目安は中心温度75℃で1分以上。もうひとつ「63℃で30分以上」という基準もありますが、これは温度を保てる機器を使うときだけの話です。
①鍋の湯に入れて、火を止めて放置する
家庭でいちばん多いやり方です。ただし湯は時間とともに冷めていくので、中心の温度が保証できません。
肉の大きさ、湯の量、鍋の厚み、室温。条件が少し違うだけで、結果が変わります。
この方法でやるなら、最後に必ず中心まで75℃1分以上を通してください。沸いた湯に戻して数分追加するか、切ってから確認するのが確実です。
②炊飯器の保温を使う
手軽に見えますが、おすすめしません。保温の温度は機種によって幅があります。何℃で保たれているか、多くの機種では表示されません。
温度計で測って確かめられないなら、この方法は避けてください。
③温度を保てる機器を使う
低温調理器のように、設定した温度を保てる機器であれば、63℃で30分以上という基準が使えます。しっとり感はこの方法がいちばんです。
ただし、測っているのが湯の温度ではなく、肉の中心の温度である必要があります。厚みのある肉ほど、中心が設定温度に届くまで時間がかかります。
店では温度を管理する機器がありますが、家庭の台所にはないことのほうが多いですよね。
だから私は、家で作るときは75℃1分以上にしています。少し身が締まりますが、それでも塩と砂糖で寝かせてあるので、十分しっとりします。
確かめ方はふたつ。いちばん厚いところに切れ目を入れて、肉汁が透明であること。そして断面の中心にピンク色が残っていないこと。
若い頃、低温で仕上げた鶏を「きれいな桜色や」と褒められて得意になっていた私に、親方が言いました。「その色を出していいのは、温度を測れる者だけや」。
もしピンクが残っていたら、迷わず火を戻してください。切ったあとでも、フライパンや湯で追加で火を通せます。やり直せる失敗なので、自信がないときは戻すほうを選んでくださいね。
よくある失敗と対策

ここまでの内容を、失敗のかたちから逆引きできるようにまとめます。
鶏ハムのいいところは、ほとんどの失敗があとから直せることです。火が足りなければ戻せますし、崩れたらサラダに混ぜればいい。気楽にいきましょう。
- 中心にピンクが残っている
加熱が足りていません。切った状態でも、湯やフライパンで追加で火を通せます。迷ったら戻してください。 - パサついて硬い
寝かせが足りないか、塩が多すぎます。肉の1.5%を守って、6時間以上おいてください。 - しょっぱい
目分量で塩をふっています。はかりで量ってください。すでにしょっぱいときは、薄く切ってサラダに混ぜると食べやすくなります。 - 切るとボロボロ崩れる
温かいうちに切っています。冷蔵庫でしっかり冷やしてから、よく切れる包丁で薄く引いてください。 - 巻きがほどける
ラップの締めが甘いです。両端をあめ玉のようにねじって、たこ糸で結ぶとさらに安定します。
切り方と保存

火が通ったら、あと少しだけ待ってください。鶏ハムは、切るタイミングで仕上がりが変わります。
作り置きとして冷蔵庫に置いておける料理なので、保存の線もここでまとめてお伝えしますね。
鶏ハムは「冷めるとき」に完成する
火が通ったら、ラップのまま粗熱を30分以内に取ります。浅いバットに置いて、風の通るところで。
そのあと冷蔵庫で2時間以上冷やしてから切ってください。冷える間に肉汁が身に戻るので、切ったときに汁が流れ出ません。温かいうちに切ると、そのぶんの旨みが皿に出てしまいます。
切るときは繊維に対して直角に、できるだけ薄く。よく切れる包丁を、引くように動かします。
保存は冷蔵3日。切らずに棒のまま置くほうが、乾きません。切るのは食べる分だけにしてください。
冷凍は3週間まで。使いやすいのは、薄切りにしてラップで小分けにする形です。解凍は冷蔵庫でゆっくりと。
ゆで汁は、塩気とうまみが出ているのでスープに使えます。ただし生の肉が入っていた汁なので、必ず一度しっかり煮立ててから使ってください。
一度解凍したものを、また凍らせるのは避けてくださいね。
高齢者や子供にやさしい鶏ハム

鶏ハムはやわらかく見えますが、むね肉は繊維がはっきりした部位です。切り方で食べやすさが大きく変わります。
高齢のご家族に出すとき
まず繊維に対して直角に、できるだけ薄く。縦に切ると繊維が長いまま残って、噛み切れません。
しっとりしていても、口の中ではまとまりにくいことがあります。マヨネーズを使ったソースや、あんかけのようにとろみをつけたものを添えると、ひと口がまとまります。
棒の両端は乾いて硬くなりやすいので、そこは外して大人が食べるほうが安心です。
お子さんに出すとき
薄く切って少量から。1歳未満のお子さんには出しません。
塩分が高めの料理なので、お子さんに出すときは量を控えめに。サラダや野菜と一緒にすると、全体の塩気がやわらぎます。
塩を肉の1.5%で入れるので、300gの鶏むね1枚には塩4.5gがそのまま入っています。5等分すれば1切れ約0.9gですね。
作り置きで少しずつ食べるぶんには問題ありませんが、一度に半分食べれば2g以上になります。ここは意識しておきたいところです。
食塩相当量の目標量は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で成人男性7.5g未満・成人女性6.5g未満/日です。
塩を1.2%まで落としても作れます。そのぶん日持ちは短くなるので、2日以内に食べ切ってください。
なお、塩分や糖分の指示を受けている方は、かかりつけの先生の指示を優先してくださいね。
私は現役介護士でもあります。
鶏ハムは見た目がやわらかく、しっとりしているので、食べやすい料理だと思われがちです。でもむね肉の繊維は、加熱しても短くなりません。
だから切り方がすべてです。繊維に対して直角に、紙のように薄く。それでも噛み切りにくい方には、細かく刻んでマヨネーズやとろみで和えた形にしてください。
棒の両端と、外側の乾いた部分は外します。ここがいちばん硬いところです。
ゆで汁でのばしてペースト状にすれば、パンにも野菜にも使えます。たんぱく質がしっかりとれるので、食が細くなった方にはありがたい一品です。
そして、薄切りが難しい日もあります。鶏ハムを、ほぐしてスープに浮かべる日があっていいと思っています。形を変えても、栄養は届きます。
鶏ハムの作り方でよくある質問
Q1.炊飯器の保温で作っても大丈夫ですか?
おすすめしません。保温の温度は機種によって幅があり、何℃で保たれているか分からないためです。
温度計で測って確かめられるなら別ですが、そうでなければ湯で加熱して、最後に中心まで75℃1分以上を通してください。
Q2.「63℃で30分」というレシピを見ました
その基準が使えるのは、設定した温度を保てる機器を使うときだけです。低温調理器のような道具ですね。
鍋の湯を放置する方法では温度が下がり続けるので、この基準は当てはまりません。家庭では75℃1分以上が確実です。
Q3.中心が少しピンクでも食べられますか?
火を戻してください。鶏ハムは色では判断できません。塩をすり込んだ肉は、火が通る前から白っぽく見えることもあります。
切った状態でも、湯やフライパンで追加で火を通せます。やり直せる失敗です。
Q4.塩抜きは必要ですか?
肉の1.5%なら不要です。それ以上入れた場合や、市販のレシピで多めに塩をした場合は、水に15〜30分浸けてから使ってください。
Q5.どのくらい日持ちしますか?
冷蔵で3日、冷凍で3週間が目安です。切らずに棒のまま保存すると乾きにくくなります。
粗熱は30分以内に取って、冷蔵庫へ。再冷凍は避けてくださいね。
まとめ。。。

鶏ハムの作り方を、最後にもう一度まとめますね。
- 塩は肉の1.5%、砂糖は1%
パーセントで覚えると、肉の大きさが変わっても迷いません。 - 冷蔵で6〜12時間寝かせる
室温では寝かせないでください。この時間がしっとりを作ります。 - 厚みを均して、すきまなく巻く
見た目ではなく、火の通りをそろえるための一手です。 - 家庭では、迷ったら中心75℃1分以上
「63℃30分」が使えるのは、温度を保てる機器のときだけです。 - 炊飯器の保温は、温度が分からないので避ける
湯に入れて放置する方法も、最後に75℃を通してください。 - 判断は色ではなく温度。ピンクが残ったら戻す
切ったあとでも火は入れられます。やり直せる失敗です。 - 冷やしてから、繊維に直角に薄く切る
温かいうちに切ると崩れて、旨みも流れ出ます。 - 冷蔵3日・冷凍3週間。棒のまま保存する
粗熱は30分以内に。ゆで汁を使うなら、一度しっかり煮立てて。
鶏ハムって、材料は鶏むね肉と塩と砂糖だけなんですよね。それなのに、切って並べただけで食卓が整う。
だからこそ、火入れのところだけは譲らないでほしいと思っています。しっとりさせたい気持ちはよく分かります。私も若い頃、桜色の断面に憧れました。でもあの色を出していいのは、温度を測れる人だけです。
75℃でも、十分しっとりします。一晩寝かせた肉は、ちゃんとそこまで応えてくれますよ。
フッくんでした!
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