料理研究家、料理大好きフッくんです。
お弁当の隅で、黄色く四角く、ちょっと甘い 🥚
卵焼きは、家で毎日のように焼く料理なのに、「崩れる」「焦げる」「パサつく」「形がいびつ」と、案外うまくいかないこと、ありませんか?
正直に言うと、寿司屋では玉子焼きで腕を見られます。だから私は、修業の最初の一年、毎朝玉子を焼き続けました。その手つきを、家庭の卵焼き器に合わせて書いていきますね。
こんなお悩み、ありませんか?
- 巻くと崩れる
卵液の量と、卵焼き器の温度です。一度に流す量を減らすだけで変わります。 - 焦げ目がついてしまう
砂糖が焦げています。火加減と、油の使い方で防げます。 - ふわふわにならない
卵液を混ぜすぎています。白身を切る程度で止めるのがコツです。 - 甘さの加減が分からない
卵3個に砂糖大さじ1。この比率が、お弁当にも寿司屋にも通じる基本です。
寿司職人20年・現役料理人20年。毎朝の玉子焼きで覚えたことを、そのまま書いていきますね。

卵焼きとだし巻きの違い——「甘い」が正解
結論から言いますね。この記事で作るのは、砂糖を入れた甘い卵焼きです。
卵焼きには大きく二つの系統があります。だしをたっぷり入れて、ふるふるに仕上げるだし巻き卵。そして砂糖とみりんで甘く、しっかり厚く焼く厚焼き玉子。前者は関西の料理屋で、後者は関東のお弁当と寿司屋で育ちました。
寿司屋の玉子が甘いのには理由があります。江戸前の寿司は、酢飯もネタも「仕事をした味」で、その最後に口直しとして甘い玉子を食べる。締めの一貫が甘いのは、デザートの役目だったんですね。だから寿司屋の玉子焼きは、卵の味そのものではなく「甘さと焼き加減」で腕を見られます。
家庭のお弁当の卵焼きも、この系統です。冷めてもおいしいのは、砂糖が水分を抱えてくれるから。だし巻きは冷めるとだしが抜けてしまいますが、甘い卵焼きは冷めてこそ味が落ち着きます。
だし巻き卵の作り方はこちらの記事にまとめてあります。この記事は、甘い卵焼きと巻き方の技術に絞って書きますね。
卵焼きの黄金比——卵3個に砂糖大さじ1

覚え方は卵1個に、砂糖小さじ1。卵3個なら大さじ1です。
この比率に落ち着いたのは、店の玉子焼きと家のお弁当の両方を焼いてきたからです。寿司屋の玉子はもっと甘く、卵1個に砂糖大さじ1近く入れる店もあります。でも家庭のおかずとしては甘すぎる。卵1個に小さじ1なら、おかずとしてもお弁当としても成立する——その真ん中です。
| 材料 | 分量(1本分) | ここが大事 |
|---|---|---|
| 卵 | 3個 | 常温に戻しておくと、火の通りがそろいます |
| 砂糖 | 大さじ1 | 上白糖が溶けやすい。きび糖ならコクが出ます |
| みりん | 小さじ1 | 照りと、焦げにくさ |
| 塩 | ふたつまみ | 甘さを立たせる下支え |
| だし(お好みで) | 大さじ1 | 入れるとやわらかく。入れなくても成立します |
| サラダ油 | 適量 | キッチンペーパーで薄く。多いと油っぽくなります |
甘さを変えたいときは、砂糖だけを動かしてください。お弁当なら小さじ2に減らしても、寿司屋風なら大さじ1.5に増やしても、ほかの比率はそのままで構いません。
卵液は「混ぜすぎない」

ふわふわにならない原因の多くは、卵液を泡立て器で完全に混ぜてしまうことにあります。
卵の白身には、加熱すると弾力を出す性質があります。完全に混ぜて黄身と一体にしてしまうと、その弾力が全体に広がって、均一に固まって、硬くなるんですね。
逆に、白身を菜箸で切る程度にとどめると、焼いたときに白身と黄身の層が残ります。この層が、断面のきれいな模様になり、口の中でほどける食感になります。
目安は、菜箸を立てて20回ほど。白身のかたまりが切れて、でも全体が均一な黄色にはなっていない、という状態で止めてください。砂糖と塩は、この段階で溶かします。
店では、卵液を必ず一度、ざるでこしていました。混ぜきれなかった白身のかたまりと、カラザ(白いひも)を取るためです。
こすと、焼いたときの断面が均一になって、切り口に白い筋が出ません。
親方の言葉は「こしてない玉子は、切った瞬間にばれる」でした。
卵焼き器の温度と、油

巻く前の、いちばん大事なところです。卵焼きの失敗の半分は、最初の卵液を流すときの温度で決まります。
低いと、卵液が広がったまま固まらず、巻けません。高いと、砂糖が入っているのですぐ焦げます。甘い卵焼きは、だし巻きより焦げやすい——ここを覚えておいてください。
温度の合図は「ジュッ」
油をひいて中火にかけ、菜箸の先に卵液をつけて、一滴落とします。「ジュッ」と音がして、すぐに固まれば適温。音がしなければまだ低く、落とした瞬間に茶色くなれば高すぎます。
この確認を、毎回やってください。慣れてくると手を近づけただけで分かるようになりますが、最初は一滴が確実ですよ。
油は、キッチンペーパーで薄く
油を注ぐのではなく、キッチンペーパーに含ませて、四隅まで塗ります。多いと油っぽくなり、卵液が油の上を滑って巻けません。
巻くたびに、ペーパーで薄く塗り直します。この繰り返しが、くっつかない秘訣です。ペーパーは小皿に置いて、菜箸でつまめるようにしておくと手が止まりません。
卵焼きの巻き方(6工程)

ここが本題です。巻き方には「奥から手前」と「手前から奥」の二つの流派がありますが、この記事では奥から手前で書きます。家庭の卵焼き器では、こちらのほうが手首が楽で、崩れにくいからです。
①卵液の1/4を流し、気泡をつぶす
適温になった卵焼き器に、卵液の4分の1を流します。全体に広がったら、大きな気泡を菜箸の先でつぶします。気泡が残ると、そこから破れます。
②半熟のうちに、奥から手前へ巻く
表面がまだ少しとろっとしているうちに、奥の端を菜箸で持ち上げて、手前へ折りたたむように巻きます。完全に固まってからでは、折ったところが割れます。
最初の一巻きは、きれいでなくて構いません。芯になるだけなので、多少崩れても次の卵液で隠れます。
③卵を奥へ寄せ、空いた所に油を塗る
巻き終わった卵を、奥へ滑らせます。手前が空くので、ペーパーで薄く油を塗ります。
④次の卵液を、巻いた卵の下にも流す
ここがコツです。卵液を流したら、奥の巻いた卵を菜箸で少し持ち上げて、下にも卵液を流し込みます。こうすると、巻いたときに層がつながって、切っても離れません。
⑤同じように手前へ巻く
半熟のうちに、奥の卵を芯にして手前へ。2回目からは芯があるので、巻きやすくなります。
⑥4回繰り返して、巻きすで形を整える
③〜⑤を繰り返して、卵液を使い切ります。焼き上がったら、熱いうちに巻きすで包んで、形を整えます。角を作りたいなら四角く、丸くしたいなら丸く。2〜3分そのままおくと、形が固定されます。
切る前に、いちばん厚いところを切って、中心まで固まっているか確かめてください。卵は中心まで火を通します。とろっとした部分が残っていたら、巻きすのまま余熱で1分、それでも足りなければ卵焼き器に戻してください。
崩れる原因のほとんどは、表面が固まるのを待ちすぎていることです。
固まった卵は折れます。半熟の卵は曲がります。曲がるうちに巻く、が全部です。
親方は「玉子は、まだ早いと思うときが、ちょうどや」と言っていました。
よくある失敗と対策

ここまでの内容を、失敗のかたちから逆引きできるようにまとめます。卵焼きの失敗は、温度・タイミング・卵液の3つのどれかに必ず戻ります。
- 巻くと崩れる
卵液が多いか、固まってから巻いています。一度に流すのは1/4、半熟のうちに巻いてください。 - 焦げ目がつく
火が強すぎます。砂糖が入っているので焦げやすい。中火より少し弱めで、油はペーパーで薄く。 - パサつく・硬い
卵液を混ぜすぎているか、焼きすぎです。白身を切る程度で止めて、最後は余熱で仕上げてください。 - 形がいびつ
巻きすを使っていません。熱いうちに包んで2〜3分。それだけで四角くなります。 - 断面に白い筋が出る
白身が混ざりきっていないか、こしていません。一度ざるでこすと消えます。
保存と、お弁当

甘い卵焼きは、冷めてもおいしい数少ない卵料理です。砂糖が水分を抱えてくれるので、時間がたっても硬くなりにくい。お弁当の定番になったのは、そのためですね。
焼いたら巻きすで形を整えて、そのまま粗熱を30分以内に取ります。切るのは、完全に冷めてから。温かいうちに切ると、断面がつぶれます。
冷蔵は2日。冷凍は2週間で、甘い卵焼きは冷凍にも向きます。1切れずつラップで包んで、凍ったままお弁当に入れれば、昼には自然解凍で食べごろです。だし巻きは冷凍するとだしが抜けてスカスカになりますが、甘い卵焼きは砂糖のおかげで戻りがいい。ここも二つの系統の違いです。
お弁当に詰めるときは、完全に冷めてから。温かいまま詰めると、ふたの裏に水滴がついて傷みのもとになります。夏場は保冷剤を添えてください。
温め直すときは、電子レンジで短く。中心まで湯気が立つまで(75℃で1分以上が目安)。長く加熱すると、卵が締まって硬くなります。一度解凍したものを、また凍らせるのは避けてくださいね。
卵焼きの栄養と、家族への出し方

卵は、たんぱく質の質がとても高い食材です。全卵100gあたり約142kcal・たんぱく質約12.2g。卵1個(60g)なら約85kcal・たんぱく質約7gになります。
この記事の卵焼き1本(卵3個)を計算すると、卵3個で約256kcal、砂糖大さじ1で約35kcal、油で約55kcal。1本で約350kcal、6等分した1切れで約58kcalです。たんぱく質は1切れ約3.7g。
意外なのは、砂糖より油のほうがエネルギーが多いこと。甘さを気にして砂糖を減らすより、油をペーパーで薄くするほうが効きます。それは焦げにくさにもつながるので、一石二鳥です。
塩分は、塩ふたつまみで約0.6g。1本でこの量なので、1切れなら0.1g。卵焼きは、おかずの中ではかなり塩分の少ない一品です。お弁当で塩分を調整したいとき、卵焼きの席は安心して増やせます。
食塩相当量の目標量は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で成人男性7.5g未満・成人女性6.5g未満/日です。塩分や糖分の指示を受けている方は、かかりつけの先生の指示を優先してくださいね。
出す前に確かめておきたいのが、卵は特定原材料8品目(2025年4月くるみ追加・現在えび/かに/小麦/そば/卵/乳/落花生/くるみ)のひとつだということです。卵焼きは卵そのものなので、ここは避けようがありません。持ち寄りやお弁当の交換があるときは、ひと言添えてください。みりんには大豆や米が使われていることがあります。
油は砂糖より重い。ペーパーで薄く塗るだけで、数字も焦げつきも両方減ります。
卵は特定原材料。持ち寄りではひと言添えて。
※文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」を参考にした概算値です。
高齢者や子供にやさしい卵焼き

卵焼きは、家族全員に出しやすい料理です。やわらかくて、味が穏やかで、形が決まっている。それでも、「厚さ」と「火の通り」の2つだけは気をつけたいところです。
高齢のご家族に出すとき
厚焼きは、見た目はやわらかくても厚みがあるぶん、噛み切るのに力が要ります。1cm以下に薄く切ってください。
だしを大さじ2に増やして焼くと、しっとりして口の中でほどけやすくなります。ただしその分やわらかくなるので、巻くときはより慎重に。
そして中心まで、しっかり火を通してください。半熟に残さないこと。切って中心が固まっているかを確かめてからお出しください。
お子さんに出すとき
甘い卵焼きは、子どもがいちばん喜ぶおかずの一つです。ただ甘さは小さじ2くらいに控えめにして、慣れさせてあげてください。
卵は特定原材料なので、初めて卵を食べさせる時期と量は、かかりつけの先生や自治体の相談窓口で確かめてください。月齢で線が変わるところなので、私の側で目安を書くのは控えます。1歳未満のお子さんには、この記事の卵焼きは出しません。
私は現役介護士でもあります。
卵焼きはもともとやわらかい料理です。1cm以下に薄く、だしを多めに、中心まで火を通す。この3つで、多くの方がそのまま召し上がれます。
卵焼きを、だしでのばした炒り卵に置き換える日があっていいと思っています。同じ甘さが、噛まなくていい形で届きます。
卵焼きの作り方でよくある質問
読者の方からよくいただく質問を、まとめておきますね。
Q1.丸いフライパンで作れますか?
作れます。卵液を流したら、フライパンの奥半分に寄せて、そこから手前へ巻いてください。形は四角になりませんが、巻きすで整えれば十分きれいですよ。
Q2.砂糖の代わりにみりんだけでも?
作れますが、甘さは弱くなります。みりんの甘さは砂糖の3分の1ほどなので、大さじ2〜3必要です。水分が増えるぶん、焼く回数を1回増やしてください。
Q3.どうしても焦げます
火が強いか、油が多いかです。中火より少し弱め、油はペーパーで薄く。それでも焦げるなら、卵液を流す前に一度濡れ布巾で卵焼き器の底を冷ましてください。
Q4.冷凍できますか?
できます。甘い卵焼きは冷凍向きです。1切れずつラップで包んで2週間。凍ったままお弁当に入れれば、昼には自然解凍で食べごろです。
Q5.断面に白い筋が出ます
白身が混ざりきっていないか、こしていません。卵液を一度ざるでこすと消えます。店では必ずやっていた一手です。
まとめ。。。

卵焼きの作り方を、最後にもう一度まとめますね。
- 黄金比は、卵1個に砂糖小さじ1
卵3個なら大さじ1。みりん小さじ1と塩ふたつまみで下支え。 - 卵液は混ぜすぎない。一度こす
白身を切る程度で止めて、ざるでこすと断面がそろいます。 - 温度の合図は「ジュッ」
一滴落として音がして、すぐ固まれば適温です。 - 油はペーパーで薄く、四隅まで
注ぐと多すぎます。巻くたびに塗り直してください。 - 卵液は1/4ずつ、半熟のうちに巻く
固まってからでは折れます。曲がるうちに巻くのが全部です。 - 巻いた卵の下にも、卵液を流し込む
層がつながって、切っても離れません。 - 熱いうちに巻きすで整え、冷めてから切る
中心まで固まっているか、切って確かめてください。 - 冷蔵2日・冷凍2週間。お弁当は冷めてから
甘い卵焼きは冷凍向きです。凍ったまま入れて自然解凍。
卵焼きって、毎日焼くものだから、上手になったことに気づきにくい料理なんですよね。
私も修業の最初の一年、毎朝焼いた玉子を親方に見せて、何も言われずに捨てられる日が続きました。ある朝、初めて「置いとけ」と言われた玉子は、今思えば、まだ早いと思ったところで巻いた最初の一本でした。
明日の朝、ひと巻きだけ早く巻いてみてくださいね。
フッくんでした!
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