料理研究家、料理大好きフッくんです。
箸で切れる、とろとろの豚の角煮 🥢
家で作ると「脂っこい」「かたい」「味が中まで入らない」ということ、ありませんか?
正直に言うと、その3つとも煮込みの時間ではなく、下茹でで決まります。
こんなお悩み、ありませんか?
- 脂っこくて重たい
下茹での時間が足りていません。1時間かけると別物になります。 - とろとろにならない・かたい
本煮を長くしても、下茹でを飛ばすと繊維はほどけません。 - 味が中まで入らない
味が入るのは煮ているときではなく、冷めていくときです。 - 圧力鍋の時間が分からない
下茹で20分・本煮20分が目安です。見出しを立てて書きます。
現役料理人20年・栄養士。店で毎週仕込んでいた手順を、そのまま書いていきますね。

とろとろにならない理由は、下茹でにある
結論から言いますね。角煮の出来は、味つけの前にほとんど決まっています。
豚バラ肉はコラーゲンと脂が層になった部位です。コラーゲンは、長く加熱するとほどけてゼラチンに変わります。これが「とろとろ」の正体ですね。
ところが、しょうゆや砂糖を入れた煮汁の中では、この変化が進みにくくなります。調味料が肉の水分を引き出して、繊維を締めてしまうからです。
だから順番はこうなります。まず水だけで1時間煮て、やわらかくする。味をつけるのはそのあと。
この下茹でには、もうひとつ大事な役目があります。余分な脂とアクを抜くこと。脂っこさの正体はここなので、下茹でを飛ばすと重たい角煮になります。
なお、角煮に合う献立は献立の記事にまとめてあります。この記事は、作り方の技術に絞って書きますね。
下茹で——脂とアクを抜く1時間

①4〜5cm角に切る
煮ると縮むので、大きいかな、と思うくらいで切ってください。仕上がりはひと回り小さくなります。
②表面を焼き固める
フライパンに油をひかず、脂身の面から焼きます。全面に焼き色がついたら取り出します。
これをしておくと、煮ているあいだに肉が崩れにくく、余分な脂も先に落ちます。
③たっぷりの水で1時間
肉がかぶるくらいの水に、ねぎの青い部分としょうがの薄切りを入れて、弱めの中火で1時間。
ここで調味料は一切入れません。アクが出たらすくって、水が減ったら足してください。
④水で洗って、ぬめりを取る
下茹でが終わったら、肉を取り出してぬるま湯で洗います。表面のぬめりとアクを流すと、仕上がりの澄み方が変わります。
下茹での汁は、脂とアクが溶け込んでいるので使いません。
「1時間」と書きましたが、本当の合図は時間ではなく竹串です。
肉のいちばん厚いところに竹串を刺して、抵抗なくすっと入れば下茹では完了。まだ押し返す感じがあれば、15分ずつ足してください。
肉の厚み、鍋の大きさ、火加減。条件が違えば時間も変わります。時計より串を信じるほうが確実です。
若い頃、時間だけ見て引き上げた私に、親方が言いました。「串が入らん肉は、味も入らん」。
やわらかくなった肉は、細かいすきまが開いた状態です。そこに煮汁が入る。やわらかくすることと、味を入れることは、同じ一つのことなんですね。
煮汁の黄金比

覚え方は比率です。しょうゆ1・砂糖1・みりん0.5。そして酒は水の半量。
| 材料 | 分量(豚バラ600g・4人分) | ここが大事 |
|---|---|---|
| 豚バラブロック | 600g | 4〜5cm角。縮むので大きめに |
| 水 | 400ml | 本煮用。下茹での汁は使いません |
| 酒 | 200ml | 水の半量。肉をやわらかくします |
| しょうゆ | 大さじ4 | 比率の「1」 |
| 砂糖 | 大さじ4 | 比率の「1」。照りとコクになります |
| みりん | 大さじ2 | 比率の「0.5」。仕上げの照り |
| しょうがの薄切り | 1片 | 本煮にも入れます |
| ねぎの青い部分 | 1本分 | 下茹でと本煮の両方で |
酒が多いと感じるかもしれませんが、角煮の酒は調味料ではなく、やわらかくするための材料です。ここをけちると仕上がりが変わります。
甘さを控えたいときは砂糖を大さじ3へ。そのぶん照りは弱くなるので、みりんを大さじ3に増やしてください。
豚の角煮の作り方(6工程)

①4〜5cm角に切る/②表面を焼き固める
前の見出しのとおりです。焼くのは脂身の面から。
③水だけで1時間、下茹でする
ねぎの青い部分としょうがを入れて、竹串がすっと入るまで。調味料はまだ入れません。
④洗って、ぬめりを取る
ぬるま湯でやさしく洗い、鍋もいったん洗います。
⑤煮汁を合わせて1時間
水400ml・酒200ml・しょうがを入れて煮立て、先に砂糖とみりんを。10分ほど煮てから、しょうゆを加えます。
落とし蓋をして弱火で1時間。煮汁が3分の1くらいになるまでです。
⑥火を止めて、冷ます
ここが大事です。味が入るのは、冷めていくとき。煮汁の温度が下がるにつれて、肉のすきまに味が吸い込まれていきます。
鍋のまま最低30分、できれば1時間。そしていちばんおいしいのは、翌日です。
豚の塊は「3つの合図」で確かめる
角煮は長く煮る料理なので火の通りは心配ないように思えますが、塊肉は中心まで熱が届くのに時間がかかります。下茹でを短く切り上げたときは、とくに確かめてください。
合図は3つです。竹串を刺して、出てくる汁が透明なこと。切ったときに断面に桜色が残っていないこと。そして調理用温度計があるなら、中心が75℃に達していること。
豚肉は中心まで75℃で1分以上が加熱の目安です。角煮の下茹で1時間+本煮1時間なら、まず問題ありません。
心配なときは、いちばん大きな一切れを半分に割ってみてください。切ったあとでも、煮汁に戻して火を入れられます。やり直せる失敗なので、迷ったら確かめるほうを選んでくださいね。
一晩おいて、脂を取る

店の角煮と家の角煮でいちばん差がつくのが、ここです。
煮上がった角煮を鍋ごと一晩冷やすと、煮汁の表面に脂が白く固まります。これをスプーンですくって取り除く。
それだけで、脂っこさがまるで変わります。翌日に温め直すと、澄んだ煮汁がとろりと肉にからんで、まるで別の料理です。
下茹でで抜けきらなかった脂が、冷えることで目に見える形になる——冷ますのは、味を入れるためであり、脂を取るためでもあるんですね。
角煮は、二日がかりの料理と思っておく
店では、角煮は前の日に仕込むものでした。当日に作ることはまずありません。
理由は2つです。味が入るのは冷めるとき、そして脂が取れるのは冷えたあと。どちらも「待つ」ことでしか手に入りません。
若い頃、その日のうちに仕上げようと焦っていた私に、親方が言いました。「角煮は、鍋の中で寝かす料理や」。
ただし鍋のまま室温で長く置かないでください。 粗熱は30分以内に取って、鍋ごと冷蔵庫へ。冷蔵庫に入らないときは、保存容器に煮汁ごと移します。
翌日、白く固まった脂を取ってから弱火で温め直します。中心まで湯気が立つまで(75℃で1分以上が目安)。煮汁が煮詰まりすぎていたら、水を少し足して調整してください。
圧力鍋を使うときの時間

時間がない日は、圧力鍋という手もあります。
- 下茹では加圧20分
水とねぎの青い部分、しょうがで。自然に圧が抜けるまで待ちます。 - 本煮も加圧20分
煮汁を入れて加圧。圧が抜けたら、ふたを開けて煮汁を煮詰めます。 - 仕上げの煮詰めは、ふたを開けて
圧力鍋のままでは煮汁が減りません。照りは最後に中火でつけます。 - 冷ます工程は省けません
圧力鍋でも、味が入るのは冷めるときです。ここだけは時短できません。
圧力鍋を使っても、一晩おく工程は残してください。時短できるのは煮る時間だけで、待つ時間は代わりがないんですよね。
よくある失敗と対策

- 脂っこくて重たい
下茹でが短いか、一晩おいて脂を取っていません。どちらも時間でしか解決できません。 - かたい・とろとろにならない
下茹でを飛ばして、調味料と一緒に煮ています。まず水だけで、竹串がすっと入るまで。 - 味が中まで入らない
煮ている時間を延ばしても入りません。火を止めて冷ます時間が足りていないのが原因です。 - 煮崩れる
火が強いか、触りすぎです。落とし蓋をして弱火、煮ているあいだは動かさないでください。 - しょっぱい
煮詰めすぎです。煮汁が3分の1になったら火を止めます。すでに濃いときは、水を足して温め直してください。
保存と温め直し

豚バラ肉(脂身つき・生)は100gあたり約366kcal・たんぱく質約14.4g・脂質約35.4g。数字だけ見ると、ためらう方もいると思います。
ただ、角煮は下茹でで1時間、本煮で1時間、さらに一晩おいて脂を取る料理です。その過程で、かなりの脂が煮汁側へ移って取り除かれます。
食べる側の量でいえば、1人前は100g前後。大皿から取り分けるのではなく、最初から一人ひと切れずつ盛ると、量が見えていいですよ。
塩分は、しょうゆ大さじ4(約72g)で食塩相当量およそ10.4g。4人で分けて1人約2.6gですが、煮汁を残せばもっと下がります。
食塩相当量の目標量は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で成人男性7.5g未満・成人女性6.5g未満/日です。
なお、塩分や糖分の指示を受けている方は、かかりつけの先生の指示を優先してくださいね。
※文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」を参考にした概算値です。
豚の角煮には、特定原材料8品目(2025年4月くるみ追加・現在えび/かに/小麦/そば/卵/乳/落花生/くるみ)のうち小麦(しょうゆ)、また特定原材料に準ずる豚肉・大豆(しょうゆ・みりん)を使います。
残った煮汁で煮卵を作ると、卵が加わります。あとから足したものは、見ただけでは分からないので、出すときにひと言添えてください。
市販の煮汁の素やつゆを使うときは、商品によって原材料が変わります。買い替えたときは、もう一度ラベルを見てくださいね。
ご家族やお客様に出すときは、必ずアレルギーがないか確かめておくと安心ですよ。
角煮は作り置きに向く料理です。線を引いておきますね。
- 粗熱は30分以内
鍋のまま室温に長く置かないこと。冷蔵庫に入らないときは保存容器へ移します。 - 冷蔵は3〜4日。煮汁ごと
汁から出すと乾きます。必ず煮汁に浸かった状態で。 - 冷凍は1か月。これも煮汁ごと
1〜2切れずつ小分けにすると、お弁当にも使えます。 - 温め直しは弱火で、中心まで湯気が立つまで
75℃で1分以上が目安です。煮詰まっていたら水を少し足します。 - 一度解凍したものを、また凍らせない
小分けにしておくと、この心配がなくなります。
残った煮汁も宝物です。ゆで卵を漬ければ煮卵に、大根を煮れば一品になります。ただし煮卵は冷凍に向かないので、冷蔵で3日までにしてくださいね。
高齢者や子供にやさしい角煮

とろとろに煮えているので、やわらかくて食べやすいと思われがちです。でも脂身と赤身では、口の中での動きがまったく違います。
高齢のご家族に出すとき
赤身の部分はほろほろにほどけますが、脂身はぬるっとして噛み切りにくく、のどを通るときにまとまりません。
取り分けるときは赤身側を選んで、1cmほどに小さく切ってください。脂身は外すか、ごく少量に。
煮汁に少しとろみをつけると、ひと口がまとまって食べやすくなります。
お子さんに出すとき
脂身を外して、赤身を小さく切ります。味が濃いので、取り分けてから煮汁をお湯で薄めてかけてあげてください。
1歳未満のお子さんには出しません。脂質と塩分の両方が高いためです。
私は現役介護士でもあります。
角煮でいちばんお伝えしたいのは、一切れの中に、性質の違う二つが層になっているということです。赤身はほろほろとほどけますが、脂身はぬるっとしていて、口の中でまとまりません。
やわらかいものと、すべるもの。この二つが同時に来ると、飲み込みのタイミングが取りにくくなります。
だから取り分けるときに、層を分けてください。赤身側を1cmほどに切って、脂身は外す。層で切るのではなく、層をほどく——これがこの料理の扱い方です。
煮汁にとろみをつければ、ほろほろの赤身がひとまとまりになります。
それでも難しい日があります。角煮を、煮汁で大根を煮たひと皿に置き換える日があっていいと思っています。同じ鍋の味が、やわらかい形で届きます。
豚の角煮の作り方でよくある質問
Q1.下茹では本当に必要ですか?
必要です。脂っこさも、かたさも、下茹でで決まります。
調味料の入った煮汁では肉の繊維が締まって、いくら煮てもとろとろになりません。まず水だけで、竹串がすっと入るまで。
Q2.圧力鍋なら何分ですか?
下茹で加圧20分、本煮も加圧20分が目安です。どちらも自然に圧が抜けるまで待ちます。
仕上げの煮詰めはふたを開けて中火で。そして冷ます工程は、圧力鍋でも省けません。
Q3.脂っこさを減らすには?
一晩冷やして、白く固まった脂をすくって取り除いてください。これがいちばん効きます。
下茹でを1時間半に延ばすのも有効です。どちらも時間でしか解決できない部分ですね。
Q4.何日もちますか?
煮汁ごと冷蔵で3〜4日、冷凍で1か月です。粗熱は30分以内に取ってください。
1〜2切れずつ小分けにして冷凍すると、再冷凍の心配がなくなります。
Q5.残った煮汁はどうしますか?
ゆで卵を漬けて煮卵に、大根やゆで卵を煮て一品に。煮卵は冷蔵3日まで、冷凍には向きません。
煮汁が余ったら、そのまま冷凍しておくこともできますよ。
まとめ。。。

豚の角煮の作り方を、最後にもう一度まとめますね。
- とろとろは、下茹でで決まる
調味料の入った煮汁では、繊維が締まってほどけません。 - 下茹では水だけで1時間。合図は竹串
すっと入れば完了。押し返すなら15分ずつ足してください。 - 黄金比はしょうゆ1・砂糖1・みりん0.5
酒は水の半量。角煮の酒は、やわらかくするための材料です。 - 味が入るのは、冷めていくとき
煮る時間を延ばしても入りません。火を止めて待ってください。 - 一晩おいて、固まった脂を取る
店と家でいちばん差がつくところです。 - 豚の塊は3つの合図で確かめる
透明な肉汁・断面に桜色が残らない・中心75℃。切ったあとでも火は戻せます。 - 粗熱30分以内。煮汁ごと冷蔵3〜4日
冷凍は1か月。小分けにすれば再冷凍を避けられます。 - 高齢のご家族には、赤身側を小さく切って
脂身はぬるっとしてまとまりません。層をほどいて出してください。
角煮って、手間の多い料理に見えますよね。でも実際に手を動かしているのは、切る・焼く・洗う、それくらいです。
あとは鍋に任せて、待つだけ。下茹での1時間も、本煮の1時間も、一晩の冷ましも、全部「待つ時間」です。
親方に言われた「鍋の中で寝かす料理や」という言葉を、私は今でも前の日に思い出します。明日誰かに出すために、今日煮ておく。そういう料理なんですよね。
フッくんでした!
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