料理研究家、料理大好きフッくんです。
元日の朝、お重を開ける瞬間 🥢
大人にとってはごちそうでも、子どもにとってのおせちは「知らない料理の集まり」なんですよね。
「黒豆は甘すぎる」「なますは酸っぱい」「数の子はよく分からない」。そう言われて、結局お雑煮だけ食べて終わり、ということ、ありませんか?
こんなお悩み、ありませんか?
- 子どもがおせちを食べてくれない
苦手には理由があります。甘い・酸っぱい・食感、どれかを外せば食べられます。 - 縁起の意味を、どう伝えればいいか分からない
子どもに届く言い方があります。全部言わなくていいんです。 - お餅を食べさせるのが怖い
いちばん大事なところなので、独立した見出しで詳しく書きます。 - 大人と同じものを出していいのか不安
おせちは大人向けの味つけです。量と濃さの考え方をお伝えします。
現役料理人20年・寿司職人20年、そして栄養士。店でも家でも、子どもと一緒に正月を迎えてきた組み立て方を書いていきますね。

子どもにとって、おせちは「知らない料理の集まり」
まず、子どもがおせちを食べない理由を分けてみます。わがままではなく、はっきりした理由があることがほとんどです。
- 甘すぎる
黒豆も栗きんとんも、日持ちのために砂糖が多く入っています。子どもには甘さが強すぎることがあります。 - 酸っぱい
なますの酸味は、大人になってから分かる味です。砂糖を増やすだけで食べられるようになります。 - 食感が予想できない
数の子のプチプチ、昆布巻きのぬめり。初めての食感は、子どもにとって不安なんですよね。
だから「食べなさい」ではなく「形を変えて出す」。それだけで、お重の前に座ってくれるようになります。
大人向けの組み立てはこちらの記事にまとめてあります。同じお重でも、子どもに出すときは考え方が変わりますね。
縁起を、子どもに伝える言葉にする

おせちがおもしろくなるのは、一つひとつに意味があると知ったときです。
ただ、全部いっぺんに説明すると聞いてくれません。私はその日にひとつだけ、食べているものの話をするようにしています。
| おせちの品 | 子どもに伝える言葉 |
|---|---|
| れんこん | 穴から向こうが見えるね。先のことがよく見えますように |
| 黒豆 | 「まめ」は元気っていう意味。一年元気でいられますように |
| えび | 腰が曲がるまで長生きできますように |
| 栗きんとん | 金色だからお金がたまる。宝物みたいでしょう |
| 伊達巻 | 巻物の形。勉強がすすみますように |
| かまぼこ | 半分の形は初日の出。赤と白でおめでたい |
| 数の子 | たまごがいっぱい。家族が増えますように |
不思議なもので、意味を知ると、苦手なものでもひと口は食べてみるんですよね。全部食べなくていいんです。ひと口でいい。
子どもと祝うお正月の献立の考え方

①縁起は、ひとつだけ伝える
七品全部の由来を語ると、聞くほうが疲れます。今日はこれ、というものを一つ決めて、その話だけ。
翌日はまた別の一品。三が日で三つ覚えれば、じゅうぶんです。
②苦手は外さず、形を変える
「食べられないから外す」と、その子は一生その味に出会いません。砂糖を足す、細かく刻む、温かくする。形を変えれば、入り口はつくれます。
③大皿からではなく、子ども用の小皿に
お重から直接だと、量の加減ができません。小さいお皿に、少しずつ、色よく並べてあげてください。
おせちは大人向けの濃い味つけなので、量を決められることが大事です。
合わせ方の早見表
| 子どもの反応 | 原因 | 手当て |
|---|---|---|
| 甘すぎて残す | 砂糖の量 | 黒豆は3粒だけ・栗きんとんは半量に |
| 酸っぱくて残す | 酢の強さ | なますに砂糖を足して、酢を洗い流す |
| 食感を嫌がる | 初めての食感 | 数の子は細かく刻んで和え物に混ぜる |
| 味が濃くて残す | 日持ち用の味つけ | 煮汁で薄める・お湯にくぐらせる |
| お雑煮しか食べない | 知っている味がそれだけ | 雑煮の具を増やして、そこにおせちを入れる |
子どもが食べられるおせち7選

子どもが手を出しやすい順に、7品選びました。
- 伊達巻
卵と甘み。おせちの中でいちばん食べてもらえます。厚く切ると食べ応えが出ます。 - 栗きんとん
甘くて色がきれい。ただし糖分が多いので、大さじ1〜2杯までにしてください。 - かまぼこ
切るだけで出せます。弾力があるので、小さいお子さんには薄く小さく切ってください。 - えびの旨煮
形が楽しくて、縁起の話もしやすい一品。殻と尾は取ってあげてください。 - 筑前煮の根菜
にんじん、里芋、れんこん。やわらかく煮えているので食べやすく、野菜も入ります。 - 紅白なます(甘め)
子ども用は砂糖を多めに。酸っぱさが苦手なら、一度水で洗って甘酢で和え直します。 - お雑煮
知っている味なので、いちばん安心して食べられます。ただしお餅は、次の見出しを必ず読んでください。
子どもの一皿は「色」で決める
板前の仕事で、いちばん最初に教わるのが盛り付けの色です。赤・白・黄・緑・黒のうち、三色入れば皿は決まる。
子どものお皿も同じです。伊達巻の黄、かまぼこの赤と白、なますの赤、筑前煮のにんじん。色が三つ入るだけで、子どもは手を出します。
逆に、茶色ばかりの皿は箸が進みません。煮しめだけを取り分けると、子どもの目には同じものが並んでいるように見えるんですね。
若い頃、賄いを茶色一色で出した私に、親方が言いました。「その皿、うまそうに見えるか。目でも食うんやぞ」。
少量でいいので、色を三つ。小さいお皿に、すきまを空けて。これだけで、お重の前に座る時間が長くなりますよ。
私のお店のお正月献立例

1.お雑煮(餅は小さく切って)
2.伊達巻
3.かまぼこ
4.筑前煮の根菜
5.みかん

1.白ごはん
2.えびの旨煮
3.栗きんとん
4.紅白なます(甘め)
5.田作り
| 栄養価 | 献立A(3〜5歳向け) | 献立B(小学生向け) |
|---|---|---|
| メニュー | ①お雑煮 ②伊達巻 ③かまぼこ ④筑前煮の根菜 ⑤みかん | ①白ごはん ②えびの旨煮 ③栗きんとん ④紅白なます ⑤田作り |
| エネルギー | 約275kcal | 約470kcal |
| たんぱく質 | 約11.6g | 約19.8g |
| 脂質 | 約7.1g | 約5.1g |
| 炭水化物 | 約40.9g | 約86.1g |
| 食物繊維 | 約3.1g | 約4.0g |
| カルシウム | 約50mg | 約90mg |
| ビタミンC | 約40mg | 約35mg |
| 食塩相当量 | 約2.0g | 約1.9g |
※1人前の目安は、献立Aがお雑煮(切り餅1/2個25g・鶏肉20g・野菜40g・つゆ150ml)、伊達巻30g、かまぼこ20g、筑前煮の根菜50g、みかん80g。献立Bは白ごはん120g、えび40g、栗きんとん40g、なます40g、田作り10gで計算しています。
※文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」を参考に算出した献立全体の概算値です。
おせちの味が濃いのには理由があります。冷蔵庫がなかった時代に、日持ちさせるための工夫だったんですね。だから砂糖も塩も、普段の料理より多く入っています。
子どもの食塩の目標量は、年齢ごとに決められていて、大人よりずっと少ない量です。三が日は同じものを食べ続けるので、一日ぶんで考えると積み上がります。
手当てはかんたんです。小皿に取り分けて量を決める。煮汁で薄める。お湯にさっとくぐらせる。この3つで、だいぶ変わります。
お雑煮のつゆも、子どもの器だけ少しお湯で割ってあげてください。
なお、塩分や糖分の指示を受けているお子さんは、かかりつけの先生の指示を優先してくださいね。
※文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」を参考にした概算値です。
おせちの献立には、特定原材料8品目(2025年4月くるみ追加・現在えび/かに/小麦/そば/卵/乳/落花生/くるみ)のうちえび(旨煮)・卵(伊達巻)・小麦(しょうゆ・かまぼこ)・そば(年越しそばの残り)、また特定原材料に準ずる大豆(黒豆・しょうゆ)・さけ・いくら・ごま・くるみ(田作りに加えることがあります)を使うことがあります。
おせちは市販の詰め合わせを買うことも多い料理です。中身が何で作られているか見ただけでは分からないので、パッケージの表示を必ず確かめてください。
それと、はちみつを使った料理は、加熱してあっても1歳未満のお子さんには使えません。市販の栗きんとんや伊達巻に入っていることがあるので、原材料を見てくださいね。
ご家族やお客様に出すときは、必ずアレルギーがないか確かめておくと安心ですよ。
お餅の見守り——お正月でいちばん大事なこと

ここは、この記事でいちばん大事なところです。はっきり書かせてください。
お餅は、お正月に事故がいちばん多い食べものです。高齢の方と、小さいお子さん。どちらも毎年起きています。
怖がらせたいのではありません。守り方がはっきりしているので、それをお伝えします。
- 1歳未満のお子さんには与えない
小さく切っても出しません。お雑煮の具だけ、やわらかく煮たものを取り分けてください。 - 1cm角くらいに、小さく切る
「ひと口大」ではなく、それよりずっと小さく。のばして食べるのは、必ずやめさせてください。 - 汁物でやわらかくしてから
焼いただけの餅より、お雑煮のように汁に入れたもののほうが飲み込みやすくなります。 - 座って、落ち着いて食べさせる
走りながら、寝転んで、笑いながら。この3つはとくに危ないので、やめさせてください。 - 食べている間は、大人がそばで見守る
台所で洗い物をしながら、ではなく。同じ場所に座って、見ていてください。 - 飲み込むまで見届ける
口に入れた瞬間ではなく、のどを通るまでが見守りです。口の中が空になってから、次のひと口を。
店でお雑煮を出すときは、餅を器に入れる前に切っていました。お客様に切らせない。これが板場の決まりです。
家でも同じにしてください。お重やお雑煮を食卓に出す前に、台所で小さく切る。食卓で切ろうとすると、熱いし、伸びるし、結局大きいまま口に入ります。
切り方にもコツがあります。焼いた餅は伸びて切りにくいので、キッチンばさみを湯につけながら使うと、すっと切れますよ。
そして、心配なときは無理に出さないでください。上新粉のだんご、やわらかく煮たじゃがいも、すいとん、短く切ったうどん。お雑煮の汁で煮れば、それはもう立派なお雑煮です。
お正月に餅を食べなくても、年は明けます。私はそう思っています。
苦手を越える、三つの工夫

甘すぎるとき——量で調節する
黒豆や栗きんとんは、味そのものを薄められません。だから量で調節します。黒豆は3粒、栗きんとんは大さじ1杯。
小皿に少量だけのせると、不思議と全部食べてくれます。山盛りだと、見ただけであきらめるんですよね。
酸っぱいとき——洗って、和え直す
紅白なますは、一度水でさっと洗って、砂糖を多めにした甘酢で和え直すと、子ども用になります。
大人の分と別に作る必要はありません。取り分けてから手を加えるだけです。
食感が苦手なとき——刻んで混ぜる
数の子のプチプチ、昆布巻きのぬめり。細かく刻んで、食べ慣れたものに混ぜると入り口ができます。
数の子は刻んで大根の和え物に、昆布巻きは刻んでごはんに。形が変われば、食べられることが多いです。
そして黒豆や栗のように、丸くてつるんとしたものは5歳ごろまで丸ごと出さない——これは消費者庁が示している線です。半分に切るか、つぶしてから出してください。
おじいちゃん・おばあちゃんと一緒の食卓のために

お正月は、一年でいちばん家族がそろう日ですよね。
そしてお餅の事故がいちばん多いのは、高齢の方です。子どもへの見守りと、同じことが必要になります。
私は現役介護士でもあります。
三世代でお重を囲むとき、献立を分ける必要はありません。器の中身だけ変えればいいんです。
高齢の方には、餅を外してやわらかく煮た具のお雑煮を。根菜は薄く切って、指でつぶせるまで煮たものを。昆布巻きとこんにゃくは、噛み切りにくいので外します。汁にとろみをつけると、ひと口がまとまります。
お子さんには、色を三つと、小さく切った餅を。
どちらにも共通するのは、食べている間、そばにいることです。お正月はテレビも人も多くて、つい目を離しがちになります。
そして、餅そのものが難しい方もいます。上新粉のだんご、じゃがいも、すいとん。お餅を、別のやわらかいものに置き換える日があっていいと思っています。
介護が必要なご家族がいる場合の献立は、お正月の介護食の記事にまとめてあります。
子供と祝うお正月の献立に関するよくある質問
Q1.お餅は何歳から食べさせていいですか?
1歳未満には与えません。それ以降も、1cm角くらいに小さく切って、汁物でやわらかくして、大人がそばで見守るのが前提です。
心配なときは無理に出さず、上新粉のだんごやじゃがいも、短く切ったうどんに替えてください。
Q2.おせちを全然食べません。どうすれば?
全部食べさせようとしなくて大丈夫です。ひと口でいいと思ってください。
縁起の話をひとつだけして、小皿に色を三つ。それで手が出れば、今年は成功です。
Q3.市販のおせちでも大丈夫ですか?
大丈夫です。ただし原材料の表示を必ず確かめてください。中身が何で作られているか、見ただけでは分かりません。
とくに1歳未満のお子さんがいるご家庭は、はちみつが使われていないかを見てくださいね。
Q4.おせちの味が濃いのが気になります
小皿に取り分けて量を決める、煮汁で薄める、お湯にさっとくぐらせる。この3つで、だいぶ変わります。
お雑煮のつゆも、子どもの器だけお湯で割ってあげてください。
Q5.いくらやお刺身は出していいですか?
小さいお子さんには、加熱したものをおすすめします。えびの旨煮や玉子焼きに替えてください。
出すときは、より新鮮なものを選んで、少量から。わさびは抜いてくださいね。
“おいしい”は、全部が重なること
子どもと祝うお正月の献立を考えるとき、私は四つの軸で見ています。伊達巻の甘み、かまぼこの赤と白、お雑煮の湯気、そして縁起の話をする時間。
四つ目が料理でないのは、わざとです。おせちは、味で勝負している料理ではありません。日持ちのために味が濃くて、冷たくて、子どもの好みからは遠い。それでも毎年並ぶのは、そこに意味が乗っているからですよね。
この四つが同じ食卓の上で重なった瞬間が、私の思う「おいしい」です。おせちは、おいしさを食べる料理ではなく、願いを分ける料理なんだと思います。だから、ひと口でいい。その一口に、話がついてくればそれで。
大人向けの献立、介護が必要なご家族がいる場合の献立、お雑煮の作り方の記事も、合わせてご覧くださいね。
まとめ。。。

子どもと祝うお正月の献立を、最後にもう一度まとめますね。
- 縁起は、その日ひとつだけ伝える
七品全部を語ると疲れます。三が日で三つ覚えれば十分です。 - 小皿に、色を三つ
赤・白・黄・緑・黒のうち三色入れば、子どもは手を出します。茶色一色は箸が進みません。 - 苦手は外さず、形を変える
甘すぎるなら量を減らす、酸っぱいなら洗って和え直す、食感が苦手なら刻んで混ぜる。 - おせちは大人向けの味つけ
小皿で量を決める・煮汁で薄める・お湯にくぐらせる。つゆはお湯で割ってあげてください。 - お餅は1歳未満に与えない
それ以降も1cm角に切って、汁物でやわらかくして。 - 餅は台所で切ってから出す
食卓で切ろうとすると、熱くて伸びて、結局大きいまま口に入ります。 - 飲み込むまで見届ける
口に入れた瞬間ではなく、のどを通るまでが見守りです。 - 丸くつるんとしたものは5歳ごろまで丸ごと出さない
黒豆も栗も、半分に切るかつぶしてから。
お正月って、料理の腕を見せる日ではないと思っています。
私は寿司職人として20年、正月の仕込みをしてきました。でも家で子どもと囲む食卓でいちばん記憶に残っているのは、味ではなく、れんこんの穴をのぞきながら「向こうが見える」と笑った顔のほうです。
ひと口でいい。その一口に、話がついてくれば。今年もよいお正月になりますように。
フッくんでした!
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