料理研究家、料理大好きフッくんです。
甜麺醤の甘みをまとった豚バラと、シャキッとしたキャベツ 🥢
家で作ると「キャベツから水が出てべちゃっとする」「味が薄い」「豚がかたい」ということ、ありませんか?
正直に言うと、回鍋肉は名前の中に作り方が書いてある料理です。「回鍋」——鍋に戻す。この一言を知ると、順番で迷わなくなります。
こんなお悩み、ありませんか?
- キャベツから水が出て、べちゃっとする
湯通しをしていないか、炒めすぎです。先に火を通しておくと、鍋の中で水が出ません。 - 味が薄い・ぼやける
甜麺醤の量が足りないか、調味料を鍋の中で量っています。合わせ調味料を先に。 - 豚がかたい
炒めすぎです。先に炒めて取り出し、最後に戻します。 - 本場の回鍋肉と何が違うのか
本場は豚バラの塊をゆでてから切ります。それが「回鍋」の意味です。
現役料理人20年・栄養士。中華の店で毎日鍋を振っていた手順を、家庭のフライパンに合わせて書いていきますね。

「回鍋」は、ゆでた豚を鍋に戻すという意味

結論から言いますね。回鍋肉の「回鍋」は、一度火を通した肉を、もう一度鍋に戻すという意味です。
本場の四川では、豚バラの塊を丸ごとゆでて、冷ましてから薄切りにします。その薄切りを鍋に「戻して」、豆板醤と甜麺醤で炒める。ゆでる→切る→炒めるという二段の火入れが、回鍋肉という名前の由来です。野菜は、キャベツではなく葉にんにく。
日本でキャベツの回鍋肉が広まったのは、昭和の料理番組で四川料理の料理人が、葉にんにくの代わりに手に入りやすいキャベツを使って紹介したのが始まりだと言われています。日本の回鍋肉は、日本で生まれ直した料理なんですね。
家庭では、塊をゆでるところまではしなくて構いません。でも「二度火を入れる」という考え方だけは残してください。豚バラを先に炒めて取り出し、最後に戻す。この順番が、名前の意味そのものです。
なお、回鍋肉に合う献立は献立の記事にまとめてあります。この記事は、作り方の技術に絞って書きますね。
甜麺醤の黄金比

回鍋肉の味は、甜麺醤と豆板醤の比率で決まります。覚え方は甜麺醤3に、豆板醤1。大さじ換算なら、甜麺醤大さじ1に豆板醤小さじ1です。
甜麺醤は、小麦粉と麹で作った甘い味噌です。この甘みとコクが回鍋肉の土台で、豆板醤はそこに辛みと香りを足す役目。甜麺醤が主、豆板醤が従。逆にすると、辛いだけの炒め物になります。
本場の回鍋肉は豆板醤のほうが強く、日本の回鍋肉は甜麺醤のほうが強い。この差が、日本で回鍋肉が「甘辛い家庭のおかず」として定着した理由だと思っています。店で本場寄りに作って出したら「辛い」と言われ、甜麺醤を増やしたら注文が倍になった。日本の食卓が選んだ比率が、3対1なんですね。
| 材料 | 分量(2人分) | ここが大事 |
|---|---|---|
| 豚バラ薄切り | 200g | 5cm幅に切る。脂身つきで |
| マヨネーズ | 大さじ1 | 炒め油の代わりに。豚を炒めるときだけ使います |
| キャベツ | 200g(1/4個) | 大きめのざく切り。芯は薄く |
| ピーマン | 2個 | 乱切り。彩りと苦みの担当 |
| 長ねぎ | 1/2本 | 斜め切り |
| にんにく・しょうが | 各1片 | 薄切り。弱火で香りを出す |
| 甜麺醤 | 大さじ1 | 味の主役 |
| 豆板醤 | 小さじ1 | 辛みと香り。お子さんがいる日は抜いても |
| しょうゆ | 小さじ1 | 塩気の下支え |
| 酒 | 大さじ1 | なじみをよくする |
| 砂糖 | 小さじ1 | 甜麺醤の甘みを整える |
そして大事なのが、甜麺醤・豆板醤・しょうゆ・酒・砂糖を、先に小さい器で混ぜておくこと。回鍋肉は炒め始めてから3分で終わります。鍋の中で量る時間はありません。
キャベツは「湯通し」してから炒める

この記事でいちばんお伝えしたいのが、ここです。キャベツは、炒める前に湯通しします。
キャベツを生のまま鍋に入れると、火が通るまでに時間がかかり、その間に水が出ます。出た水が調味料を薄めて、べちゃっとした回鍋肉になる。家で失敗する回鍋肉の、ほぼすべての原因がここにあります。
店では「油通し」といって、低温の油にくぐらせて先に火を通します。家庭で油を大量に使うのは大変なので、代わりに湯通し。沸騰した湯にキャベツを入れて10秒、ざるに上げて水気を切る。それだけです。
湯通ししたキャベツは、すでに半分火が通っている状態です。鍋に入れたら10秒からめるだけで終わる。だから水が出ないし、シャキッとしたまま仕上がります。
「湯通しすると、逆にやわらかくなるのでは」と思われるかもしれません。でも実際は逆です。生のキャベツを鍋で炒めると、火が通るまでに1〜2分かかり、その間ずっと水が出続けて、最後にはくたっとします。湯通し10秒で先に火を入れておけば、鍋の中は10秒で済む。鍋の中にいる時間が短いほど、シャキッとが残るんですね。
ピーマンも同じ湯に、キャベツのあとに5秒。色が鮮やかになって、炒めたときに苦みが出にくくなりますよ。
湯通しの湯にサラダ油を小さじ1入れておくと、キャベツの表面に薄い油の膜がつきます。これが店の油通しに近い働きをして、炒めたときに調味料がからみやすくなります。親方の言葉は「キャベツは、鍋に入れる前に勝負がついとる」でした。
回鍋肉の作り方(6工程)

回鍋肉は、火をつけてから3分で終わる料理です。だからこそ、準備に10分、炒めに3分。切る・混ぜる・湯通しを全部すませてから、火をつけてください。
①合わせ調味料を混ぜておく
甜麺醤・豆板醤・しょうゆ・酒・砂糖を小さい器に。豆板醤は香味野菜と一緒に炒める派もありますが、家庭では合わせ調味料に入れてしまうほうが焦がしません。
②キャベツとピーマンを湯通しする
前の見出しのとおり。キャベツ10秒、ピーマン5秒。ざるに上げて、水気をしっかり切ります。
③豚バラをマヨネーズで炒めて取り出す
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい私の技です。炒め油の代わりに、マヨネーズ大さじ1。フライパンにマヨネーズを入れて中火にかけ、溶けて泡が立ってきたら豚バラを広げて強火に。
マヨネーズは、油と卵と酢でできています。卵の成分が油と水をつないでいるので、豚の表面に薄い膜が均一につき、肉汁を閉じ込めたまま焼き色がつく。しかも酢が肉をやわらかくして、油だけで炒めるより焦げ目が早く、香ばしくなります。仕上がりにマヨネーズの味は残りません。甜麺醤の下で、コクだけが増えます。
脂身が透きとおって、縮んで、少し焼き色がついたら取り出します。ここでしっかり火を通してください。豚肉は中心まで75℃で1分以上が目安です。薄切りなので、色が変わって縮めば届いています。
出てきた脂は、大さじ1ほど残して捨てます。多すぎると油っぽくなります。
これは親方から教わったのではなく、私が家で何百回と作って行き着いた手です。
炒め油の代わりにマヨネーズ大さじ1。肉に膜がついて肉汁が逃げず、焦げ目が早く、酢でやわらかくなる。仕上がりにマヨネーズの味は残りません。
回鍋肉に限らず、豚の薄切りを炒める料理ならどれでも効きます。格段に違うので、一度だけ試してみてください。
④にんにく・しょうがを弱火で炒める
同じフライパンで、残した脂ににんにくとしょうがを入れて弱火で。香りが立ったら次へ。焦がすと苦みが出ます。
⑤野菜と豚を戻し、調味料を回し入れる
強火にして、湯通ししたキャベツ・ピーマン・長ねぎを入れ、取り出しておいた豚を戻します。合わせ調味料を鍋肌から一気に回し入れます。
⑥10秒でからめて、火を止める
強火のまま10秒、大きく混ぜてからめます。調味料が全体にまわったら、もう火は止めます。ここで長く炒めると、キャベツから水が出て、豚がかたくなります。
「炒める」と思うから、長く火にかけてしまいます。
豚は炒めてある。キャベツは湯通ししてある。鍋の中でやることは、火を入れることではなく、味を合わせることだけです。
親方の言葉は「回鍋肉は、鍋に戻したら10秒や。それ以上は炒め直しや」でした。
よくある失敗と対策

ここまでの内容を、失敗のかたちから逆引きできるようにまとめます。回鍋肉の失敗は、ほとんどが「鍋の中にいる時間が長い」ことに戻ります。
- キャベツから水が出て、べちゃっとする
湯通しをしていないか、炒めすぎです。湯通し10秒、鍋の中は10秒。この二つで解決します。 - 味が薄い・ぼやける
キャベツの水で薄まっているか、甜麺醤が少ないかです。湯通しの水気をしっかり切って、甜麺醤は大さじ1を守ってください。 - 豚がかたい
戻したあとに長く炒めています。先に火を通してあるので、戻したら10秒で十分です。 - 辛すぎる
豆板醤が多いか、甜麺醤との比率が崩れています。甜麺醤3に豆板醤1。迷ったら豆板醤を減らしてください。 - 焦げる
甜麺醤は糖分が多く焦げやすい。合わせ調味料は最後に入れて、10秒で火を止めてください。
保存と温め直し

回鍋肉は当日がいちばんですが、作り置きの線を引いておきますね。
残ったら、粗熱を30分以内に取って、浅い容器で冷蔵2〜3日。フライパンのまま置かないでください。温め直しは、電子レンジよりフライパンで強火で短く。レンジだとキャベツから水が出て、せっかくのシャキッとが消えます。中心まで湯気が立つまで(75℃で1分以上が目安)。
冷凍は向きません。キャベツの食感が戻らないからです。冷凍するなら、豚だけを炒めた段階で。合わせ調味料と一緒に袋に入れて平らに凍らせれば3週間。食べる日に湯通しキャベツと合わせれば5分で一皿になります。一度解凍したものを、また凍らせるのは避けてくださいね。
これはよだれ鶏や麻婆春雨でも同じ考え方で、「あとから食感が落ちるもの」は、最後の工程まで入れない。作り置きの鉄則です。
回鍋肉の栄養と、家族への出し方

回鍋肉の数字は、はっきりしています。豚バラが全部です。豚バラ薄切り200gで約732kcal。キャベツ200gは約42kcal、ピーマンと長ねぎを足しても30kcal足らず。マヨネーズ大さじ1(炒め油の代わり)と甜麺醤で約125kcal。合計およそ960kcal、1人前で約480kcalです。マヨネーズは炒め油より少しエネルギーが低いので、油で炒めるより軽くなります。
軽くしたいなら、豚バラを豚ロースか肩ロースに替えるのがいちばん効きます。同じ200gでも、ロースなら約400kcal下がります。ただし脂が減るぶんコクも減るので、半量だけ替えるという手もありますよ。
塩分は、甜麺醤大さじ1で約1.3g、豆板醤小さじ1で約1.1g、しょうゆ小さじ1で約0.9g。合計約3.3g、2人で分けて1人約1.6g。甜麺醤と豆板醤は「味噌」なので、しょうゆより塩分があります。しょうゆだけを見て判断すると、半分以上を見落とすことになります。
食塩相当量の目標量は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で成人男性7.5g未満・成人女性6.5g未満/日です。塩分や糖分の指示を受けている方は、かかりつけの先生の指示を優先してくださいね。
出す前に確かめておきたいのが特定原材料です。回鍋肉には、特定原材料8品目(2025年4月くるみ追加・現在えび/かに/小麦/そば/卵/乳/落花生/くるみ)のうち小麦(甜麺醤・しょうゆ・豆板醤)・卵(マヨネーズ)、また特定原材料に準ずる豚肉・大豆(甜麺醤・豆板醤・しょうゆ)を使います。甜麺醤は小麦粉から作る味噌なので、小麦を避ける方には使えません。その場合は、米味噌に砂糖を足したもので代えてください。マヨネーズは卵なので、卵を避ける方には炒め油に戻してください。味は少し変わりますが、回鍋肉は成立します。
軽くしたいなら、豚バラの半量をロースに。
甜麺醤は小麦粉から作る味噌、マヨネーズは卵。避ける方にはそれぞれ米味噌+砂糖、炒め油で。
※文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」を参考にした概算値です。
高齢者や子供にやさしい回鍋肉

回鍋肉は、甜麺醤の甘みが子どもの味方になる料理です。辛味さえ抜けば、家族全員で同じ一皿を囲めます。気をつけたいのは、豚バラの脂身とキャベツの芯、そして辛味。この3つを出し方で調整します。
高齢のご家族に出すとき
気をつけたいのは、豚バラの脂身と、キャベツの芯です。脂身はぬるっとして噛み切りにくく、芯は繊維がしっかり残ります。豚は赤身寄りの部分を小さく切って、キャベツの芯は薄くそぎ切りに。
辛味はのどへの刺激になるので、豆板醤なしの取り分けを。合わせ調味料に水溶き片栗粉を少し足してとろみをつけると、ひと口がまとまります。
お子さんに出すとき
豆板醤を抜いて、甜麺醤だけで。甘い味噌の味は、子どもに好かれやすいです。大人は器に盛ってから、ラー油か豆板醤を足してください。キャベツが苦手なお子さんには、湯通しを20秒にしてやわらかめに。甜麺醤の甘みがからむと、食べてくれることが多いです。
1歳未満のお子さんには出しません。塩分と脂質の両方が高いためです。
私は現役介護士でもあります。
高齢の方に出す日は、キャベツの湯通しを10秒ではなく20〜30秒に。シャキッとは減りますが、噛みやすくなります。同じ鍋から出せます。
回鍋肉を、豚と甜麺醤だけの一皿に置き換える日があっていいと思っています。キャベツは別にやわらかく煮て添えれば、味は届きます。
回鍋肉の作り方でよくある質問
読者の方からよくいただく質問を、まとめておきますね。
Q1.「回鍋」とはどういう意味ですか?
ゆでた豚を、もう一度鍋に戻すという意味です。本場では豚バラの塊をゆでてから薄切りにして炒めます。家庭では、豚を先に炒めて取り出し、最後に戻す、という順番で同じ考え方を残せます。
Q2.湯通しは必ず必要ですか?
必要です。生のキャベツを鍋に入れると水が出て、べちゃっとします。沸騰した湯に10秒、それだけで別物になります。
Q3.甜麺醤がありません
米味噌大さじ1に砂糖小さじ1、しょうゆ少々を混ぜると近い味になります。甜麺醤は「甘い味噌」なので、味噌と砂糖で代えられます。
Q4.本場の回鍋肉を作りたいです
豚バラの塊300gを、ねぎとしょうがと一緒に30分ゆでて、冷ましてから5mm厚に切ってください。野菜は葉にんにくがあれば本場に近づきます。あとの手順は同じです。
Q5.マヨネーズの味になりませんか?
なりません。甜麺醤の下で、コクだけが残ります。油と卵と酢が肉の表面に膜を作って、肉汁を閉じ込めたまま焦げ目がつく。私が家で何百回と作って行き着いた手なので、一度だけ試してみてください。卵を避ける方は、炒め油に戻してください。
Q6.何日もちますか?
冷蔵2〜3日、冷凍は向きません。冷凍するなら豚だけを炒めた段階で、合わせ調味料と一緒に3週間。粗熱は30分以内、再冷凍は避けてくださいね。
まとめ。。。

回鍋肉の作り方を、最後にもう一度まとめますね。
- 「回鍋」は、火を通した豚を鍋に戻すこと
先に炒めて取り出し、最後に戻す。名前が順番を教えてくれます。 - 甜麺醤3に、豆板醤1
甜麺醤が主、豆板醤が従。逆にすると辛いだけになります。 - 合わせ調味料は、先に混ぜておく
炒めに3分。鍋の中で量る時間はありません。 - キャベツは湯通し10秒
鍋に入れる前に半分火が通っている状態に。水が出ません。 - 豚は、マヨネーズで炒めて取り出す
油の代わりに大さじ1。膜がついて肉汁が逃げず、焦げ目が早い。中心まで75℃で1分以上。 - 戻したら10秒。それ以上は炒め直し
鍋の中でやることは、火を入れることではなく味を合わせることだけ。 - 冷凍するなら豚だけ
キャベツは食感が戻りません。粗熱30分以内・冷蔵2〜3日。 - 高齢のご家族には、湯通しを倍の時間に
脂身は赤身寄りを小さく、芯は薄く、豆板醤なしで。
回鍋肉って、家で作ると「なぜか店と違う」となる料理の代表だと思います。私も最初はそうでした。
でも違いは火力ではなく、キャベツを鍋に入れる前の10秒にありました。湯通しという一手を知ってから、フライパンの中で慌てることがなくなったんですよね。
今夜、キャベツを湯にくぐらせてから鍋に入れてみてくださいね。
フッくんでした!
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