料理研究家、料理大好きフッくんです。
お重の隅で、つやつやと黒光りしている昆布巻き 🥢
地味に見えて、実はおせちの中でいちばん手間のかかる一品かもしれません。
でも、いざ作ってみると「煮ても昆布が硬いまま」「煮ているうちにほどけた」ということ、ありませんか?
こんなお悩み、ありませんか?
- 何時間煮ても昆布がやわらかくならない
昆布の種類か、調味料を入れる順番のどちらかです。どちらも今日で解決します。 - 煮ているうちにほどけてしまう
巻きの強さと、かんぴょうの結び加減にコツがあります。 - 身欠きにしんの下ごしらえが分からない
本乾とソフトタイプで戻し方がまったく違います。 - お正月に作って、何日もつのか不安
おせちの中では日持ちするほうです。線をはっきりお伝えします。
現役料理人20年。年の瀬に何十本も巻いてきた手順を、そのまま書いていきますね。

昆布巻きは「昆布選び」で9割決まる

結論から言いますね。昆布巻きが硬く仕上がる原因の大半は、昆布の種類です。
煮る時間を倍にしても、種類が違えばやわらかくなりません。ここを間違えると、あとの工程で取り返せないんですよね。
| 種類 | 特徴 | 昆布巻きには |
|---|---|---|
| 早煮昆布 | 薄くてやわらかい | いちばん向く |
| 日高昆布(三石昆布) | やわらかく煮上がる | 向く。手に入りやすい |
| 真昆布 | 肉厚でうま味が強い | だし向き。煮ても硬い |
| 羅臼昆布 | 香りが高く濃いだしが出る | だし向き |
| 利尻昆布 | 澄んだだしが出る | だし向き |
売り場では「早煮昆布」「昆布巻き用」と書かれたものを選んでください。迷ったら日高昆布で大丈夫です。
だし用の高い昆布を使えばおいしくなる、というものではありません。ここは料理ごとに向き不向きがはっきり分かれるところですね。
昆布巻きの縁起——「よろこぶ」と「子生婦」

昆布巻きがおせちに欠かせないのには、いくつも理由が重なっています。
- 「こんぶ」が「よろこぶ」に通じる
いちばん知られている語呂合わせです。お祝いの席に昆布が登場するのは、これが大きいですね。 - 「子生婦」という当て字
子孫繁栄を願う字を当てたもの。結納の品にも使われてきました。 - 「養老昆布」と書いて長寿を願う
「よろこぶ」と読ませて、家族の長生きを願う書き方です。 - 巻いた形が巻物に似ている
学問や文化が続くように、という意味を重ねる地方もあります。
ひとつの料理に、これだけ願いが詰め込まれているんですよね。地味な見た目ですが、お重の中では働き者です。
材料と下ごしらえ

10本分の材料です。
| 材料 | 分量 | 下ごしらえ | 注意 |
|---|---|---|---|
| 早煮昆布 | 10枚(15cm幅) | 水に10〜20分 | 戻しすぎない |
| 身欠きにしん(本乾) | 3〜4本 | 米のとぎ汁に一晩 | ソフトタイプは水に30分 |
| かんぴょう | 30g | 塩でもんで洗う | 下ゆでは1分で十分 |
| ごぼう(にしんの代わりに) | 1本 | 昆布の幅に切って水に5分 | 太いものは縦半分に |
| 水 | 800ml | 昆布の戻し汁を足す | かぶるくらいが目安 |
| 酢 | 大さじ1 | 下煮に使う | 仕上がりに酸味は残らない |
昆布は「戻しすぎない」
早煮昆布は薄いので、水に10〜20分で十分です。戻しすぎるとぬめりが出て、手の中ですべって巻けなくなります。
表面の白い粉はうま味なので、洗い流さず、かたく絞った布でさっと拭くだけにしてください。戻し汁は捨てずに煮汁へ入れます。
身欠きにしんは、本乾かソフトかで別物
本乾の身欠きにしんは、カチカチに乾いています。米のとぎ汁に一晩浸けて戻すのが昔からのやり方です。とぎ汁のぬかが、にしん特有のくせをやわらげてくれます。
スーパーで売られているソフトタイプなら、水に30分から1時間で大丈夫。うろこと腹骨を取って、昆布の幅に切ります。
ほどけない巻き方

ここがこの料理のいちばんの山場です。コツはひとつ、「きつく巻いて、ゆるく結ぶ」。
①昆布を広げ、手前に芯を置く
戻した昆布をまな板に広げ、手前側ににしんかごぼうを横向きに置きます。芯は昆布の幅から少しはみ出るくらいで構いません。
②手前から、きつく巻く
巻きずしと同じ要領で、手前から芯を巻き込みます。ここは力を入れて、すきまができないように。
ゆるく巻くと、煮ているあいだに中の芯が動いて、形が崩れます。
③かんぴょうは、ゆとりを残して結ぶ
巻き終わりを下にして、かんぴょうを2〜3か所に回して結びます。ここが多くの方がつまずくところです。
きつく締めすぎないでください。指1本分のゆとりを残します。
④結び目と結び目の間で切る
長い一本を巻いたら、結び目のあいだで切り分けます。こうすると、切り口の両側に結び目が残って、煮てもほどけません。
かんぴょうをゆるく結ぶ理由を、もう少しだけ説明させてください。
昆布は煮ると水を吸って、1本あたり一回り太くなります。きつく結んでおくと、ふくらんだ昆布にかんぴょうが食い込んで、煮汁の中でぷつりと切れるんですね。
若い頃、年末に50本巻いて、半分ほどいてしまったことがあります。親方に言われたのは一言でした。「昆布が太るぶんを、先に空けとけ」。
巻きはきつく、結びはゆるく。この二つは逆のことをしているようで、どちらも「煮たあとの形」を見ています。
かんぴょうがどうしても切れる方は、結ばずに巻き終わりを下にして鍋にぎっしり並べる方法もあります。隣どうしで支え合うので、少ない本数でなければこれでも崩れませんよ。
昆布巻きの煮方(6工程)

①鍋にすきまなく並べる
巻き終わりを下にして、鍋にぎっしり。動く余地があると、煮ているうちに崩れます。小さめの鍋を選んでください。
②かぶるくらいの水と、酢大さじ1
昆布の戻し汁も一緒に注ぎ、酢を大さじ1加えます。
この酢が大事です。酸が昆布の繊維をゆるめて、やわらかく煮上がります。仕上がりに酸味は残らないので、安心してください。
③落とし蓋をして、弱火で1〜1.5時間
煮立ったら火を弱めて、落とし蓋。ここは時間をかけるところです。
途中で水が減ったら、湯を足してください。昆布が煮汁から顔を出すと、そこだけ硬いまま残ります。
④竹串が通ったら、砂糖を入れる
昆布に竹串がすっと通るようになったら、ここでようやく砂糖を入れます。大さじ3。
10分ほど煮て、甘みをなじませます。
⑤しょうゆ・みりん・酒を加える
しょうゆ大さじ3、みりん大さじ2、酒大さじ2。ここから20〜30分。
⑥煮汁が1/3になったら、火を止めて冷ます
照りが出て、煮汁が1/3ほどになったら火を止めます。味が入るのは、冷めていくときです。
鍋のまま最低30分、できれば1時間。翌日のほうが味はなじみます。
煮汁の黄金比と、調味料を入れる順番

10本分・水800mlに対しての分量です。
- 下煮は水+昆布の戻し汁+酢大さじ1
ここに調味料は一切入れません。やわらかくすることだけを考えます。 - 砂糖 大さじ3
竹串が通ってから。甘みは先に入れて、なじませます。 - しょうゆ 大さじ3・みりん 大さじ2・酒 大さじ2
砂糖の10分後。おせち用は日持ちを考えて、この濃さで。 - 普段のおかずなら、しょうゆは大さじ2半
その日のうちに食べるなら、少し軽くして昆布の風味を立てます。
最初に味をつけると、昆布は硬いまま固まる
昆布巻きでいちばん多い失敗が、最初から調味料を全部入れて煮ることです。
砂糖もしょうゆも、水分を引き出す働きがあります。昆布がまだ水を吸いきっていない段階でこれを入れると、吸うより先に抜けてしまって、繊維が締まったまま固まります。
だから順番はこうです。まず水と酢だけでやわらかくする。竹串が通ってから砂糖。そのあとしょうゆ。
煮物全般に通じる「さしすせそ」の考え方ですが、昆布巻きはこの差がいちばん露骨に出る料理なんですよね。
一度硬く煮えてしまった昆布は、あとからいくら煮ても戻りません。やり直しのきかない一手なので、ここだけは順番を守ってください。
よくある失敗と対策

- 昆布が硬いまま
だし用の厚い昆布を使ったか、最初から調味料を入れています。早煮昆布を選び、水と酢だけで下煮してください。 - 煮ているうちにほどける
巻きがゆるいか、かんぴょうが切れています。巻きはきつく、結びはゆるく。鍋にすきまなく並べてください。 - 上のほうだけ硬い
煮汁から顔を出しています。落とし蓋をして、減ったら湯を足してください。 - にしんが生臭い
下ごしらえが足りません。本乾は米のとぎ汁に一晩、うろこと腹骨もていねいに取り除いてください。 - 味が濃くなりすぎた
煮詰めすぎです。煮汁が1/3になったら止めて、あとは冷ましながら味を入れてください。
日持ちと保存

昆布巻きは、おせちの中では日持ちするほうの料理です。味が濃く、水分も少ないからですね。
昆布巻きは煮汁ごと保存する
線から書きます。粗熱は30分以内に。鍋のまま台に置かず、浅い容器に移してください。
冷蔵は4〜5日。煮しめが3〜4日なので、それより少し長くもちます。ただ「おせちだから一週間」は今の味つけでは当てはまりません。
保存のコツは、残った煮汁ごと容器に入れることです。昆布巻きは乾くと表面が縮んで、硬い口当たりになります。煮汁に浸かっていれば、最後の1本までしっとりしたままです。
冷凍もできます。昆布は冷凍に強い食材なので、煮汁ごと小分けにして1か月まで。解凍は冷蔵庫でゆっくりと。
そして煮しめと同じで、重箱に取り分け用の箸を用意して、直箸にしないこと。何日も出す料理では、ここが日持ちを大きく左右します。
温め直すときは、煮汁ごと弱火で。中心まで湯気が立つまで(75℃で1分以上が目安)温めてください。一度解凍したものを、また凍らせるのは避けてくださいね。
昆布は食物繊維を多く含む食材です。素干しの昆布で100gあたり約32g(八訂)。乾物としては群を抜いています。
ただ、昆布巻き1本に使う昆布は10g前後です。実際にとれる食物繊維は3gほど、と考えておくのが現実的ですね。
数字が大きい食材ほど、実際に食べる量で考え直すことが大事だと思います。
にしんを芯にすればたんぱく質が、ごぼうを芯にすれば食物繊維がさらに加わります。芯の選び方で、一品の性格が変わりますよ。
※文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」を参考にした概算値です。
高齢者や子供にやさしい昆布巻き

おせちの中で、昆布巻きはいちばん気をつけたい一品です。
やわらかく煮えていても、昆布は繊維がしっかりしていて、噛み切りにくい。しかも薄いので、のどや上あごに貼りつきやすいんですよね。
高齢のご家族に出すとき
まずかんぴょうは外してください。昆布よりさらに噛み切りにくく、飲み込みにくい部分です。
昆布巻きは1cm幅くらいに薄く切ります。そのうえで、指でつぶせるくらいやわらかいか、一度確かめてから。煮汁を少しかけると、口の中でまとまりやすくなります。
お子さんに出すとき
味が濃いので、取り分けてから煮汁を少し足して薄めてあげてください。
切らずに丸ごと出すのは避けます。丸くてつるんとしたものを5歳ごろまで丸ごと出さないのは、消費者庁が示している線です。昆布巻きも輪の形をしているので、小さく切ってからお出しください。
1歳未満のお子さんには、味の濃さと噛み切りにくさの両方から、この料理は出しません。
しょうゆ大さじ3(約54g)の食塩相当量は、およそ7.8g。10本で分ければ1本あたり約0.8gですが、煮汁を残すので実際はもう少し少なくなります。
気をつけたいのは、おせちは何品も少しずつ食べることです。昆布巻き、煮しめ、田作り、かまぼこ。一つひとつは小さくても、お重をひと回りすると積み上がります。
食塩相当量の目標量は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で成人男性7.5g未満・成人女性6.5g未満/日です。
お雑煮を薄味にする、野菜の小鉢を一つ足す。それだけで三が日の帳尻は合いますよ。
なお、塩分や糖分の指示を受けている方は、かかりつけの先生の指示を優先してくださいね。
私は現役介護士でもあります。
昆布巻きは、よく煮えていればやわらかくなります。でもやわらかいことと、飲み込みやすいことは別です。
昆布は薄くて平たいので、口の中でまとまらず、そのままのどや上あごに貼りついてしまうことがあります。ここが、同じおせちでも煮しめとは違うところですね。
出すときは、1cm幅より細く、繊維を断つ向きに切ってください。かんぴょうは外します。煮汁を少しかけて、ひと口がまとまるようにすると安心です。
飲み込みに不安がある方には、細かく刻んで、煮汁でとろみをつけた形にする方法もあります。
それでも難しい日があります。そのときは無理をしないでください。お重に一本のせておくだけでも、縁起は届きます。昆布巻きを、だしの香りがする一椀に置き換える日があっていいと思っています。
昆布巻きの作り方でよくある質問
Q1.昆布がやわらかくなりません。どうすればいいですか?
昆布の種類か、調味料を入れる順番のどちらかです。早煮昆布か日高昆布を選んで、水と酢だけで1〜1.5時間下煮してください。
一度硬く煮えてしまった昆布は、あとから煮ても戻りません。次回は順番を変えてみてくださいね。
Q2.身欠きにしんがないときは?
ごぼうで作れます。昆布の幅に切って水にさらし、そのまま芯にするだけです。
鮭やたらこを芯にする地方もありますし、芯なしで昆布だけを巻いてもおいしくできます。
Q3.かんぴょうがどうしても切れてしまいます
結びがきついのが原因です。指1本分のゆとりを残して結んでください。昆布は煮ると一回り太くなります。
それでも切れるなら、結ばずに巻き終わりを下にして、鍋にぎっしり並べる方法もあります。
Q4.いつ作るのがいいですか?
大晦日の2〜3日前でも大丈夫です。冷蔵で4〜5日もちますし、むしろ翌日以降のほうが味がなじみます。
煮汁ごと保存容器に入れて、冷蔵庫へ。作り置きできるので、年末の段取りが楽になります。
Q5.冷凍はできますか?
できます。昆布は冷凍に強い食材なので、煮汁ごと小分けにして1か月まで。
解凍は冷蔵庫でゆっくりと。再冷凍は避けてくださいね。
まとめ。。。

昆布巻きの作り方を、最後にもう一度まとめますね。
- 昆布は早煮昆布か日高昆布を選ぶ
だし用の厚い昆布は、いくら煮てもやわらかくなりません。 - 戻しすぎない。戻し汁は煮汁へ
水に10〜20分で十分。白い粉はうま味なので洗い流さないこと。 - 巻きはきつく、結びはゆるく
昆布は煮ると一回り太くなります。指1本分のゆとりを残してください。 - 切るのは結び目と結び目の間
切り口の両側に結び目が残るので、煮てもほどけません。 - 下煮は水と酢だけ。1〜1.5時間
酸が繊維をゆるめます。仕上がりに酸味は残りません。 - 味つけは、やわらかくなってから
竹串が通ってから砂糖、10分後にしょうゆ。やり直しのきかない一手です。 - 冷蔵4〜5日・冷凍1か月。煮汁ごと保存
乾くと硬くなります。粗熱は30分以内、直箸にしないこと。 - 昆布は「やわらかい」と「飲み込みやすい」が別もの
高齢のご家族には薄く切って、かんぴょうは外してください。
昆布巻きって、正直に言うと、いちばん面倒なおせちだと思います。戻して、巻いて、結んで、何時間も煮る。
それでも毎年作るのは、お重を開けたときに黒いつやが並んでいると、やっぱり正月らしいからなんですよね。「よろこぶ」「子生婦」「養老昆布」——一本の中に、これだけの願いが巻き込まれている料理は、ほかにありません。
今年は早煮昆布を買うところから、ぜひ始めてみてくださいね。
フッくんでした!
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